Monday 19 November 2012

パレスティナ人医師の著書『私は,憎まない』

激化の一途を辿るイスラエルとハマスとの戦闘は,多くの民間人犠牲者を出し続けています.攻撃の対象となっているガザ地区は,2008年から2009年にかけてもイスラエルの攻撃にさらされ,多くの民間人が犠牲となりました.当時,イスラエルの病院の勤務医だったパレスティナ人医師Izzeldin Abuelaishさんも,1月16日,自宅がイスラエルのミサイルによって直撃され,三人の娘さんと一人の姪御さんを失いました.当時,ジャーナリストが取材のためにガザ地区に入るのは,イスラエル政府によって禁止されており,Channel 10の記者Shlomi Eldarさんは,友人のAbuelaishさんに電話をかけ,ガザ地区の状況を伝えてもらっていましたが,Abuelaishさんの自宅にイスラエルのミサイルが着弾した直後,Abuelaishさんのほうから,当時,生番組に出演中のEldarさんに電話がかかってきました.その時の状況を伝えているのが,このビデオです.(当該の番組は,イスラエルのテレビ局で放送されたものですが,その一部がアルジェジーラの番組内で放送され,それが録画されたようです.画面に写っているのは,命を取り留め,イスラエルの病院に収容されるAbuelaishさんの娘さん.連絡を受けたEldarさんの努力で,パレスティナの救急車からイスラエルの救急車へのリレー搬送が実現したと番組は伝えています.)



そのAbuelaishさんが,"Je ne hairai point" (英語版タイトル"I shall not hate")という本を出しました.自身の著書の中で,Abuelaishさんは,住民170万人のうち80%が貧困に喘いでいるというガザの現状を伝えています.その序文を執筆した,Abuelaishさんの同僚のイスラエル人医師Marek Glezermanさんは,その中で,「Abuelaishさんは,これまで多くのつらく悲しいできごとを経験したが,彼は,パレスティナ人とイスラエル人が平和に共存し得ることを固く信じて疑わない」と書いています.Abuelaishさんは,また,中東における女子教育の促進のために,Daughter for Lifeという基金を設立しています.

以上,11月14日付電子版L'EXPRESS誌"Palestine: un médecin de Gaza épris de paix malgré la douleur"より.

今回の,イスラエルによるガザの攻撃は,イランへの攻撃を目論む前者による予行演習のようなものであるといった見方もあるようですが,この先,もし,パレスティナ難民がエジプトに大量に押し寄せる事にでもなったら,ただですら不安定なシナイ半島は,パレスティナからのイスラム原理主義者たちの流入により一層不安定化しかねません.そして,最悪のシナリオとして,もしイスラエルが,シナイ半島にまで攻撃の手を伸ばすようなことになったら,再び,石油ショックのような状況が起きないとも限りません.いずれにせよ,もうこれ以上の犠牲者を出さないように,一日も早く,両者による停戦が実現をすることを願っています..

なお,ドイツ語で恐縮ですが,ドイツ紙"Focus"が提供するイスラエルとハマスとの戦闘の様子と関連情報を伝えるLivetickerはこちらです.

また,こちらもドイツ語ですが,スイス放送が提供するパレスティナの地図はこちらです.

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