Monday, 18 March 2013

フランスで最も美しい車窓風景をもつ路線のひとつ

通常,パリからニームへ鉄道で移動する場合,リヨン経由のTGVを利用するのが一般的ですが,TGVが嫌いと言う方,あるいは,雄大な自然が展開する車窓風景を楽しみたいという方向きなのが,パリからクレルモン–フェランを経由してニームに至るルートです.特に,美しいのは,ランジャック(Langeac)からランゴーニュ(Langogne)までのアリエ川(Allier)に沿って走る区間で,しかもフランスでは珍しい山岳地帯に敷設された路線のため,トンネル,鉄道橋,築堤などが多く存在し,さながらシヴィル・エンジニアリング の野外展示場といった景観を目にすることができます.

フランス国有鉄道のサイトでこの経路を走る列車を確認すると,パリのベルシー(Gare de Paris-Bercy)駅7:02発の都市間急行(Intercité)5951レでクレルモンーフェランまで行き,同駅発12:40の同じく15951レに乗り換えてニームに向かうことが可能であることが判りました.ニーム到着同日17:49.3時間もかからないTGVでの移動に比べ,こちらは,距離的にはTGVの経路より短いのですが,一日がかりです.

ランジャックからランゴーニュまでの路線には,近年, 地元の元鉄道職員たちが中心となって設立された団体SMATによって,夏の間のみ観光列車が運行されるようになりました.それでも,首都から南仏へ向かう旅行客の大半は,リヨン経由のTGVを利用することに加え,数多くの構造物の保守のために高額な予算が必要なため,国鉄としては廃止という選択肢も検討しているそうです.SMATは,この路線の存続のためにも,ユネスコの世界遺産への登録を望んでいます.

この風光明媚な路線(Le Train Touristique des Gorges de l'Allier)についての詳しい情報は,こちらからどうぞ.(English, French, German pages available.) また,ドイツ南西放送局によって以前に制作された当該路線のリポルタージュの視聴も同放送局のメディアティークから可能です.

なお,上記路線を訪れるSL好きの方には,南仏の美しい風景の中を走る蒸機列車に乗車されるのも楽しい経験になるかも知れません.ニームからは若干離れていますが,路線の名称は,Le Train Touristique de Pignes(松ぼっくり鉄道)*1).蒸機列車は,5月から10月までの間,毎日曜日にPuget-ThéniersとAnnot間で運行されます.運行主体は,プロヴァンス鉄道.鉄道で現地に赴くには,ニースから向かうと比較的接続が良いようです.詳しくは,こちらから.また,電子版Le Monde紙のLifestyleの次の記事でもこの路線が取り上げられていました."Le train des Pignes, vénérable tortillard provençal" 南仏らしい趣のある集落を背景に,美しい石造りの鉄道橋の上を走る可愛らしいタンク機関車は絵になります.


*1) この名称の由来ですが,次の伝説に基づいています.ある,クリスマスイブに,この路線の踏み切り番の家で暖房用の薪を切らしてしまいました.そのことに気づいたある機関士が,自ら運転する機関車の石炭をその踏み切り番に分けてあげました.しかし,この心優しい機関士の運転する機関車は,走行中,案の定燃料が足りなくなってしまいました.そのとき,機関車の石炭庫に無数の松ぼっくり(この地方は,松が多数はえています)が落ちて来たので,それを燃料代わりにして無事に列車は目的地迄たどり着く事ができたというもの.

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