Monday 16 November 2020

ドラマ『ケストナーと小さな火曜日』の最後に表示されるケストナーの言葉

„Der kleine Dienstag ist für mich eine unverlierbare Erinnerung. Allein an diesem einzigen sinnlosen Verlust kann ich ermessen, was, millionenfach multipliziert, Hitler auf dem Gewissen hat."

『小さな火曜日は、私にとって忘れ去ることのできない思い出だ。その意味の理解しがたい彼の死ひとつをもってしても、私はヒットラーには微塵の良心すら存在していなかったことを思い知るのである』

ケストナーと彼を敬愛し,自らが『エーミールと探偵たち』の最初の映画化作品に出演したハンス・アルブレヒト・レール(1922年5月29日,ベルリンにて誕生.1942年8月22日,あるいは28日にソビエト連邦サプラティノで死亡)との交わりを当時の世相を背景に描いたドラマ『ケストナーと小さな火曜日』の本編最後に表示されるケストナー自身の言葉です.ケストナーが,映画撮影のために滞在していたオーストリアのチロル地方でレール婦人から届いた息子の戦死を伝える手紙を読むシーンで画面の下にテロップで表示されますが,続いて,1931年に公開された『エーミールと探偵たち』の中で連絡係の'火曜日'役を演じるレール少年が登場するシーン,そして,「映画に出演した子役たちのうち,戦争を生き延びることができたのは2人のみだった.ハンスはコルポヴォの軍人墓地に,同様に戦死した27,761名と一緒に葬られている.」というテロップからエンドロールに変わります.最後まで素晴らしい演出の作品です.(原題 „Kästner und der kleine Dienstag",ドイツ,オーストリア合作,2016年公開)

1931年版『エーミールと探偵たち』に出演した際のアルブレヒト・ハンス・レール.(当時,9歳) 舌足らずで「合言葉,エーミール」と云うセリフが印象的.