Tuesday, 6 November 2012

フランス,水圧破砕によるシェールガス採掘禁止

先日のARTE+7おすすめ番組で,オハイオ州におけるシュールガス採掘についての話題をご紹介しましたが("リポルタージュ – 米国の学生債務のバブル/オハイオ州,最大の関心は経済"),11月6日付電子版仏ル・モンド紙に,"Gaz de schiste : le gouvernement exclut une reprise des recherches"という記事が載っていました.それによると,今年の9月15日,オランド大統領は,水圧破砕によるシュールガスの採掘今後5年間禁止することを表明しました.現在,シェールガスの採掘を可能にする唯一の方法である水圧破砕は,その環境や健康に対する影響を現時点において十分に把握できないため,リスクが大きすぎるというのがその理由です.この決定により,フランスは,世界で最初に水圧破砕を禁止した国になりましたが,シェールガス自体についての研究を禁止したわけではありません.

水圧破砕は,岩盤に水と砂と化学薬品の混合物を高圧で注入することで,それを破砕しシェールガスを採掘しますが,この方法には環境汚染を引き起こす可能性があるといわれています.そして,この採掘法の代替えとして,プラズマアークによる岩盤破砕や岩盤に注入する混合物の代わりとして超臨界状態の二酸化炭素を用いる方法などが研究されています.特に,前者は,水圧破砕では大量に必要とされる水の量を減らすことが可能といわれています.因みに,現在,アメリカでは,毎年水圧破砕のために,人口500万人の都市で消費される生活用水と同じ量の淡水が使われているそうです.

今後,シェールガスの採掘により,米国における天然ガスの価格は,ヨーロッパにおけるそれの1/2.5になるといわれています.一時は,フランスの競争力を高めてくれるものとして期待が寄せらたシェールガスですが,当面,その期待は叶えられなくなったわけです.

以上が,記事の要約ですが,フランスは,経済的競争力より環境や国民の健康を優先したといえます.

上述のリポルタージュによると,今回の米国大統領選では,両候補とも,オハイオ州の経済を立て直す有効なカンフル剤となりうる,同州におけるシェールガスの採掘を積極的に推進する姿勢を示しているようですが,現地の環境保護団体は,オランド大統領同様,深刻な環境汚染を発生させかねない水圧破砕によるシェールガスの採掘には反対しています.オハイオ州は,過去においても,石炭や鉄鉱石の採掘による環境汚染を経験しています.

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