Thursday, 10 October 2013

ノーベル文学賞受賞者たちが持つある傾向とは

10月8日のL'EXPRESSの記事"Cinq prix Nobel qui ont marqué l'histoire de la littérature"によると,ノーベル文学賞は作家はもちろん,詩人,哲学者,また,反体制作家や亡命作家などにも与えられる賞で,その条件として創設者アルフレッド・ノーベルは《なんらかの理想主義的傾向》(une tendance idéaliste = an idealistic tendency)を持っていることとしたそうです.実際,以下の5人の受賞者は,確かにその条件を満たしているそうです.すなわち,ネルダ(Pablo Neruda,チリの詩人,1971年受賞),ベケット(Samuel Beckett,アイルランドの作家,戯曲家,1969年受賞),カミュ(Albert Camus,フランスの作家,1957年受賞),ヘミングウェイ(Ernest Hemingway,アメリカの作家,1954年受賞),マン(Thomas Mann,ドイツの作家,1929年受賞)です.

以上が記事の内容ですが,理想主義的傾向,あるいは勝手に解釈して何らかの理想を追い求める傾向を持っている作家というと,最近,知った中国人作家の王力雄(Wang Lixiong)さんがいます.王さんは,中国文明のルーツを探るべく数ヶ月にわたって単独で黄河を遡り,チベットが置かれた状況をつぶさに見て中国政府のチベット政策に疑問を持つようになりました.最近では,インターネットを通じて,ダライラマ14世と中国の一般市民との意見交換の場を設ける等,中国の良識を代表する知識人の一人として執筆の他,様々な市民活動に取り組んでいます.奥様はチベット人です.日本語に訳された著書に『私の西域、君の東トルキスタン』,『チベットの秘密』(共著)などがあります.

それと,理想を持っていたというと,亡くなっていますが,三島由紀夫もその条件を満たしていた作家と言ってよいのではないでしょうか.ただ,果たして彼の一見明瞭に見える理想が普遍的なものであったかどうかは判りませんが.

No comments:

Post a Comment