Sunday, 7 October 2012

ミュルーズ鉄道博物館

"The Cité du Train invites you abroad a unique journey in Europe, this is one of the largest and richest collections of historic trains dating from the age of steam to the present day. "とパンフレットに書かれているとおり,とにかく広く,見所満載の博物館です.

まずは,忘れないうちに,博物館のウェブ・サイトのご紹介から.こちらです.(バーチャルツアーも可能.)
キュレーターのJean-Marc Combeさんによる展示についての説明は,こちらです.(英文)
また,詳しい展示内容は,PressのページにあるDownload the press pack of the “The Platforms of History”からダウンロードできます.

次に,展示品の中で特に印象に残ったものについてご報告します.

最初は,なんといっても,フランス国鉄の最後の蒸気機関車,"女神"(La Divine)のニックネームで知られる232.U.1です.フランス国鉄の蒸気機関車の形式名は,単純で,機関車本体の軸数を表記したものです.すなわち,232の場合は,機関車の先についている,先輪と呼ばれるタイヤの軸数の2,動輪という,シリンダの往復運動が伝わる大きなタイヤの軸数3,そして,運転室の下の従輪と呼ばれるタイヤの軸数2を右から左に並べたものです.そして,その後ろのアルファベットの文字は,製造された世代を表します.つまり,Aであれば,この軸配置を持った機関車の最初に製造された形式というわけです.なお,電気機関車やディーゼル機関車の場合は,台車ごとの動輪の軸数が,軸数に相当するアルファベットによって表記されます.例えば,"CC"なら,その機関車の動輪がついている台車は二つで,それぞれに3本の車軸がついているという意味です.

こうした,蒸気機関車の形式名は, 1938年,フランスの各地に存在していた私鉄が統合,国有化され,フランス国鉄(La Société Nationale des Chemins de Fer Française, 略称:SNCF)が誕生するまで,それらの私鉄のうちの一つ,PLM(La Compagnie des Chemins de fer de Paris à Lyon et à la Méditerranée)によって採用されていたものでした.*1)

フェンダーにあしらわれた銀色のラインは,白鳥を意味しているものだとか.
動輪直径は2000mm,シリンダは4つ.ドイツの機関車などとは異なり,両側が低圧力用,内側の2つが高圧力用となっている.フランスの4シリンダ機は,おしなべて同様の構造.最高速度は,140km/h.車輪のフランと呼ばれる枠に白い塗装が施されているのは,この機関車が特別なものであることの印だそうです.
20分毎に動輪やそれに回転を伝えるメインロッドなどのランニングギアのデモンストレーションがあります.なかなかの迫力.









こちらは,241 A形.マウンテン形と呼ばれるフランス国鉄の代表的旅客列車用機関車.4気筒.動輪の直径は,1950mm. 最高速度110km/h.なお,フランス国鉄のマウンテン機については,Wikipediaのこちらのページをご覧下さい.(フランス語のページでは,各マウンテンタイプの詳しい解説へのリンクもあります.)また,動態保存されている241形については,こちらのポストをご覧下さい.
パリ北駅とロンドン・ヴィクトリア駅を結んだ往年の豪華列車ゴールデン.アロー号(フランス語では,FLECHE D'OR)の先頭を飾った旧北鉄道会社の3.119形(国鉄誕生後は,231 E). 231形の最も完成されたモデルのひとつで,スーパーパシフィックの異名を持つ4気筒の高性能エンジンです.煙突は,形状からギーゼル・エジェクターのようですね.くわしくは,フランス語ですが,こちらへ.現在,フランス国内で動態保存されているパシフィック機は,Le Pacific Vapeur Club231 G 558及びMFPN231 K 8です.なお,フランスのパシフィック機のリストは,Wikipediaのこちらのページをご覧下さい.
英国人技師Thomas Russell Cramptonによって設計されたクランプトン形.フランスでもライセンス生産された.動輪の軸は1本.1852年からパリ-ストラスブール間で活躍.直径2140mm*2)の大動輪を備え最高速度は120km/h.なお,展示されている機関車は,映画にも出演し,ソフィア・ローレンの脇役をつとめたとか.くわしいことは,こちらから.
こちらは,クランプトン形の模型.蒸気によって走るライブ・スチーム.
クランプトンの模型が登場したところで,以下は,開催されていた国際模型サロン(Salon international du modélisme 2012)の様子です.

後ろは,パリ・オルレアン鉄道のForquenot 121- 340形機関車
パリ・オルレアン鉄道のForquenot 121- 340形機関車のライブスチーム
やはり鉄道模型の花形といえば,一番ゲージでしょうか.
広いレイアウトを疾走するゴールデンアロー号.
"女神"232 U 1
 

続きまして,往年の豪華列車を構成した車輌の内部.

ワゴン・リ社の食堂車3348 VR(その他のワゴン・リ社の車両の現在の所在については,こちらのサイトが参考になります.)また,伝説の国際列車オリエント急行の車両の展示会が2014年4月からパリで開催されましたが,その模様をこちらのポストで紹介しています.なお,パリには本物のオリエント急行の車両を使ったLe Wagon Bleuというレストランがあります.

下の写真は,昔のパリの地下鉄の車輌の客室内部です.

 

その他,TEE(欧州縦断特急)のコーナーも設けられていて,キャピトール号やミストラル号の先頭を飾った電気機関車なども見ることができます.

ル・ミストラルの牽引機241P(スイスで1両が動態保存されており,2013年9月28日には同じくマウンテンの241Aと重連でゴッタルド峠越えに挑みます.詳しくはこちらのポストをご覧下さい.)なお,ル・ミストラルについては,牽引機の変遷も含め,その詳細がWikipediaのル・ミストラル(列車)の項に記載されています.

大統領専用列車用機関車 パリ・オルレアン鉄道のForquenot 121- 340形
おなじみユーロスター

ひととおり見学を終えて,最後は,博物館内のレストランLe Mistral内に飾られている電気機関車の模型

レストランで注文した子牛のステーキを待っている間に,たまたまスタンドでワインを飲んでいた職員の方に単純な質問をしたところ,再び会場内に連れてゆかれ,展示についてのくわしい説明をたっぷりと個人教授.基本的にフランス語での説明でしたが,重要なポイントについては,英語で繰り返すという熱の入れようで,席に 戻ったとき,すでに運ばれてきていた料理はほどんどさめていましたが,色々と知ることができて大満足.さめた料理もおいしくいただきました.




*1) フランスの蒸気機関車については,Wikipediaのこちらの項をご覧下さい.(フランス語のみ)また,ナンバープレートについては,同じくこちらを.また,機関車のタイプの車軸配置による表記についてはこちらをご覧下さい.
*2) 説明をしてくださった職員の方によると,動輪の直径を10センチで割った数が,ほぼスポークの数になるとのことだったので,一緒に数えてみたところ,確かに21本ありました.なるほど.

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