相当偏りがあることは承知の上で,ぱっと頭に思い浮かんだものを順不同でご紹介すると以下のとおりです.なお,想定年齢は中学生以上とさせていただきました.
また,工業,機械技術に興味のある方へはさらに次の二冊もお薦めします.(何故日本が戦争に勝てなかったのか,日本側の理由を明確にしています.)- Hermann Kinder, Werner Hilgemann 共著『The Penguin Atlas of World History: Volume 2: From the French Revolution to the Present』 (Penguin Reference Books)(地図年表とでも呼べるもので,日本のアマゾンでも購入可能です.原書はドイツで出版されています.*1) 当時の国際情勢を客観的かつ包括的に把握するのに最適の資料だと思います.フランス語版もあります.*2))
- デイヴィッド・バーガミニ 著,いいだもも 訳『天皇の陰謀』(上下巻構成でかなりのページ数があり,全巻読むのに骨が折れます.)
- ヘレン・ミアーズ 著『アメリカの鏡・日本』(角川oneテーマ21シリーズに抄訳版がありますから,そちらを読んだ方がお手軽.)
- 加藤典洋 著『アメリカの影』(講談社学術文庫.すぐに読み終わります.)
- 高木万亀子 著『静かなる楯 米内光政』(こちらも上下巻構成で読むのに骨が折れます.米内光政を扱った本では,阿川弘之 著『新版 米内光政』(上下)のほうが読み易いと思うので,とりあえずこちらを読んでざっと流れを押さえておくというのもひとつの方法です.)
- 水木しげる 著『ラバウル戦記』(ちくま文庫.あっという間に読み終わります.)
- Ken Burns 監督『The War』(900分,6枚組のDVDです.英語の聞き取りの練習も兼ねて視聴してみるのは如何でしょう.値段は,Amazon.comで購入する場合,$46.99です.本ではありませんが,ここにご紹介したもののなかでの一番のお薦めです.第二次世界大戦というもの全体を理解するための資料としては,最も充実している資料といえるのではないかと思います.なお,あらかじめお断りしておかなければならないのですが,各国の兵士などの死体の映像も多く収録されています.そのため,これだけは少なくとも中学生の方には不向きかもしれません.ただ,このドキュメンタリーや後に紹介する"14 - Tagebücher des Ersten Weltkriegs"(ドイツ語),"14 - Des armes et des mots"(フランス語)を見ると,『男たちの大和/YAMATO』(2005年)『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(2011年)など,近年,日本で制作された映画は,ことごとく単なるナルシシスティックなファンタジーでしかないことがよく判ります.ジャンルが異なるから止むを得ないのかもしれませんが.であったとしても,これらの日本の戦争映画の制作意図は全く理解出来ません.
- André Singer 監督『Night Will Fall』(75分,2014年9月に公開された作品.Amazon.co.ukでは2015年2月2日発売予定.(£14.00)対象15歳以上.1945年,連合軍のカメラマンたちにより撮影された開放直後の各地の強制収容所の記録映像をヒッチコックらが編集したもの.視たとき,相当なショックを受けましたが,必見のドキュメンタリーだと思います.)
- リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー,永井 清彦 訳『新版 荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』(岩波ブックレット No. 767)
- 吉田満 著『鎮魂戦艦大和』(講談社.単行本と上下巻に分けられた文庫本があります.「臼淵大尉の場合」,「祖国と敵国の間」,「戦艦大和ノ最期」の三作が収められていますが,個人的には特に始めの二作品が好きです.このうち,「戦艦大和の最後」は,1953年,新東宝によって映画化されていますが,大和の元副長能村次郎氏の教導の下に制作されていて,個人的に好きな映画の一本です.*3))
- 池田清 著『海軍と日本』 (中公新書 (632))(近代日本の非合理性を軍という視点から分析した名著.)
- 内藤初穂 著『海軍技術戦記』(ハードカバーでそれなりに厚い本ですが,テーマに興味がある場合,楽に読めます.)
- 大内建二 著『間に合わなかった戦闘機』(光文社文庫.戦闘機が好きなら,すぐに読めてしまいます.写真と図面が豊富なのがうれしいポケットブックです.)
- 前間 則 著『悲劇の発動機「誉」―天才設計者中川良一の苦闘』(戦闘機用として開発されたエンジンの歴史から,日本民族の非合理性を浮き彫りにしています.)
- 鈴木真哉 著『刀と首取り―戦国合戦異説』 (平凡社新書)
- 中田整一 編/解説『真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝』(講談社)
- 曽我部秦三郎 著『二十世紀の平和論者 水野広徳海軍大佐 日米戦争を明治から憂えた男』(元就出版社)
付録
ベルリンの壁崩壊から四半世紀を経た昨年,ZDFで放送された『タンバッハ - ある村の運命』 も大戦後のドイツを襲った悲劇を綴った素晴らしいドラマでした.また,ドイツ語がお読みになれて,且つ国家社会主義ドイツ労働者党が政権についていた時代にそれが行ったことやそれと国民との関係,さらに現在に残る影響などついて興味をお持ちなら,手元にあるものの中から選ぶと以下の4冊が比較的参考になるかもしれません.(内容に対して,個人的に特に興味深く思えたものには★印を付記しました.)
- Aly, G., HITLERS VOLKSSTAAT Raub, Rassenkrieg und nationaler Sozialismus, Frankfurt am Main, 2006, S. Fischer Verlag GmbH
- Aly, G. ed., VOLKES STIMME Skepsis und Führervertrauen im Nationalisozialismus (2. Aufl.), Frankfurt am Main, 2007, S. Fischer Verlag GmbH★
- Welzer, H., Der Krieg der Erinnerung Holocaust, Kollaboration und Widerstand im europäischen Gedächtinis, Frankfurt am Main, 2007, S. Fischer Verlag GmbH★
- Welzer, H. ed., TÄTER Wie aus ganz normalen Menschen Massenmörder werden, Frankfurt am Main, 2007, S. Fischer Verlag GmbH
- Engwert. A,, Kill, S., SONDERZÜGE IN DEN TOD Die Deportationen mit der Deutschen Reichsbahn, Köln, Weimar, Wien, 2009, Böhlau Verlag
ところで,上記の本の紹介のなかで,しばしば,'日本人の非合理性'という言葉を用いましたが,確かに,私たちは,近代戦の遂行に当たって必要な西洋的目的合理性とは,今日でも哀れなほど無縁な民族です.しかし,それならば,私たちは,遠い先祖の時代から,西洋近代社会がその基礎に於いている合理性とは,全く異なる原則に沿って,その営みを続けて来たのではないか,そう思えることも事実です.その原則が何なのか,まだ,答えは見いだせていません.
*1) dtv-Atlas Weltgeschichte: Band 2: Von der Französischen Revolution bis zur Gegenwart Aktualisierte Neuausgabe [Taschenbuch]
*2) Atlas historique : De l'apparition de l'homme sur la terre au troisième millénaire [Broché](ドイツ語版(2014年発行)も英語版(2004年発行)も2巻構成になっていますが,フランス語版(2006年発行)は1巻にまとめられています.)
*3) 新東宝によって制作された戦争をモチーフとした映画は,リアリズムを重視した作風で優れた作品が少なくありません.他に,隊員の手記を基にした『人間魚雷回天』(1955年)も個人的に好きな映画です.
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