Saturday, 3 May 2014

国連人権高等弁務官事務所,クレイトン・ロケット死刑囚の死刑を人道に反すると非難

先日,オクラホマシティで執行されたクレイトン・ロケット死刑囚の死刑について,国連人権高等弁務官事務所のルパート・コルビル報道官は,死刑執行の際に同死刑囚を43分間もの間激しい苦しみにさらしたのは,国際人権法違反であり,また,残酷な刑罰を禁止している合衆国憲法にも違反しているとの見解を表明しました.

19歳の女性を殺害したというロケット死刑囚(38歳)の死刑の執行に用いられた方法はミダゾラムを含む3種類の薬品の静脈注射でした.ミダゾラムは,ドルミクムという名称で流通していて,手術の際などに患者を鎮静させるために投与される薬品です.理論的上は,執行時,この薬品が注射された死刑囚はすぐに意識を失うはずだったのですが,ロケット死刑囚の場合,静脈に注入されたミダゾラムが体内に正常に行き渡らなかったようで,同死刑囚が意識を失ったと確認されたのは10分後でした.それから係官は,彼に残りの2種類の薬品ヴェクロニウムブロミドとカリウムクロリドを続けて注射しました.しかし,意識が失ったと思われてから3分後,彼は意識を回復し呼吸しようと必死にもがき始めたのです.ヴェクロニウムブロミドは筋肉を弛緩させ(従って,呼吸器官の機能を停止させ),カリウムクロリドは血中のカリウム濃度を上昇させることで心臓発作を起こすか,心臓の動きを停止させます.ですから,これらの薬品を用いて死刑を執行する場合,最終的に死刑囚を死に至らしめる二種類の薬品を注入する時点で彼は意識を失っている必要があるのですが,ロケット死刑囚の執行の最終段階でこの前提条件が満たされていなかったのです.

ロケット死刑囚に対して行われた刑の執行方法に対する批判を受け,オクラホマのロバート・パットン刑務所長はすべての死刑の執行を無期限で延期する旨を発表しました.

以上,5月2日付シュピーゲルの"Uno verurteilt qualvolle Hinrichtung von Clayton Lockett",4月30日付シュピーゲルの"Die Hilfsmittel der Henker "からでした.

ところで,これら3種類の薬品を用いての死刑が最初に執行されたのは,2013年の10月15日フロリダにおいてでした.それまで使用されていたペントバルビタルの不足がその理由で,オハイオ州も同じ理由でミダゾラムを用いるようになったのですが,アメリカでは現在,多くの州が注射による死刑に代わる方法を探し始めています.こうした動きの具体的な例として,フランスの4月30日付オブザーバーの"Peine de mort aux USA : bientôt le retour de la chaise électrique ?"は,テネシー州は最近電気椅子の再採用を決定しました.また,ワイオミング州やミズーリ州は,銃殺刑の復活を検討し始めており,さらに後者の州議会議員の中には以前同州で用いられていたガス室による死刑を提案する人もいると伝えています.

同じ記事によると,ギャラップ社が行った最新の世論調査では60%の国民は死刑制度の存続を支持しているそうですが, それでも過去40年で最も低い支持率だそうです.

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