Tuesday 20 August 2013

フランスのSLが好きな方へ - Fullのオープン・エンジン・ハウスの報告と241が重連で牽引する特別列車のお知らせ

今年のこどもの日に,スイスのFullでオープン・エンジン・ハウスが開催され,ヨーロッパで動態保存されている蒸気機関車のなかで,手動投炭式としては最大の241 A65*1)が展示されていました.以下,当日撮影した写真の中から数枚掲載します.元フランス国鉄の機関車で,車軸配置は形式名から判るように,2D1のマウンテンタイプです.



外側シリンダのメイン・ロッドが第2動軸に接続されているのがこの形式の特徴.ただ,こうした構造は,ドイツの昔(領邦鉄道時代)や東独国鉄によって初期に開発された4動軸機では一般的なものでした.(例えば,旧ザクセン国鉄XX HV形,後の帝国鉄道19.0形,旧プロイセン国鉄P 10形,後の帝国鉄道39.0-2形,東独国鉄の改造機22形,東独国鉄の25形,旧プロイセン国鉄 G 7.1形,後の帝国鉄道55.0-6形,旧バイエルン国鉄G 4/5 H形,後の帝国鉄道56.8-11形,旧ザクセン国鉄XI HV形,後の帝国鉄道57.2形など.また,3動軸機においても,旧プロイセン国鉄S 10形,後の帝国鉄道17.0-1,旧バイエルン国鉄S 3/5形,後の帝国鉄道17.4-5形,旧ザクセン国鉄XII HV形,後の帝国鉄道17.7形のように,メインロッドが第1動軸に接続されていたもの少なく有りませんでした.)こうした構造は,恐らく,カーブにおける走行性の向上を計ることと関係したいたのではないかと思います.


スイスには,この他,元フランス国鉄の機関車としては241A65のかなり年下の妹にあたる241P17*2)やミカド機の141R1244*3)が動態保存されています.このうち,141R1244は,Fullでのオープン・エンジン・ハウスの数日後に,やはりスイスのSissachで開催されたスイス・SLデーで披露されました.なお,このイベントには,高性能の万能ミカド機ドイツ国鉄の41形*4)も登場し,美しい仏独ミカド機の顔合わせが実現しました.(たまに,この二両が重連で特別列車を牽引することもあります.)

141R1244.車輪はボックスです.メインロッドは,241Aと異なり第三動軸に接続されています.
バイエルン州の歴史的技術遺産に指定されている41 018.こちらもメインロッドは第三動軸に接続されています.よくみると煙室の右側上部に,警報機のない踏切などで接近を知らせるための鐘がついています.そして,旧東ドイツ国鉄所有機に見られる煙室扉中央の円形開閉ハンドルやエプロン部の覆いが見られないことから旧西ドイツ連邦鉄道所有機だったことが判ります.41形については,以前に書いたこちらのポストで少し詳しく取り上げています.
SLデーに運行された元フランス国鉄の141Rとドイツ国鉄の64*5)の重連が牽引した特別列車.仏独の機関車の共演が見られるのがスイスの保存鉄道のユニークなところ.ただ,ドイツで運行される特別列車などとは異なり,往路復路ともに機関車の向きは同一.Rümlingen付近にて.



ところで,来る9月28日,241A65と241P17牽引の特別列車がFull, Chiasso間で運行されます.途中,ゴッタルド峠を越えるルートですが,二台の巨大なフレンチ・マウンテンの奮闘ぶりが期待できます.詳しくは,Verein241.A.65のサイトをご覧下さい.イベントのフライヤーのダウンロードはこちらから.乗車券の予約の申し込みは,9月25日迄可能のようです.(申し込みは,もちろん英語で大丈夫のはずです.)

なお,このマウンテン形241.Aの出力はWikipediaによると,およそ2,570 kWとのことですが,それを大きく上回る機関車がフランス国鉄には存在しました.1960年に廃車解体されてしまった242.Aです.241-01から改造された車両ですが,手元の資料によると,その出力は2,940 kW以上だったそうです.*6)


関連ポスト:

*1) UIC表記では,2'D1' h4v.("v"は複式("Verbundmachinen")を示す記号.高圧シリンダーを動かした後の蒸気は低圧シリンダーへ導かれ,もう一度それらを動かしてから大気中に排出されます.)動輪直径:1950mm.外面的な特徴としては,外側の高圧シリンダーの往復運動を伝える主連棒が第二動軸に接続されていること.日本の4動軸機関車(D形,貨物用)には見られない構造です.内側の低圧シリンダーのそれは第一動軸に接続されています.詳しい性能諸元はこちらをご覧下さい.フランスの機関車の形式表記については,Wikipediaのこちらのページご覧下さい.(同じテーマを扱った日本語のページには記載されていません.)
*2) 2'D1' h4v.動輪直径:2000mm.こちらのタイプでは,外側の低圧シリンダから伸びる主連棒は第二動軸に接続され,内側の高圧シリンダの主連棒は第三動軸に接続されています.詳しい性能諸元はこちらをご覧下さい.
*3) 1'D1' h2. 動輪直径:1650mm.詳しい性能諸元こちらをご覧下さい.
*4) 1'D1' h2. 
動輪直径:1600mm.詳しい性能諸元こちらをご覧下さい.雑誌"Eisenbahn JOURNAL"の今年2013年1月号がこの形式を特集していました.
*5) 1'C1' h2t.動輪直径:1500mm.詳しい性能諸元はこちらをご覧下さい.
*6)  Dörflinger, M., Dampf Lokomotiven, Köln, KOMET Verlag GmbH, 2011, p76.Wikipediaの該当項目には,3,900 kWと記載されています.改造が完了した1946年当時,ヨーロッパで最強の機関車でした.因みにドイツにおける最高速度記録保持車の05 002(1935年製造)の出力は,1,735 kW(2,360 PSi)だったので,この値が圧倒的なものであったことは間違いありません.

No comments:

Post a Comment