Sunday, 30 November 2014

サウジアラビア,イランに対し原油価格戦争開始

以下,Spiegelの11月28日付"Erzfeinde im Nahen Osten:Saudi-Arabien eröffnet Öl-Krieg gegen Iran"の要約です.

サウジアラビアにとって損をしない原油価格は年平均で85 USドル.しかし,現在の原油価格は72 ドルです. 普通なら,価格を上昇させるために減産を行うはずですが,今回はそれを見送りました.現時点でのサウジアラビアの外貨準備額は7,350億 ドル.(凡そアップル社の内部留保の4倍.)そのため,イラン,ロシア,そしてアメリカに対しても価格競争を挑む余裕があるというわけです.もちろん,サウジアラビアの不倶戴天の敵イランもそのことを十分に承知しています.

政治的にも,このふたつの国は,それぞれイエメン,レバノン,シリア,イラク,そしてバーレーンなどの国における影響力を強めようとしています.イランにおける原油による外貨収入は国家予算のほぼ70 %.ロハ二大統領は,2014年度の国家予算は100 ドル/バーレルのレートを想定して組んでいることを認めていましたが,現状の価格が続くと,1バーレル当たり少なくとも20 ドルほどの損失が生じてしまうことになります.このことは,核開発のために世界から被っている経済制裁と相まって,ますますイランの経済に深刻な打撃を与えてしまうでしょう.

サウジアラビアは,このほかにも自国内の少数派であるシーア派(対するイランはシーア派が多数派)の抵抗勢力の指導者Nimr al-Nimr氏を死刑に処しました.(実際は,逮捕の際に射殺.)このように,国内においてもシーア派に対する弾圧を強めるサウジアラビアについて,イランは,自らのアジア諸国への原油供給国としての地位をも危うくしていると批判しています.実際,今年の10月,サウジアラビアは,中国,インド,ベトナムなどに原油価格の値引きする意向を伝えています.

一方,ロシアについてですが,イランと異なりOPECには加盟していないこの国は,目下,原油価格の低迷の影響をもろに被っています.2014年のロシアの国家予算は,もちろん原油による外貨収入も見込んで立てられていますが,平均104 ドル/バーレルを想定しています.ということは,1バーレル当たりの原油価格が1 ドル下がるごとに,ロシアはおよそ20億 USドルを失うことになります.今年のロシアの国家負債は,こうした事情もあり60億から80億と推算されていますが,そうなると事実上ロシアは財政破綻したも同然となります.

さらに,アメリカとサウジアラビアによる原油価格の下落攻勢は,ロシアとイランによるシリアのアサド政権への援助を弱めさせる目的もあります.とはいえ,原油の低価格が長期に及ぶことはアメリカの望みではなさそうです.というのは,アメリカはフラッキングを用いたシェールオイルの採掘を進めていますが,この方法にはコストがかかります.政府の専門家は,シェールオイルで利益を得るには少なくとも80 ドル/バーレルのレートが必要と言っています.それでも得られる利益は僅かです.事実,フラッキングによるシェールガスの採掘は,中東におけるポンプ採掘に比較しておよそ4倍のコストがかかるのです.ということは,つまり,サウジアラビアによって低く抑えられている原油価格は,一応盟友であるアメリカとの関係にも良くない影響を及ぼしかねないというわけです.

関連記事:Wegbrechende Einnahmen: Ölpreis-Verfall würgt Russlands Wirtschaft ab in Spiegel

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