Tuesday 15 April 2014

海は広いな,酸っぱいな -  気になる海洋のpH値の変化

4月8日付シュピーゲルの"Die gefährliche Wandlung der Ozeane"より.

2011年秋,突然,アメリカ西海岸の牡蠣漁師さんたちの網に何もかからなくなりました.調べてみると,海水のpH度が通常よりかなり低くなっていることが判りました.つまり海水の酸性度が高くなっていたのです.その原因は,深層水が海岸にまで上昇してきたためでした.

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告は,今後,世界中の海で同様の事態が発生する可能性があると述べています.

問題の真の原因は,海水によるCO2吸収です.その量は,毎日2,000万トン.海水中に取り込まれたCO2は酸へと変化します.海洋における酸性度の上昇は,生息する珊瑚,また牡蠣やエビなどの甲殻類にとって命にかかわる大問題です.なぜなら,酸は彼らの甲殻の成長を妨げるからです.

産業革命以降,海洋水の酸性化は進み,特に最近は,過去数百年間においても見られなかった速度で進行中と言う専門家もいるそうです.

本来,海水は塩基性ですが,産業革命後,そのpH度は平均8.2から8.1へ減少しました.もし,今世紀末迄に空気中のCO2が2倍に増えた場合,海水のpH度は7.9まで,さらに3倍に増えたら7.7まで下がる可能性があると言われています.

とはいうものの,酸性度が高くなった方が体調(?)が良く,むしろ元気になる生き物もいるようで,そのひとつが円石藻(えんせきそう:Emiliania huxleyi)です.研究室に置ける実験によると,この殻を持った藻の一種は,人工的に酸性度を高めた環境において通常より大きく成長したそうです.これに関連して,ネパールの海洋学者であるMaria Cristina Gambi氏は,産業革命以降,多くの珊瑚藻において40 cm程度の体長の増加が見られると言っています.また,英国の海洋生物学者Ian Joint氏によると,マリアナ海溝において酸性度の強いガスが噴出している箇所があるが,そこに生息する貝類も存在すると指摘しています.

さらに白亜紀にまで遡れば,当時,大気中には現在の量を上回るCO2が含まれていたものの,海洋の石灰質の殻を持つ生物たちはむしろ繁栄していたことは,ドーバーの岩壁の堆積物などが示しています.

以上のことから,別に心配することは無い,殆どの海洋生物は影響を受けることがない(Null Hypothesis)と言う専門家も少なくありません.つまり,海は懐が太いというわけです.それでも,シカゴ大学のTimothy Wootton氏のように,今後,海洋水の酸性化が,例えば魚や海洋哺乳類になんらかの影響を及ぼすことを危惧する専門家もいます.

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