Saturday, 19 October 2013

スイスの夜景写真集"Helvetia by Night"

照明に輝く夜の都会から山頂の満月など,夜のスイスの風景を撮影した写真集"Helvetia by Night"が,NZZ新聞社から発行されました.ウェブギャラリーへのアクセスはこちらから.また,プロモーション用PDFファイルはこちらからダウンロード可能です.

SLトレインで訪ねるクリスマス・マーケット - 12月のドイツ特別列車運行予定から(つづき)

12月14日(土),15日(日)に運行されるChristkindl-Dampfbahnについての情報です.

運行区間:Augsburg - Landsberg am Lech(下掲の地図参照, 印の路線)
牽引機:38 1301
予約:
38形牽引の列車が,ロマンチック街道に沿いにサンタクロースを一緒に乗せて走ります.お子様には,プレゼントが配られます.ロマンチック都市ランツベルグの見所は,情緒あふれるクリスマス市や聖母昇天教会のLorenz Luidi作キリストの受難シーンなど.また,フッガー都市アウグスブルグでは,クリスマス市やクリスマス特別展示が開催される鉄道公園など.列車にはビュフェ車が連結され,温かい飲み物や軽食のメニューが用意されます.


Monday, 14 October 2013

SLトレインで訪ねるクリスマス・マーケット - 12月のドイツ特別列車運行予定から

個人的な好みから,テンダー機関車が牽引する列車をいくつかピックアップしてみました.(今シーズンは,今年復活した01 150*1)と23 1019*2)の活躍が特に目立ち,細身のエレガントな03 1010や2012年に復活した旧東ドイツ国鉄のレコロク03 2255の運行はあまりなさそうです.*3)  なお,予定されていた牽引機が変更になったり,最小催行人数に満たない等の理由により開催が中止される場合があります.*4) また,ザルツブルガーローカルバーンを除き,原則として往復のプランです.)
  • 12月7日(土)

      シュトリーツェルマルクトトレイン
    目的地:ドレスデン
    乗車駅:Cottbus, Drebkau, Senftenberg, Ruhland
    牽引機:23 1019 (35 1019-5)
    主催:ラウジッツァーSLクラブ
    予約:オンライン及び代理店(郵便番号別リスト)にて可能
    フライヤーダウンロード

    ドレスデンのクリスマス市,シュトーレンの語源となったシュトリーツェルマルクトを訪ねる旅.24 mの高さのクリスマスタワーは100体もの人形と美しいイルミネーションで飾られます.そして,当日の圧巻は,何と言ってもツヴィンガー宮殿から旧市場へ2 トンの重さのシュトーレンを運ぶ行列.到着後,巨大なシュトーレンは1.6 mのナイフで切り分けられ,市場のブースにて販売されます.

  • 12月7日(土)

    01 150とバンベルグのクリスマスマーケットへ
    目的地:バンベルグ
    乗車駅:Stuttegart, Waiblingen, Schorndorf, Schwäbische-Gmünd, Aalen, Ellwangen, Crailsheim, Ansbach, Nürnberg, Fürth, Erlangen
    牽引機:01 150
    主催:ウルム鉄道友の会
    予約:フライヤーに付属の書式に必要事項を記入して郵便,またはファックスで送るか,またはこちらのページからオンラインで申し込みます.

    今年の5月に蘇ったパシフィックの名機01 150が牽引する特別列車で,フランケンの美しい古都バンベルグの情緒豊かなクリスマス市を訪ねます.途中停車駅のニュールンベルグは,有名なDBミュージアムの最寄り駅.

  • 12月7(土),8日(日)

      アルプタールバーンのSLサンタトレイン
    目的地:Bad Herrenalb
    乗車駅:Ettlingen Stadt 
    牽引機:58 311旧領邦鉄道G 12形
    主催:ウルム鉄道友の会
    予約:オンラインにて可能

    Bad Herrenalbでは,サンタクロースと一緒にクリスマスキャロルを歌います.毎回,大人気ですぐに満席となるため,予約はお早めに.

  • 12月14日(土)

      01 150が牽引するクリスマストレイン
    目的地:ミュンヒェン
    乗車駅:Heilbronn, Bletigheim, Ludwigsburg, Kornwestheim Pbf, Stuttgart-Untertürkheim, Esslingen, Plochingen, Göppingen, Geislingen, Ulm Hbf, Günzburg, Augsburg Hbf, München Hbf
    牽引機:01 150
    主催:ベブラ・ノスタルジック・レイルツアーウルム鉄道友の会(共催)
    予約:オンラインにて可能*5)フライヤーダウンロード

    3000もの電球で飾られた巨大なクリスマスツリーが聳えるミュンヒェンのクリスマス市場を訪ねる旅.牽引するのは,今年の5月に蘇ったパシフィックの名機01 150.途中のGeislingenの勾配区間 (Geislingen an der Steige ,Amstetten間,下掲の地図上の緑色の星印の間で5.6 kmの山岳規格区間.最高勾配は22.5‰.)での奮闘が期待されます.特別列車は1950及び60年代のクラシック車両で構成されます.今回紹介した特別列車の中でも,7日のバンベルグ行きと並んで長距離のルートが設定され美しい沿線風景も十分に楽しめそうなプランです.なお,要確認情報ですが,出発地のハイルブロンの南ドイツ鉄道博物館には,雨ざらしとなってはいますが,ブルーレディことストリームラインの01 1102が展示されている可能性があります.(10月から2月中は土曜日のみ開館:11:00-16:00)また,途中停車駅のアウグスブルグにも鉄道博物館があります.こちらは,現在大規模な改装工事中で,開館日が限られているようです.

  • 12月14日(土)

      ゲルリッツで味わうシュレージェンのクリスマス
    目的地:ゲルリッツ
    乗車駅:Cottbus, Spremberg, Weißwasser, Horka
    牽引機:23 1019 (35 1019-5)
    主催:ラウジッツァーSLクラブ
    予約:オンライン及び代理店(郵便番号別リスト)にて可能
    フライヤーダウンロード

    チェコ国境の近く,美しいバロックとルネッサンス様式の家屋で有名なゲルリッツのクリスマスを堪能します.ゲルリッツ聖歌隊による本場のクリスマスキャロルの演奏も雰囲気を盛り上げます.さらに,Landkronのビール醸造場の見学も予定されていて,名物のBrauerbratenを肴に試飲およびビールジョッキのお土産付きのプランです.

  • 12月14(土),15日(日)

      リューデスハイム行クリスマストレイン
    目的地:リューデスハイム
    乗車駅:Darmstadt Hbf, Gross-Gerau, Mainz-Bischofsheim
    牽引機:23 1019 (35 1019-5)
    主催:ダルムシュタット-クラニッヒシュタイン鉄道保存会
    予約:オンラインにて可能

    16の国の100もの町のクリスマス風景を楽しむことができるリューデスハイムの世界のクリスマスを訪ねます.なかでも,等身大のフィギュアで飾られたヨーロッパで最大のキリスト降誕のシーンは必見です.なお,ダルムシュッタットにも鉄道博物館があります.博物館迄の交通機関としては,中央駅からDBの近郊線あるいは路面電車Nr.5を使います.開館時間は日曜日と祝日の10時から16時.12月22日から2014年1月12日迄閉館.(今年最後の開館は12月15日.)展示されている機関車のリストはこちらから.

  • 12月1(日), 8(日), 24日(火)

      ザルツブルガーローカルバーンで行くオーベルンドルフ
    目的地:オーベルンドルフ
    乗車駅:Salzburg-Itzling, Bergheim, Anthering, Oberndorf, Arnsdorf, Bürmoos, Riedersbach
    牽引機:不明
    主催:オーストリア鉄道歴史協会ザルツブルガーローカルバーン
    乗車券:当日,車内にて販売

    牽引機は不明ですが,やはりクリスマスということで『きよしこの夜』の発祥の地を訪ねるプランも載せておきます.(しかも,ドイツではなくオーストリアですが.)サンタクロースが同乗し,ビュフェカーも連結されます.(オーストリア鉄道歴史協会の冬のプログラムのパンフレットは,こちらからダウンロードできます.)

  • 12月7(土), 8(日), 14(土), 15日(日)

    サンタクローストレイン
    主催:ザウシュヴェンツレ鉄道

    ザウシュヴェンツレ鉄道としては,開業以来最初のサンタクローストレインが運行されます.このポストを書いた時点では詳細は不明ですが,ザウシュヴェンツレのスターエンジン50形が牽引するのであれば興味はあります.あるいは52か,タンク機(8693)の可能性もあります.今年のシーズンオープニングの模様は,こちらのSüdkurierのウェブギャラリーをご覧下さい.(52しか登場しなかったようですが.)

なお,番外編としてヘムニッツタール鉄道友の会が主催する鉄道馬橇の運行もロマンチックな思い出作りに役立ちそうです.乗客は,クリスマスイルミネーションに飾られたオープンの橇の上から流れる冬景色を毛布に包まりながら楽しみます.(12月21, 22日,13時から18時迄30分おきに運行)

以上の他にも多くのSL列車の運行が予定されています.詳しくは,本ブログの右上のヨーロッパ鉄道イベントプランナーで紹介しているリンク先サイトをご参照ください.なお,ザクセンのクリスマス風景を味わうのであれば,Zitauer SchmalspurbahnLössnitzgundbahnWeisseritztalbahnDöllnitzbahnなどの狭軌蒸気路線も要注目です.さらに,南ドイツ,ノルトリンゲンのバイエルン鉄道博物館(バイエルン鉄道観光)主催の特別列車の運行に関するパンフレットのダウンロードはこちらから.その中で個人的に特に注目しているのが,来年2014年2月1日に運行が予定されているウィンターエキスプレス(ノルトリンゲン発リンダウ往復)です.牽引するのは,映画『風立ちぬ』にも登場した伝説の名機18形(旧バイエルン国鉄S 3/6).鬼の笑い声が聞こえてきそうですが,予約および問い合わせはこちらから電子メールでどうぞ.(クリスマス列車ではありませんが,参考迄に,下掲の地図上の別レイヤーに 色のマークで走行路線を書き込みました.)

ところで,ご紹介した12月に運行される特別列車の中で目玉というと,なんといっても01 150が牽引するミュンヒェン行きクリスマストレインです.もし,12月6日日本出発,16日帰国といった少々長めの休暇が設定可能であれば,この1本と7日に予定されているドレスデンのシュトリェーツェルマルクトトレインを組み合わせたいところ.迫力溢れるアインハイツロコの01と23.10を間近に眺められるのに加え,ドイツの南と北の文化都市のクリスマスも堪能という贅沢な旅になります.(7日には,01 150が牽引するバンベルグ行きも運行が予定されていますが,こちらと14日の23 1019牽引のゲルリッツ行きを組み合わせるのも渋い選択といえそうです.)なお,いずれの列車も予約はお早めに.*6)


最後に,ドイツ語(スイス)のサイトですが,ヨーロッパ各地のクリスマス市の日程が記載されたサイトがあるのでご紹介します.アクセスはこちらからどうぞ.




*1) 今年の5月に復活してスターエンジンの仲間入りした01 150.そのうち,すでに活躍中の2両の妹たち(旧東独国鉄の改造機01 0509と01 533)と共演する機会もありそうです.もし,01の三重連が実現したら迫力あるでしょう.
*2) ヴィッテ除煙板で有名なフリードリヒ・ヴィッテが,長年構想を温めていた,ドイツの機関車としては異色の車軸配置である1'C1'の23をベースに旧東ドイツ国鉄によって開発された駿足モデル.2気筒ながら,なめらかな走りに定評があります.(個人的には,01よりも細身の23のほうが好みです.)なお,当該機のナンバープレートには,EDV番号ではなく旧来の番号の23 1019が表記されています.
*3) 12月1日に1本予定されているようですが,クリスマスとは関係なさそうです.詳しくは,03 1010協会のサイト内の運行予定をご覧下さい.03 2155の運行予定は,NossenのSL協会のこちらのページから.
*4) これまでの限られた経験から言えるとすると,ウルム鉄道友の会とラウジッツァーSLクラブ主催の運行で取りやめになるケースはまず無いと思われます.(これまで参加したツアーは,いつも満席あるいはほぼ満席でした.)バイエルン鉄博主催の運行の場合,以前に一度だけ,申し込んだ後に中止の知らせを受けたことがありました.
*5) 申し込み書式には国名を記入する欄がないため,テキストボックスに日本からの予約と申告し,必要な手続きを問い合わせると良いでしょう.もちろん英語で大丈夫です.
*6) ラウジッツァーSLクラブが主催するイベントについては,日本からオンラインで予約する場合,予約後,代金を銀行送金するため,十分に余裕を持って予約する必要があります.(数日前になるとオンライン予約サイト自体が削除されます.)また,ウルム鉄道友の会が主催するイベントについては,原則として事前の銀行振込が求められますが,当日,現地で現金支払いが可能の場合があります.その場合は,予約証明書を持参し,車内でスタッフに提示し,代金と引き換えに乗車券を受け取ります.(発券担当のスタッフは,通常,食堂車に待機しています.)最悪の場合,現地で飛び込みで空席がないか尋ねることも考えられますが,今回,紹介したようなイベントの場合,満席になることも十分予想されるため予約をお薦めします.なお,質問などについては,ドイツのイベント列車運行の双璧であるウルム鉄道友の会とラウジッツァーSLクラブのこと,毎回,海外から多くのファンが参加することもあり英語で問題なく対応してくれます.もちろん,他の団体も,英語による問い合わせに十分応じてくれるはずです.

Sunday, 13 October 2013

スイスのゴールデンパス急行の旅(ビデオ)

10月7日にドイツ南西放送局の番組Eisenbahn-Romantikで放送されたスイスのゴールデンパス急行のルポルタージュです.解説はドイツ語ですが,美しい沿線風景を楽しむことができます.アクセスはこちらから.(時間:28分47秒)

なお,Eisenbahn-Romantikの放送をPCで全画面視聴する場合,予めブラウザを全画面に拡大してから当該番組を再生させ,その後,再生画面を全画面に切り換えて下さい.

エネルギーを巡る話題二つ - フランス,中国,アメリカの進む方向

まず,フランスの憲法評議会が,オランド大統領によるシェールガスのフラッキングによる採掘の禁止が,憲法違反でないという評決を下したというもの.

ことの発端は,このオランド大統領の決定が企業の自由および(工業)所有権への侵害にあたるとして,アメリカのSchuepbach Energy LLCが憲法評議会にその合法性についての審査を申請したことでした.評決の結果に不服のSchuepbach Energy LLCは,今後も司法の場において主張を続ける以降のようですが,今回の評決により,憲法が変わらない限りフランスでのフラッキングによるシェールガスの採掘は不可能になりました.もっとも,オランド大統領としては,禁止したのはあくまでもフラッキングによる採掘であって,もし他の(環境に負荷をかけない,あるいは環境への負荷が少ない)方法であれば許可するのにやぶさかではないとのことですが,現時点において,フラッキングはシェールガスの採掘に用いることのできる唯一の手法のようです.

以上,L'EXPRESSの10月11日付"Gaz de schiste: la fracturation hydrolique reste interdite, et maintenant?"からでした.

もうひとつは,中東からの原油輸入量では,今やアメリカを抜いて世界第一位となった中国についての話題です.

現在,国全体がエネルギーを貪る喰う,とてつもないエナギボラス(energivorous)と化している中国.中東の,今のところ政情が比較的安定しているサウジ・アラビア,イラン,イラクにとって,また,中国市場の拡大が加速しているドイツの自動車製造業にとってみれば良い知らせですが,果たして深刻化するスモッグに悩まされている北京などの大都市民にとってはどうでしょうか.*1) ところで,これまで莫大な予算を投じられて中東の原油の安定的な供給を保障していたアメリカの海上軍事力ですが,今後,財政問題から縮小化が進むことも考えられます.アメリカ自体,豊富に埋蔵されているシェールガスやシェールオイルの採掘によりエネルギー輸出国になる可能性も取り沙汰されており,もはや当該海域における航空母艦によるパトロールを続ける必要性自体も議論の対象となるでしょう.同様に,ロシアもエネルギー資源は豊富であり,敢えてアメリカがこれまで担ってきた役割を引き継ぐ必要はありません.こうした中,中東産原油の輸入が増え続ける中国の出方が注目されています.果たして,太平洋,アフリカ,そして中央アジアで行っているのと同様に,中東にもその力を示すようになるのでしょうか.

以上,10月12日付Spiegelの"China und der Nahe Osten: Die widerstrebende Weltmacht"からでした.

最後にSpiegelが提供する2030年における世界のエネルギー需給状況を予想したインフォーグラフはこちらから.

関連ポスト:アメリカ,世界第一位のエネルギー資源輸出国へ水を巡るアジア危機 - 中国政府によるチベットの水資源独占の影響



*1)Cf. Mehr als 20 Prozent plus: Chinesischer Automarkt wächst im Eiltempo" in Spiegel, 11.10.2013

20 Minutenのヨーロッパを目指す難民のインフォーグラフ

スイスを含むシェンゲン圏内での人の移動は自由になりましたが,反対に圏外からのヨーロッパへの移住は非常に難しくなりました.このように外に向かっては,言わば城塞化したヨーロッパは批判を込めて"Fortress Europe"と呼ばれています.

ランペドゥーザに続き,11日にはシシリア島の沖で転覆し死傷者が出ています.少し旧い資料(ドイツ語)ですが,以下はスイスのタブロイド紙20 Minutenがまとめた主にアフリカの難民に関するインタラクティブ資料のURLです.

http://www.20min.ch/interaktiv/vizualne/2010_12_migrace/index.html

Saturday, 12 October 2013

今年のハロウィンはどこで過ごしますか? それと旅行に役立ちそうなふたつの地図

L'EXPRESSが提案する10の都市とは.くわしくは,こちらのウェブギャラリーをご覧下さい.

そして,海外旅行の計画を立てるにあたって役に立つかも知れない地図が以下のふたつです.
それぞれの簡易版が以下のFocusの記事に掲載されています.なお,凡例はドイツ語です.(すべての情報が示されている訳ではないので,詳しくは上記の地図を参照してください.)
  • Control Risksの地図
    白い円で示された地域=問題無し;淡い青=リスクレベル低い;赤=リスクレベル中;炎=リスクレベル非常に高い
  • Health Map
    緑色のベッド=リスクレベル低い;黄色の円=リスクレベル中;オレンジの円=リスクレベル中から高;赤い十字=リスクレベル非常に高い
各地図上の記号にポインターを合わせると,詳しい情報が表示されます.

ドキュメンタリー映画『ある隣人の死』

ベルリン・ブランデンブルグ放送局(RBB)によって今年制作された作品です.観終わった後,何かとても温かいものを感じて目頭が熱くなるのを感じました.

ベルリンのヴィンス通り(Winsstrasse).天気や季節には関係なく,毎日自宅アパートの玄関前に立って笑顔で道行く人に挨拶をしている一人の老人がいました,彼は,ある年の暮れに突然亡くなります.見つけたのは,年金を届けに来た市の職員.ドアフォンに応答が無かったため警察に連絡し,やって来た警察官と一緒にその部屋に入り,亡くなっていた老人を発見したのでした.いわゆる孤独死でした.

この界隈に住む監督のメヒティルド・ガスナーは,たまたま旅行から帰って来たとき,この老人がいつもの場所に立っていないことに気づき,彼を知る土地の人たちにインタビューを行いました.そして,それらを編集したのがこの作品です.

子供のころにかかった病気のせいで少し発達障害を持っていた老人には身寄りもなく,そのため市によって,匿名で,日本で言えば無縁仏として埋葬されることになりました.しかし,彼のことを知る隣人たちが,せめて名前を刻んだ墓に葬ってあげたいと寄付を募ったところ,必要な額のおよそ4倍にあたる3000ユーロが集まったのでした.そして,告別式の当日は,会場となった地域の教会は老人は知っているものの,お互いは知らない隣人たちで一杯となったのでした.クリスマスから大晦日の間に亡くなったということも,僅かながらその理由のひとつかもしれませんが,あのような大都会でも土地の人の人情は存在していることを強く感じさせてくれた作品でした.

原題:『Einer fehlt』
監督:Mechthild Gassner

*フランス語版は10月17日現地時間22:44, ドイツ語版は23:00までARTE+7を通じて無料視聴可能.(52分)

Friday, 11 October 2013

反ユダヤ,親ナチスの退廃芸術家エミール・ノルデ

エミール・ノルデというと20世紀のドイツで最も人気のあるの画家の一人であり,その油絵や水彩画は,多くの有名な画廊の壁を飾っています.最近,この画家の反ユダヤ的,親ナチス的な姿勢を示す新しい資料がスイスで発見されました.これまで,彼の反ユダヤ的発言からユダヤ民族に対する彼の,憎悪とも呼べる嫌悪は広く知られていましたが,彼の作品がナチスによって退廃芸術の烙印を押されたこともあり,ナチスに対する姿勢については論議が続いていました.今回,発見された文書は,画家の,単なる親ナチスに留まらない熱心なヒトラー信奉者としての側面も明確に示しており,こうした議論に終止符が打たれそうです.

以上,10月9日付Spiegelの記事"Expressionist und Nazi:Neue Belege für Emil Noldes Hitler-Verehrung gefunden"より.

Seebüllにあるエミール・ノルデ美術館 いつもたくさんの人で賑わっている.

付近の様子

北ドイツの風景に溶け込んだ美術館

水を巡る争いの取材を続けるフォトジャーナリスト集団"Disputed Waters"

水の過剰摂取や多くのダムの建設による生態系などの環境破壊,さらに流域の国々の間の紛争など,コロラド,メコン,ヨルダン川などが置かれた状況についての取材結果がこちらのサイトにまとめられています.

EU,国境監視に電子システム導入

先日,イタリアのランペドゥーザ島で発生した事故を受けて,EU議会は不法移民対策および遭難した難民船の早期発見のための新たな電子監視システム(Eurosur)の導入を可決しました.このシステムでは,衛星,無人偵察機,高性能レーダーなどの末端機器によって収集された情報が各国の国境警備当局とEUの国境警備機関であるFrontexによって共有され,国境地域全体の地図に反映されます.しかし,こうしたシステムの導入は,EU全体の(市民を対象とする)監視システムの構築の準備段階である,あるいは,今後,避難民たちはさらに危険を伴うルートを選ぶことなるといった批判が起きています.

以上,スイスの日刊紙Neue Zürcher Zeitungの10月10日の記事"Elektronische Überwachung des Mittelmeers"より.

また,同紙の9日付の記事"Viele Wege führen nach Lampedusa"は,アフリカの難民たちの移動ルートについて解説していますが,こちらの地図にそれらが描かれています.

EU議会,マララさんにサハロフ賞授与

2012年10月9日,学校から自宅に戻る途中のバスの中でイスラム過激派の青年から銃撃され,重傷を負いながらも移送先の英国バーミンガムの病院で回復し,現在は英国に滞在中のマララ(Malala Yousufzai)さんですが,先日,EU議会から良心の自由の実現に貢献したとしてサハロフ賞が授与されました.1988年に創設されたこの賞は,1975年のノーベル平和賞受賞者,ロシア人物理学者のAndrei Sacharowに因むもので,人権の擁護や自由の実現のために貢献した人に与えられます.これまでの受賞者として,ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領(1988年),中国人人権活動家の胡佳(Hu Jia)氏(2008年),また,アラブの春の活動家たち(2011年)などがいます.(下のリスト参照)


すべての子供たちに教育を受ける権利が保障されることを訴え続けるマララさんを誇りに思うパキスタン人は多いものの,ある学校に彼女の名前を与える計画は,過激派の目標になることを恐れた女子生徒たちの希望を受け見送られたそうです.彼女のお父さんによって設立された,子供たちの教育のための基金には,これまで,彼女を支援する歌手のマドンナさんや俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんらが寄付しています.

以上,スイスの日刊紙Neue Zürcher Zeitungの10月10日付の記事"Eine Pakistanerin verzaubert die Welt"からでした.

以下は,サハロフ賞受賞者のリストです.(Human Rights Sakharov Prizeのページより) アウン・サン・スーチーさんや国境なきリポーターの名前も見えます.

1988NELSON ROLIHLAHLA MANDELA and ANATOLI MARCHENKO (posthumously)
1989ALEXANDER DUBCEK
1990AUNG SAN SUU KYI
1991ADEM DEMAÇI
1992LAS MADRES DE LA PLAZA DE MAYO
1993OSLOBODJENJE
1994TASLIMA NASREEN
1995LEYLA ZANA
1996WEI JINGSHENG
1997SALIMA GHEZALI
1998IBRAHIM RUGOVA
1999XANANA GUSMÃO
2000¡BASTA YA!
2001IZZAT GHAZZAWI, NURIT PELED-ELHANAN and DOM ZACARIAS KAMWENHO
2002OSWALDO JOSÉ PAYÁ SARDIÑAS
2003UN SECRETARY GENERAL, KOFI ANNAN AND ALL THE STAFF OF THE UNITED NATIONS
2004BELARUSIAN ASSOCIATION OF JOURNALISTS
2005LADIES IN WHITE
2005HAUWA IBRAHIM
2005REPORTERS WITHOUT FRONTIERS
2006ALIAKSANDR MILINKEVICH

Thursday, 10 October 2013

ディズニー映画『プレーンズ』のフランス語版にメリッサ・トゥーリオが声優として出演

メリッサ・トゥーリオ(Mélissa Theuriau)というとZone InterditeのMCを務めた人ですが,まもなく公開されるディズニーの新しいアニメーション映画『プレーンズ』で声優としてデビューするそうです.彼女のご主人は,あの『アメリー』で気のいい八百屋の店員ルシアンを演じた名コメディアンのジャメル・ドゥッブーズ(Jamel Debbouze).二人が結婚したのは2008年ですが,パリの教会でカトリック式の結婚式を挙げ,その後,ご主人がモロッコ系フランス人であることから,マラケシュで再度イスラム式に乗っ取って式を挙げました.宗教,人種への寛容を象徴するすてきなカップルです.今回の声優デビューで,奥さんは,一歩をご主人の世界に踏み入れることになりました.

二人のスナップを紹介するL'EXPRESSのウェブギャラリーはこちらです.

下のビデオは,メリッサさんへのインタビュー.自分が子供の頃に観た映画は,必ずしも自分の子供に見せたいとは思わないそうです.

ノーベル文学賞受賞者たちが持つある傾向とは

10月8日のL'EXPRESSの記事"Cinq prix Nobel qui ont marqué l'histoire de la littérature"によると,ノーベル文学賞は作家はもちろん,詩人,哲学者,また,反体制作家や亡命作家などにも与えられる賞で,その条件として創設者アルフレッド・ノーベルは《なんらかの理想主義的傾向》(une tendance idéaliste = an idealistic tendency)を持っていることとしたそうです.実際,以下の5人の受賞者は,確かにその条件を満たしているそうです.すなわち,ネルダ(Pablo Neruda,チリの詩人,1971年受賞),ベケット(Samuel Beckett,アイルランドの作家,戯曲家,1969年受賞),カミュ(Albert Camus,フランスの作家,1957年受賞),ヘミングウェイ(Ernest Hemingway,アメリカの作家,1954年受賞),マン(Thomas Mann,ドイツの作家,1929年受賞)です.

以上が記事の内容ですが,理想主義的傾向,あるいは勝手に解釈して何らかの理想を追い求める傾向を持っている作家というと,最近,知った中国人作家の王力雄(Wang Lixiong)さんがいます.王さんは,中国文明のルーツを探るべく数ヶ月にわたって単独で黄河を遡り,チベットが置かれた状況をつぶさに見て中国政府のチベット政策に疑問を持つようになりました.最近では,インターネットを通じて,ダライラマ14世と中国の一般市民との意見交換の場を設ける等,中国の良識を代表する知識人の一人として執筆の他,様々な市民活動に取り組んでいます.奥様はチベット人です.日本語に訳された著書に『私の西域、君の東トルキスタン』,『チベットの秘密』(共著)などがあります.

それと,理想を持っていたというと,亡くなっていますが,三島由紀夫もその条件を満たしていた作家と言ってよいのではないでしょうか.ただ,果たして彼の一見明瞭に見える理想が普遍的なものであったかどうかは判りませんが.

EUにおける原発政策の転換と各国の気候変動対応度

10月8日のSpiegelの記事"EU-Kommission begräbt AKW-Förderplan"によると,今年の7月に公表された,EUに於ける原子力発電施設の設置と運転への財政補助の要件緩和案は,各国からの風当たりがあまりにも強ったため,実質的に撤回され,逆に再生可能エネルギーへの補助については要件は緩和される方向へ向かって行きそうです.こうしたエネルギー政策の実質的転換は,これまでは原発へのさらなる補助金の支出へ向けて動いて来たフランスや英国にとって手痛い打撃となりました.

ところで,この記事には,以前にも取り上げたことのあるGermanwatchが発表した各国の気候変動対応度の点数を示したグラフが紹介されていました.一番左側のタブ"CO2-Emissionen"は,CO2の排出量で世界全体の排出量に占める割合が示されています.隣の"Energieverbrauch"は,世界全体で使われるエネルギーに占める割合.さらに隣の"Wirtschaftleistung"は,世界経済に占める各国の経済規模,一番右の"Bevölkerung"は各国の人口が世界総人口に占める割合です.(括弧内の数字は前年の値.)なお,日本は全体評価で,アメリカ,中国,韓国,ロシア,カナダとならんで気候変動に対する対応が非常に悪い(sehr schlecht = very bad)と評価されています.元のデータはこちらからアクセスしてください.

EUの難民政策変更されず

10月8日付Spiegelの記事"EU-Flüchtlingsdebatte:Ihr müsst leider draußen bleiben"によると先日発生したLampedusaの悲惨な出来事にも拘らず,EUの内相たちは現行の政策の変更は見送ったそうです.

なお,上掲の記事には,2012年(オランダのみ2009年のデータ)におけるEU各国の人口100万人あたりの難民収容人数を示すインフォーグラフが掲載されていますが,それを見ると第一位はマルタで4980人,二位がスウェーデンの4625人,三位がリュクセンブルグの3905人,四位がスイスの3575人などとなっています.すごいと思うのは,スウェーデン,ノルウェー(七位:1940人),そしてデンマーク(九位:1085人)の北欧三か国が上位に位置していることです.

PIAACの結果について

日本でもすでに報告されていますが,個人的にはだったらなんだという結果です.日本の今の有様を見れば.少なくとも,これが優秀な人材を輩出するための前提条件でないことは確かなように思えます.以下は,10月8日付Spiegelの記事"OECD-Bildungsstudie: Jeder sechste deutsche Erwachsene liest wie ein Zehnjähriger" に掲載された順位です.OECDのPIAAのサイトはこちらです.

計算能力
Land Punkte
Japan 288,2
Finnland 282,2
Flandern (Belgien) 280,4
Niederlande 280,3
Schweden 279,1
Dänemark 278,3
Norwegen 278,3
Slowakische Republik 275,8
Tschechische Republik 275,7
Österreich 275,0
Estland 273,1
Deutschland 271,7
Russland 269,9
Australien 267,6
Kanada 265,5
Zypern 264,6
Korea 263,4
England (GB) 261,8
England/N. Irland (GB) 261,7
Polen 259,8
Nordirland (GB) 259,2
Irland 255,6
Frankreich 254,2
USA 252,8
Italien 247,1
Spanien 245,8
Quelle: OECD
Die Rechenkompetenz ist in sechs Stufen eingeteilt: Wer weniger als 176 Punkte erhält, erreicht die niedrigste Stufe, wer 376 Punkte oder mehr erhält, erreicht die höchste Stufe.

読解力
Land Punkte
Japan 296,2
Finnland 287,5
Niederlande 284,0
Australien 280,4
Schweden 279,2
Norwegen 278,4
Estland 275,9
Flandern (Belgien) 275,5
Russland 275,2
Dänemark 274,0
Tschechische Republik 274,0
Slowakische Republik 273,8
Kanada 273,5
England (GB) 272,6
Korea 272,6
England/Nordland (GB) 272,5
Deutschland 269,8
USA 269,8
Österreich 269,5
Zypern 268,8
Nordirland (GB) 268,7
Polen 266,9
Irland 266,5
Frankreich 262,1
Spanien 251,8
Italien 250,5
Quelle: OECD
Die Lesekompetenz ist in sechs Stufen eingeteilt: Wer weniger als 176 Punkte erhält, erreicht die niedrigste Stufe, wer 376 Punkte oder mehr erhält, erreicht die höchste Stufe.

問題解決能力
Land Keine Erfahrung (in %)* Stufe 3 (in %)**
Italien 26,9 k.A.
Polen 26,0 3,8
Korea 24,6 3,6
Slowakische Republik 24,2 2,9
Spanien 23,2 k.A.
Japan 20,9 8,3
Russland 20,8 5,5
Zypern 20,3 k.A.
Frankreich 16,5 k.A.
Nordirland (GB) 15,8 3,7
Irland 14,8 3,1
Österreich 13,6 4,3
Estland 13,3 4,3
Tschechische Republik 12,5 6,6
Deutschland 11,6 6,8
Flandern (Belgien) 10,9 5,8
Kanada 10,4 7,1
England/N. Irland (GB) 10,1 5,6
England (GB) 9,9 5,7
USA 9,3 5,1
Finnland 8,7 8,4
Dänemark 7,7 6,3
Australien 7,5 6,2
Norwegen 6,8 6,1
Niederlande 6,7 7,3
Schweden 6,4 8,8
Quelle: OECD
k.A. = keine Angaben / *Keine Erfahrung = Entweder gaben die Testpersonen an, dass sie über keine Computerkenntnisse verfügen oder sie sind durch den Test gefallen. / **Stufe 3 = Die Testpersonen können am Computer komplexe Aufgaben bewältigen.

マラケシュのスークの様子(Spiegelのウェブギャラリー)

どの国籍を持っていると海外旅行に有利か

外国を旅行する上で,どこの国のパスポートがビザ無しで訪問できる国の数が多いかというランキングです.右側の数字が,それぞれの国のパスポートを所持していた場合にビザ無しで訪問できる国の数です.(対して変わりませんが,日本はスイスよりもビザ無しで入国できる国の数が多いのですね.意外でした.)

そして,反対にビザ無しで訪問できる国が少ないのは,アフガニスタン (28カ国) ,イラク(31カ国),ソマリアおよびパキスタン(それぞれ32カ国),そして中国(44カ国)です.



1 英国,フィンランド,スウェーデン 173
2 デンマーク,ドイツ,リュクセンブルグ,アメリカ 172
3 ベルギー,イタリア,オランダ 171
4 カナダ,フランス,アイルランド,日本,ノルウェイ,ポルトガル,スペイン 170
5 ニュージーランド,スイス,オーストリア 168
6 オーストラリア,ギリシア,シンガポール 167
7 韓国 166
8 アイスランド 165
9 マレーシア,マルタ 163
10 リヒテンシュタイン 159

元となってのは,Henley & Partnersのこちらのページで紹介されているデータです.

以上,10月9日付SPIEGELの記事"Reisepass-Ranking:Wer die wenigsten Visa-Probleme hat"より

ランペドゥーザの住民こそ2014年ノーベル平和賞候補

10月3日,イタリア,ランペドゥーザ島でアフリカからの避難民を乗せたボートが座礁,また,その数時間後には別の同様に避難民を載せた漁船が炎上し,合計数百名にのぼる犠牲者を出しました.これらの船に乗っていたのは,エルトリア,エジプト,ソマリアから逃れて来た人たちでした.

以下は,10月8日付電子版Le Monde紙に掲載された"Lampedusa doit être candidate au prix Nobel de la paix 2014"の内容の要約です.執筆したのは,イタリアの日刊紙L'Expressoの記者Fabrizio Gatti氏です.

ブログFortress Europeによると,1994年以降,同島近海で命を落とした避難民の数は6825名にのぼるそうです.そのうちの2352名が,2011年の1年間に確認された数です.また,範囲をカナリア諸島からトルコまで広げると,1988年以降の犠牲者の数は19142になるそうです.

この数年間,EUは,数百万ユーロの予算を国境警備につぎ込みました.しかし,避難民の保護や亡命許可の基準などについては,各国の足並みは未だに揃いません.特に,海上における避難民の保護への関心は薄く,こうした悲劇が 繰り返される原因ともなっています.こうした,EUとしての避難民政策の不在が,皮肉なことにマフィアに避難民ビジネスの機会を与えてしまっているのです.こうした状況にも関わらず,一年前EUはノーベル平和賞を受賞しました.

私は,むしろ, 同賞を受賞すべきなのは戦争から逃れようとした数千二も及ぶ避難民たちではないかとL'Expressoの紙面で訴え,同時にそのための署名も集めることを提案しました.しかし,亡くなった方たちが受賞することはできません.それなら,悲惨な事故が起きるたびに犠牲者の遺体の回収を続けて来たランペドゥーザ村とその住民こそ受賞すべきではないかと考えています.

なお,L'EspressoにおけるGatti氏の記事および署名の呼びかけはこちらです(フランス語).また,英国の10月8日付The Guardianの電子版に掲載された記事"EU pressed to rethink immigration policy after Lampedusa tragedy" では,EU内部における避難民政策についての不一致の状況を伝えられていました.

10月10日のL'EXPRESSに掲載されたランペドゥーザの悲劇のウェブギャラリーはこちらです.

故ダイアナ元王妃の写真

1997年,パリで事故死したレディ・ダイの死について,最近,新たな情報がもたらされ,その信憑性を検証するとスコットランド・ヤードが公表したそうです.その情報とは,レディは英国の軍に所属するエージェントによって暗殺されたというもので,ある元軍人が義理の両親に語った話しの内容に基づいているとのことでした.

以上,2013年8月17日付L'EXPRESS記事"Mort de Lady Diana: la police britannique examine de nouveaux éléments"より.

なお,以下の,元王妃のウェブギャラリーも紹介されていました.

アメリカ債務問題への中国財務省副大臣からの苦言

世界中が注目しているアメリカの債務問題の行方ですが,先日,業を煮やした中国財務省の朱光耀(Zhu Guangyao)副大臣から「アメリカにおける中国の投資資産に損害が及ばないように,アメリカが債務不履行に陥らないための策を講じることを求める」といった内容の発言があったことが世界中で報道されました.今や,中国は最大の対アメリカ債権国であり,保有しているアメリカ国債の総額は13000億ドルにのぼります.さらに,アメリカに対する中国の投資総額は35000億ドル.もし,これらの債務が不履行となった場合,中国の金融システムへの影響は計り知れないものがあります.仮にそうなった場合,その影響はもちろん他の国の金融へと広がり世界経済全体が激震に見舞われることも間違いありません.かなり以前から中国の経済や金融の専門家たちは,中国の準備通貨をドル一辺倒から異なる通貨に分散すべきと指摘していましたが,彼らの意見の妥当性が証明された格好です.

以上,2013年10月8日付L'EXPRESSのBlogのポストLa dette américaine et les vrais maîtres du mondeより.

CNBCの関連のニュースはこちら

Friday, 4 October 2013

ミュンヒェンの10月祭

9月21日付Spiegelのニュースレターで紹介されていたウェブギャラリーです.

モンマルトルのアベッス広場で愛を叫ぶ

パリ18区にあるアベッス広場(Place des Abbesses)は,その昔,ゴール人たちに布教するためにパリを訪れ,最後はモンマルトル(語源はMon martyrといわれる)で斬首されたパリの守護聖人サン・ドニを記念して12世紀に設立された女子修道会があった場所です.そのため,修道院長を意味するAbbéの女性名詞Abbesseの複数形がその名前になりました.

ここには,世界の数百もの言語で"Je t'aime" ="I love you"と記された大きな青い壁が立っています.日本語の「大好き」の文字も見えます.(壁についての詳しい説明は,こちらをご覧下さい.)製作したのは,Frederic BaronとClaire Kitoの二人.芸術橋(Pont des Arts)のフェンスに掛けられた南京錠も有名ですが,こちらも,これからの季節にパリを訪れる若い方たちに一見をお薦めしたいモニュメントです.なお,最寄りの地下鉄12号線の駅にはこの広場の名前がついていますが,その美しいエントランスはアールヌーボーの作家エクトール・ギマール(Hector Guimard)の設計によるものです.

ところで,この地下鉄アベッス駅は映画"Le Fabuleux destin d'Amélie Poulain"(=『アメリー・プーランの素晴らしき運命』.邦題『アメリー』)にも登場しています.もともと,この映画の完成前のタイトルが"Amélie des Abbesses"(=『アベッス(駅)のアメリー』)であり,彼女の暮らしの舞台がこのあたりに設定されていたわけですが,例えば,自分の部屋の壁の中に隠されていた宝箱の持ち主ブルトドー氏の住所を探り出した帰り,彼女がホームで一人の目の見えない老人に小銭を与えるのがこの駅です.それと,ホームに設置されていた証明写真撮影機の下を懸命に探っている彼女の未来の恋人ニノと最初に出会うのも.下の地図上のAは彼女が暮らすアパートの近くと思われるコリニョン氏の八百屋の位置,そして,Bは彼女の勤務先Café des 2 Moulinsの位置をそれぞれ示しています.いずれのもアベッス駅の近くです.(画像上をクリックすると拡大表示されます.)


下の動画は,Paris Zig Zagの案内人Michel Faulさんによるによるアベッス広場案内です.

パリで一番おいしいバゲットは14区にあり

5月18日付L'EXPRESSのニュースレターで紹介されていました.今後,1年間にわたってエリゼー宮御用達としてオランド大統領の口に入るバゲットを焼くのは,最もおいしいバゲットを焼く職人として選ばれた14区のRhida Khaderさん(OR親方?)だそうです.(お店の名前は,Au Paradis du Gourmandです.Googleの地図などに入れると表示されます.)


個人的には,おいしいバゲットというものが一体どういうものか判りませんが(そもそも,お米同様,何がおいしいパンなのかが判らないという鈍感な舌の持ち主なもので),唯一,クロワッサンについては珍しく好みがあり,おいしい,そうでないという区別をしています.例えば,フランスで朝,街中で焼きたてを食べるのが(パン屋で買ってその場で食べてしまう)一番おいしいと感じるクロワッサンで,その次はそれがさめたもの.反対に,おいしくないと思うのはスイスのクロワッサンで,食感が麩を思い出させます.尤も高級ホテルなどで出されるものは知りませんが.スイスなら焼きたてのブレッツェルのほうがおいしいと思います.また,フランスであっても,アルザスのクロワッサンはあまりおいしく感じません.では,ドイツはどうかというと,以前は,まずいと決めつけていたのですが,先日,訪れたベルリンのフリードリヒ通り駅のホームの売店で試しに買って食べたものがやたらにおいしく感じられたのは意外でした.その前にニュールンベルグで投宿したヒルトンホテルで出されたクロワッサンもそれなりにおいしく感じましたが.英国は別に持ち出す迄もありませんが,過度の期待は禁物です.英国なら,紅茶と一緒に出されるスコーンがおいしいと思います.(個人的には,紅茶ではなく,コーヒーと一緒に食べるのが好みです.それと,スコーンには,もちろん,クロティドクリームと出来ればベリー系のジャムをつけて.)では,日本ではどうかというと,少なくともここ横浜において,おいしいと感じるのが新横浜のプリンスホテルの1階で販売されているもの,スーパーマーケットのイオンのベーカリーで焼いているもの,そしてスーパーマーケットのマルエツ(大和市鶴間)のインストアベーカリー(『焼きたてパン工房』*1))が焼いているものです.味の点でわずかながら前二者がリードしているようにも感じますが,コストパフォーマンスから言って,マルエツのものの有利性は論を待ちません.(火曜日,水曜日のサービスデーにおいては1個100円を切る値段で販売されています.)一応,これまで以下のお店のクロワッサンを食べてみた上で到達した結論です.(表記は順不同.)
  • パスコ
  • ポンパドゥール
  • プチドゥール(バナナブレッドが,おいしいと思います.)
  • サン・ジェルマン
  • シャトレーゼ (次善の品としてたまに買います.)
  • ドンク
  • 神戸屋
  • 成城石井 
  • クイーンアリスカフェ
  • モンタボー
  • ヴィ・ド・フランス
  • リトル・マーメードほか


*1) マルエツは店舗によって入っているベーカリーが異なるのでご注意ください.

パリの猫カフェ第1号

9月21日付L'EXPRESSのニュースレターで紹介された,パリで9月21日に開店したフランスの猫カフェ第1号の模様です.オーナーは,日本で出会った猫カフェにヒントを得たとのこと.ヨーロッパでは,すでにウィーン,ブタペスト,サンクト・ペテルスブルクに存在しているとか.

ライプチヒの鉄道模型展示会Modell-Hobby-Spiel,10月6日まで開催中

詳しくは,公式サイトをご覧下さい.(ドイツ語ページへはこちらから.)

鉄道ファンのための便利メモ(I)- 蒸気機関車の車軸配置表記

さまざまな蒸気機関車のタイプを車軸配置(または配列)によって表記する方法は,各国で異なるものが開発されました.例えば,スイスやバイエルンでは動軸数/全車軸数といった表記方法が採用されましたが,後にドイツ帝国鉄道の18形となるバイエルン国鉄のS 3/6形などの表記はこれによるものです.この形式はパシフィック(2'C1')なので全車軸数が6(先輪軸 x 2 + 動輪軸 x 3 + 従輪軸 x 1),そのうち3本が動輪軸というわけです.なお,最初のSは,Schenellzugの頭文字で急行(旅客)用機関車を表しますが,同様にドイツの昔の機関車の表記にはt(タンク機関車)*1)やG(貨物) などの頭文字が付されていました.*2) また,スイスにおいては,現在でもこうした車軸配置表記が機関車を始め動力車両全般に用いられています.*3)

Wikipediaの「車軸配置」の項には,こうした車軸配置表記の異なる方法が一つの表にまとめられて紹介されていています.*4) その表の下へ行く程動輪および遊輪(先輪や従輪という動輪以外の車輪)の軸数が増えて行きますが,国鉄の蒸気機関車で一番下に位置するものというと,奥羽本線の板谷峠や北陸本線の倶利伽羅峠などで活躍したE10形で車軸配置は1'E2'.アメリカ式に言うとTexasです.それを除くと,最大の車軸数を持つものはD60形,D61形,そしてD62形の三形式の1'D2'です.それぞれ,D50D51D52形の従輪軸を1本から2本に増やし,つまり従台車に置き換えて軸重を軽くした形式でした.D60は東北,近畿,中国,九州地方と広い舞台で,短めの除煙板と氷柱ガードが装着された姿が印象的だったD61は北海道の留萌本線で,そして末妹のD62は,当初は東海道,山陽本線で,後に東北本線でそれぞれ活躍しました.これらの1'D2'を持つ機関車のアメリカ式呼称はBerkshire.従輪軸を増やす前の三形式D50,D51,そしてD52はMikadoです.ミカドというと,ドイツの機関車では,ザクセンの急行用の名機XX HV(ドイツ帝国鉄道19形),ポーランド製のPt31(ドイツ帝国鉄道19.1形),ユニークな8気筒の急行旅客用機19.10*5),プロイセンのP 10(ドイツ帝国鉄道39形),そして,急行貨物および勾配区間の旅客用の万能ミカド機41形*6)が挙げられますが,この名称は,19世紀末にアメリカで最初にミカド機を量産したBaldwin Locomotive Works社が同形機を日本へ輸出したことに因むようです.もっとも第二次世界大戦中のアメリカでは,こうした車軸配置を持つエンジンはミカドではなくマッカーサーと呼ばれていたようですが.また,ミカド形ではありませんが,遊輪なしの4動軸機関車(Eight-Wheel-Switcher)を最初に走らせたのは米国のBaltimore & Ohio Railroadで,1844年のことでした.ヨーロッパでは,オーストリアの世界遺産路線ゼンメリング線のC形タンク機関車(C n2t)が4動軸のテンダー機関車(D n2)に改造されたものが最初だったようです.こちらは1861年のことでした.*7)

ドイツの機関車に限って言えば,ミカド形はテンダー機関車としては上で挙げた五形式のみですが,公平を期してミカド形のタンク機関車を挙げると,86(貨物機),93(貨物機),97.4(アプト式),98.18(地方あるいは局地向機関車)*8)99.32(狭軌:900mm)が存在しています.*9) ミカド形というと日本では最大の製造量数を誇るD51のお陰で貨物機の代名詞のように思われがちですが,このように,ドイツ帝国鉄道時代に製造されたEinheitsloksと呼ばれる部品などに統一規格が用いられた機関車の中のテンダー貨物機に割り振られた形式番号40〜49,そして後の50番台*10)では,アメリカ式に言うとDecapodの1'Eの車軸配置が支配的だったのです.*11) その意味では,ミカド形の41はドイツでは例外的なタイプと言えるでしょう.また,国鉄E10のように5動軸を持ったタンク機関車もドイツには存在していますが,1'E2'はないようです.*12) 

ところで,ドイツ最大のタンク機関車というと旧バイエルン国鉄のGt 2x4/4形で動軸数は8,シーフェエーベネを通過する列車の牽引機などとして活躍しました.(後の96形)日本の国鉄の形式番号をつけるとするとH形になるでしょうか.



*1) 奇妙な事に,ドイツ語では,私たちがタンク機関車と呼んでいるものはTenderlokomotiveと呼ばれます.また,炭水車がついた機関車はLokomotive mit Schlepptenderと呼ばれます.面白いことに,フランスでも同様の呼び方がなされていて,タンク機関車はLocomotive-tender,テンダー機関車はLocomotive avec tenderです.日本語における呼び方の元である英語では,いうまでもなく前者はTank locomotive(または,"Thomas the Tank Engine"のようにTank engine),後者はTender locomotive(またはTender engine)です.
*2) 現在,私たちが目にするドイツの機関車の形式表記は1926年に採用されたものですが,それまでの,例えばバイエルンで採用されていた形式表記については,WikipediaのList of Bavarian locomotives railbusesなどをご覧下さい.また,Selketalbahnのこちらのページにもかなり詳しく説明されています.
*3) スイスの機関車の形式表記については,Wikipediaのこちらの項をご覧下さい.
*4) フランス語版の内容が最も充実しているようです.それによると,UIC方式を採用しているのは,ドイツ,イタリア,ユーゴスラビア,そして大半の東欧諸国であり,また,ホワイト方式はアングロサクソン諸国およびスペイン語圏,そしてアメリカ大陸のすべての国によって採用されているそうです.日本で用いられているのは簡易式UIC方式といえるもので,曲線に沿って車体に対する角度が変わる先輪や従輪をあらわすダッシュは,通常,付記されません.
*5) 試作機の19 1001のみ製造されました.
*6) 重油燃焼方式に変更されたマシンは,1968年以降042形の形式番号(EDV番号)が付けられましたが,それまでは41形として登録されていたので,042は敢えて独立した形式としては挙げないことにしました.なお,この年以降残りの41形機のナンバーも041と変更されます.また,ドイツ国鉄には戦時形の42も存在しますが,こちらの車軸配置は1'Eでミカドではありません.
*7) "1D1 "Mikado"" in Baureihe 41 (Eisenbahn JOURNAL, Special), 1.2013, p15
*8) ドイツ語では,Lokalbahnlokomotiven.といっても,地方の小規模な私鉄の機関車という意味ではなく,限られた地域に配置されていた機関車という意味.
*9) Cf. Liste der Lokomotiv- und Triebwagenbaureihen der Deutschen Reichsbahn (1920–1945) in Wikipedia
*10) 当初は,ザクセン,プロイセン,あるいはバイエルンといった旧領邦鉄道の貨物機に割り振られていた番号ですが,後に50形,52形のようにEinheitslokに用いられました.
*11) 42, 43, 44, 50, 52.なお,45形は1'E1'.といっても,1'Eは,決してドイツの機関車だけに用いられていた車軸配置ではなく,フランスの機関車にも150形(= 1'E)はいくつも存在しています.(例えば,旧東部鉄道の150 Eなど.)ただ,英国の機関車では数は少なく,Great Western RailwayMidland RailwayNorth Eastern RailwaySouthern Railwayの機関車のリストにおいては見つからず,あるとすれば,戦時形のWD Austerity 2-10-0(90750–74,WDはWar Department(陸軍省)の略)とドイツのEinheitslokに相当するStandard classesの中のClass 9F(92000–250)くらいです.このうち現在でも目にする事が出来るものといえば,セバーン・バレー鉄道ハイレイの機関車博物館に保存されている戦時形のGordon(WD Austerity 2-10-0)です.なお,動輪直径は,ドイツの5動軸機においては1400mm,そして,英国の5動軸機では,戦時形機においては1435mm,Class 9Fにおいては1524mmでした.また,日本の5動軸機E10では1250mmの動輪直径が採用されました.このサイズは大正期に開発された国鉄9600(1'D)のものと同じです.この1250mmというのは,ドイツの急行旅客用機19 1001でも採用されたサイズでした.

ところで,先に挙げた日本のD形機の動輪直径もドイツの殆どの1'E機同様1400mmだったのですが,ドイツの標準軌用ミカド機についていうと,19形が1905mm,19.1形が1850mm,そして,41では1600mmでした.41は用途からいうと貨客両用のC58(1'C1')に近い位置にいた機関車のようですが,因みに後者の動輪直径は1520mmでした.もっとも,C58が亜幹線や支線用だったのに比べて,41は1930年代,幹線における急行旅客列車のスピードアップのネックだった貨物列車のスピードアップのために開発されたマシンで設計最高速度も90 km/hでした.(100 km/hでの走行も実用上は問題はなかったようです.)フランスのミカド機はというと,今でもミュールーズ鉄道博物館で展示され,また,スイスで動態保存されている141Rが1650mmですが,カナダ製でボックス車輪をはいています.
*12) いずれも標準軌用貨物機の84(1'E1'),85(1'E1')87(E),94(1'E1'),97.5(E),そして狭軌用の99.18(E, 軌間=1000mm),99.19(E, 軌間=1000mm),99.22(1'E1', 軌間=1000mm),99.43-44(E, 軌間=785mm),99.64-71(E, 軌間=750mm),99.73-76(1'E1', 軌間=750mm).

水を巡るアジア危機 - 中国政府によるチベットの水資源独占の影響

先日,ARTEでチベットについてのリポルタージュ*1)が放送されましたが,とても興味深い内容だったので,特に印象に残った部分を以下にメモしました.

チベットには,中国の核開発にとって欠かせなかったウラニウムを始め,多くの天然資源が埋蔵されています.最近公開された,毛沢東が1950年にモスクワから党幹部に宛てて送った電報の文言から,チベットを占領し管理することが1950年以来中国政府の方針であったことがあらためて明らかになりましたが,その理由の一つがこうした資源の開発です.*2) その豊かな天然資源の中のひとつ,水は石炭と並んで主要な電力源であると同時に,工業用水,そして,もちろん飲料水として中国が経済成長を続ける上で欠くことができないものです.

世界有数の降雨地帯のヒマラヤから流れ下る膨大な量の水は,チベットにおいて,ヤルンツァンポ,ブラマプトラ,インダス,サトレジ,メコン,サルウィンなどの河川にまとまります.今や,世界のダムの半数は中国にあると言われる程,中国の河川には多くのダムが存在していますが,特にチベットにおけるその密集度は他に類を見ないほどで,長江,メコン,サルウィンの上流部にはおよそ100ものダムが存在しています.これらのダムのいくつかは水力発電用で,世界で最も標高の高いヤルンツァンポ川では5つもの水力発電施設が建設中です.そして,さらにもうひとつ,40,000メガワットの発電能力を備えた世界最大の施設の建設が計画されているといいます.*3) 40,000メガワットというと原子力発電施設30箇所分に等しい発電量です.中国における水理工学の第一人者Wang Weiluo博士によると,中国政府は中国における水力起源の電力のおよそ1/3がチベットの河川から得られると見込んでいて,今後20年のうちにそのための水力発電施設を整備する計画といいます.また,Weiluo博士は,中国政府はチベットに水源を有するこれらの河川の流路を変更し,それらを流れる水のうちの300,000m3を北部の北京などの大都市へ導こうとしているとも指摘しています.300,000m3というと,ライン川の流量の4倍の量にあたります.

ここで,二つの懸念が浮上しています.一つは,地震などでダムが決壊したときの被害です.チベット高原は世界でも有数の地震地帯であることは,2010年に発生した青海地震などでも広く知られていますが,もし,これらのダムが地震で決壊したらさらに多大な損害を与えることは明らかです.例えば,ドイツのメーネタールダム(Möhnetalsperre)は第二次世界大戦中,連合軍の爆撃によって破壊されましたが,その際に発生した高さ8mにもおよぶ濁流により1,500名以上の犠牲者が出ました.このダムの高さは谷底から32.44mです.*4) しかし,建設が計画されているひとつのダムの高さは400mにもなるもの*5)で,それが決壊した際の人的および環境などに与える物質的被害は想像するに余りあります.

もうひとつは,中国のみにとどまらず多くの周辺諸国も関係するもので,水自体をめぐる懸念です.チペット高原に流れ込むヒマラヤからの膨大な量の水は,すでに挙げたいくつもの河川に収斂し,それらを通じて南に位置するインドやパキスタン,そして東南アジアの国々へ供給されています.もし,これらの水のうちの300,000m3が,チベットにおいて建設中の多数のダムによってその流れが変更され,中国北部の北京などの大都市の水源にされた場合,当然,こうした国々において深刻な水不足が発生します.例えば,現在,厳しい情報管制のもとに建設が進行しているZangmuダム(藏木ダム)は,インド国境の近くに位置していて,そこはこれまでしばしば両国の紛争が発生した地域ですが,すでにこのダムの建設に対し,インド政府は自国内の水不足を招くと中国政府に抗議したそうです.しかし,建設は続けられているようです.つまり,中国は30億の人口を抱えるアジアの国々の水源を独占しようとしていて,もしそれが実現したら広大な地域を巻き込む紛争へ発展しかねないのです.こちらの懸念は,Weiluo博士のみならず,今年の11月に来日が予定されているダライラマ14世や,俳優のリチャード・ギア氏が代表を務める団体International Campaign for Tibetによって今や広く世界に伝えられています.*6)

以上が番組の内容の抜粋ですが,これを視ていて,チベットはフランスにとってのアルジェリアに似ていると思いました.この二つの地域は,まず豊かな天然資源を持つことや核実験が実施された場所という点が共通していますが,独立を望む多くの住民たちが中央政府によって抑圧され,殺害されたことでも似ています.もっともアルジェリアは1962年に独立を達成していますが,チベットではこうした抑圧が現在でも続いています.*7)





*1) "Tibet : les enjeux d'un conflit" (2012年,ドイツ西部放送局制作のドキュメンタリーリポルタージュ.ARTEでは2013年9月24日23:30に放送.ドイツ語のタイトルは"Kampf um Tibet")
*2) 1950年2月付.詳しくは,ニューヨーク在住の歴史家Li Jianglinさんのブログをご覧下さい.
*3) どうやら,Mutuo付近で建設が計画されているダムに設けられる発電施設を指しているようです.(Cf.The Brahmaputra: Water hotspot in Himalayan Asia in Global Water Forum)
*4) 基礎地盤から計った,いわゆるダム高は40.30.
*5) 具体的にどのダムのことを言っているのか番組では明確に述べられていなかったのですが,東京のスカイツリーより高いダムということになります.タジキスタンで建設中のログンダムはその335mの高さのために竣工すると世界で最も高いダムとなるそうですが,それを超える高さになります.
*6) The ObserverのChina and India 'water grab' dams put ecology of Himalayas in danger(2013年8月10日付)やThe Guardianのブログの2013年6月5日付ポストChina's mega water diversion project begins testingなどが参考になります.また,Wikipediaの南水北調計画の項も参考になりますが,日本語版には周辺諸国との問題への言及がされていないので英語版(South–North Water Transfer Project)など,日本語版以外の参照をお薦めします.

*7) 番組の中で,自分たちにはダライラマが必要と言う内容の演説をしたチベット人の男性が8年もの禁固刑に処せられた例が紹介されていました. 

Wednesday, 2 October 2013

映画"This ain't California"

舞台は,ベルリンの壁の崩壊,東西ドイツ統一という大きな変化に向かって激しく動いていた80年代の東ドイツ.そこで少年時代を過ごした三人の友人たち.彼らを結びつけていたのはスケートボードでした.東ドイツにおいてスケートボードは,別にアメリカへの憧れから始まったものではなく,絶えず新しい遊びを発明する子供としての本能が生み出した車輪と板を組み合わせたおもちゃの一種でした.しかし,やがてそれがすべてを国家の管理下に置くこの国の息苦しさから解放されたいという衝動に結びつき,彼らの人生を思いがけない方向へ導いて行きます.

ストーリーは,三人のうちの一人で当時の東ドイツのスケートボーダーたちのシーンでカリスマ的存在だった"パニック"こと,Denis Paraceckの死を知って集まった当時の友人たちの回想によって展開します.彼は,それまでがむしゃらに追い求めていた自由が得られるやいなや友人や仲間たちと疎遠となり,最後はアフガニスタンにおいて戦死するという,いわば数奇な人生を歩みますが,友人たちが代わる代わるに語る彼にまつわるエピソードを中心に当時の東ドイツの若者たちの青春群像が描かれます.

監督: Marten Persiel
脚本: Marten Persiel, Ira Wedel
出演: David Nathan, Anneke Schwabe他
制作: Wildfremd
制作協力: Arte, Mitteldeutscher Rundfunk (MDR), Rundfunk Berlin-Brandenburg (RBB)
2012年8月ドイツにて公開

受賞歴:
Berlinale 2012, Germany
DIALOGUE EN PERSPECTIVE

Nashville Filmfestival 2012, USA
SPECIAL JURY PRIZE FOR ACHIEVEMENT IN DIRECTING

Filmkunstfest Schwerin 2012, Germany NACHWUCHSFÖRDERPREIS/AWARD FOR PROMISING YOUNG TALENTS

Cannes Independent Film Festival 2012, France
BEST DOCUMENTARY

Lighthouse International Film Festival 2012, USA
SPECIAL JURY PRIZE

Minneapolis Underground Film Festival 2012, USA
BEST EDITING

Santa Fe Independent Film Festival 2012, USA
BEST INTERNATIONAL FEATURE

Cockatoo Island Film Festival 2012, Australia
BEST DOCUMENTARY

Univerciné Allemand - Festival de Cinéma Nantes 2012, France
JURY AWARD, AUDIENCE AWARDWINNER OF THE UNIVERCINÉ EUROPEAN COMPETITION (Italy, Britain and Germany)

International Skateboard Film Festival (Los Angeles) 2012, USA
BEST ORIGINAL SCREENPLAY & BEST DIRECTOR

Festival 2 Cinéma de Valenciennes 2013, France
AUDIENCE AWARD

Nord/Nordwest Surf Film Festival (Hamburg), 2013, Germany
BEST DOCU-FICTION

Deutscher Kamerapreis 2013 / German Camera Award 2013, Germany
PROMOTIONAL AWARD EDITING FOR MAXINE GOEDICKE


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