Saturday, 27 December 2014

ロシアが2019年の実戦配備を目指す列車ミサイルSS-27

ルーブルの下落,物価の上昇,石油生産量の減少などで窮地に陥ったロシア.いよいよ最後の一手といわんばかりに,先日,それまで安全保障を妨げる要因は国内にあるとしていた軍事ドクトリンを変更.敵は西側諸国,とりわけアメリカ,そしてNATOであると言い出しました.(Cf. "Nato und Ukraine sind jetzt Putins größte Feinde", "Auf dem Weg in die Staatspleite" in SPIEGEL,)

事実,NATOの発表によると,10月末にロシアの戦略爆撃機や戦闘機が北海,バルト海,黒海,そして大西洋上の国際空域を飛行するのが確認され,その際,NATO側からの連絡に対し,いずれも応答がなかったそうです.NATOは,これをロシア側の挑発行為とみています.

さて,ロシアおよび同盟国に対する攻撃には核兵器の使用も辞さないとする新しい軍事ドクトリンの目玉となりそうなのが,ソビエト時代に開発された列車に搭載された発射台から発車される核ミサイル(BShRK).これが再びロシアの戦略ミサイル部隊(RWSN)で採用されることになったのです.貨物列車と見分けがつかない列車で搬送されるため,先制攻撃を避けられるのが強みであるこの兵器の構想は,すでに敗戦間際のドイツで生まれ,列車からV2ロケット爆弾(Aggregat 4, A4)の打ち上げ実験が実施されたこともありました.

ロシアで列車ミサイルの実験が開始されたのは1983年2月.そのとき使われたのはRT-23ミサイルで,1基につき50 キロトン核弾頭を10個搭載できるものでした.射程距離は最大で1万キロ.1989年になると,NATO側ではSS-24と呼ばれた新しいタイプのRT-23 UTTCh"Molodez"が導入されました.このミサイルは,搭載できる核弾頭の数は先行タイプと同様10個でしたが,1個の破壊力は500 キロトンへと増大しました.さらに,敵のミサイル防衛システムをくぐり抜ける機能も装備されていました.

ソビエト連邦は,当時,各4つの連隊から構成される3つの列車ミサイル師団を保有していましたが,各連隊は1編成の列車ミサイルによって装備されていたので,合計12編成の列車ミサイルが存在していたことになります.配置場所は,モスクワ近郊のKostroma,ウラル地方のPerm,そしてシベリアのKrasnojarsk.各編成には3基の発射台が搭載されていましたが,これらの列車ミサイルは,その後,アメリカとの合意により2005年に廃棄されました.しかし,Salt-3は新しい列車ミサイルの製造を禁止していないのです.

航空宇宙分野の専門家Juri Saizew氏によると,モスクワの熱技術研究所
において開発されるという新しい列車ミサイルは,2019年に実戦配備されることになるようです.同氏は,SPIEGELのインタビューに対し,兵器自体の開発より,そのコントロールシステムなどの開発に時間がかかるだろうと述べています.搭載されるのはRS-24"Jars"(NATO側のコードネームはSS-27)が予定されていますが,このミサイルに装着可能の核弾頭数は,まだ判明していないそうです.いずれにせよ,150から300 キロトン程度のものを複数装着できることは間違いないと言われています.

以上,23日付SPIEGELの"Russland will neue Atomraketenzüge bauen"からでした. Echo Moskwyの関連ニュースへはこちらから.(ロシア語)

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