もし,世界に存在する砂漠の1%の面積に太陽熱発電の設備を設置できたら,全世界で消費される電力のすべてを賄うことができるといわれます.この発見がきっかけとなって,ローマクラブに所属するドイツ人メンバーにより,2009年,Desertecという財団が設立がされました.この財団は,シーメンス,ドイツ銀行を始めとするヨーロッパの代表的企業を束ねるDIIと呼ばれる共同企業体と関係を持ち,広い砂漠を有する中東や北アフリカの国々を,大規模な太陽発電施設の建設に協力してくれるように説得を続けています.番組は,こうしたDesertecの活動や技術者達の研究の模様をリポートします.すでに,モロッコにおいて,2014に運転開始が予定されている発電施設の建設が開始されました.こうした砂漠における発電施設の運転により,2050年には,これらの発電施設を所有する国々のすべての電力需要およびヨーロッパの電力需要の15%を賄うことが計画されています.
(ドイツ,2012年,60分)
北ドイツ放送制作
視聴可能期間:2012年10月23日より1週間
L'énergie du Sahara(フランス語版)
Strom aus der Wüste(ドイツ語版)
以上が,番組内容ですが,アルジェリアとスペイン,イタリアの間では天然ガスのパイプラインが稼働していますが,今後,サハラ砂漠で生産される電力がヨーロッパに供給されるようになると,ますます地中海世界の経済的な結びつきが強くなりそうです.が,その前にアルジェリアも含めて北アフリカのイスラム諸国の政治的安定が欲しいところです.それとも,こうした形で設備投資が増えることが,この地域の政治的安定に寄与するのでしょうか.
番組を視てみると,Desertecが取り組んでいるのは,北アフリカや中東の砂漠地帯における太陽熱発電所(Solar Thermic Plant)の建設でした.確かにこの方式だと,蓄熱が可能のため,昼夜連続しての発電が可能となります.この点では,天候に左右される風力発電や太陽光発電(Photovoltaic)に比べて有利です.しかし,太陽熱発電所の建設には,例えば風力発電施設等に比べて時間も費用もかかるため.経済成長が著しい北アフリカの急速に増加し続ける電力需要にオンタイムで応えられるのか疑問を持つ専門家もいます.このため,例えばドイツなどよりも強い風が吹くモロッコ等では,むしろコスト的に比較的安く,また建設期間も短い風力発電を推進した方が良いのではないかという声を聞かれます.太陽熱発電所を建設するにあたり,もうひとつのネックは,水です.太陽熱発電施設では,太陽光を集めるために多くの鏡が設置されます.砂漠のような場所では,すぐにそれらに埃が付いてしまい性能が低下するため,水を使っての清掃が不可欠です.このために必要とされる水量は,1日1平方メートルあたり25から40リットル.一年あたりに換算すると5000万リットルになります.ただでさえ,水が足りない砂漠において,これほどまでに多量の水を発電のために,しかもその一部を輸出するために使うことが果たして許されるのかということです.砂漠には,ほとんど雨が降らないため,水は,過去数百万年にわたって地中の空洞に蓄えられてきたものが使われます.そのため,多量に使用すると枯渇してしまう可能性があります.そして,気になる政治的安定性ですが,これまでに世界中で実行されたテロ攻撃といわれる行為において,エネルギー関連施設の標的となったケースは全体の4%以下だそうで,Desertecにいわせれば問題ないだろうとのことのようです.
いずれにせよ,Desertecの計画を実行に移すには,欧州連合やドイツ政府の資金面での援助が不可欠です.それらを獲得するため,Desertecは,様々な機会を使って政治家たちの説得を続けています.
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