以下にご紹介するのは,2014年に予定されているイベントの一部ですが,あくまでも現時点で入手できる情報に基いたものです.
毎年ドイツで行われるSL祭の中で最も規模が大きいものというと,ドレスデンで開催されるDampfloktreffenです.2014年は,その第6回目が開催されますが,期間は4月11日から14日.ドレスデン,ライプチヒ間鉄道開業175周年ということもあり,文字通りドイツ中の現役スター機関車が集結する世紀の大イベントといっても過言ではありません.展示予定の機関車のリストはこちらから.(リスト上,太字で書かれた車両が動態保存機です.備考に"Betriebsfähig"とも書かれています.)さらに,参加する機関車がそれぞれファンを乗せた特別列車を牽引してやってくるというのも,こうしたイベントに花を添えるサブイベントですが,来年は01 118,01 150,01 202,01 509,01 533などがこうした特別列車を牽引してドレスデンを訪れます.さらに,直径2300 mmの大動輪をはいた現存する最速の動態保存機18 201の参加も予定されているようなので,これらのパシフィッックレディたちが集まる来年のSL祭には,今年のバージョン以上の迫力と充実度が期待出来そうです.
その他,ハレのDB博物館(5/10には夜間公開.ゲスト車両も参加する大規模なSL祭は10/18,19),ノイエンマルクトの蒸気機関車博物館(春季は6/7-9),そしてハイルブロンの南ドイツ鉄道博物館(9/6,7)などでSL祭が予定されています.また,ドイツではありませんが,スイスのジサッハでもSL祭が開催される可能性があり,開催された場合,ドイツ機の他,スイスで保存されているフランス機も展示されると思われます.
*ノイエンマルクトのSL祭行の特別列車がラウジッツァーSLクラブによって運行されます.また,ジサッハのSLデーの予定はまだ発表されていません.
上記の博物館は,開館している場合は他の日でも入館できますが,通常,車両は扇形車庫などの屋内に展示されているため,思い通りの構図での撮影はほぼ不可能です.SLフェストでは,これらの車両やゲスト車両が屋外でお披露目されるため,ファンに囲まれてはいるものの,より好ましい条件での撮影が可能です.
そのなかで,人気のある形式というと急行旅客用パシフィックの01や03ですが,写真を見ると判るように,それぞれいくつかの異なるバリアントがあります.すなわち,01 066, 01 118, 01 137は,大きなヴァグナー式除煙板を備えた,戦前のドイツ帝国鉄道の統一規格機関車(Einheitslok.)としての外観をとどめている二気筒モデルですが,今年の5月に復活した同じく二気筒の01 150は,除煙板が戦時機関車の52から導入され,戦後はドイツの蒸気機関車の標準仕様となった小さなヴィッテ式に変えられています.また,復活した姿を見るとエプロン部の覆いが両サイドで切り取られているようです.なお,このページでは紹介されていませんが,01 150とほぼ同様の外観の01 202がスイスで動態保存されています.(両方共,旧西ドイツ国鉄機で,特に後者はエプロン部が戦後のDB車両の仕様に従い完全にカバーが外されています.また,戦後のDB車両においては煙室扉中央の円形開閉ハンドルがほとんど外されていますが,前者には残っています.)
次の製造番号509, 519, 531, 533は,戦後,東ドイツ国鉄において改造された01.5という形式に属する車両で,重油燃焼式の二気筒モデルです.そして,01 1066と01 1100は,三気筒モデルで形式は01.10です.なお,最後の01 1102については,数年前,ハイルブロンの鉄道博物館で見たときは屋外で雨ざらしとなっていて,しかもメインロッドもされていたので,もはや動態保存機ではないと思われます.
軸重20 tの01に比べて,18 tの03は,その細身のボイラーのためよりエレガントなシルエットを持っていますが,03 001は帝国鉄道時代の面影を残した二気筒モデル,03 1010はヴィッテ式除煙板が装着されているとはいえ,エプロン部が完全に覆われている旧東ドイツ国鉄所有の三気筒モデルで,形式は03.10です.なお,2204と2295は,どちらも二気筒モデルですが,煙室の上におむすびというか,茶巾寿司のような形の混合予熱器が搭載された東ドイツ国鉄の改造機です.東ドイツ国鉄によって改造を施された車両は,01.5もそうですが,通常このようにエプロン部全面を覆うカバーが残されています.2204と2295という製造番号ですが,東ドイツでは1970年以降導入された電算処理番号(EDV-Nummer)で,EDV番号導入以前は,それぞれ03 204,03 295でした.*1) このうち,03 2204は現在オーバーホールが実施されており,当面(少なくとも2014年)の運行予定はありません.(詳しくはLDCのこちらのページをご覧下さい.)また,旧バイエルン鉄道博物館所蔵機03 2295は,すでに動態保存機としての役目は終えており,現在アウグスブルグ鉄道公園に静態保存されています.なお,同じタイプの動態保存機に03 2215がありますが,こちらは民間企業の所有車両で各地で特別列車の牽引に活躍しています.
次は,お目当ての機関車が牽引する特別列車の運行情報を探します.ドイツの蒸気機関車の特別列車の運行情報を探す際,一般的なのはEisenbahn Planerの参照ですが,直接,お目当ての機関車が所属する団体のサイトを参照するのが手っ取り早く,また確実な方法です.(といっても殆どの場合,ドイツ語で書かれたページのみなので,必要に応じて英語や日本語への翻訳ツールを使って閲覧されたらいかがしょう.)以下,上述した機関車の運行予定からいくつかご紹介します.
01:
まず,ヴァグナー式除煙板を備えた最もオリジナルに近い形状の01が牽引する特別列車の運行についてお伝えします.
- 形式写真派の方へ:
毎年ドイツで行われるSL祭の中で最も規模が大きいものというと,ドレスデンで開催されるDampfloktreffenです.2014年は,その第6回目が開催されますが,期間は4月11日から14日.ドレスデン,ライプチヒ間鉄道開業175周年ということもあり,文字通りドイツ中の現役スター機関車が集結する世紀の大イベントといっても過言ではありません.展示予定の機関車のリストはこちらから.(リスト上,太字で書かれた車両が動態保存機です.備考に"Betriebsfähig"とも書かれています.)さらに,参加する機関車がそれぞれファンを乗せた特別列車を牽引してやってくるというのも,こうしたイベントに花を添えるサブイベントですが,来年は01 118,01 150,01 202,01 509,01 533などがこうした特別列車を牽引してドレスデンを訪れます.さらに,直径2300 mmの大動輪をはいた現存する最速の動態保存機18 201の参加も予定されているようなので,これらのパシフィッックレディたちが集まる来年のSL祭には,今年のバージョン以上の迫力と充実度が期待出来そうです.
両機とも静態保存機ですが,帝国鉄道時代の形状を留めています.以前,オープンエンジンハウスの際に訪れたドレスデン鉄道博物館(Altstadt)にて. |
同上.旧ザクセン国鉄 XX HV形.4気筒で1905 mmの大動輪を備えたミカドエンジン.(1'D1' h4v) |
その他,ハレのDB博物館(5/10には夜間公開.ゲスト車両も参加する大規模なSL祭は10/18,19),ノイエンマルクトの蒸気機関車博物館(春季は6/7-9),そしてハイルブロンの南ドイツ鉄道博物館(9/6,7)などでSL祭が予定されています.また,ドイツではありませんが,スイスのジサッハでもSL祭が開催される可能性があり,開催された場合,ドイツ機の他,スイスで保存されているフランス機も展示されると思われます.
*ノイエンマルクトのSL祭行の特別列車がラウジッツァーSLクラブによって運行されます.また,ジサッハのSLデーの予定はまだ発表されていません.
上記の博物館は,開館している場合は他の日でも入館できますが,通常,車両は扇形車庫などの屋内に展示されているため,思い通りの構図での撮影はほぼ不可能です.SLフェストでは,これらの車両やゲスト車両が屋外でお披露目されるため,ファンに囲まれてはいるものの,より好ましい条件での撮影が可能です.
- 走行写真派の方へ:
そのなかで,人気のある形式というと急行旅客用パシフィックの01や03ですが,写真を見ると判るように,それぞれいくつかの異なるバリアントがあります.すなわち,01 066, 01 118, 01 137は,大きなヴァグナー式除煙板を備えた,戦前のドイツ帝国鉄道の統一規格機関車(Einheitslok.)としての外観をとどめている二気筒モデルですが,今年の5月に復活した同じく二気筒の01 150は,除煙板が戦時機関車の52から導入され,戦後はドイツの蒸気機関車の標準仕様となった小さなヴィッテ式に変えられています.また,復活した姿を見るとエプロン部の覆いが両サイドで切り取られているようです.なお,このページでは紹介されていませんが,01 150とほぼ同様の外観の01 202がスイスで動態保存されています.(両方共,旧西ドイツ国鉄機で,特に後者はエプロン部が戦後のDB車両の仕様に従い完全にカバーが外されています.また,戦後のDB車両においては煙室扉中央の円形開閉ハンドルがほとんど外されていますが,前者には残っています.)
次の製造番号509, 519, 531, 533は,戦後,東ドイツ国鉄において改造された01.5という形式に属する車両で,重油燃焼式の二気筒モデルです.そして,01 1066と01 1100は,三気筒モデルで形式は01.10です.なお,最後の01 1102については,数年前,ハイルブロンの鉄道博物館で見たときは屋外で雨ざらしとなっていて,しかもメインロッドもされていたので,もはや動態保存機ではないと思われます.
ドイツやオーストリアで複数の動態保存機が存在し特別列車の牽引や他のイベント等でよく目にする01.5形.(ノイエンマルクト付近.) |
軸重20 tの01に比べて,18 tの03は,その細身のボイラーのためよりエレガントなシルエットを持っていますが,03 001は帝国鉄道時代の面影を残した二気筒モデル,03 1010はヴィッテ式除煙板が装着されているとはいえ,エプロン部が完全に覆われている旧東ドイツ国鉄所有の三気筒モデルで,形式は03.10です.なお,2204と2295は,どちらも二気筒モデルですが,煙室の上におむすびというか,茶巾寿司のような形の混合予熱器が搭載された東ドイツ国鉄の改造機です.東ドイツ国鉄によって改造を施された車両は,01.5もそうですが,通常このようにエプロン部全面を覆うカバーが残されています.2204と2295という製造番号ですが,東ドイツでは1970年以降導入された電算処理番号(EDV-Nummer)で,EDV番号導入以前は,それぞれ03 204,03 295でした.*1) このうち,03 2204は現在オーバーホールが実施されており,当面(少なくとも2014年)の運行予定はありません.(詳しくはLDCのこちらのページをご覧下さい.)また,旧バイエルン鉄道博物館所蔵機03 2295は,すでに動態保存機としての役目は終えており,現在アウグスブルグ鉄道公園に静態保存されています.なお,同じタイプの動態保存機に03 2215がありますが,こちらは民間企業の所有車両で各地で特別列車の牽引に活躍しています.
次は,お目当ての機関車が牽引する特別列車の運行情報を探します.ドイツの蒸気機関車の特別列車の運行情報を探す際,一般的なのはEisenbahn Planerの参照ですが,直接,お目当ての機関車が所属する団体のサイトを参照するのが手っ取り早く,また確実な方法です.(といっても殆どの場合,ドイツ語で書かれたページのみなので,必要に応じて英語や日本語への翻訳ツールを使って閲覧されたらいかがしょう.)以下,上述した機関車の運行予定からいくつかご紹介します.
01:
まず,ヴァグナー式除煙板を備えた最もオリジナルに近い形状の01が牽引する特別列車の運行についてお伝えします.
- 01 066(バイエルン鉄道博物館)
ネルトリンゲンのバイエルン鉄道博物館の2014年の特別列車の運行予定が公開されていますが,01 066牽引列車はなさそうです.(その代わり,ボイラー耐用期限が切れる18.4(S 3/6)の運行が予定されています.)
- 01 118(フランクフルト保存鉄道協会)
現時点で同機が牽引する列車の運行は5/1,28-6/1,6/7(ノイエンマルクトSL祭と連携企画),6/8,9(タウヌスSL祭行特別列車.52牽引の可能性も有り.),9/6,9/20-21,10/11に予定されています.詳しくは同協会のフライヤーをご覧下さい.次に,ヴィッテ式除煙板付01が牽引する特別列車ですが,150号機,202号機を併せてこちらはかなりたくさん予定されています.
- 01 150(鉄道財団)
現時点で予定されている運行日は,1/5, 6(ツォレルン鉄道友の会),2/8, 4/10(ドレスデン鉄道博物館のSL祭との連携企画), 9/27です.
- 01 202(パシフィック01 202協会)
1/18,19(アルペンSL急行), 26, 2/8, 22, 3/29, 30, 4/10-14(ドレスデン鉄道博物館のSL祭を訪れるパッケージ旅行専用列車),5/3,4.
- 01 509(プレスニッツタール鉄道)
4/5, 11-14(ドレスデン鉄道博物館のSL祭との連携企画),5/17, 6/14, 10/3, 4
- 01 533(オーストリア鉄道歴史協会)
ウルム鉄道友の会による運行が3月8日,4月10-13日に予定されています.(4月10-13日はドレスデン鉄道博物館のSL祭との連携企画.ウルム鉄道友の会の特別列車に関するパンフレットはこちらからダウンロードできます.)
そして,三気筒モデル01.10(西ドイツ国鉄のEDV番号においては,石炭燃焼機は011,重油燃焼機は012へ変更)が牽引する列車ですが,まずウルム鉄道友の会が所有する重油燃焼式の01 1066(012 066-7)が2014年の4月29日に耐用期限を迎え,大規模な点検が予定されているため,当面の運行はありません.(なお,同会では01 1066の点検修理のための寄付を受け付けています.詳しくはこちらをご覧下さい.)また,01 1100は,オーバーハウゼンのSLクラブが所有するマシンのようですが,どのような状態にあるのか不明です.同クラブによる特別列車の運行予定には今のところ01 1100の記載はありません.今年の12月7日と来年の1月18日に予定されている特別列車は,美しいミカド機の41が牽引します.そのため,現時点で現役の01.10というとオランダSL財団が所有する01 1075のみとなります.
03:
03:
- 03 1010(DBハレ鉄道博物館)
3/22(ラインシュライフェン鉄道主催のラインゴールド号の先頭を飾ります.予約は3月2日迄.),4/11, 12, 13(ドレスデン鉄道博物館のSL祭との連携企画.01 509,35 1097との三重連が予定されています.詳しくはこちらのページをご覧下さい.後半に英語の説明が記載されています.予約はSonderzug@igbwdresden-altstadt.deまで.もちろん英語で大丈夫のはずです.ドイツ語でのオンライン予約はこちらから.)
- 03 2155(Wedler Franz Logistik GmbH & Co. KG)
5/24(チューリンゲン鉄道協会によるチューリンゲン周遊),9/6(ラウジッツァーSLクラブ主催.文化都市ヴァイマール訪問やマイニンゲンの機関車工場見学付ツアー.後者においては,現在オーバーホールを実施されている同クラブ所有機03 2204の状態を確認することができます.),10/3(チューリンゲン鉄道協会主催ドイツ再統一記念運行)
なお,上述したドレスデンSLフェストのように大規模な行事の場合,参加するゲスト機関車が特別列車を牽引して到着するので,近郊でのそれらの走行シーンの撮影ももちろん可能です.
01と03のみに限ってしまいましたが,取り急ぎ,現時点で確認出来た情報は以上です.お役に立てば幸いです.なお,短期間でドイツのSLを満喫されたい向きには,やはりドレスデンのSL祭がお薦めです.もし数日間の余裕があるのであれば,4月10-13日に予定されているウルム鉄道友の会の同祭を訪れるパッケージツアーに参加されるとよいでしょう.10日(第一日目)にニュールンベルグからドレスデンに向かう専用列車が有名な勾配区間であるシーフェエーベネを通過するので,その際に牽引機01 533の力走を車内で体験することができます.また,18 201牽引の列車の運行が12日にドレスデン,ライプチヒ間で予定されていますが,それへの乗車もツアーに含まれています.そして,最終日の13日,ドレスデンからの帰路の牽引機は01 150とファンにとっては至れり尽くせりの4日間です.また,運行情報において言及しませんでしたが,ラウジッツァーSLクラブもウルム鉄道友の会と並んで,毎年,多くの魅力的な特別列車を運行することで知られています.同クラブの2014年の特別列車の運行予定が公開されているのでご参考にされてください.(殆どの列車はプレーリー形35 1019による牽引です.)
*1) 東ドイツ国鉄によりEDV番号が導入された際,重油燃焼機の製造番号の最初の数値として0を,石炭燃焼機については1から8までのいずれかを,そして粉炭燃焼機については9を加えるというルールが制定されました.二気筒の03の場合,二つのバージョン(001から122号機と123から298号機)が存在していたのですが,東ドイツ国鉄では両方のバージョンの製造番号の最初の数値は2とされました.なお,三気筒の03(03.10)については,重油燃焼機では0,石炭燃焼機では1となっています.このため,例えば,帝国鉄道へ引き渡された1940年当時,03 1010だったマシンには,1974年,つまりEDV番号導入後に実施された重油燃焼式への改造後は,03 0010-3のプレートが与えられ,さらに燃料不足が深刻化した1981年に石炭燃焼式に再改造された際には,03 1010-2へと再変更されました.なお,今日,Halleの鉄道博物館所属の動態保存機である同機は帝国鉄道当時の03 1010というプレートを掲げています.(詳しくは,こちらのページを参照ください.)
さらに,01についてですが,東ドイツ国鉄が所有していたのは二気筒機のみであり,石炭燃焼機では製造番号の最初の数値は03の二気筒機同様2が与えられています.最後に東ドイツ国鉄の改造機01.5(二気筒)についてですが,EDV番号導入後,製造番号の最初の数値は,01や03とは異なり,重油燃焼機の場合は0,そして石炭燃焼機の場合は1となっています.(どうにもややこしい限りです.)(Cf. Pruissen, T., Heym, R., Dampflokparadies DDR Die Reichsbahn der 1960er- und 1970er-Jahre in Farbe, GeraMond, München, 2011, pp18, 88ff)