Wednesday 9 April 2014

「賃金格差」,「情報機器の脆弱性」をフランス語で言うと

まず,「賃金格差」(賃金における不平等)は"inégalité salariale"と訳すとフランス語としては理解され易いと思います.その反意語(句)は,"égalité salariale"です.

BPW(Business and Professional Women)と言う世界的な組織がありますが,この組織によって提唱されているのがイコールペイデー.男女間の賃金格差の解消を目的とするキャンペーンデーです.イコールペイデーには,各国のBPWの支部によって異なる日が定められているようで,今年はフランスにおいては先日の4月7日,日本では4月13日です.

その日に因んでフランスのニュースメディアは,男女間の賃金格差について多くの記事を掲載しました.例えば,L'EXPRESSの7日付"Les femmes doivent travailler 77 jours de plus pour gagner autant que les hommes"には,フランスでは,1人の女性が同じ職に付いている男性と同額の賃金を手にするには,1年において男性より77日余計に働かなくてはならないと書かれています.すなわち,女性の給料は男性より28%低いというわけです.同様にアメリカでは23%,ヨーロッパの他の国,例えばドイツ,スイス,イタリア,英国などの状況もほぼ同様とのことでした.なお,男女間の賃金格差が最も小さい国はスウェーデンで13.9%.おしなべて北欧各国においては小さいようです.(なお,国立統計経済研究所:Inseeのサイトのこちらで詳しい情報が閲覧できます.また,世界に比較した日本の状況は,2004年現在のものですが,三重県の総合文化センターが提供しているこちらのグラフが判り易く示してくれています.それを見ると,日本の女性が置かれた状況はフランスよりもさらに深刻です.また,国連の統計局もWomen's wages relatives to men'sというエクセルシートに各国における女性の賃金の男性の賃金に対する比率のデータを提供しています.日本の厚生労働省のサイトは極めて見づらく,どこにどういうデータがあるのかよくわかりません.)

同じ話題については,他にも,いち早くLe Mondeが3月8日付の"Le salaire des femmes dans le privé inférieur de 28 % à celui des hommes"で取り上げていましたし,Le Figaroは4月7日付で"Égalité salariale : Vallaud-Belkacem lance une appli pour «coacher» les femmes"という記事を掲載していました.さらに,オブザーバーの系列であるビジネス誌チャレンジのサイトも"Le gouvernement lance une appli pour l'égalité salariale homme-femme"という記事を掲載しました.また,主要なテレビ局のひとつであるTF1のサイトには,L'EXPRESSの記事に比べて若干少なめの68日間という日数を挙げていますが,"Pour avoir le même salaire qu'un homme, une femme doit travailler 68 jours de plus par an"という記事(下のビデオを含む)が掲載されていました.



こうしたフランスのニュースメディアに比べて,何ともみすぼらしいのは,所変わって我が国日本のニュースメディア.試しにGoogleのニュースで「イコールペイデー」,あるいは「男女+賃金格差」と言ったキーワードで検索をしても表示されたのは読売新聞と赤旗のサイトに掲載されていた僅か2つの記事のみでした.それに比べて昨今の理化学研究所の某女性研究者についての報道の尋常ならざる多さを見るとき,日本のニュースメディアのみならず,この国の社会全体について少なからず奇異な印象を覚えるのは私だけでしょうか.(もっとも,日本のイコールペイデーは来週の13日なので,当日,男女間の賃金格差の問題も多少なり日本のニュースメディアによって取り上げられるかもしれませんが.)

そういえば,日本のメディアがあまり取り上げない話題として,もうひとつインターネットセキュリティの重大な脆弱性として指摘されたハートブリード(Heartbleed)の問題も挙げられるかもしれません.(Le Mondeでは,最近最も共有された記事がハートブリードに関する4月9日付の"Que sait-on de « Heartbleed », l'inquiétante faille de sécurité sur Internet ?"でした.)具体的には,インターネット上においてクレジットカード情報など重要な個人情報を秘匿し安全な情報交換を可能にする(と思われていた)OpenSSLというプログラムに発見された脆弱性です.世界中のサーバーの3台に2台は当該の脆弱性持っている(あるいは持っていた)と言われています.インターネット上に存在する通信販売のサイトに注文を行った際などに入力する個人情報は,そのサイトのサーバーに保存されますが,もしこのサーバーが脆弱性を持っていた場合,ハッキングによりその情報が簡単に盗まれてしまうのです.また,個人の端末のクッキーも悪意のある第三者による入手が可能となるため,その人物が当該端末の所有者になりすまして,特定のサイトにアクセスすることも可能となってしまいます.さらに恐ろしいのは,情報を暗号化して通信を行うサーバーにはSSL電子証明書が与えられていますが,Le Mondeの記事によると,もし脆弱性が修正されたとしても,修正される前にこの証明書の内容がハッカー知っていたら,引き続きそれを用いて秘匿された情報の入手が可能になってしまうということです.

実際に,この脆弱性が見つかったと言われるのはYahooのサイトですが,すでに修正されているそうです.また,Apple,Google,Facebook,そして大半の電子取引を行うサイトにおいては,すでに修正が行われているため,問題は無いようです.なお,閲覧するサイトが当該の脆弱性を持っているかどうかの確認は,こちらのページにホスト名を入力することで可能です.(例えば,Le Mondeのサイトの安全性を確認するには,入力欄にlemonde.frと入力します.)

試しにこのブログのホスト名を入れてみたところ,下記の結果が得られたので確かに問題はなさそうです.(この脆弱性を最初に見つけたのが,Googleの技術者だったそうなので当然といえば当然ですが.)


ついでに,インターネットからの攻撃や侵入に対する端末等の脆弱性は,フランス語では"vulnéralibité informatique","faille informatique",または"faille de sécurité (informatique)"などと言います.また,それらに対する安全性は"sécurité informatique"と言います.

関連の記事として,オブザーバーの4月9日付"Faille de sécurité : faut-il avoir peur du grand méchant Heartbleed ?",同日付シュピーゲル(ドイツ語)の"OpenSSL-Sicherheitslücke:Warum "Heartbleed" Millionen Web-Nutzer gefährdet"も挙げておきます.後者は,キャプションでインターネット利用者はすべからく使用するパスワードを変更したほうが良いと言っています.(ドイツ語では,脆弱性は"(Die) Sicherheitslücke"と言います.)

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