Sunday 25 January 2015

ギリシャがユーロ圏から離脱した場合の影響 - SPIEGELのインタラクティブインフォーグラフ

インフォーグラフはこちらです.以下,その抄訳です.

ユーロに関する条約においては,ある加盟国を他の国々が脱退させることはできません.そもそも,条約は加盟国が脱退することは想定されていません.もし,ギリシャがユーロ圏から離脱するとなると,それは自らが決定する必要があります.その場合,ギリシャがEU自体から脱退する必要もでてくるものと考えられます.なお,現時点では首相候補とみられるSyrizaのAlexis Tsipras代表はギリシャのユーロ圏離脱の意向を示しておりません.(Cf.Blitzanalyse: Linksruck in Griechenland - was jetzt passiert in SPIEGEL)

以下,グラフ上のそれぞれのアイコンを押すと表示される説明です.(時計回り)
  • Millardenverluste für Deutschland(ドイツが被る多額な損失):
これまでに欧州中央銀行(EZB)が,ギリシャの金融危機救済のために支出した額の凡そ1600億ユーロが損失となってしまいます.また,ユーロ圏各国の中央銀行間の決済システムであるTarget2におけるギリシャ中央銀行の負債の額はおよそ100億ユーロまで膨れ上がっていて,そのうちの27 %がドイツの中央銀行に対するものです.つまりギリシャがユーロ圏を離脱し,負債を返済することができなくなると,ドイツは700から800億ユーロの損失を被る可能性があります.
  • Marktturblenzen(金融市場の混乱)
ユーロの不安定化や世界的な株式市場の下落を恐れる投資家たちは,アメリカ,日本,ドイツなどの国債市場へ資金を移動させることになります.そして,為替市場においては,ドル,円,スイスフランの買いが進みます.
  • Vershärfung der Staatsschuldenkrise(特定の国の財政状況悪化)
投資家はスペインやイタリアなどの国債を避けるようになるため,これらの国は,財政破綻を避ける為にEZBに財政支援を要請することになります.同様の状況は財政的に脆弱な国にもみられるようになり,投資家の資金はドイツなどの安全な市場へ集中することになります.
  • Ansturm auf Banken in Europa(ヨーロッパの銀行への資金の流入)
ギリシャ国民は,口座凍結やユーロがドラクマに交換され価値の減少を避けるために,自分たちの資産をギリシャの銀行から引き出しますが,そのためにギリシャの銀行の破綻が始まります.また,スペインやイタリアでも将来への不安から,国民の間に同様の動きがみられるようになり,多くの資産が銀行から引き出され,ドイツの銀行など安全な金融機関へ移動します.こうしたパニック的動きは,後に世界的な金融危機へと発展しかねません.
  • Politische Verwerfungen(政治情勢の悪化)
EU離脱後のギリシャでは,極左右両派の動きがさらに活発化します.今回の左派連合の勝利はギリシャ国民の間に広まっている,どのみち国際社会は自分たちを見捨てるだろうというあきらめの表れとみることができます.
  • Rezession und Unternehmenspleiten(景気後退と企業倒産)
ギリシャが負債を返済できないとなると,多くの銀行が経営の引き締めに動き,企業への投資額が減少します. そうなると企業は設備投資ができなくなり,EU内ではさらなる失業率の上昇に対する懸念や財政引き締めへの恐れが広がり,景気後退の可能性も高くなります.

仮に金融改革が進み,企業の競争力が回復したとしても,彼らは負債をユーロで返済しなければなりません.逆に企業が倒産した場合は,債権者である外国の銀行や取引先は未回収分が損失となり,経済危機は他国へと飛び火してゆきます.いずれにせよ,ギリシャの経済全体が破綻する恐れがあります.

下は,ギリシャの負債の債権者を示すグラフ.


26日付関連記事Griechenland und der Euro: Tsipras und die drei Szenarienによると,ギリシャの税収は昨年11月から大幅に減少し,2015年の国家予算は23億ユーロの赤字となっています.同時に多くの外国資本が国外に流出しており,その額は昨年末には30億ユーロ,今年になってからは1月の第1週だけで50億ユーロにのぼっています.

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