Wednesday 30 April 2014

12年振りに元の飼い主に再会した猫

「犬は人につき,猫は家につく」という言葉を以前聞いたことがあります.猫は,人との関係について,どちらかというと淡白であるといったことを言っているのでしょう.それに対して犬については,忠犬ハチ公や盲導犬サーブのように自分の身を顧みずに主人に仕えるといった印象が定着しているようです.そういえば,「犬は三日飼われた恩は三年忘れない」という言葉も聞かされたことがあります.「忠義」好きの日本人ならではの発想なのかもしれません.自分の今迄の経験から犬と猫の違いについて述べると長くなってしまうので,前口上はこの辺りに止めますが,それでもひとこと述べるならば,人間との関係において犬は所属する集団,例えば飼い主の家族のメンバー全員と関係を持ちたがる,言い換えれば,集団における自分のポジションを他のメンバー全員に認めてもらおうとする,平たく言えば大勢の仲間に入りたがるということですが,猫はどちらかというと誰とでも個人的な関係を持ちたがると言えるのではないかと思います.

では本題へ進みます.

彼の元の名前はカター(Kater).そして,元のご主人の名前(苗字)はアリオン.つまり,カター・アリオンが彼の本当の名前です.12年前,彼は当時学生だったご主人と一緒にミュンヒェンに暮らしていました. 二人は本当に仲が良く,ご主人が自転車旅行に出かけるときも彼は一緒でした.しかし,カターは,あるとき突然ご主人の前から姿を消してしまったのです.そのとき,実際にカターに何が起きたのかは判りません.オリンピアパーク近くの建設工事現場で遊んでいるときに,近所の人にでも連れ去られてしまったのかもしれません.(その人は保護したつもりだったかもしれませんが.)

いずれにせよ,彼は別の人に飼われることになったのは事実でした.新しいご主人は彼にシュトルッピという名前を付けました.しかし,なかなかなつこうとせず,攻撃的な態度を見せる彼に手を焼いた新しいご主人は,今年の4月の始めに彼をミュンヒェンの動物愛護団体のシェルターに預けてしまったのです.

シェルターに預けられた彼は,担当の職員にもなつかず手を焼かせる困った猫でした.しかし,彼の様子から,預けに来たのは本当の飼い主ではないのではないかという疑念を抱いた職員は,飼い主探しを担当しているエヴリン・コーゼンバッハさんにその疑念を打ち明けました.やがて,彼が身につけていたマイクロチップから本当の飼い主が,今では獣医となってミンデンに移り住んでいるアリオンさんであることが判明しました.連絡を受けたアリオンさんは,12年前に自分の前から突然姿を消したカターが今も生きていて,ミュンヒェンのシェルターで保護されていることがすぐには信じられない様子でした.が,すぐにカターに会うためにミュンヒェンへ向かいました.

アリオンさんを迎えたシェルターの職員達は,皆緊張していました.この攻撃的な猫が,昔のご主人にも同じような態度を見せるのが心配だったからです.しかし,それは杞憂であったことがすぐに判りました.アリオンさんが驚かさないようにそっと彼の檻の扉を開けると,カターは恐る恐る大の仲良しだった昔のご主人に近づいて来ました.そして,始めは彼に向かって伸ばしたその手の匂いを注意深く嗅いでいましたが,すぐにそれをやさしく舐め始めたのです.カターは,自分に向かって手を伸ばしている人が12年前に別れたご主人であることをすぐに理解したのでした.アリオンさんから嬉しそうになでられている様子を見ると,それまで彼が職員に対して見せていた攻撃的な態度がうそのようでした.その場に居合わせた皆の目頭を熱くさせた,まさにハッピーエンドと呼べる結末でした.

人につく猫もいるのですね.

以上,4月29日付シュピーゲルの"Kater Arions lange Reise"(「カター・アリオンの長い旅」)からでした.(Tierschutzverein MünchenのFacebookに掲載された4月25日付のポスト"Happy End nach 12 Jahren Trennung Eine wunderbare Katzengeschichte"の内容も少し加えてあります.)

ロシアに対する制裁がISSのアメリカ人宇宙飛行士を危険にさらす?

アメリカがロシアに対する制裁措置に踏み切った場合,当該措置はロシアの航空宇宙分野にも関係してくるため,現在国際宇宙ステーションに滞在中のアメリカ人宇宙飛行士の身を危険にさらすことになると,29日,ロシアのDmitri Rogozine副首相が述べたことを同日付オブザーバーの"L'ISS sera-t-il touché par la crise ukrainienne ?"は伝えました.

フランス国鉄の新しい地方急行用車両Regiolisの写真

Alstom社製の新しいTER用車両Regiolisが,昨日パリのVaugirard駅でお披露目されました.内装も含め車両の写真は,フランス国鉄のサイトのこちらのページで観ることができます.

フランスの民間航空機パイロットの組合が予定しているストについて

フランスで最も大きなパイロットの労働組合SNPL France Alpaは,5月3日から30日迄,毎日異なる特定の時間帯に限った形でのストライキを呼びかけています.もし,このストライキが決行された場合,最も影響を被るのはエールフランスですが,会社側は今のところ,運行にどの程度影響が及ぶか予想できないとしています.

組合側が要求しているのはディアール法という法律の廃止です.ストライキに参加する各労働者は決行の48時間前に自ら参加することを申告するよう義務づけるこの法律は,実質的にスト破りを可能にしてしまうというのがその理由です.それを裏付ける最近の例ですが,英国のEasyjetのパイロットたちがストライキを行った際,この法律のお陰で会社側は前もってストライキに参加するパイロットの氏名と人数(Easyjetの英国人パイロットの85%)を把握出来ていたため,フランス人パイロットを代わりに乗務させ,結果として運行には全く支障が及ばなかったそうです.こうした会社側の対抗措置によりストライキの効果が失われるのを防ぐために,SNPLは一ヶ月の長期に亘るストライキを計画したとのことです.

以上,4月28日付オブザーバーの"Transports aériens : appel à la grève des pilotes en mai"からでした.(関連記事:Le Monde同日付"Le premier syndicat de pilotes appelle à une longue grève en mai";29日付The Connextion"Pilots union calls for rolling strike")

日本からの観光客の中にもエールフランスやKLM,あるいは日本航空を利用される方がおられると思いますが,場合によっては帰国便の相当な遅れを覚悟しておいたほうがよいかもしれません.(KLMや日航については,いうまでもなくエールフランスの共同運行便が要注意です.)

(このポストを公開した数日後の5月2日付オブザーバーは,組合がストライキを中止したと伝えました.)

結婚式の衣装のアクセサリーを購入するなら - L'EXPRESS Stylesがお薦めするオンラインショップ三店

お薦めのオンラインショップというのは以下の三店.
いずれも新郎新婦が結婚式で身につける衣装のアクセサリーを通信販売で購入出来る店です.なお,上記の三店のうちTheKooplesのサイトは地域をEuropa(EU)と指定すれば英語で示されますが,配送地域はEU内に限られます.

他の二店については,MrPorter.comのサイトにも英語のページがあり,さらに日本迄送料無料と日本語で書かれています.そして,Saint Laurentはポータルの左のナビゲーションフィールドの"SHIPPING TO: FR(CHANGE)をクリックすると国名が表示されるのでJAPAN(右端)を選択すれば日本語のページが表示されます.もちろん日本迄の配送も可能です.

Tuesday 29 April 2014

英国のRestaurant誌が選んだ世界のベストレストラン50店

28日に発表されたそうですが,Le Mondeのこちらのページにも50店のすべてが,それぞれの店名と国名,そしてサイトへのリンクと共に掲載されています.日本については,14位と33位に東京の二店が選ばれました.

なお,1位に選ばれるのが今回で4回目となるデンマークのNomaですが,L'Expressの4月29日付"Noma: le meilleur restaurant du monde aenvoyé des clients à l'hôpital"によると,このレストランで,昨年,約40人もの客が食中毒に罹り病院へ搬送されたそうです. また,オブザーバーの同日付”Les 50 meilleurs restaurants du monde : entre chef star et lobby, un classement incohérent"の中で,Cuisiner en Ligneのブログを運営しているStéphane Riss氏は,Restaurant誌によるランキングの審査員にはリストに載りたいレストラン,あるいは当該のレストランへ投資している人たちからの相当な働きかけがあるようだと述べています.

昭和の日に思い出した米内提督の論文の文章

 凡そ歴史的大事件といふものは、その客観的意義と主観的意義との間に大なる開きを有するもので、しかも革命の時ほどその開きの大なるものはない。平和の時代に於ける歴史は、極めて緩漫に萬人の目の前に展開され、統計とか告示とかいふ温順な『聖衣』を着て居るが、いざ革命となると歴史はソフィストヘルの『法衣』に着換ゆる。卽ち政治の常道は無くなり、目的と手段との釣合が取れなくなる.しかもこの魔性の歴史は人々の脳裏に幾千となく蜃氣樓を現はし、又その部分部分を切り離して、種々様々に之を配列し、又自らは姿を晦まして置いて、所謂時代政治屋を操り、一寸思案してとこの人形政治屋に狂態の踊を舞らせるのであるが、彼等は斯る踊こそ自分等の目的を達することの出来る見事にして且つ荘重なものであると思込んでしまう。斯くして魔性の歴史は人々を歩一歩と思ひも寄為ぬ險崖に追詰むるのである。然し荒れ狂ふ海が平穏におさまれる時の如く、狂踊の場面から静かに醒めて来ると極端なものでも穏健なものでも、又反動主義者でも自由主義者でも又革命者でも反革命者でも誰れでも彼れでも、彼の狂踊の場面で幻想したこと現實の場面で展開されたことは、まるっきり似もしない別物であることに氣附き驚異の目を見張るのである。

米内光政 『露國革命の論理(内戰と外交關係に就いて)』(『外交時報』昭和2年6月1日号所収)より
米内には第一次世界大戦の最中,大正4年の2月から二度に亘ってロシアでの駐在経験があり,二月革命を現地で目撃しています.この論文については,高田万亀子氏の著書に詳しい解説が載っていますが,*1)彼は大正11年末にヨーロッパ出張から帰国し,春日,磐手,扶桑,陸奥の艦長を歴任した後,大正14年には少将に昇進すると同時に第二艦隊の参謀長に着任,そして,その翌年から昭和3年12月に第一遣外艦隊司令官を拝命するまでは軍令部第三班長(情報担当)の任に就いていたので,その間に執筆したようです.*2) 太字で示してあるのは,緒方竹虎著『一軍人の生涯』で紹介された,自らが首相を務めた内閣が陸軍などの抵抗によって倒された後の昭和15年8月に,時世を憂い,風刺して親友の荒城二郎宛に米内が書いた手紙の一節とほとんど同文と高田氏が指摘している箇所です.



*1) 高田万亀子『静かなる楯 米内光政 上』東京,原書房,1990年,pp47ff;高田氏の解説によると,「米内が本音と建前を弁別し,徹底して現実的立場からものを見る人」であり,「列国の対外政策はギヴ・アンド・テイクで,友好的なものでもすべては実利と権謀の中に指摘」しているとのことですが,こうした米内の姿勢には,西南諸藩によるクーデターの際に賊軍の汚名を着せられ,明治政権による処罰の対象となった南部藩の士族の家系に生まれたことも影響しているように思えてなりません.

ここからは本題から外れます.米内が三国同盟そして日米開戦に反対し,最後はその幕引きに尽力したことはよく知られたところですが,結果的には真珠湾攻撃という大博打に出た開戦時の
連合艦隊司令長官山本五十六(その前は米内海相の下で海軍次官)も三国同盟や日米開戦に大反対でした.そして,もう一人,やはり三国同盟や日米開戦に反対し,戦争の最終段階で米内海相の下,海軍次官として戦争を終わらせる上で重要な役割を果たした井上成美(米内海相,山本海軍次官時代には海軍省軍務局長)という人がいますが,面白いことにこの三人の出身地はすべて西南諸藩によるクーデター勃発時奥羽越列藩同盟のメンバー藩でした.(米内はすでに述べたように南部藩,山本は越後長岡藩,そして,井上は盟主の仙台藩出身.)

さらに話を脱線させると,南部藩出身の有名人として,国際連盟事務次長を務め『武士道』の著者でもある新渡戸稲造,平民宰相と呼ばれる原敬などが挙げられますが,後者は西園寺内閣における内相兼鉄道院総裁当時,後藤新平や島安次郎技師(新幹線の生みの親,島秀雄技師の父)らが練り上げて来た日本の鉄道の広軌改築計画を葬り去った張本人であり,個人的にはあまり好きな人物ではありません.(そのため,日本の鉄道の軌間は標準軌4フィート8.5インチ
(1,435 mm)が採用された新幹線,京成電鉄,都電,都営地下鉄などごく一部を除き,植民地用軌間(Colonial gauge)と呼ばれる貧相な3フィート6インチ(1,067 mm)のままです.(様々な軌間が入り乱れるインドなどよりは若干ましかもしれませんが.)もちろん,元を辿れば,明治政府内で鉄道建設には人一倍熱心だったにも拘らず,何も知らずに狭軌を選択した大隈重信(佐賀藩,当時大蔵大輔))や英国留学の経験がありながら,日本には狭軌が適当と判断した初代工部省鉄道頭井上勝(長州藩)たちの責任でしょうけれど.)Cf. 橋本克彦『日本鉄道物語』(講談社文庫),東京,講談社,1993年,pp85ff, p271
*2) 高田 前掲書, pp39ff

全世界のアメリカ企業が保有する顧客の個人情報にアメリカ政府はアクセス可能

ことの発端は,アメリカの捜査当局がマイクロソフト社へ一人の顧客のメールアドレス,送受信したすべての電子メールの内容,オンライン状態にあった時間,クレジットカード番号,銀行口座などのデータの提供を求めたことでした.ただ,当該の顧客のこうした情報は,アイルランドのダブリンにあるサーバーに保存されていたため,マイクロソフト社としては国外に保存されている情報は提供する義務はないとして政府を相手取り訴訟を起こしたのですが,初審で連邦裁判官のJames Francis氏はマイクロソフトに求められた情報を開示するようにという決定を下したというわけです.その理由は,従来,アメリカの捜査当局がこうした捜索を行う際,捜索対象が外国に存在している場合,現地の警察に協力を要請せざるを得ず,その費用,また手間が連邦政府にとって負担となり,加えて捜査に支障をもたらすからというものでした.併せて,アメリカ企業が捜索の対象となった場合,これまでも,その所在地にかかわらず令状は効力を持つとされていることも理由とされました.マイクロソフト社は,この決定を不服として引き続き裁判で争う意向を示していますが,とにかくアメリカ政府は,世界中の人の個人情報を把握しておきたいようです.

以上,シュピーゲル4月28日付"US-Richter: Amerikanische Behörden haben weltweit Zugriff auf Kundendaten"からでした.(オリジナルの記事は,ロイター通信の4月25日付"U.S. judge rules search warrants extend to overseas email accounts".)

英訳はまだ出版されていないようですが,NSAによる通信傍受の全貌を明らかにした下記の本がドイツで出版されています.(日本ではAmazon.co.jpでキンドル版のみ購入可能です.価格は1,339円です.)

Rosenbach, M,. Stark, H., Der NSA-Komplex: Edward Snowden und der Weg in die totale Überwachung, Deutsche Verlags-Anstalt (31. März 2014)

Motorola社の腕時計型端末Moto 360の写真

従来の携帯端末同様,スケジュール管理,GPS,天気予報など様々なアプリが組み込まれ,さらに,搭載されたAndroid Wearにより声による操作も可能というMoto 360ですが,今年の夏に発売されるというこの腕時計型携帯端末の全貌は,まだ明らかにされていません.ただ,写真で見る限り,なかなかエレガントなデザインのようです.(スカイプが搭載されていれば,サンダーバードの『火星ロケットの危機』("Day Of Disaster")の中でブレインズが現場から宇宙ステーション(5号)内のジョンに連絡したときのような形での通信が可能になりますね.しかし,ジャイアント・ロボを操作する機能迄は備えてはいないと思われます.)

ウェブギャラリーはこちらから.

Monday 28 April 2014

SWICAの契約者,世界遺産路線が2日間格安価格で載り放題

読み方はSUICAに似ていますが,スイスの保険会社の名前です.現在,SWICAの契約者がレティカ鉄道のWorld Heritage Passを格安価格で購入することができるキャンペーンが実施されています.World Heritage Passは,世界遺産区間のThusisからTiranaまで氷河急行およびベルリーナ急行を除く全列車が二日間無制限で利用出来る周遊券です.価格などSWICAによるキャンペーンの説明は,同社のサイトのこちらのページ(英語)でご覧になれます.

アーカンサス州の竜巻による深刻な被害(ビデオ)

すでに日本のニュースメディアも伝えていますが,27日,アメリカ中央部は複数の激しい竜巻に見舞われました.とりわけリトル・ロック付近での被害は甚だしく,少なくとも12名の死者が出た模様です.(内2名は,隣接するオクラホマ州の南部で死亡.)他にも竜巻に襲われた地域があり,死者は今のところ報告されていませんが,竜巻に対する警戒警報がニューメキシコからテネシーにかけて発令されています.下のビデオは,竜巻が通過した直後のアーカンサスの現場です.


以上,28日付Le Mondeの"Etats-Unis : paysages de désolation après le passage de plusieurs tornades"より.

Il était une fois à Trun

以前,アロイス・カリジェの生まれ故郷Trunを訪れたときのこと,あちこちゆかりの場所を巡った後,村内を散歩していたら,通りがかった囲いの中に子牛の一団がいました.通り過ぎようとしたら,いきなり後ろから彼らのリーダーらしい子牛から長く一鳴きモーと声をかけられましたが.そのときの様子を少々芝居がかりで再現すると次のとおり.

子牛のリーダー「モー.(おーい,そこ行く旅人(たびにん)さん,お待ちなせえ.)」

私「待てとお止めなされしは,あっしのことでござんすかえ.」

子牛のリーダー「モー.(いかにも.)」

私「はて,こんなスイスの片田舎,あっしのような旅人風情(ふぜい),お呼び止めたるそのわけを,お物語願えやせんか.」

子牛のリーダー「モー.(ここに集えるわれら共,お見かけ通り,スイスの子牛.人に養い育てられ,大人になれば屠殺場の露と消えるが悲しい定め.その屍(しかばね)も牛刀の冷たく光る刃にて切り刻まれて他人(ひと)様の胃のの底に落ち行く身.この世の名残に珍しき異国(おつくに)からの客人(まれびと)に一言挨拶申し上げ,せめてその色,その匂い観たり嗅いだりしてみたい斯様願っておりまする.)」*1)

私「 これは不憫なお身の上,通りすがるも何かの縁.国や姿は違(たが)えども哺乳類は相身互い.あっしのような生き物の味でよければこのとおり,さ,思う存分お舐めなせえやし.」

と心の中で言って,手を伸ばしたら彼らは交代でなめ始めましたが,中には興奮して少し強く噛んでくる子もいました.下はそのときに携帯電話で撮影した彼らの写真です.(乳牛だったかもしれませんが.)




*1) Trunにはカリジェの記念美術館があり,多くの日本人が訪れるために本当は全然珍しくない.また,土地の人たちはルマンチを話すためか,私たち外国人を見ると大人でも子供でもチャオと声をかけてくる.なお,本来のルマンチ語での挨拶はAllegra.

観光客による損傷が進むマチュピチュの遺跡

毎日,多いときには4,000人もの観光客(大半が外国人)が訪れるペルーのマチュピチュの遺跡ですが, インカ時代には300人程度の住民しかいなかった標高2,400 mの古代都市の遺構が,こうした多くの観光客の訪問により損傷を受けつつあると4月1日付シュピーゲルの”Weltwunder in Gefahr"は伝えています.

公には毎日2,500人までしか入場は許されていないはずなのですが,その規制をくぐり抜ける様々な"抜け道"が存在しているため,実際には訪れる観光客は野放しの状態です.彼らの中には壁によじ上ったり,落書きをしたり,さらに,禁止されているノルディックウォーキング用のスティックを使う人も多くいます.単に大勢の人が歩き回るだけでも遺跡全体に深刻な影響があるのですが,土によって固められているだけの石壁もこうした行為によりすでに数カ所の破壊が確認されています.それらの石壁につけられた細かな傷が雨水を吸い込み,周囲の構造が不安定化したためです.

また,遺跡観光の玄関口であるマチュピチュプエブロの町は,山から流れ下る二本の川の合流点に位置しており,地元の言葉でHyacoと呼ばれる土石流の被害を度々受けています.最近の例としては2010年に発生したもので,線路や橋が破壊されために町は完全に外界から遮断され,下山出来なくなった観光客3,000人以上がヘリコプターにより救出されています.本来,このような地形に人が住むこと自体,非常に危険なことであり,それを避けるために賢明なインカの人々はマチュピチュの町を山の上に建設したのです.

2007年には,考古学者や環境保護団体の反対を押切る形でマチュピチュプエブロが面しているウルバンバ川に橋が架けられ,今では自動車で遺跡の近く迄行くことも可能です.また,遺跡周辺でも森林の伐採が進み,現状まま放置すれば,最悪の場合,プエブロの町もろとも遺跡そのものが地滑りなどによって崩壊する可能性も指摘されています.

ウェブギャラリーへはこちらから.

ヨーロッパのマグドナルズ,チキンナゲットや各種チキンバーガーに遺伝子組替飼料で飼育されたブロイラーを使用開始

2001年以降,遺伝子組替穀物で飼育された鶏肉を使用しないという自主規制を守り続けて来たマクドナルズですが,飼料価格の高騰などにより,それを撤廃せざるを得なくなったと4月27日付シュピーゲルの"McDonald's: Gentechnik im Burger"は伝えました.

フランクフルト駅構内のマクドナルズのイージーオーダーコーナー.カウンターはお客でごったがえしていたものの,こちらは誰も使っておらず,試しに使ったところ,カウンターの専用の場所から店員さんがすぐに品物を出してくれました.英語はもちろん,そのほかの主要言語に対応しています.もちろん,クレジットカードも利用可です.恐らく,日本でも特定の店舗で導入されているとは思いますが,そもそもマクドナルズはあまり利用しないので,まだ見たことはありません.

ミシュランのオンライングリーンガイド(英語版)

昔,よく使ったミシュランのグリーンガイドですが.ウェブサイトが開設されていることを知りました.ありがたいことに英語版もあるので(残念ながら日本語は未だのようです.),こちらにご紹介します.(特にフランスの)旅の計画を立てる上で多少の役に立つかもしれません.

また,同じくミシュランのレストランガイドはこちらから.フランスのレストラン専用なのでフランス語版のみですが,上でご紹介したガイド内でも,フランスも含め検索が可能です.(メニューバーのRestaurantsをクリックしてください.)なお,フランス語のレストランガイドのiPhone,Android用アプリケーションが無料でダウンロード可能です.

Sunday 27 April 2014

バルセロナのレストラン5選

オブザーバーのこちらのページに紹介されています.(店名,住所,電話番号,さらに店によってはサイトのURLが太字で表示されています.)

5分で判るシリアの現状 - Le Mondeのビデオ(フランス語)

Eisenbahn Romantikのビデオ"ノスタルジックバルカン急行"

久しぶりに観たEisenbahn Romantikのビデオ(前編後編)でしたが,感動しました.以下,前編の内容を少しご紹介します.

出発地はベルグラード.近年被った戦渦からの完全復興には至っていないセルビアにおいて保存されている貴重な三両のSLのうち,どうにか動ける一両(見た目からほぼ間違いなくDRGの戦時形52)も給水ポンプが故障し,結局セルビア内はGM*1)のディーゼル機ケネディに牽引されることに.なお,途中,セルビアで保存されているティトー大統領の豪華な専用列車が紹介されています.(05:15頃から)さて,一旦,国境を越えてブルガリアに入るや事情は一転,三両のテンダー機が交互に重連で牽引するという実に豪華な道中となりました.フェルディナンド一世,その息子ボリス三世と昔の王様が親子で鉄道ファンだった国だけのことはあります.登場した機関車は,05.01,01.23,そして03.12の三両.最初に05という形式番号を見て,「なにっ,ドイツの最高速度記録保持車と同じ形式!?」とどきっとしましたが,まさかと思い調べてみると,案の定,製造会社はドイツですが,同じ形式番号を持つDRGの統一規格形とは異なるタイプであることが判りました.(似たような例は,トルコ国鉄のSLなどほかにも多くあります.)これら三両のうち,03.12のみスイスのヴィンタートゥール製で他はドイツ製です.それぞれのタイプは,01 :  1'D1' h2,03 : 2’D1’ h3*2)05 : 2’C1’ h3(見た目はDRGの統一規格機03.10(2’C1’ h3)に似ています.)で,三両とも大きな屏風のようなヴァグナー式除煙板を備えたタイプです.

また,ブルガリア内では25%もの勾配区間をあえぎながら登る2両のSLの様子も捉えられています.(32:30頃から)蒸気牽引はプロヴディフで終わり,そのあとは軌間760 mmの狭軌鉄道でバルカン半島で最も標高の高い駅アブラモ(標高1,267 m)へ向かいますが,牽引するタンク機はその特徴ある除煙板から,ポーランドのマシンに似ているなと思っていると,やはり1949年ポーランド製とのことでした.

なお,蒸気牽引が終わるプロブディフ駅での鉄道ファンたちと機関士たちのチームとの和やかなお別れのシーン(33:10頃から)を観て,鉄道を愛する人たちの友情って本当に素晴らしいと改めて思いさせられた次第です.

Eisenbahn Romantikの当該番組のサイトはこちらです.また,ウェブギャラリーはこちらから.




*1) GMといえば,Alstomを買収するようなうわさが流れていますが,フランス政府は警戒しているようです.(Cf. Le Mondeの4月26日付Le rachat d'Alstom par General Electric bouclé dimanche ?,Les Echosの4月24日付Alstom dément les rumeurs de fusion avec General Electric他.)
*2) 2'D1'という車軸配置の機関車は,ドイツでは領邦鉄道時代も含め存在していません,2'D2'については,帝国鉄道06形がこの車軸配置でした.

Saturday 26 April 2014

マッカーサーリポートに記載されている終戦の詔勅

靖国神社について何か記載は無いかと思い,標記報告書内を検索してみたのですが,これといって興味を覚えたものはありませんでした.ただ,たまたま終戦の詔勅の英訳や国務大臣たちの署名入りものの写真が掲載されているのを見つけたので,ここにご紹介する次第です.(なお,占領軍の宗教政策については,敢えてご紹介するまでもなく,ウィリアム・P. ウッダード 著, 阿部 美哉 訳『天皇と神道―GHQの宗教政策』,サイマル出版会,1988(Woodard, W., P., The Allied Occupation of Japan 1945-1952 and Japanese religions, Leiden: : Brill, 1972)を始め多くの文献が出版されているので,ご興味のある方はそれらをご参照下さい.)

ではまず,英訳から.

Friday 25 April 2014

パリでフレンチポップ-コーン三昧

Jack's Popcorn(36, rue Poissonnière, 2区)とMy Crazy Pop(15, rue Trousseau, 11区)では,フランス風というか,一風変わった味付けのポップコーンを味わうことができます.

前者の店内にはパルメザンチーズ,ピーマン,イノンド,生姜,コーヒーなどの味のついたポップコーンが並べられ,後者の名物はココナッツカレー,フォワグラ,キャラメルイチジク(ローズマリー,バルサミコ,蜂蜜,粗挽き胡椒入り),林檎+ココナッツ+シナモン味のポップコーン.そして,特に人気が高いのが薫製香辛料(タイム,バジリコ,薫製パプリカ,タマネギ,ニンニク)味の黒色ポップコーンだそうです.

詳しくは,Le Mondeの"Le pop-corn gourmet"をご覧下さい.

レマン湖およびスイスやフランスの山並みを眺めながら味わう鉄板焼 - eboutic.chの格安プラン

レマン湖畔のLes Rochers-de-Nayeの標高は,2,042 m.そこに位置するレストランPlein Rocからはレマン湖はもちろん,アイガー,メンヒ,ユングフラウ,モンブランなどが見渡すことができて眺望は抜群です.

このPlein Rocでの食事(鉄板焼)とモントルーからの往復乗車券付きのプランがゴールデンパスラインから販売されています.ただ,ゴールデンパスラインのサイトから申し込む場合,10名以上の参加が条件になります.ところが,eboutic.chでは,同じプランが今なら一人からでも申込が可能.しかも最高で43%のディスカウントが利用出来ます.

なお,eboutic.chを利用するにはアカウントを開設する必要があり(メールアドレスの申告とパスワードの設定程度),また,サイトの言語はドイツ語とフランス語のみです.

ご興味を持たれた場合は,eboutic.chでEscapade gourmande en train aux Rochers-de-Naye(フランス語),あるいは,Gourmet-Ausflug auf den Rochers-de-Naye(ドイツ語)というキーワードで検索なさってください.

Le Petit Palaisで開催中の展覧会"« Paris 1900, la Ville spectacle »

1900年4月14日に開幕したパリ万国博覧会.この歴史的イベントを記念した展覧会が,当時同博覧会の会場として建設されたプティ・パレで8月17日まで開催されています.詳しくは,こちらのページ(英語)をご覧下さい.1900年のパリを彩った様々なオブジェや絵画など,およそ600点が展示されています.(絵画については,過度に期待して観に行くと失望するそうです.)

TIME誌の《世界で影響力を持つ100人》の1人に選ばれたマララさん

TIME誌のリスト自体は,このような個人のブログで取り上げるまでもありませんが,ざっと目を通した際,興味を引かれた点をいくつかご報告します.

リストの最終発表の前に,候補となった人について読者アンケートが実施されましたが,面白かったのはその結果でした.質問はごく単純にそれらの人が影響力を持っているかどうかを訊ねるもので,参加者は"Yes"か"No"で回答します.(と言っても,なんとなく人気投票のような意味合いを含んでいるような感がなきにしもあらずですが.)結果はYes票の多かった順に並べられていますが,マララさんはその13位で,Yes票がNo票を相当上回りました.その少し上11位にはレディ・ガガさんの名前が見えます.少し下がって17位には,あのEdward Snowden氏が位置していて,やはりYes票がNo票を上回っています.

次に,我が国の総理大臣ですが,読者アンケートの結果におけるYes票はかなり少なく(従って順位もかなり下),逆にNo票のほうがはるかに多いのです.(少なくともYes票の2倍以上.)また,ロシアのプーチン大統領については,ローマ法王の次で28位.ただ,プーチン氏の場合,やはりNo票のほうがYes票よりも多かったものの両票の差はそれほど大きくありません.

最後に,確定したTIME誌のリストには,選出された人それぞれについてのコメント(推薦の言葉のようなもの)が紹介されていますが,安倍総理についてのコメントを書いたのは合衆国財務長官でした.(そのコメントを読むと,安倍氏に影響力があるとしたら,それはアメリカの影響力を通すチャンネルの役目を果たしている限りにおいてのことのような気がしてきます.)そして,マララさんについてのコメントはGabrielle Giffords氏が書いています.同氏は元アリゾナ州選出の民主党下院議員で,Americans for Responsible Solutionsの創設者の一人です.

Thursday 24 April 2014

6月7日運行予定のレティカ鉄道SL列車の乗車券(昼食付)が今なら半額で購入可能

今年で125周年を迎えるレティカ鉄道で,6月7日に運行されるSL列車(Samedan – Scuol - Tarasp - Samedan)の乗車券が通常125フランのところ,今なら半額の62.5フランで購入可能です.

オンライン購入は,Deal.Suedostschweiz.chのこちらのページから.数量は50枚限定,1人2枚まで購入出来ます.なお,購入出来るのはバウチャーのため,遅くとも6月2日迄に乗車券と交換する必要があります.(交換に関するお問い合わせは,Tel. 081 288 37 16,あるいはメールで.もちろん英語で対応してくれます.)また,昼食はScuol-Taraspで提供されます.

レティカ鉄道のSL列車のページはこちらから.(個人的に楽しみにしているのは,6月21日に予定されているアルブラ線の2両のG4/5(Nr. 107/108)によるSL重連運転ですが,すでに乗車券は売り切れだそうです.狭軌鉄道(メートルゲージ)でのテンダー機の重連は珍しいと思います.)

以下,6月7日および21日に運行される列車の時刻表です.

6月27日:(G4/5重連)ngadin: Samstag, 07. Juni
Samedan
10.00
Scuol-Tarasp
13.01
Scuol-Tarasp
14.49
Samedan
17.04
路線図

6月21日(G4/5重連):  ngadin: Samstag, 07. Juni
Landquart
08.25
Chur
09.11
Samedan
14.23
Samedan
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Landquart
20.15
路線図

深刻化する中国の環境汚染 - 地下水の60%が飲用不適

ウェブギャラリー付でそう伝えたのは,4月23日付シュピーゲルの"Umweltschäden: 60 Prozent von Chinas Grundwasser ungenießbar".

中国の水質汚染というと,4月の始めに蘭州市で発生した,China National Petroleum Companの子会社のパイプラインから漏れ出したガソリンが飲料水に混入したとされる事故が思い出されますが,中国全体でも恒常的な水質汚染がますます深刻化しているようです. 

昨年,203の都市で実施された水質検査の結果,汚染のために飲用不適とされた地下水の割合は2013年の57.4よりさらに高い60%に上昇したことが判りました.さらに,中国環境保護部によると国土の16%が有害物質によって汚染されていて,耕作地のほぼ5割もカドムウムなどによって汚染されているそうです.また,世界の様々な資源が持つ脆弱性やリスクを調査し,それらの対策を提案している団体Earth Security Initiative*1)の専門家も,すでに中国の地下水源の半分以上は,工業廃水や家畜の飼育により汚染されているのに,中国政府は,今後,石炭火力による発電量をさらに75%増加させようとしていると指摘しています.新しい発電施設の大半は,すでに水質が悪化している地域に建設されようとしており,それらの稼働により当該地域の水質はさらに悪化するだろうと言うのです.

そして,飲料水の汚染は直接人々の暮らしに影響を及ぼすことはもちろんですが,同時にそれをもちいて生産される食物にも深刻な被害をもたらしています.例えば,重金属によって汚染された水が栽培に使用されたことが判明した穀物の廃棄量は年間1,000万トンにものぼるとされています.

このような飲料水不足は,地球的規模で深刻化しつつあり,人口の増加と相まって最終的には紛争や戦争の火種にもなりかねないと記事は伝えています.

今や,多数の企業進出により多くの日本人が暮らす中国ですが,中国の人たちに加えて彼らの健康も心配になります.



*1) Earth Security Initiativeが発行しているリポート"Earth Security Indexは,こちらからダウンロードできます.

日本の都市はそんなに危険!? - 世界で最も危険な10都市の1位,4位,6位を占める日本の都市

地震,津波,台風,大雨による洪水など自然災害による潜在的危険性を基にしたシュピーゲルのランキングで,各都市についての説明を読めば確かにそうかもしれませんが,ちょっと納得がゆきません.

キャプション付のウェブギャラリーはこちらの記事の末尾に掲載されていますが,以下,そこでの格付けです.

1位 東京,横浜
2位 マニラ
3位 香港の扇状地域
4位 大阪,神戸
5位 ジャカルタ
6位 名古屋
7位 カルカッタ
8位 上海
9位 ロスアンジェルス
10位 テヘラン

"The United States of Paranoia" - アメリカ人とアメリカを理解するのに役立ちそうな一冊

世界中で,アメリカほど陰謀説が好きな国はないと言われます.最近の例としては,9.11の同時多発テロ攻撃の首謀者は,実は当時の大統領George W. Bush氏でだった,あるいは少なくとも彼は攻撃の計画について予め知っていたが阻止するための措置をとらなかったとか,そして,少し時代を遡れば,当時のJohn F. Kennedy大統領の暗殺を巡るもの,さらに,1941年の日本軍による真珠湾攻撃の前に当時のRoosevelt大統領はすでにその計画を知っていたとか.また,現大統領のObama氏の出生地は実はハワイ,つまり合衆国内ではなかった(ので大統領に立候補する資格は本来ないはず)等々,枚挙にいとまがありません.

最近,出版された本"The United States of Paranoia"の中で,著者Jesse Walker氏は,こうしたアメリカ社会に繰り返し生まれる陰謀説を検証し,アメリカ人の陰謀説好きはすでに17世紀のマサチューセッツで起きた魔女狩りにおいて認められるとしています.その上で,彼は陰謀説の発生は,まさにアメリカの歴史の特徴であり,それらはすべて以下の5つのパターン,あるいは元型のどれかひとつ,もしくは複数に沿って組み立てられていると述べています.
  1. 首謀者はアメリカ社会内部に存在する.
  2. 首謀者は他国に存在する.
  3. 首謀者はアメリカ政府や関連機関等である.
  4. 首謀者は何らかの地下組織である.
  5. 首謀者は物質世界に属さない悪の勢力(つまり《悪魔》)であり,その計画を阻止しようとする《天使》たちがいる.("benevolent conspiracy")
以上,4月23日付スイスのチューリヒ新報(NZZ)"Verschwörungen am laufenden Band"からでした.

なお,ご紹介したJesse Walker著 "The United States of Paranoia: A Conspiracy Theory"は,日本のAmazonでは今年の10月から発売されるようですが,アメリカのAmazonではKindle版も含め,すでに購入可能です.また,著者のJesse Walker氏は"Reason"誌の編集者です.

新年度が始まり,多くの新社会人の方が誕生していますが,先日ご紹介した経済書Thomas Piketty著"Capital in the Twenty-First Century"とともにご自分の読書リストに加えられたら如何でしょう.

ところで,上記の5つのパターンは,アメリカ映画の筋書きにもしばしば見られますね.

Wednesday 23 April 2014

パリの公共貸自転車Vélibの新しいステーション,サン・ラザール駅近くにオープン

詳しくは,Vélibの公式サイトをご覧下さい.空気汚染が深刻な昨今のパリですが,こうした動きが空気汚染の減少につながることを期待します.

韓国における《愛》の定義の改定

以下,Le MondeのブログDes rives orientalesの4月23日付ポスト"Pas gay, l’amour en Corée…"の要約です.

韓国のThe National Institute of The Korean Languageは,3月31日付で,そのオンライン辞書における「愛」の定義を部分的に改定しました.具体的には,それまでの「二者間における愛情」という記載を 「一人の男性と女性の間の愛情」に変更したのです.

従来の定義では同性愛を肯定していると捉えられる可能性があるからというのがその理由ですが,今回の改定には上記機関のGeneral Directorであり,ソウル大学の教授でもあるMin Hyun-sik (민현식)氏の意向がかなり強く働いたようです.同氏は,元々同性愛に対し強い反対の姿勢を示しており,2013年2月に政府が提出した差別禁止法案が性的指向による差別を含んでいたことから,その法案の否決を求める運動の発起人の一人でした.(当該法案は,今のところ採決に至っていません.)また,当時,この法案に対し,キリスト教会からも反対の声が上がり,数千人が参加する大規模なデモ行進が行われています.

その一方で,高麗王とその寵愛を受ける近衛隊長との関係を描いた『霜花店(サンファジョム)―運命、その愛―』 (2008)が大ヒットを記録したり,2013年9月には,Kim Jho Gwangsoo監督と彼のパートナーであるDave Kimがソウルの中心で大々的な結婚式を挙行したり,さらにソウルのItaewonという繁華街には数十もの男性同性愛者向けのバーが営業していることも事実です.

なお,2013年に実施された世論調査によると韓国人の39%(主に若い世代)が同性間の結婚に賛成しているそうです.

記事の内容については以上です.

ところで,韓国というと,先日発生した船の沈没事故で修学旅行中の高校生を含む多くの方が亡くなりました.本当にお気の毒なことであり,一刻も早く,また一人でも多くの方が発見,救助されることを心から祈るものです.なお,事故発生時,一人の若い女性乗組員の方が自らの救命胴衣を高校生に譲り亡くなられたことをニュースで知りました.強い職業倫理を持っておられた方のようですが,彼女のことを聞いて,たまに利用する大韓航空の女性客室乗務員たちのことを思い出しました.そして,美しく明るく親切な彼女達を見ながら,「この人たちは,最悪の場合,北朝鮮軍機によって撃ち落とされることを覚悟しながら働いているのだろうか.もしそうだとしたら,(不謹慎かもしれませんが)まさにハンサムレディーと呼ばれるに相応しい彼女たちの魅力を形作っているものの中には,そうした高潔な覚悟も含まれるのかも知れない.」と心の中でつぶやいたことを.

アメリカでベストセラーとなっているフランス人エコノミストの著書"Le Capital au XXIe siècle"

4月23日付Le Mondeの経済欄の記事”Thomas Piketty : « Le retour des inégalités inquiète aux Etats-Unis »”から.

英訳("Capital in the Twenty-First Century")が出版されたのは4月22日ですが,たちまちAmazonにおける販売部数で第一位となり,同時にNew York Timesのベストセラーブックのリストに掲載されたそうです.

著者のPikettyさんは,ホワイトハウスや財務省に招かれた他,各地で講演にひっぱりだこのようです.それらの講演の中で,Pikettyさんは,一部の人たちへの極端な富の集中を批判し,そして,高所得者の所得税率の引き上げの必要性などを主張していると記事は伝えています.

インターネットの使用における国の介入に関するデータ -  Le Mondeのインフォーグラフ

4月9日付Le MondeのLES DECODEURSにおける記事"Les Etats contre Internet : six cartes et graphiques pour comprendre"に掲載されたグラフです.

以下,簡単に内容を説明します.

1. 介入と監視
最初の図は,政府がGoogleに対し特定の内容の削除を要請した件数.中でもブラジル(218件),アメリカ(214)が多いようです.次の図は,ツィッターの内容の削除要請の件数.こちらは,フランスが突出しています. そして,最後はインターネット上での通信を監視する機関が存在する国を示しています.日本には存在していないようです.(今のところ.)
2. 検閲と遮断
上の図は,Googleの各種サービスの遮断,そして,下の図は,インターネットそのものが政府によって遮断された件数を示しています.
3. 抑圧
インターネットを使って市民活動を行ったために国によって殺害された人の数です.濃いオレンジがシリア人,薄いオレンジが他の国籍を持つ人です.

関連記事:4月22日付Le Monde"Le Brésil mène la bataille contre l'hégémonie américaine sur le Web"

ウクライナ危機の理解に役立ちそうな論説や記事

ウクライナで起きていることについては,日本のニュースメディアもほぼ毎日伝えているので,このような個人のブログで取り上げる必要もないと思っていましたが,ことによるとロシア,そして当のウクライナから閲覧してくださる方達の参考になるかも知れないと思い,最近目にしたヨーロッパのニュースメディアの記事の中で特に目についたものをご紹介することにします.もちろん,これらの記事はインターネット上で閲覧可能なものため,それらに直接アクセスこともできるのですが,昨今,特にロシアでの特定サイトへのアクセス制限が厳しくなったとのことなので,念のためにご紹介する次第です.(もちろん,それらへのアクセスも規制の対象となっている可能性がありますが.)

まず,読み応えがあったのが以下のスイスのNZZ(チューリヒ新報)の論説です.(日付の新しい順に並べました.)
そして,先日,東ウクライナにおけるロシアの諜報部員達の活動の証拠としてアメリカ政府が公表した写真を掲載した記事です.(このニュースは,もちろん世界中のメディアにより大きく取り上げられました.)
なお,この件については,すでにドイツのシュピーゲルが4月15日付の"Fakten-Check, Sagen die Russen die Wahrheit?"で取り上げています.

さらに,Le Mondeに掲載された,19日から20日の夜にかけてスラヴィアンスクで起きた銃撃事件に関する記事"Ukraine : rumeurs, manipulations et guerre de l’information à Sloviansk"(4月20日付)もご紹介しておきます.

最後に,ARTEのウクライナ関連の記事を紹介するページはこちらからご覧頂けます.(ドイツ語のページへのリンクですが,画面右上の言語選択ボタンでフランス語(FR)に切り換えることも可能です.)なかでも興味が引かれたのは,"Die politischen Köpfe der Ukraine"です.
Die politischen Köpfe der Ukraine
Die politischen Köpfe der Ukraine
Die politischen Köpfe der Ukraine
Die politischen Köpfe der Ukraine

以上,僅かでもご参考になれば幸いです.

Tuesday 22 April 2014

鉄道の保線業務にも導入される無人偵察機

フランス国鉄は,プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域で線路周辺の岩山の斜面の立体画像を撮影するために無人偵察機を導入したとEurailmagの"DRONOLOGY – THE FLYING EYE"は伝えています.

ヴェニス-シンプロン-オリエント急行,今年の5月17日からブリュッセル行きが運行開始

現在,パリのアラブ世界研究所でオリエント急行のオリジナル車両の展示が行われていますが,Les Echosの"Le Venice Simplon-Orient-Express s’arrêtera à Bruxelles"によると,その現代版であるヴェニス-シンプロン-オリエント急行のブリュッセル行きの運行が今年の5月17日から始まります.発駅はヴェニス,ウィーン,そしてブタペスト.料金は,一人2,020ユーロから(二人用コンパートメント,フルペンション,飲物代別)だそうです.(アベノミックスによるユーロの値上がりが恨めしい.)

なお,新旧のオリエント急行の車両(含内部)や他の世界的に有名な豪華列車の写真のウェブギャラリーがやはりLes Echosのサイトで公開されています.

アメリカ政府が公開した無人偵察機によるテロリスト攻撃メモ

無実のアメリカ国民さえその犠牲となっているとされる無人偵察機による攻撃*1) ですが,ニューヨークタイムズの二人の記者が,無人偵察機による攻撃に関する情報開示請求を拒否したとして連邦政府を訴えていた裁判で,21日,ニューヨーク控訴裁判所は被告である連邦政府に当該情報の開示を命じました.これにより,2013年1月に出された当該情報の開示拒否は法律に違反しないとの判決が覆ることになりました.

以上,22日付Le Mondeの"Aux Etats-Unis, la justice veut la fin du secret entourant les attaques de drones"および22日付オブザーバーの"ETATS-UNIS. Fin du secret sur les attaques de drones"からでした.(Le Mondeの記事中で引用されたNYTの関連記事へはこちらから.)

なお,これまでの無人偵察機の攻撃による(800名を超えると言われる一般市民を含む)死者数など,詳しい情報がLe Mondeのインフォーグラフによって提供されています.(グレーの棒グラフは無人偵察機による攻撃回数,同じく赤は攻撃による死者数,そして黒は攻撃に巻き込まれて殺害された一般市民の数を表しています.)

(ワシントンポストも,2013年12月3日に"President Obama’s immoral drone war"という社説で,多くの一般市民が無人偵察機の攻撃によって殺害されていると伝えています.)




*1) 3月19日にPolitifact.comに紹介された,テキサスの民主党上院議員候補Kesha Roger氏による報告によるもの.

シリコンバレーの巨人達の海上独立都市国家構想

Seasteading Instituteという団体があります.なんでも,海上に人口島を浮かべ,そこをいずれの国にも属さない独立国家とすることを目的として活動しているそうです.この団体が2008年に開催した,未来の海上国家の立体画のコンテストに応募された作品がフランスのオブザーバーのウェブギャラリーに紹介されていました.

それに関連して目を引いたのは,やはりオブザーバーの4月13日付の記事"Micro-Etats, villes flottantes : le projet fou des nouveaux maîtres du monde
"です.それによると,Google, Facebook, Amazon, また,Appleなどのアメリカの主要IT企業の経営陣ならびにそれらの投資家たちは,技術の進歩に付いて行けない政治家たちが治めるアメリカに留まっていたら自分たちの将来は無いとして,上述したような海上独立国家への移住を考えているそうです.

そこでは, 税金を払う義務は無く,あらゆる支払いはビットコインで行われ,グリーンエネルギーしか用いられず,学習もすべてオンラインで行われ,移動手段は無人飛行機(drones),そして病気は遺伝子医療で治療される等々.

Googleにせよ,Amazonにせよ,その並外れた秘密主義で知られていますが,本当にこのようなことを考えているのでしょうか.(ひょっこりひょうたん島のような島であれば,楽しいと思いますが.また,かく言う私もいつのまにか,AppleのPC,Amazonの通信販売*1),そして,このブログも含めてGoogleが提供する各種サービスの利用者となってしまった一人でありますが.)もっとも,Googleなどは,世界中に存在する書籍等,あらゆる人類の知的遺産をディジタライズして収集し,そのデータから人工知能を作り上げると言う荒唐無稽とも思える計画を真剣に実行しようとしていたようなので,海上に独立都市国家を建設するという計画を練っているとしても必ずしも不思議なことではないと言えます.(Cf. Google and the World Brain, BBC,2012年)

そういえば,日本でも利用されている方がいらっしゃると思いますが,キンドルへのダウンロード専用の電子書籍を自分で出版するサービスがAmazonによって提供されています.(Amazon Direct Publishing)欧米では,出版社からは見向きもされなかった作家が,この仕組みを通じて文壇デビューを果たし,ベストセラー作家になった例があるそうです.(例えば,ドイツのEmily BoldさんやフランスのAgnès Martin-Lugandさん,そして,アメリカのAmanda Hockingさんなど.詳しくは,ARTEのこちらのページ(フランス語/ドイツ語)をご覧下さい.Amazonの発展の歴史なども豊富な図解で説明されています.)と,気がつくと,またAmazonの宣伝をしてしまいました.




*1) 同一の商品であれば,獲得ポイント分が予め価格に上乗せされているYahoo(こちらもやはりアメリカの会社ですが)より,Amazonで購入したほうが,その分安くなるため,どうしても後者を利用する頻度が高くなります.

アメリカンナイトメア - フラッキングによる資源採掘が変えたウィリストンの住民の暮らし(ビデオ,ドイツ語)


多量のシェールガスや同オイルがフラッキングによって採掘されているアメリカのノースダコダの小さな町ウィリストン(Williston).住民たちの暮らしは,その影響を受け過去数年間で大きく変わりました.今や,ニューヨークよりも高いと言われる土地代の値上がり,犯罪の増加等.現代のゴールドラッシュがアメリカの一地方都市に及ぼした影響のシュピーゲルのビデオリポートです.

これを視ると,今や,ロシアへのエネルギー依存から自前のシェールガスやシェールオイルを採掘することで抜け出したいヨーロッパですが,フラッキングを用いることの環境への影響はもとより,採掘事業全体が地元住民の暮らしに及ぼす様々な影響を十分に考慮する必要がありそうです.Cf. NZZ4月18日付"Europas Energieabhängigkeit von Russland Zähflüssige Erdgasmärkte")現在,欧米,そしてもちろん日本でもより環境負荷の少ない採掘方法が研究されていますが,いずれも実用化までもう暫く時間がかかるようです.(例えば,フランス,ポー大学などで研究が進められているElectric Fracturingなど.)

なお,すでに昨年8月29日付シュピーゲルの"Massensterben seltener Fische: Fracking-Substanzen verschmutzen See”でも取り上げられていましたが,アメリカ政府によるフラッキング工法の環境への影響のリポートも公開されています.(特に,河川のpH度が上がったためと思われる絶滅危惧種も含む多数の魚の死などが報告されています.

ところで,以前のポストでもご紹介しましたが,アメリカのEIAの報告によると,中国にも多量のシェールガスや同オイルを埋蔵されていますが,Die Weltの2013年2月15日付"Fracking wird geopolitische Schicksalsfrage"は,もし中国がそれらを賢く用いるならば,現在のアジアにおける緊張は相当和らぐと見ています.もちろん,逆にそれらを用いて世界の覇権を目指す道を選ぶことも十分あり得ますが.ただ,懸念されるのは,もし中国が現行のフラッキング工法を用いた場合の環境汚染の悪化です.中国では,すでに水質汚染がしばしば問題となっているのはよく知られていますが,東南アジアの貴重な水源となっている大河川は殆ど全てが中国を経由しているため,それらが汚染されたら中国一国の問題に留まらずにアジア全体の生活環境の破壊を引き起こすことになります.(Cf. 本ブログの『水を巡るアジア危機』)

ドイツの自動車5種がWorld Car of the Yearに

受賞した車種が,シュピーゲルのウェブギャラリーで紹介されています.

ニューヨーク,ヴィンテージ - 今も残る大都市の過去の面影

シュピーゲルに掲載されたウェブギャラリーです.

2014年のイースターチョコ31選

先日の20日はイースターでしたが,例年通り,店頭にはさまざまなチョコレートが並びました.L'EXPRESSのウェブギャラリーはこちらから.

また,昨年の注目作もこちらに紹介されています.そして,こちらもやはり昨年販売されたチョコレートですが,なんと値段が450ユーロ以上もするというたいへんに贅沢なものです.誰が買うのでしょうか.

Saturday 19 April 2014

ドイツ鉄道,スイス国鉄の割引乗車券など

しばらく前のポストで,一人分の料金で二人による利用が可能になるTGVの特別割引をご紹介しましたが,そのあとで,ドイツやスイスにも似たような割引があったことを思い出しました.ただ,スイスの場合は,フランス同様通年ではないようです.また,ドイツの場合も,二人旅の場合,完全に半額になるという割引は今迄見たことはありません.(もちろん,これ迄にドイツを訪れたときに見た限りにおいてですが.)なお,こうした情報は,他の鉄道旅行専門のサイトや,あるいはガイドブック等に詳しく掲載されていると思うので,それらをごらんになったほうがより参考になると思いますが,これまでに利用したものを中心に少しご説明させていただきます.

下にご紹介するのは,いずれも各鉄道会社の英語の割引乗車券に関するサイトです.
ホームページのOfferをクリックすると,さまざまな割引乗車券の種類が表示されますが,その中でも短期の旅行をする私たち外国人にとって比較的利用し易いものが,Saver fare ticketです.利用出来る時間帯は限られていますが,1名で旅行する場合,250 Km以内であれば19ユーロからとお手頃価格です.また,2名で旅行する場合も通常料金に比べてかなり安く設定されています.

今,試しにSaver fareのページ内のBook your ticket onlineというボタンをクリックして,以前乗車した北ドイツのHusumからHamburgまでの区間を2名で旅行する際の割引料金を調べてみましたが,通常68ユーロのところ,29ユーロで利用可能の列車も表示されました.もちろん,この料金の適用には当該の列車を利用することが条件となります.(ドイツの駅の券売機で購入していると,しばしば男女を問わず若い人から声をかけられることがあります.彼らは,こうした2名に適用される割引を利用するために,自分と目的地が同じ利用者を探しているのです.)

そのほか,6名以上で旅行する場合の団体割引など様々な種類の割引乗車券が用意されているので,詳しくはOfferのページをごらんください.

なお,周遊旅行を計画している場合は,できれば出発する駅の旅行センターで担当職員に行程を伝えて,最も安く旅行できる方法を教えてもらうことをお薦めします.(フランスの田舎などでは無理ですが,ドイツでは,地方でも殆どの場合,英語で対応してくれます.)以前,Husumに滞在中,一日にあちこちを回る計画を立てたので,駅の旅行センターの職員に相談したところ,それならばということでこちらが望む行程の周遊券(カスタムメイド)を作ってくれました.確かに,いちいち片道乗車券を購入するより,そちらのほうがはるかに割安でした.
冒頭にも述べましたが,スイス国鉄も閑散期等に1名分の料金で2名の利用が可能となる割引を実施することがあります.試しに,今実施されている特別な割引はないかと探したところ,最大で半額となる割引が存在していることを知りました.こちらのページのSuper saver ticketという乗車券です.ただ,スイスの場合,安い乗車券で利用出来る席が相当限られているため,なかなか広告で謳われているような割引が適用される機会には巡り会えないことも付け加えておきます.なお,Super saver ticketのページに運賃表が掲載されていますが,それらの表内の1/1はHalf fare cardを所持していない場合の料金,そして,1/2は同カードを所持している場合の料金です.Half fare cardは1ヶ月有効のものが,120 スイスフランです.そして,こちらの地図が示すように,半額料金が適用されるのは鉄道のみならず,郵便バス(Postauto)など他の交通機関も含まれます.(詳しくはこちらをご覧下さい.なお,有効期間1年から3年のものまで用意されていて,例えば1年有効の場合は175 スイスフランです.)

また,Half fare cardを所持している場合,One day passという一日中殆どスイス全土鉄道を始めさまざまな交通機関に乗り放題の乗車券を購入することができます.(2等は71フラン.また,9時以降の利用開始が条件となりますが, 9 o'clock travelpassという乗車券もあります.こちらは2等が58フランです.長距離の片道,あるいは往復乗車の場合,One day passのほうが安上がりになることもあります.)

最後に,観光立国でもあるスイスにとって鉄道そのものもたいへん有効な観光資源のひとつです.それを示す一つの例が,ICNの運転席に乗車出来るツアープランで,4月中に予約すれば通常の30%引きで参加できるそうです.(1等の往復乗車券も含んではいますが,元の値段自体が相当高いので個人的に参加したいとは思いませんが.)

Friday 18 April 2014

尚武の国,スイス...?(続き) -  新型戦闘機購入の是非を決定する国民投票まもなく実施

もちろん,日本では制度上,また国民性から絶対に起こりえないことですが,スイスとはこんな国です.もっとも,これこそが最も健全な民主主義の運用の仕方ではないだろうかとも思ったりもしています.

問題となっているのは,2011年に政府によって決定された21機のスウェーデンのSaab社製多目的戦闘機Gripen NG(Next Generation)の購入です.31億スイスフランにも及ぶ高価な買い物に国民の間からこの計画に対し多くの反対の声が上がり,国民投票に必要な5万人分の2倍である10万人分もの署名が集められたため,5月18日にその是非を巡って国民投票にかけられることになったのです.反対者側は,こんな小さな国の空域防衛には現在の装備(アメリカ製F-18 Hornet:30機;やや旧式のF-5タイガー:56機)で十分であり,Gripen NGを装備するとなると,購入費用の他にさらに多くの保守費用もかかるため,税金の無駄遣いに他ならないと主張しています.

以上,Die Press.comの2014年1月14日付"Schweiz: Volksabstimmung überGripen-Kampfjets”からでした.

なお,関連記事は,スイスの主要紙TagesAnzeigerに特集されています.また,同紙のサイト内でGripenというキーワードで検索しても見つけることができます.そして,反対者たちによって運営されているキャンペーンサイトはこちらです.

果たして国民投票の結果はどうなるか,個人的に注目しています.

そういえば,以前に行われた州民投票の結果を受けて,グラウビュンデン州の2022年の冬期オリンピックの開催地としての立候補を見送ることになったこともありました.(53%の州民が反対.Cf. Blickの2013年3月3日付"Graubünden sagt Nein zu Olympischen Winterspielen 2022")確かにグラウビュンデンには,スキーマラソンなど世界中から多数の参加者が集まる様々なウィンタースポーツのイベントがあるので,それで十分なのかもしれません.ようするに他者に頼るのが嫌いなのです,この国の人たちは.そして,重要なことは国民全員で決定する,つまり間接民主主義と直接民主主義の中間ともいえる折衷民主主義と呼ばれる統治方式を伝統的に保ち続けているのです.

比較の対象にするには,あまりにも差がありすぎますが,地政学的な思惑から,また地価を高騰させ,役人達が建設業者から多額の賄賂を受け取るための手段として冬期オリンピックを開催させたロシアとはまったく異なります.ソチでは,競技施設の他にも高層集合住宅等の建物が建設され,強制的に住居から立ち退かされた住民が多数います.(Cf. ARTEのソチオリンピック特集

ハートブリード問題 - 900名の社会保障番号を不正取得した疑いで19歳の男性を逮捕

先日,ハートブリードに犯されていることが判り,当該の脆弱性が修正されたカナダ政府の所得申告サイトですが,逮捕された男性には,修正される前にハートブリードによって生じたセキュリティーホールを利用し,就職や銀行取引等に必要なこれらの個人情報を盗み出したという疑いがかけられています.

以上,4月17日付Les Echosの"Faille informatique « Heartbleed » : arrestation d'un Canadien de 19 ans”からでした.

日本は大丈夫なのでしょうか...


Thursday 17 April 2014

南西ドイツ放送局制作『世界鉄道紀行』ジャワ島編

多くの質の高い鉄道番組の制作で知られる南西ドイツ放送局の番組"Mit dem Zug durch ..."(『世界鉄道紀行』)ですが,今回の目的地はジャワ島.可愛らしいSLも登場します.

(2010年,44分)

浮気に対する寛容さで日本は40カ国中第9位.第1位は?

アメリカのシンクタンクRew Research Centerによる調査Global Attitudes ProjectのGlobal View on Moralityの項目では,対象となった40カ国中婚外交渉に対する寛容度が最も高かった国はフランスだったそうです.何となく,個人的にもっているフランス人のイメージに合致する結果です.(この結果を見るかぎり,日本人も必ずしも高い倫理性を持っているとは言えませんが.*1) なお,Slate.frの2014年1月17日付の記事"La France est le pays qui tolère le plus l'infidélité au monde"が各国を婚外交渉に対する寛容度順(降順)に並べたグラフが掲載されています.)

調査結果の詳細は,こちらからダウンロード可能です.また,調査の方法論に関する説明はこちらからどうぞ.



*1) 別に自分が日本人であるという理由からの弁明ではありませんが,伝統的にユダヤ教やキリスト教の基盤の上に価値観や倫理観が成り立っている欧米と日本人におけるそれらは根本的に異なることを欧米の方には理解していただきたいと思います.伝統的に日本人の倫理の根底を形成している最も大きな価値は,所属する集団の存続,そしてその繁栄です.例えば,江戸時代に側室の制度があったのは家系を絶やさないためでした.つまり,夫婦間における忠節より自らが所属する集団の存続のほうがはるかに重要なことだったのです.また,元々定住稲作農耕民族であった日本人にとって子孫を誕生させるということは,家系の存続を保証するだけに留まらず,労働力の増強を意味しました.多産こそが善であり,そして,もし正妻に子供を産む能力がなければ,正妻以外の女性に子供を産ませることも善だったのです.このような倫理観が,たとえ子供を産ませることが目的でなかったとしても,婚外交渉に対する日本人の寛容度を形成して来たのではないかと思っています.明治維新後,日本はフランスの民法を始めとして西洋の諸制度を導入しましたが,長い期間を経て培われたこうした民族意識はそう簡単に変わるものではありません. 欧米では由々しき人道問題に映る旧日本軍による従軍慰安婦の強制売春に関する日本の多くの政治家の非常識且つ極めて無責任な言動も,こうした精神風土に由来するものなのでしょう.

第一次世界大戦勃発後100年に因んだ展覧会 - ドイツ,フランス

今年は,第一次世界大戦勃発から100年目ということで,ヨーロッパ各地でそれに因んだ様々な催しが行われています.

その中で特に興味を引かれたのが,ドイツのエッセン近郊ブッパータール(Wuppertal)市のフォンデアハイト美術館(Von der Heydt-Museum)で開催中のMenschenschlachthausという展覧会.兵士として戦争に参加したドイツ,フランスの画家たちの同大戦を題材とした絵画が展示されています.(7月27日まで)

同様の展覧会が,時を移して今年の9月にフランスのランス美術館でも開催されます.(ランスは第一次世界大戦当時,ドイツ軍による激しい空爆にさらされましたが,それによって荒廃した街の風景を描いた作品も展示されるようです.)

なお,こちらは第二次世界大戦に関連した催しですが,パリのカルナヴァレ博物館では,パリ解放70周年を記念してPARIS LIBÉRÉ,PARIS PHOTOGRAPHIÉ, PARIS EXPOSÉ.と題された写真展が2014年6月11日から2015年3月1日まで開催され,ナチスドイツの占領から解放された当時のパリの様子を写真を通して振り返ります.

Tuesday 15 April 2014

マリオ・シュレーダーがバレーで描くチャップリンの生涯と作品

数年前にライプチヒのオペラハウスで観た作品と同じものと思いますが,当時,街角に張り出されたポスターに「チャップリン」と「ゲバントハウス管弦楽団」の文字が見えたので,ゲバントハウス管弦楽団がチャップリンの映画音楽を演奏するのか,ではなんとしても聴きに行かなければと行ってみたら,これが大間違い.なんとも奇妙な作品で(現代バレーなどとはおよそ縁遠い私にとっては)「やれやれ,ポスターはちゃんと読まなければいけないな」と後悔しましたが後の祭り.それでも,折角入ったのだからと我慢して最後まで観ましたが,けたたましい音楽と意味がよくわからない集団舞踏の連続でさすがに疲れました.ただ,登場するダンサー(ライプチヒオペラバレーチーム)の中に数名,東洋人と思われる男性が混じっているのに気がつきました.均整のとれた体型を見て,韓国の人たちだろうかと思いましたが,あとで日本人であることを知り,こういう場所で活躍する日本の若い人もいるのだと感心したことを思い出します.(ビデオをご覧になるとお気づきになるかと思います.)いずれにせよ,現代バレーはこりごりと言うと言い過ぎですが,やはり自分には蒸気機関車の追っかけ,つまりSLスポッティングのほうが向いているとつくづく感じさせられた経験でした.


2013年,ドイツ中部放送制作,99分

(ご参考迄に,こちらがライプチヒオペラの公式サイトにおけるダンサーのリストですが,何人か日本人名(男性および女性)が見えます.皆さん,とても素敵な若者です.ライプチヒに立ち寄られる際には是非一度,彼らの公演をご覧になることをお薦めします.)

海は広いな,酸っぱいな -  気になる海洋のpH値の変化

4月8日付シュピーゲルの"Die gefährliche Wandlung der Ozeane"より.

2011年秋,突然,アメリカ西海岸の牡蠣漁師さんたちの網に何もかからなくなりました.調べてみると,海水のpH度が通常よりかなり低くなっていることが判りました.つまり海水の酸性度が高くなっていたのです.その原因は,深層水が海岸にまで上昇してきたためでした.

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告は,今後,世界中の海で同様の事態が発生する可能性があると述べています.

問題の真の原因は,海水によるCO2吸収です.その量は,毎日2,000万トン.海水中に取り込まれたCO2は酸へと変化します.海洋における酸性度の上昇は,生息する珊瑚,また牡蠣やエビなどの甲殻類にとって命にかかわる大問題です.なぜなら,酸は彼らの甲殻の成長を妨げるからです.

産業革命以降,海洋水の酸性化は進み,特に最近は,過去数百年間においても見られなかった速度で進行中と言う専門家もいるそうです.

本来,海水は塩基性ですが,産業革命後,そのpH度は平均8.2から8.1へ減少しました.もし,今世紀末迄に空気中のCO2が2倍に増えた場合,海水のpH度は7.9まで,さらに3倍に増えたら7.7まで下がる可能性があると言われています.

とはいうものの,酸性度が高くなった方が体調(?)が良く,むしろ元気になる生き物もいるようで,そのひとつが円石藻(えんせきそう:Emiliania huxleyi)です.研究室に置ける実験によると,この殻を持った藻の一種は,人工的に酸性度を高めた環境において通常より大きく成長したそうです.これに関連して,ネパールの海洋学者であるMaria Cristina Gambi氏は,産業革命以降,多くの珊瑚藻において40 cm程度の体長の増加が見られると言っています.また,英国の海洋生物学者Ian Joint氏によると,マリアナ海溝において酸性度の強いガスが噴出している箇所があるが,そこに生息する貝類も存在すると指摘しています.

さらに白亜紀にまで遡れば,当時,大気中には現在の量を上回るCO2が含まれていたものの,海洋の石灰質の殻を持つ生物たちはむしろ繁栄していたことは,ドーバーの岩壁の堆積物などが示しています.

以上のことから,別に心配することは無い,殆どの海洋生物は影響を受けることがない(Null Hypothesis)と言う専門家も少なくありません.つまり,海は懐が太いというわけです.それでも,シカゴ大学のTimothy Wootton氏のように,今後,海洋水の酸性化が,例えば魚や海洋哺乳類になんらかの影響を及ぼすことを危惧する専門家もいます.

海外旅行のお供に,テロリズムおよび政治暴動リスクを示した世界地図

世界的保険会社Aonが公開しています.ダウンロードはこちらからどうぞ.(英語)(恐らく,日本語にも訳されているとは思うのですが,老婆心ながらご紹介しておきます.)

中国,ロシア,インドにおける経済成長鈍化のリスク - Aonによる分析結果

フランスLes Echosの4月10日付"Les risques s’intensifient dans les pays émergents dont la Chine, la Russie et le Brésil"は保険会社Aonが公表した政治的リスクを示した地図を紹介しましたが,同社の分析によると,BRICSのうち,ロシアと中国は中の上(medium-high)レベルのリスク,そしてブラジル,インド,南アフリカは中(medium)レベルのリスクを持っているそうです.なお,分析対象とされた項目は,以下のとおりです.(時間的制約のため,フランス語から英語に訳しました.)詳しくは,Aon.comの関連ページ(英語)をご覧下さい.
  • Currency transfers
  • Legislative
  • Political interference in the local economy
  • Political instability and violence
  • Non-payment of sovereign debt
  • The vulnerability of the banking sector,
  • Local government capacity to stimulate the economy
  • Barriers to trade.
そして,総合的なリスク評価は次の6レベルでなされています.

low; medium-low; medium; medium-high; high and very high

また,各国のテロリズムおよび政治暴動の危険性を示した地図へはこちらから.

Monday 14 April 2014

ハートブリード問題 - カナダの所得申告サイトが脆弱性を修正され再オープン

カナダでは,前年所得の申告の時期ですが,電子申告サイトのセキュリティーシステムがハートブリードに犯されていることが判明したため,先週の水曜日に突然閉鎖され,その後,修正が完了し,13日に再びアクセスが可能になったそうです.なお,申告期間が4月30日迄延長されたそうです.(カナダ政府のサイトにおける関連ページ.)

以上,ル・モンドの4月14日付"Faille Heartbleed : le fisc canadien rouvre son site Internet après sa réparation"からでした.

日本の鉄道自殺について思うこと - ドイツ,スイスとの比較から(訂正版)

(以前に公開して,その後データの誤認があったことが判ったため,一度取り消したポストですが,ときおり,その件についての「お詫びと訂正」というポストを閲覧して下さる方がいらっしゃるため,使用したデータを再度確認し,内容を正しいデータに基づいて書き換えたものです.)

先月,3月29日の土曜日,用事があって東京へ出かけたのですが,乗車した東急田園都市線の青葉台駅の電光掲示板を見て驚きました.中央線の新宿駅と埼京線板橋,十条間で発生した人身事故により両路線において運転が見合わされているというのです.土曜日の朝の時間帯にしかも首都圏で二件もの人身事故が起きたのかと,唖然としながらしばし目が流れる文字から離れませんでした.果たしてそれらが自らの命を絶つためのものだったのか,偶発的な事故だったのかは判りませんが,仮に前者だったとしたら痛ましい限りです.ご本人が経験された苦しみ,そしてご家族およびお身内の方々のご心情や置かれた境遇のお辛さは察して余りあります.

毎年,3万人以上の方が自らの命を絶っているという日本.OECDの"Society at a Glance 2014"の自殺に関する章(Suicide, pp126f)には,統計上,全体的には経済状況と自殺の件数との間に相関関係は見られないとありますが,日本に限って言うならばそれは十分に見られると思います.(下図は,同報告書のp127に掲載されているもの.)

イェルサレム24時間(PM) - ARTEより

すでにご紹介したARTEで放送された番組の後半部分.12時から翌朝6迄の18時間です.(「続きを読む」をクリックすると,18回分の動画が読み込まれますのでご注意ください.)

Sunday 13 April 2014

2012年に京都議定書の目標を達成していたスイス

日本人として,スイスという国は,色々な面で不思議な国と感じることがありますが,すごいと思うこともあります.4月10日付スイスの主要紙のひとつNZZの"Die Schweiz hat Kyoto-Ziele bis 2012 erfüllt"によると,この国は,2003年に批准した京都議定書が設定していた温室効果ガスを1990年における排出量から8%低くするという目標を2008年から2012年にかけて達成してしまったそうです.(実際には,9%の削減を実現.)

詳しいデータを挙げると,温室効果ガスの削減量はCO2換算で年平均450万トン,国民一人当たりでは7.8トンから6.4トンに減少しています.これは,燃料消費から排出される温室効果ガス自体はおよそ13%程度増加したらしいのですが,国内の森林におけるCO2吸収量や外国からの排出枠購入も含め,他の分野での削減がそれを上回った結果のようです.しかも,興味深いことに,2008年から2012年の間に,スイスの人口は約18%増加しているのです.そして,自動車などの台数も同じ期間において34%増加し,同様にGNPも36%ほど増加しています.

温室ガス排出を押さえる上で効果のあった政策としては,全般的に行われたエネルギー効率の改善,公共交通機関の利用促進,流通におけるトラック輸送から鉄道輸送への転換,合成天然ガスの規制,また環境負荷の少ない建設技術の導入などが挙げられています.

さらに,京都議定書は,2013年から2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年当時に比べてさらに20%の削減を目標に定めていますが,果たしてスイスは引き続きこの目標に到達することができるのでしょうか.注目したいところです.

だからというわけなのか,同じ新聞は昨年2013年11月16日付で"Japan wird zum Klimasünder"(「日本,気候(変動)の罪人」という記事を掲載しています.(日本は,よく悪役にされますね.)

なお,このような記事を,もし政府を始め,日本の原発再稼働推進派の人たちが読むと,「だからなおのこと,日本には原発が必要なのだ」と言われるでしょうが,一応,スイスは2019年から2034年の間に全原発を廃止することを決めています.(Cf. "Die Schweiz steigt aus der Atomenergie aus" in NZZ, 25 May 2011)また,スイスのサイトkernenergieによると,スイスのエネルギー生産における原発の比率は,35.8%だそうです.(スイスのエネルギー政策"Energy Strategy 2050"については連邦政府のサイトのこちらのページ(英語版)をご覧下さい.)

Saturday 12 April 2014

GWにフランスなどヨーロッパ旅行を計画されている方へ - XPサポート終了に伴うATM利用の際のリスク

先日の8日にサポートが終了となったWindows XPですが,例えば,フランスでは銀行のATMのシステムの95%が依然としてWindows XPに依存しています.そのため,この基本ソフトのサポートが終了ということになると当然セキュリティ上の問題が出てくるので,海外でクレジットカードを使ってキャッシングをするときなどは要注意です.キャッシングサービスは一切使わないことが理想的ですが,しかし,そういうわけにはいかない場合も多々ありますので,とりあえずリスクもあることを承知されておくと良いでしょう.以上,BFMTVの8日付"Pourquoi les banques sont touchées par la fin de Windows XP"からでした.

しかし,そうなると,クレジットカードによる支払いは大丈夫なのでしょうか.些か心配になってきました.また,日本の銀行のシステムについてはどうなのでしょう.(XPのサポートの終了は,その影響の重大さからアポカリプス*)をもじってXpocalypseと呼ばれているそうな.)

追記:なお,ハートブリード関連ですが,フランスの銀行のうち,la Crédit Agricole, la Société générale, 及びle Crédit Mutuelはそれらのサイトのセキュリティーシステムが安全であることを確認したそうです.ただ,通信販売サイトの利用者には,どのサイトにおいても登録しているパスワードを変更することが推奨されています.(Cf. ル・モンド4月11日付"Faille Heartbleed : les sites pour lesquels il est conseillé de changer son mot de passe")なお,パスワードを変更する前に利用しているサイトがハートブリードに犯されていないか確認することが必要です.詳しくは,本ブログの「ハートブリード問題 - パスワードを変更すべきサイト」をご参照下さい.



*) 日本語では『黙示録』.新約聖書の最後の文書で,世界の終わりの様子が,それを幻として見せられたキリストの弟子ヨハネによって記録された預言書.

ハートブリード問題 - NSAが通信傍受に利用?

そう伝えているのは,メルケル首相の携帯電話がNSAにより盗聴されていることを暴いたドイツ誌シュピーゲルの4月11日付の記事"Internet-Sicherheitslücke: NSA soll "Heartbleed"-Fehler systematisch ausgenutzt haben".一方,フランスのル・モンドの12付"La NSA dément avoir profité de la faille de sécurité Heartbleed"によると,NSAは「ハートブリードを通信傍受のために利用したことはない」と言っているそうです.

イェルサレム24時間(AM) - ARTEより

イェルサレムの住民たちの一日を追いかけたドキュメンタリー.各回1時間の放送で合計24時間のシリーズです.まずは,6時から12時まで.(「続きを読む」をクリックすると6回分の動画が読み込まれますのでご注意ください.)

ヨーロッパでAmazonの品物が受け取れるピックアップポイント

しばらく前に比べて,ユーロに対して円が相当値下がりしていますが,それでも,必要な品物が外国でないと手に入らない場合があります.そうした品物がAmazonで購入できる場合,通常書籍やDVD等は日本迄配送してくれますが,品物によっては,外国,つまり日本への配送ができないものがあります.海外旅行でたまたま訪れる国のAmazonがお目当ての品物を扱っている場合,そして,それが日本へ配送できないものである場合,予め宿泊予定のホテルなどに送っておいてもらう方法もありますが,もうひとつ手軽な方法としてピックアップポイントで受け取るというものがあります.日本でもコンビニエンスストアで受け取ることができますが,それと似たようなサービスです.ただ,条件として品物の発送者がAmazonである必要があります.日本と同様,マーケットプレイスに出店している業者の品物は,ピックアップポイントで受け取ることはできません.なお,ピックアップポイントで受け取る場合,若干の手数料がかかります.さらに日本のコンビニエンスストアと異なり,受け取りが可能である時間帯も限られているので注意が必要です.

最寄りのピックアップポイントを探すには,届け先を選択するページの右下に.Amazon.fr(フランス)では,Ou cherchez un nouveau point relais,Amazon.de(ドイツ)では,Oder suchen Sie nach einer Abholstation in Ihrer Nähe,そしてAmazon.co.uk(英国)では,Search for a Pickup Location near youというコーナーがそれぞれありますので,そこに住所,あるいは郵便番号を入力します.

限られた日程で,あちこち回る旅行の場合,例えば帰国便の出発空港へ向かう列車の乗車駅,あるいは街中にある空港行シャトルバスの発着場所付近のピックアップポイントで品物を受け取るというのもスマートな買い物の仕方かも知れません.

何だか,Amazonの宣伝になってしまいましたが,個人的に何の関係もありません.

Friday 11 April 2014

スミソニアンマガジンの特選写真16枚

紹介しているのは,10日付オブザーバーの"GRAND FORMAT. 16 merveilles du Smithsonian magazine en images".とにかく美しい写真ばかりです.

日本政府による原発再稼働の決定を伝えるヨーロッパのニュースメディア

フランスのEchoは,4月11日付の"Cette nuit en Asie : le Japon officialise le retour du nucléaire"で,福島における核災害発生からわずか3年余りで,日本政府が原子力発電を重要な電力源とすることを正式に決定したと伝えました.

同じくオブザーバーも同日付の国際欄のトップニュースとして同様の記事"JAPON. Le nucléaire, une "ressource de base importante""を掲載し,さらに,スイスのNZZもやはり同日の国際欄のトップニュースとして伝えています.("Abes Ausstieg vom Ausstieg:(安倍の原発からの撤退からの撤退)Japan setzt wieder auf Atomstrom")

ハートブリード問題 - パスワードを変更すべきサイト

先日公開したポストの後半についでに書いたハートブリード問題ですが,何やら奇妙な展開になってきました.なお,問題となっているオープンSSLのバージョンは1.0.1から1.0.1fまでです.1.0.1gからは修正されているため問題は解消しています.そして,当該の脆弱性は,2011年の12月から存在していたようだと言われています.(Cf. フランスのオブザーバーの9日付"Faille de sécurité : faut-il avoir peur du grand méchant Heartbleed ?")

4月10日付シュピーゲルの"Internet-Sicherheitslücke: Deutscher programmierte Heartbleed-Fehler"は,この脆弱性の原因となったコードはドイツ人プログラマーによって書かれたものと伝えました.また,このプログラマーの名前をツィッター上で公表したハッカーでブロガーのFelix von Leitner氏は,彼は意図的に問題となるコードを書き込んだ可能性もあり,その場合,どこかの情報機関の指示によったものかもしれないと述べています.しかし,名指しされたプログラマー自身(Robin S.氏)は,シュピーゲルからの質問に対し,自分は確かにオープンSSLのコード作成に関わった,その際,複数のバグフィックス(修正プログラム)を作成したり,また新たな機能を追加したりしたもののそれらは何度も検証して問題のないことを確認していると回答したそうです.

そして,シュピーゲルの同じく"Heartbleed-Sicherheitslücke: Diese Passwörter müssen Sie jetzt ändern"には,以下のサイトの運営者はそれぞれのサーバーにおける脆弱性の修正が完了したと報告しており,利用する際の安全性を確保するためにパスワードを変更する必要があると書かれてあります.
  • Facebook
  • Dropbox
  • Google
  • SoundCloud
  • Tumblr
  • Web.de
  • Yahoo
また,フランスのニュース専門のTV局BFMTVの11日付記事"Tout savoir sur l'énorme faille Heartbleed, en 7 questions"にもパスワードの変更が推奨されているサイトのリストが掲載されていて, 上記の他にも下記のサイトが挙げられています.
  • Instagram
  • Pinterest
  • Tumblr
  • Twitter (恐らく修正済)
  • Amazon Web Services(Amazon.comを除く)
  • Dropbox
  •  Box
Hearbleedの脆弱性を持っている,あるいは持っていたが修正されたサイトについてのさらに詳しい情報は,MashableCnet,またGitHubなどにも掲載されています.(すべて英語のサイトです.)これらのサイト上でまだ脆弱性が残っているとされているサイトについては,脆弱性が取り除かれる迄利用しないほうが賢明です.そして,脆弱性が取り除かれたことが確認出来たら,その時点でパスワードを変更しましょう.

冒頭で紹介したオブザーバーの9日付"Faille de sécurité : faut-il avoir peur du grand méchant Heartbleed ?" も当該の脆弱性に対する安全性を確保する確実な方法として,やはり,利用するサイトが当該の脆弱性を持っているかどうかを確認し,問題がないことが判明したらパスワードを変えることを推奨しています.なお,この確認は,過去のポストで紹介したFilippo Valsorda氏が作成したサイトを 使っても行うことができますが,同氏は,それで得られた結果も100%確実であるとは限らないと述べています.加えて,管理者が自らのサイトのサーバーのオープンSSLが当該の脆弱性を持ったバージョンであることを知りつつ,攻撃や侵入をしかけてくるハッカーたちを特定するために問題のあるバージョンを意図的に維持する可能性についても言及しています.

何しろ,FBIのサイトですら影響を受けた可能性が取り沙汰されているので止むを得ませんが,迷惑な話です.(仕方がないので,とりあえず通信販売を利用しているYahooからパスワードを変えようと思います.それから,念のために銀行やクレジットカード会社のサイトで使っているものも.面倒なことおびただしいですが.でも,定期的に変えることが推奨されているのでよい機会かもしれません.しかし,これまでデパート等で「年会費無料で,安くお買い物ができますから」などと勧誘されるたびについ作ってしまい大半が殆ど使っていないクレジットカードですが,必要以上に持っているのは危険だと改めて気づかされました.使っていないといっても,もし過去に一度でも使っていたら,その情報は漏洩している可能性があるわけですから.)

心配になったので,今,試しに口座を持っているみずほ銀行のオンラインバンキングのサイトを調べてみたところ,下の結果(修正されたこと,あるいは脆弱性は存在していないこと)が示されたので,面倒ですがパスワードを変更することにします.(なお,上記のFilippo Valsorda氏のサイトに入力するURLはログイン画面など,httpsで始まるSSLで保護されたサイトのものである必要があります.)


関連記事:ル・モンド4月12日付"Faille Heartbleed : les sites pour lesquels il est conseillé de changer son mot de passe".



付録 見破られにくいパスワードのつくりかた

まず初めに覚えておかなければならないことは,どんなパスワードでも理論的に時間さえかければ必ず見破られてしまうということです.問題は,その時間をどれだけ引き延ばすかということです.つまり,数分,あるいは数時間程度で見破られてしまうものであれば,ハッカー側でも採算が合うかもしれませんが,これが数年,数十年かかるとしたら,到底採算に合わないでしょうし,さらに,数百年かかるとしたら,ハッカー自身見破った時点で確実にこの世にはいないので無意味な行為とあきらめるでしょう.そんなパスワードを作る方法の一例をご紹介します.
1) 何でも良いので,文字列(文)を見つけるか,あるいは作ります.言うまでもありませんが,文字数の制限内におおよそ収まりそうな文字列です.そして,慎重を期したいのであれば,日本人でもあまり知らないような文を選びます.

例えば,「女氏無くして玉の輿に乗る」という諺のようなものです.似たような諺で「女器量良くして玉の輿に乗り,男意気地(いくじ)無くして飴や粔籹(おこし)を売る」というものもありますが,さすがに長過ぎるので,今回は前者から作成することにします.

2) この文をローマ字および数字に置き換えます.on7uji794tetamano542noruと言った具合です.(数字への置き換えはお好きなようになさってください.)

3) 使用されているラテン文字を大文字と小文字に交互に置き換えて,On7UjI794tEtaMaNo542NoRuと言った文字列に変えます.

4) こうしてできあがった文字列を(カット&ペーストなどして)ランダムに置き換えます.(面倒な場合は,2)の段階でエクセルのセルに一文字ずつ入れておいて,RAND関数を使ってもよいでしょう.)このとき,さらに慎重を期するのであれば,大文字の連続,小文字の連続,数字の連続を避けるために,必要に応じて大文字と小文字を入れ替えます.

例えば,MuJi2N79aNo74oRutEtOaN54などという具合です.

5) 最後に,もし記号の使用が許されている場合は,4) で得られたものに適当に記号を挿入しますが,数字が連続している場合,できるだけその間に挿入するようにします.

MuJi2N7#9aNo7&4oRutEtOaN5!4

長過ぎる場合は,好きな部分を抽出して使いますが,その際,必ず大文字と小文字,そして数字と記号を含む部分を抽出してください.

なお,利用している各サイトごとに異なるパスワードを使用すること,そして,それらを定期的に変更することもお忘れなく.また,銀行によってはオンラインバンキングサイト用にワンタイムパスワードを提供してくれる場合もありますので,確認されることをお薦めします.また,個人的に使用していますが,Googleなどの二段階認証方式も実質的にワンタイムパスワード認証に近い方式と言えます.

以上,ご参考になれば幸いです.

Thursday 10 April 2014

タミフル,製薬会社が宣伝する程の効果はなく,副作用も過小報告されていたことが判明

スイスのチューリヒ新報(NZZ)の4月10日付の記事"Mehr Versprechen als Fakten zu Tamiflu"は,インフルエンザの特効薬タミフルの効果を巡ってのこれまでの議論にようやく終止符が打たれたと伝えました.タミフルの製造元ロッシュ(Roche)の内部報告書がようやく公開され,外部の専門家による精査が行われた結果,同薬の効能が過大に宣伝されてきたこと,同時にその副作用については過小に報告されてきたことなどが判明したそうです.その関連で,同紙は同日付で"Das Grippemittel als Modellfall"というAlan Niederer氏のコメントも紹介し,その中で同氏は,臨床実験の過程におけるさらなる透明性の確保が必要であると述べています.

さらに,同じく10日付のシュピーゲルの"Neue Daten: Grippemittel Tamiflu nutzt nichts"には,タミフルには全く効果がないとまで書かれています.

ひらたくいえば,スイスの製薬会社が長年にわたって世界中をだましていたということになりますが,それを伝えるのもまたスイスの新聞であることにスイスのジャーナリズムおよび社会の健全性も感じます.それに比べ,わが国の昨今のSTAP細胞に関する論文を巡る大騒動は異常としか思えません.少なくとも直ちに人の命に関わることではないのに何故斯くも日本のニュースメディアは騒ぎ立てるのか全く理解できません.日本の多くのニュースメディアで働く人たちは,本当に狩るべき獲物は追わず,社会のストレス発散のために犠牲にすべきスケープゴートを探ように訓練されたハンティングドッグでしかないのでしょうか.そう考えると,"いじめ"(mobbing, harassment)が問題となる学校は,そうしたスケープゴートを求め続けるご主人たちによって構成された日本社会の正確な縮図ともいえそうです.

(そういえば,鳥山石燕が描いた妖怪の中に 幣六(へいろく)というのがいましたが,現代日本のニュースメディアの先祖かもしれません).

関連ポスト: 効果が確認できないインフルエンザ薬タミフル

Wednesday 9 April 2014

「賃金格差」,「情報機器の脆弱性」をフランス語で言うと

まず,「賃金格差」(賃金における不平等)は"inégalité salariale"と訳すとフランス語としては理解され易いと思います.その反意語(句)は,"égalité salariale"です.

BPW(Business and Professional Women)と言う世界的な組織がありますが,この組織によって提唱されているのがイコールペイデー.男女間の賃金格差の解消を目的とするキャンペーンデーです.イコールペイデーには,各国のBPWの支部によって異なる日が定められているようで,今年はフランスにおいては先日の4月7日,日本では4月13日です.

その日に因んでフランスのニュースメディアは,男女間の賃金格差について多くの記事を掲載しました.例えば,L'EXPRESSの7日付"Les femmes doivent travailler 77 jours de plus pour gagner autant que les hommes"には,フランスでは,1人の女性が同じ職に付いている男性と同額の賃金を手にするには,1年において男性より77日余計に働かなくてはならないと書かれています.すなわち,女性の給料は男性より28%低いというわけです.同様にアメリカでは23%,ヨーロッパの他の国,例えばドイツ,スイス,イタリア,英国などの状況もほぼ同様とのことでした.なお,男女間の賃金格差が最も小さい国はスウェーデンで13.9%.おしなべて北欧各国においては小さいようです.(なお,国立統計経済研究所:Inseeのサイトのこちらで詳しい情報が閲覧できます.また,世界に比較した日本の状況は,2004年現在のものですが,三重県の総合文化センターが提供しているこちらのグラフが判り易く示してくれています.それを見ると,日本の女性が置かれた状況はフランスよりもさらに深刻です.また,国連の統計局もWomen's wages relatives to men'sというエクセルシートに各国における女性の賃金の男性の賃金に対する比率のデータを提供しています.日本の厚生労働省のサイトは極めて見づらく,どこにどういうデータがあるのかよくわかりません.)

同じ話題については,他にも,いち早くLe Mondeが3月8日付の"Le salaire des femmes dans le privé inférieur de 28 % à celui des hommes"で取り上げていましたし,Le Figaroは4月7日付で"Égalité salariale : Vallaud-Belkacem lance une appli pour «coacher» les femmes"という記事を掲載していました.さらに,オブザーバーの系列であるビジネス誌チャレンジのサイトも"Le gouvernement lance une appli pour l'égalité salariale homme-femme"という記事を掲載しました.また,主要なテレビ局のひとつであるTF1のサイトには,L'EXPRESSの記事に比べて若干少なめの68日間という日数を挙げていますが,"Pour avoir le même salaire qu'un homme, une femme doit travailler 68 jours de plus par an"という記事(下のビデオを含む)が掲載されていました.



こうしたフランスのニュースメディアに比べて,何ともみすぼらしいのは,所変わって我が国日本のニュースメディア.試しにGoogleのニュースで「イコールペイデー」,あるいは「男女+賃金格差」と言ったキーワードで検索をしても表示されたのは読売新聞と赤旗のサイトに掲載されていた僅か2つの記事のみでした.それに比べて昨今の理化学研究所の某女性研究者についての報道の尋常ならざる多さを見るとき,日本のニュースメディアのみならず,この国の社会全体について少なからず奇異な印象を覚えるのは私だけでしょうか.(もっとも,日本のイコールペイデーは来週の13日なので,当日,男女間の賃金格差の問題も多少なり日本のニュースメディアによって取り上げられるかもしれませんが.)

そういえば,日本のメディアがあまり取り上げない話題として,もうひとつインターネットセキュリティの重大な脆弱性として指摘されたハートブリード(Heartbleed)の問題も挙げられるかもしれません.(Le Mondeでは,最近最も共有された記事がハートブリードに関する4月9日付の"Que sait-on de « Heartbleed », l'inquiétante faille de sécurité sur Internet ?"でした.)具体的には,インターネット上においてクレジットカード情報など重要な個人情報を秘匿し安全な情報交換を可能にする(と思われていた)OpenSSLというプログラムに発見された脆弱性です.世界中のサーバーの3台に2台は当該の脆弱性持っている(あるいは持っていた)と言われています.インターネット上に存在する通信販売のサイトに注文を行った際などに入力する個人情報は,そのサイトのサーバーに保存されますが,もしこのサーバーが脆弱性を持っていた場合,ハッキングによりその情報が簡単に盗まれてしまうのです.また,個人の端末のクッキーも悪意のある第三者による入手が可能となるため,その人物が当該端末の所有者になりすまして,特定のサイトにアクセスすることも可能となってしまいます.さらに恐ろしいのは,情報を暗号化して通信を行うサーバーにはSSL電子証明書が与えられていますが,Le Mondeの記事によると,もし脆弱性が修正されたとしても,修正される前にこの証明書の内容がハッカー知っていたら,引き続きそれを用いて秘匿された情報の入手が可能になってしまうということです.

実際に,この脆弱性が見つかったと言われるのはYahooのサイトですが,すでに修正されているそうです.また,Apple,Google,Facebook,そして大半の電子取引を行うサイトにおいては,すでに修正が行われているため,問題は無いようです.なお,閲覧するサイトが当該の脆弱性を持っているかどうかの確認は,こちらのページにホスト名を入力することで可能です.(例えば,Le Mondeのサイトの安全性を確認するには,入力欄にlemonde.frと入力します.)

試しにこのブログのホスト名を入れてみたところ,下記の結果が得られたので確かに問題はなさそうです.(この脆弱性を最初に見つけたのが,Googleの技術者だったそうなので当然といえば当然ですが.)


ついでに,インターネットからの攻撃や侵入に対する端末等の脆弱性は,フランス語では"vulnéralibité informatique","faille informatique",または"faille de sécurité (informatique)"などと言います.また,それらに対する安全性は"sécurité informatique"と言います.

関連の記事として,オブザーバーの4月9日付"Faille de sécurité : faut-il avoir peur du grand méchant Heartbleed ?",同日付シュピーゲル(ドイツ語)の"OpenSSL-Sicherheitslücke:Warum "Heartbleed" Millionen Web-Nutzer gefährdet"も挙げておきます.後者は,キャプションでインターネット利用者はすべからく使用するパスワードを変更したほうが良いと言っています.(ドイツ語では,脆弱性は"(Die) Sicherheitslücke"と言います.)

何人も足を踏み入れてはならない!? - 世界に点在する禁断の8島のうち2島は日本領

4月8日付オブザーバーの記事"Ces 8 îles où il ne faut surtout pas poser les pieds"が挙げる,絶対に足を踏み入れてはならない8つの島のうち2つが日本の島でした.1つは伊豆諸島の三宅島(2コマ目).理由は火山ガスによる大気汚染.現在,状況はかなり改善したものの上陸には常時ガスマスクを装着する必要有りと書かれています.もう1つは長崎県の端島,通称軍艦島です(8コマ目).ただ,こちらのほうは単に廃墟と化しており,草木で覆われていると書かれているだけで,何故足を踏み入れてはならないのか今ひとつ理由がはっきりしません.

その他,記事には,23万平方メートルの面積に23万匹の毒蛇が棲息しているというブラジルのケイマダ・グランデ島(1コマ目)や体長が15 cmにも達するナナフシなどの巨大昆虫で溢れたオーストリアのボールズ・ピラミッド(4コマ目),さらに,空撮のために近づくヘリコプターにさえ毒矢を放ってくる少々荒っぽい性格の人々が暮らす一応インド領の北センチネル島(上陸した場合,命の保障はないとのこと)(5コマ目),そして,昔ペスト患者を閉じ込めておくために使用された施設の廃墟が残っていて,数々の恐ろしい伝説が語り継がれているベニスのラグーンに浮かぶポヴェリア島(7コマ目)*1)などが紹介されています.中でも,気の毒というか,哀れをさそうのは,今や無人島と化したフランス領クリッパートン島(3コマ目)の旧住民たちの物語.1906年,メキシコ政府はこの島に海鳥の糞から肥料を製造するプラントを設置します.そして,そのプラントで働くために移住して来たおよそ100名の島民達の生活を支えたのは,飲料水も含めてメキシコ海軍によって定期的に島外から運び込まれる物資だったのですが,やがて,8年後の1914年,当時,革命の対応で手一杯となっていた海軍は,この島のことをすっかり忘れ,それ以降物資の輸送は中断.1917年,1隻のアメリカ船が訪れたとき,殆どの住民は,それまでに餓死あるいは病死してしまっていて,生存していたのは4名の女性と7名の子供たちだけだったそうです.



*1) ポヴェリア島の歴史については,Wikipediaなどの他に,James AyresさんのブログPlanetsaveのPoveglia Island - Asylum, Ghosts, Plague, And Historyと題されたポストになるほどと思わせる写真付きで詳しく説明されています.同島の歴史にご興味を持たれた方は,ご一読をお薦めします.

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詳しくは,Voyages-sncf.comのこちらのページ(英語のオンライン予約サイト)をご覧下さい.

以下は例ですが,すべて2名分の料金です.

パリ - リヨン:72ユーロ〜
パリ - ボルドー:76ユーロ〜
パリ - マルセイユ:92ユーロ〜

条件として,予約が4月22日迄,そして旅行が4月11日から5月11日までとのことです.

Tuesday 8 April 2014

高速鉄道による新しいシルクロード,北海から黄海までわずか2日の旅

ロシアのラジオ局LA VOIX DE LA RUSSIEのニュースページに掲載された"Un projet ferroviaire chinois en Israël ouvre la porte de l’Afrique"(3月31日)によると,昨年の9月に開催された上海協力機構の会合の際,中国はスエズ運河を通らずに中央アジアとアフリカ大陸を結ぶ新たな高速鉄道の建設を提案しました.これは中国とイスラエルによる共同事業で,すでにイスラエル政府はこの計画(Red-Med Project)を承認しています.具体的には,5年後に地中海に面した港町Ashdodと紅海に面したEilatとの間に高速鉄道が建設されます.

中国政府は,また,イラン政府とも中央アジアとヨーロッパを結ぶ高速鉄道建設のための協定を結びましたが, この新シルクロード線が完成すれば北海から黄海までわずか二晩の旅行で結ばれることになるそうです.高速鉄道の寝台列車,どんな車両になるのでしょうか.

いずれにせよ,北アフリカから中東へ広がったアラビアの春ですが,エジプトの不安定化は,アフリカの資源の獲得を望む中国の思惑と結びついて鉄道ビジネスにも思わぬ影響を及ぼしつつあるようです.

イタリアAnsaldoSTS社のトラムウェーブ集電式の路面電車,中国でライセンス製造開始

架空線からではなく,線路の中央に並べられたコンタクトラインから集電するというのがアンサルド社が開発したトラムウェーブ方式ですが,すでに2009年に実用化されているようなので,路面電車ファンの皆さんはご存知だと思います.この集電方式による低床形路面電車は,すでにナポリ,アテネ,ベルガモ,ミラノ,ヨーテボリなどで運行されており,こちらのアンサルド社の資料の表紙を飾るナポリの路面電車の写真に見られるように,架空線がないので線路と車両を囲む空間がとてもすっきりしています.

地上集電方式というと,地下鉄などで用いられている第三軌条から集電をするものを思い浮かべますが,トラムウェーブは車両が通過する際にのみ電力が供給されるため,軌道上を人が歩いても感電する心配のないシステムです.

そして,最近読んだ『国際鉄道ジャーナル』(IRJ)の4月8日付の記事"CNR to supply catenary-free LRVs to Beijin"によると,北京のXijiao線用の低床形車両31両(1編成5両)がCNR DALIAN社によって製造されることとなり,同社はそのためにトラムウェイーブ方式のライセンスを購入したそうです.なお,この記事によるとXijiao線は全長9.4 Kmで,そのうち架線の無い区間,すなわちトラムウェーブでの走行区間がおよそ半分の4.4 Kmのようですが,ということは写真で紹介されている車両の模型はパンタグラフを備えていますが.架線が張られた区間では架線から集電し,架線が無い区間において地上から集電するというハイブリッド集電式の車両なのでしょうか.

と思って,もう一度資料を読んだところ,
Vehicles can be retrofitted with a pickup shoe as an alternative or in addition to an overhead pantograph. [...] This system allows power to be drawn from the “ground module” continuously at full performance. this is a fully-equivalent
alternative to overhead power lines.
との記述があったので,やはりそのようです.なお,文中のpickup shoeというのは,車両の台車に装着された集電用のインターフェイスで,走行する車両の下のコンタクトラインに電流を発生させるのと同時に集電し,電流を車両に搭載された電気機器へと送ります.

『ゴジラ』の新作,フランスでは5月14日に公開

COSMOPOLITANSTARGORA内,こちらのページに新しいゴジラの画など詳しい情報が載っています.


続いて,シュピーゲルに掲載されたトレイラーです.


日本風に題名をつけるならば,『ゴジラ対モト』にでもなるのでしょうか.
日本語の公式サイトはこちらです.(日本での公開は,7月25日だそうです.)
そういえば,今年はゴジラの第一作が公開(1954年)されてから60年とのことで,神保町シアターではゴジラの全作品を上映しているようですが,第一作の完成度があまりにも高かったために,それ以降に制作されたもののうち,観たものの数自体も少なく,印象に残った作品もありませんでした.(最後に映画館で観たゴジラシリーズの作品は,1966年公開の『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』でした.)

しかし,普通ゴジラをローマ字で書くとGojiraになるはずなのに,外国でのタイトルはGodzillaになっています.(本来,ゴジラという名前はゴリラとクジラを合わせたものとも聞いています.)たまたまなのか,意図したものであるのかは判りませんが,Godzillaの中にGodが入っているのは面白いと思います.実際,日本で製作された一連のゴジラ映画を観て行くと,最初はまさに荒ぶる悪神であったものが,やがて善神に変わって行くことに気づき,いかにも日本的であるように思えて興味深いものがあります.(もちろん,マーケッティングの対象が子供に絞られて行ったためでもあるでしょうが,ガメラにしてもそうですね.)

ところで,ゴジラの第一作の原作者は冒険小説家の香山滋ですが,その他,東宝の空想科学映画では,彼の小説を映画化したものとして『獣人雪男』(1955年公開)があります.ただ,1957年に公開された『地球防衛軍』*1)では,原案(丘美丈二郎)の潤色者としてオープニングクレジットに名前が表れます.

それを知って『地球防衛軍』を観ると,確かに第一作の『ゴジラ』と共通している点があることに気がつきます.例えば,登場人物においては,山根博士(『ゴジラ』)=安達博士(『地球防衛軍』),同様に尾形=渥美,芹沢博士=白石博士といった具合です.そして,ラストの展開においても,オキシジェンデストロイヤーでゴジラを倒すために自らの命を犠牲にする芹沢博士とミステリアンの基地を内部から破壊し,彼らと運命を共にしてしまう白石博士といったように.

最後に,あまり映画はたくさん観ていませんが,それでも,もし後世に残したい日本映画を三本選べと言われたら,1954年公開の『ゴジラ』(東宝,監督:本田猪四郎),『雨月物語』(1953年,大映,溝口健二),『警察日記』(1955年,日活,久松静児)を挙げたいと思います.もし,さらにもう一本と言われたら,やはり溝口健二の『元禄忠臣蔵』(1941年,松竹)でしょうか.こちらは,子供のころ,確か親に勧められて観たと思いますが,やたらに長く,おまけに忠臣蔵というと普通は楽しみにしている討ち入りの場面が一切無かったので唖然としたことを思い出します.*2)



*1) やたらに戦闘シーンが多く,日本が世界のリーダー(今の国連安全保障理事会の議長国のようなもの)になって地球を侵略しようとする宇宙人と戦うというストーリー.ただ,伊福部昭の音楽が素晴らしい.なお,東宝の俳優の中で特に好きな人というと『ゴジラ』で芹沢博士を演じた平田明彦,そして,『地球防衛軍』の終盤でベータ号に搭載された電子砲でミステリアンのドーム要塞を攻撃する関隊長役の伊藤久哉です.

以下は,子供のころ,よく観ていた日本のSF映画と今の日本映画を比べた勝手な感想です.

両者を比較して,まず感じることは前者に出演する俳優層の広さです.つまり,軍人は軍人らしい人が,科学者は科学者らしい人(例えば,村上冬樹や中村伸郎など.もちろん平田昭彦もそのうちの一人です)が,技術者には技術者らしい人が,政治家には政治家らしいひとが,実業家は実業家らしい人が演じていたように思うのです.そして,例えば同じ軍人でも,司令官クラスというと藤田進や田崎潤,また現場の指揮官クラスというと伊藤久哉などが思い浮かびます.それらしく見えるということは,演技はもちろんですが,俳優が役柄にふさわしい容貌,あるいは,極端な言い方かもしれませんが,はっきりとした個性を持っていた,あるいは,そうした個性を創り出すことができたということかも知れません.

そうした俳優たちの配役,そして彼らの演技が,たとえストーリーは荒唐無稽なフィクションであっても,観るものを引き込むリアリティーを創り出していたのだと思います.

もちろん,一時期に比べて日本映画の市場は縮小し,その結果,出演する俳優の層も限られて行ったことは事実でしょう.しかし,今の日本映画(それほど多くを観ているわけではありませんが)を見る限り,なんとなく,俳優層が二極化しているように思えてなりません.ひとつの極として,若く美しい男性や女性たち,そして,もうひとつの極は,どこかコミカルな側面を持つ年配の男性や女性たちです.

その結果,極端なケースでは時代設定が現代であっても全くのお遊び,または,人間がライブで演じていてもコンピューターゲームのように見えてしまい,過去に経験した,スクリーンに映し出される各シーンに実際に居合わせるような臨場感を感じることができない場合も往々にしてあります.

世代のせいもあることは事実でしょう.自分が持っている社会のイメージが,今の映像作家たちが持っているものとは異なっていることは否定できません.ということは,個人的に最近の日本映画に関して持っているこうした印象は,単に自らの過去に対するノスタルジーから生まれたものかもしれません.それとも,全体主義的傾向が強くなり,個人の個性が尊重されにくくなっている今の日本社会の状況が映画に反映された結果なのでしょうか.
*2) 忠臣蔵で思い出すのは,三波春夫の歌謡浪曲『三波春夫 〜元禄名槍譜 俵星玄蕃〜』ですが,この作品の映画版として,やはり子供のころ観た東映の『血槍無双』(1959年,佐々木康)があります.杉野十平次を大川橋蔵が演じ,彼に宝蔵院流の槍術を教える俵星玄蕃を片岡千恵蔵が演じていました.この宝蔵院流の名人で他に有名な人というと丸橋忠弥がいますが,もう一人,かなり時代は下って明治期の日本基督一致教会の牧師だった奥野昌綱が挙げられます.この人は,元幕臣で上野におけるクーデター軍との戦闘において彰義隊の一員として戦った経歴の持ち主でした.また,和歌の名手でもあり,ヘボン博士らの聖書の日本語訳のプロジェクトにおいて,それを美しい文語体に仕上げる上で重要な役割を果たしたことでも知られています.まさに文武両道に秀でた人だったようです.

Saturday 5 April 2014

新パリ市長にAnne Hidalgo氏が正式就任

先ほど,届いたL'EXPRESSのフラッシュニュースによると社会党の前市長Bertrand Delanoëの後任として,同じ党の女性候補だったAnne Hidalgo氏がパリ議会における投票で163票中91票を獲得し正式に選出されたそうです.(パリ議会の社会党,緑,フランス共産党が支持.)メディアは,今回の市長選挙を彼女と国民運動連合の女性候補Nathalie Kosciusko-Morizet氏との一騎打ちのように伝えていましたが,今回,社会党はいくつかの都市で国民戦線に市長の座を譲り渡すなど苦戦が強いられたもののパリ市長の座は維持したようです.(詳しい結果は,Wikipediaのこちらのページ(フランス語)で手っ取り早く確認出来ます.)

Friday 4 April 2014

ドイツ最初の長距離鉄道路線開業175周年記念行事のご案内

今から175年前,ドレスデン,ライプチヒ間でドイツの鉄道史における最初の長距離路線が開業しました.それを記念して今年は両中央駅(ドレスデンでは,他に交通博物館他複数の施設)に於いて様々な記念行事が予定されています.開催期間は,4月7日から13日迄.公式サイトはこちらです.(スタートページのみ英語で,他のページはドイツ語のみのようです.)

Programを見ると,新車両ICE3や18 201牽引の特別列車運行.旧形市電の運行,さらにコンサートや当時の様子を再現した鉄道模型の展示など催しもの盛りだくさんの1週間のようです.

なお,ドレスデンの交通博物館には,この記念すべき年に華を添えるイベントとして"Germany becomes mobile"(こちらのページは英語)と題された展示会が4月8日から9月28日まで開催されますが,そのために英国ヨークの国立鉄道博物館から,当該路線を走行した最初のマシンであるサクソニア号の原型であるOld Coppernobがゲストマシンとして招かれています.

ヨーロッパ最大の模型展示会INTERMODELLBAUのお知らせ

第36回を迎えるというINTERMODELLBAUですが,今年は4月9日から13日までの日程でドルトムントで開催されます.500もの出展団体が参加するとのこと.そのなかに鉄道模型も含まれていることは言う迄もありません.(英語の公式サイトはこちらから.オンラインでの入場券購入も可能です.)

Thursday 3 April 2014

日本の"調査"捕鯨禁止の判決を伝えるヨーロッパの報道を読んで思ったこと

フランス,ドイツ,スイス(ドイツ語圏)のごく限られたニュースメディアの記事に目を通しただけですが,そのなかから印象に残ったものをご紹介します.(判決文の要約等は,国際司法裁判所のサイトのこちらのページからダウンロードができます.)

まず,全体の論調としては,国際司法裁判所の判決は至極当然といったもので,日本の調査捕鯨は「科学調査という隠れ蓑を着た事実上の商業捕鯨」と断じています.(例えば,ドイツのシュピーゲル誌の3月31日付"Japan könnte weiter töten"や,フランスではCourrier internationalの3月31日付"Chasse à la baleine : les arguments "scientifiques" un peu légers du Japon" ,スイスのTages Anzeigerの3月31日付"Kruder japanischer Nationalstolz"など.)

Wednesday 2 April 2014

ICE3の写真

予定より2年遅れて,今年の2月からドイツのメインライン上を走り始めた新型ICEですが,manager magazineにその写真(8枚)が掲載されていました.新型ICE 407系の特徴は新しくなったフロントデザインと全体に高い屋根.空気抵抗を少なくした形状とのことです.ベースになっているのは,シーメンスの高速列車用のVelaroのプラットフォーム.基本編成は,これまでのICE同様8両から構成され,総座席数444,そのうち111席が一等です.2本の基本編成を連結し,16両編成での運行も可能です.なお,記事(ドイツ語)へはこちらからどうぞ.また,シーメンスの407系(Velaro D)を紹介するページ(英語)はこちらから.(こちらのページにも数枚の写真が掲載されています.)

2014年はカール大帝没後1200年

今年は,カロリング・ルネサンスという言葉のもととなったカール大帝の没後1200年にあたります.神聖ローマ帝国の王としての戴冠式が行われたアーヘンを始め,ヨーロッパの各地で記念の行事が開催されています.例えば,アーヘンにおいては,6月20日から9月21日迄三つの関連展示が行われますが,詳細は公式サイトをご覧下さい.

なお,こちらのサイトではアーヘンのバーチャルツアーが提供されています.そして,アーヘンの大聖堂はユネスコの世界遺産に登録されていますが,それも含めてドイツに存在する世界遺産についての情報はこちらのサイトでご確認下さい.

ベルギーのある市長の英断,スーパーで売れ残った食品の廃棄を禁止

現在,世界中で飢餓に苦しむ人の数は10億と言われています.また,7人に1人は十分に栄養が摂取できていないとも言われています.そして,世界の人口は,毎年8200万人ずつ増え続けていますが,同時に,1200万ヘクタールもの農地が消失しているそうです.*1)

そうした中,ベルギーのリエージュ近郊のヘルスタル(Herstal)のFrédéric Daerden市長が,最近採った政策についての報道を目にしました.その政策とは,スーパーマーケットが市内で営業するには,市から環境保全に関する免許が必要ですが,その更新の条件として売れ残った食料品すべてを食料援助を行っているボランティア団体に譲渡しなければならないというもの.同市長は,また,欧州議会の議員であることから,この政策の規模をさらに欧州全体にまで広げたいと考えているそうです.世界食料計画(FAO)によると先進国では毎年およそ13億トンもの食料品が廃棄されており,ベルギーでは,毎年1人平均15キロの食品を廃棄しており,それは30000人に毎日3回の食事を与えられる量に匹敵します.その反面,20万人もが食料援助を受けているのです.なお,ベルギーの自治体の中には,ヘルスタル市以外にもスーパーマーケットに売れ残った食料品を食料援助団体へ譲渡するように指導しているところがあるそうです.(以上,Journal Alternativeの2014年1月16日付の"La Belgique interdit le gaspillage alimentaire dans lessupermarchés"より.同じ内容を伝えるconsoGlobeのサイトはこちらから.)

ところで,4月から日本の消費税が8%に変更されました.これを例えばEU各国の付加価値税と比較すると,食品に関する限り必ずしも高い税率とは言えません.もちろん,日本の場合,本当にそれが必要なのか,そして,それが何に使われるかが問題であることは事実ですが.(EU各国の付加価値税については,EUが公開している付加価値税に関する資料をごらんください.*2))消費税の税率の引き上げに限って言うならば,所得や受給する年金の額が低い世帯や,就学中の児童を抱えた世帯の家計には場合によっては相当深刻な影響を与えることになるでしょう.しかし,反面,上記の事実を知ると,消費税のそれによって少しでも日本全体における食品の無駄使いが減るのであれば,それはそれで良いことではないかとも思っています.もちろん,上に挙げたような限られた家計でなんとか生活をされている世帯が食品を無駄使いしているとは考えにくいので,そうした世帯のこと,また,特に東日本大震災や福島の核災害の多くの被害者の方のことを思うと日本に於いても食料品などへの軽減税率の導入は絶対に必要だと思います.




*1) 2014年3月25日にARTEで放送されたドイツ南西放送局制作のドキュメンタリー"Hunger"(2010)より.なお,世界中の,特にアフリカや南アメリカなどの発展途上国の農地は,今や国際巨大資本の投機の対象にもなっていて,ヨーロッパや中国に家畜の資料として輸出する大豆の大規模栽培が行われ,本来それらの土地は現地の小規模農家たちの土地でしたが,それらの資本の手に渡り,現地の農民たちが行き場を失う事態も起きています.(Cf. 本ブログの『肉食が人類と地球にもたらしているもの』).
*2) 当該資料の4ページの表IIのFoodstuffs(食品)の行をご参照ください.なお,これを見るとアイルランド(IE)や英国(UK)においては,食品のあるものについては0%,すなわち非課税となっています.具体的には,英国内務省のこちらのページの3.1の項をご覧になると判るように,非課税の対象食品として挙げられているのは,魚,肉,野菜,果物などの生鮮食品,穀類,堅果類,そして香草などの食用の草類です.同項の表には0%の付加価値税が適用される食品類が詳しく記載されています.