Thursday 24 April 2014

"The United States of Paranoia" - アメリカ人とアメリカを理解するのに役立ちそうな一冊

世界中で,アメリカほど陰謀説が好きな国はないと言われます.最近の例としては,9.11の同時多発テロ攻撃の首謀者は,実は当時の大統領George W. Bush氏でだった,あるいは少なくとも彼は攻撃の計画について予め知っていたが阻止するための措置をとらなかったとか,そして,少し時代を遡れば,当時のJohn F. Kennedy大統領の暗殺を巡るもの,さらに,1941年の日本軍による真珠湾攻撃の前に当時のRoosevelt大統領はすでにその計画を知っていたとか.また,現大統領のObama氏の出生地は実はハワイ,つまり合衆国内ではなかった(ので大統領に立候補する資格は本来ないはず)等々,枚挙にいとまがありません.

最近,出版された本"The United States of Paranoia"の中で,著者Jesse Walker氏は,こうしたアメリカ社会に繰り返し生まれる陰謀説を検証し,アメリカ人の陰謀説好きはすでに17世紀のマサチューセッツで起きた魔女狩りにおいて認められるとしています.その上で,彼は陰謀説の発生は,まさにアメリカの歴史の特徴であり,それらはすべて以下の5つのパターン,あるいは元型のどれかひとつ,もしくは複数に沿って組み立てられていると述べています.
  1. 首謀者はアメリカ社会内部に存在する.
  2. 首謀者は他国に存在する.
  3. 首謀者はアメリカ政府や関連機関等である.
  4. 首謀者は何らかの地下組織である.
  5. 首謀者は物質世界に属さない悪の勢力(つまり《悪魔》)であり,その計画を阻止しようとする《天使》たちがいる.("benevolent conspiracy")
以上,4月23日付スイスのチューリヒ新報(NZZ)"Verschwörungen am laufenden Band"からでした.

なお,ご紹介したJesse Walker著 "The United States of Paranoia: A Conspiracy Theory"は,日本のAmazonでは今年の10月から発売されるようですが,アメリカのAmazonではKindle版も含め,すでに購入可能です.また,著者のJesse Walker氏は"Reason"誌の編集者です.

新年度が始まり,多くの新社会人の方が誕生していますが,先日ご紹介した経済書Thomas Piketty著"Capital in the Twenty-First Century"とともにご自分の読書リストに加えられたら如何でしょう.

ところで,上記の5つのパターンは,アメリカ映画の筋書きにもしばしば見られますね.

No comments:

Post a Comment