Tuesday, 25 November 2014

観測史上最高を記録した今年の気温と懸念される今後の影響

11月21日付Spiegelの"Oktober bricht erneut Wärmerekord"によると,今年の5月,6月,そして9月は,世界的に視て観測史上最高気温を記録しましたが,10月も同様だったようです.10月に観測史上最高気温が記録されたのは,昨年に続いて2度目で,今年10月の気温はアメリカ海洋大気庁(NOAA)の発表によると,世界的に昨年に比べ,0.01度ほど高かったようです.

このまま行くと2014年は,人類が気象観測を始めてから最も気温が高かった年となる可能性が高く,実際,1月から10月までの平均気温の10.3度という値は,1880年以来の最高値だそうです.この値は,また,20世紀の平均気温も1.05度程上回っていて,そのため,仮に11月と12月の平均気温が下がったとしても,2014年の記録更新は,ほぼ間違いなさそうです.

こうした気温の上昇の原因として,NOAAの専門家Deke Arndtさんは,まず,海面水温の上昇を挙げ,過去6ヶ月間における海面水温が観測史上最高を記録したと述べています.それに加えて,南ヨーロッパの一部,南アジアおよび東南アジア,さらにアメリカ西海岸,ラテンアメリカの南部,また,シベリア,オーストラリアの南部と西部での気温の上昇も原因としています.

こうした地球規模での気温の上昇は,様々な分野において,その影響を及ぼし始めているということが11月22日付のL'OBSの"Chauves-souris, koalas, grolars... Le réchauffement climatique en chair et en os"によって報告されています.

最初は,動物たちへの影響です.まず,11月15日からオーストラリアのシドニーから600 Km離れたCasinoという町の道々が5,000匹ものオオコウモリの死体で溢れましたが,この奇怪な現象は,この町の気温が44度を記録した直後に発生しました.(Cf. Huffington Post)また,オーストラリアというと,おなじみのコアラですが,彼らも熱さが苦手です.コアラの生態研究のエキスパート,シドニー大学のMathew Crowtherさんによると,2009年の熱波によって当時生息していたコアラの1/4が死に絶えたそうです.(詳しくは,L'OBSのこちらの記事とこちらのギャラリーをご覧下さい.)

次に被害者として挙げられているのは,セイウチです.同じくL'OBSのこちらの写真(9月撮影)をご覧頂くと35,000頭ものセイウチが,生息のために必要な氷盤が減少したため,アラスカの北西部のPoint Layの海岸に避難する様子が捉えられていますが,このように海岸にセイウチが密集するのは,10年前には見られなかった現象で,United States Geological Survey(USGS)のChad Jayさんによると,やはり温暖化の影響のようです.(詳しくは,L'OBSのこちらの記事をご覧下さい.)

さらに,気候の温暖化は新たな動物の種を創り出してしまったようで,その名は"grolar",あるいは"pizzly"で,ハイイログマと北極熊の混血だそうです. つまり,北極における氷盤の溶解が進んだために南下せざるを得なくなった北極熊と,温暖化のために北の森林地帯へと移動したハイイログマの出会いの結果だそうです.(詳しくは,Le Figaroのこちらの記事とRTLのこちらの記事をご覧下さい.)

そして,私たち,人間への影響も出始めています.すでに,温暖化による海面の上昇により住む土地を失った気候難民と言われる人たちが出て来ていて,パプアニューギニアでは,数十万にも及ぶ住民が避難を余儀なくされています.(リベラシオンのこちらの記事が詳しく伝えています.)これに関連した国連の機関Irinの報告によると,過去数年間で海面は10 cm上昇したそうです.他にも,バングラディシュは,今後2050年までの間に国土の20%を失うと予測されていて,すでに2005年には,バングラディシュで最大の島のひとつBholaは,その面積のおよそ半分が水中に没し,500,000人もの住民が住む家も生きて行く土地も失いました.そして,アラスカでも,Newtok村の350人もの住民が同様の状況に置かれました.(詳しくは,The Gurardianのこちらのページをご覧下さい.)

最後は,昨今,話題となっているシベリアで発見された大きな穴ですが,これも温暖化によるものと考える専門家がいます.彼らによると,二つの可能性が考えられるそうで,ひとつは永久凍土の溶解によるメタンガスの噴出によるもの,もうひとつはpingoと呼ばれる氷の丘の溶解によるものだそうです.(L'Expressのこちらの記事を参照ください.)

他には,北極の雪の色が黒くなりつつある(slate.fr),ビールの味が変わって来ている(futura-sciences.com),飛行機が通過する乱気流箇所が増加しつつある(voyages.blogs.ouest-france.fr),そして,カナダにおいて屋外でのホッケーが出来なくなりつつある(maxisciences.com)ことなどが温暖化の影響として挙げられています.

下は,今年の始めにNASAのGISSによって公開された60年間の地球の温暖化の様子を示したビデオです.

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