Monday 29 December 2014

アメリカの司法当局で使用されている刑を決定するアルゴリズム

日本での導入はいつになるのでしょうか.それとも,もうすでに導入されているのでしょうか.26日付Le Mondeの"Ouvrir les algorithmes pour comprendre et améliorer les traitements dont nous sommes l’objet"の中で,アメリカの裁判所で用いられている面白い仕組みが紹介されていました.それは,罪を犯した人に課す刑罰をモデルを用いた計算によって決めるというもの.(詳しくは,ニューヨーク大学のGovLabのLuis Daniel氏による"The Dangers of Evidence-Based Sentencing"をお読み下さい.)アメリカのおよそ20もの州で採用されている方法です.計算に用いるパラメーターは,すべての州で全く同じではないものの,多くの州が年齢,性別,配偶者の有無,教育水準,職業などから適正と思われる刑罰と再犯率を割り出しています.ただ,この方法による刑の決定の過程における問題は,個々のケースの特質が無視されてしまうことであるとエリック・ホルダー司法長官は述べています.ホルダー長官は,過去の事例から統計的に導き出された数値を用いた場合,黒人の若者が犯罪を犯した場合,他の犯罪者よりも20%も長い刑期が課せられる可能性があると言います.なお,今年の8月10日付でニューヨークタイムズは,この仕組みが憲法に違反しているという記事を掲載しています.

この記事を書いたミシガン大学の法学部のSonja Starr教授は,Stanford Law Reviewに掲載された"Evidence-Based Sentencing and the Scientific Rationalization of Discrimination"というエッセイの中で,問題の仕組みについて以下のように説明しています.ミズーリ州では,各被告には-8から+7のスコアが割り当てられますが,その際の判定基準の例を挙げると,失業者で十分な教育を受けていない場合は,高卒の就業者に比べて3点少なくなります.また,22歳の犯罪者は45歳の犯罪者に比べ,平均で同様に3点少なくなります.刑務所での服役歴がある場合は1点加算され,4犯以上の前科があり,刑務所での服役歴が無い場合は,1点加算(前科が3犯以下の場合は0点加算).服役していても条件付き出所などの経験がある場合,何故か脱獄も含めて1点加算.しかし,犯した罪の重大さによって点数が加減されることはありません.つまり,この仕組では,犯した罪の重さや軽さは全く考慮されず,その人間についての情報のみが判断の対象となるということです.そして,このような方法で決定された刑期が,それより短い刑期が適用された場合に比べ,出所後の元服役者の再犯率が低くなるという保証は何等ないというのがLuis Daniel氏らの意見です.

以上が,記事の抄訳ですが,TPPにおける交渉対象品目にこうしたソフトウェアは含まれているのでしょうか.アメリカとしては日本に売り込みたいのかどうかに興味があります. そして,日本は他の特定の品目の関税を守る為に,それを導入するのかにも...

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