Wednesday 28 January 2015

イスラムに興味を持つ日本の若い方へお薦めのナスル・アブ・ザイド氏の著作 (英語)

キリスト教において宗教改革以降,聖書解釈のスタンダードメソッドとなった人文主義的解釈をクルアーンにも適用したことで知られ,また,暗殺される危険をも顧みず世界各地で講演を行ったザイド氏ですが,惜しくも2010年に病気のために亡くなりました.同氏の著作は,日本語には訳されていないようですが,有り難い事に英語の著作も発行されています.そのため,私たち日本人も,それらの著作を通して彼が提示した先進的なイスラムの解釈に触れる事ができます.以下,Wikipediaに紹介されていたザイド氏の英語の著作です.(その下は,ザイド氏へのインタビュー.)
  • Reformation of Islamic Thought: A Critical Historical Analysis. Amsterdam: Amsterdam University Press, 2006.
  • Rethinking the Qur'an: Towards a Humanistic Hermeneutics. Utrecht: Humanistics University Press, 2004.
  • Voice of an Exile: Reflections on Islam (with Esther R. Nelson). New York: Praeger Publishers, 2004.




以下,個人的所感です.私たち日本人は宗教に鈍感な国民です.おしなべて日本の宗教においては聖書やクルアーンのような聖典は存在せず,宗教の範疇に含まれるものは,啓示宗教のような言語を介した神との契約というより,母子間のそれに似た情緒的な(甘え的)な関係(死者対生者,神,または仏対生者)が基本的な枠組みとなっています.別に,それはそれでよいと思うのですが,そうした宗教文化に慣れ親しんでいると,他の国,特に啓示宗教が一般的な国の宗教文化や,あるいは広く精神文化を正しく理解するのは容易い事ではありません.その点からも,こうした啓発的な著作に触れることができるように英語が理解できることは大切なことだと思います.(フランス語やドイツ語も,知っておくと役に立たない事もありませんが,英語ほどの必要性はないと思います.)

ところで,こうした日本人の宗教に関する,良く言えば寛容さ,悪く言えば鈍感さは,現総理大臣の言動や行動にも明確に表れていますが,一応神道の体裁をとっている靖国神社への参拝に固執しつつ,尊父の安倍晋太郎氏の葬儀は徳川将軍家の菩提寺である浄土宗の増上寺で仏式に乗っ取って行うといった分裂的あるいは共存的宗教性は,啓示宗教が大多数を占める外国から視られた場合,思想や理念,そして宗教であれば教義体系に整合性を求める彼らによって永久に理解されることはないでしょう.それに加えて,特に現総理大臣およびそのカンパニーの場合,歴史という概念が実質的に不在であることがさらに悲劇的な状況を生み出しているようです.

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