Friday 18 April 2014

尚武の国,スイス...?(続き) -  新型戦闘機購入の是非を決定する国民投票まもなく実施

もちろん,日本では制度上,また国民性から絶対に起こりえないことですが,スイスとはこんな国です.もっとも,これこそが最も健全な民主主義の運用の仕方ではないだろうかとも思ったりもしています.

問題となっているのは,2011年に政府によって決定された21機のスウェーデンのSaab社製多目的戦闘機Gripen NG(Next Generation)の購入です.31億スイスフランにも及ぶ高価な買い物に国民の間からこの計画に対し多くの反対の声が上がり,国民投票に必要な5万人分の2倍である10万人分もの署名が集められたため,5月18日にその是非を巡って国民投票にかけられることになったのです.反対者側は,こんな小さな国の空域防衛には現在の装備(アメリカ製F-18 Hornet:30機;やや旧式のF-5タイガー:56機)で十分であり,Gripen NGを装備するとなると,購入費用の他にさらに多くの保守費用もかかるため,税金の無駄遣いに他ならないと主張しています.

以上,Die Press.comの2014年1月14日付"Schweiz: Volksabstimmung überGripen-Kampfjets”からでした.

なお,関連記事は,スイスの主要紙TagesAnzeigerに特集されています.また,同紙のサイト内でGripenというキーワードで検索しても見つけることができます.そして,反対者たちによって運営されているキャンペーンサイトはこちらです.

果たして国民投票の結果はどうなるか,個人的に注目しています.

そういえば,以前に行われた州民投票の結果を受けて,グラウビュンデン州の2022年の冬期オリンピックの開催地としての立候補を見送ることになったこともありました.(53%の州民が反対.Cf. Blickの2013年3月3日付"Graubünden sagt Nein zu Olympischen Winterspielen 2022")確かにグラウビュンデンには,スキーマラソンなど世界中から多数の参加者が集まる様々なウィンタースポーツのイベントがあるので,それで十分なのかもしれません.ようするに他者に頼るのが嫌いなのです,この国の人たちは.そして,重要なことは国民全員で決定する,つまり間接民主主義と直接民主主義の中間ともいえる折衷民主主義と呼ばれる統治方式を伝統的に保ち続けているのです.

比較の対象にするには,あまりにも差がありすぎますが,地政学的な思惑から,また地価を高騰させ,役人達が建設業者から多額の賄賂を受け取るための手段として冬期オリンピックを開催させたロシアとはまったく異なります.ソチでは,競技施設の他にも高層集合住宅等の建物が建設され,強制的に住居から立ち退かされた住民が多数います.(Cf. ARTEのソチオリンピック特集

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