Friday, 26 December 2014

クリスマスのチョコレートロールケーキのシンボリズム

フランスでは,クリスマスにデザートとしてチョコレートロールケーキを食べます.最近では,日本でも,ケーキ屋さんのショーケースの中に紅白のデコレーションケーキに混じって見かけるようになりました.

相当伝統のあるケーキと思いきや,その起源は案外新しく,1870年がその誕生の年とされています.19世紀ですね.以下,その意味についての説明の要約ですが,詳しくは,フランスの各地域のクリスマスについて解説しているNadine Cretin著"Noël des provinces de France"をお読み下さい.(Editions Le
Pérégrinateur, 14,90 euros.)

何故,薪の形をしているのか?

冬至と関係があります.一年で最も夜が長くなるこの日には,その昔,1本の大きな薪が火にくべられました.この薪はいつも使うものとは異なる聖なる薪とされました.冬至の日,この薪には少量のワイン,あるいはオリーブ油が注がれました.そして,それは長男と末の息子によって暖炉にくべられたのです.家系の末永い繁栄という願いを込めて.

この儀式は,フランス各地で異なりますが,この薪はクリスマスの夜のみ,あるいはそれから顕現節までの間,つまり12日間燃やされました.その場合,12日の各1日は1ヶ月を意味し,1年を象徴的に表したものでした.そして燃えさしは保存され,家族に何か悪いことが起きたときに再び火にくべられました.災厄を避ける為でした.

こうした儀式はいつから始まったのか?

類似の儀式はヨーロッパ各地に存在することから,紀元前2500年ごろにインド・ヨーロッパ語族を話す人々によって各地に広まったと思われます.そして,クリスマスが今日の統一された形態を採る1950年代以前には,こうした儀式が部分的に存続されていたのです.

儀式の持つ意味は?

まず,占いの意味があります.薪として用いられたのは,主に果樹でしたが,それは火花がたくさん出るからです.そして,それらの火花が大きければ大きい程,翌年は良い年になると考えられたのです.つまり,豊かな収穫が得られ,干ばつや洪水が少ない年となると.

もうひとつは,魔除けとしての意味です.冬は寒さの故に,家は閉じた空間となりますが.唯一,空に向かって開いた煙突を通じて外界とつながっています.霊や魔物が活動すると信じられた夜,薪は先祖の霊や,将来生まれる子孫たちの居る場所,つまり彼岸の象徴であり,魔性たちがもたらす災いから家族を守ってくれる役目も持っていたのです.同様に,クリスマスクッキーのとげにも魔性たちの影響から守ってくれる力が宿ると信じられていました.

いつ薪はお菓子になったのか?

1870年頃です.そのころ,ケーキ職人たちはロールケーキを考案しましたが,それを薪に見立てたものが,今のチョコレートロールケーキの元祖と思われます.それ以前のクリスマスのお菓子というと,生地の中にたくさんの材料が詰められたものが主流でした.英国のミンチパイやプディング,ドイツのシュトーレン,イタリアのパネトーネなどです.これらの中には特に干しぶどうがたくさん入っていました.乾燥果実は長期間の保存が可能なことから,翌年の幸せ,そして末永い繁栄の象徴だったのです.

以上,L'EXPRESSの"Bûche de Noël: du haut de ce gâteau, 5000 ansd'histoire vous contemplent"からでした.

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