Saturday 26 November 2016

自分を励ましてくれる言葉と歌 - 浪人井戸甚左衛門とデン助の哲学

いつも私を励ましてくれる言葉と歌です.僭越ながらご紹介させていただきます.

まず,励ましてくれる言葉は,1960年公開の東映映画『水戸黄門』(プロデューサー大川博,監督松田定次という東映のゴールデンコンビ)のラストシーンで,町の皆から愛されている正義感が強く気の良い浪人,井戸甚左衛門さんが御老公からの就職(水戸藩への士官)の斡旋をお断りするときに述べる理由です.著作権上問題があるとは思われますが,以下に記します.甚左衛門さんは,子供のころから長く山形県に暮らしていたため,彼には相当強い庄内訛りがあります.

光國「甚左衛門さん,あなたのようなお侍さんが,こういう浪人生活はもったいない.どうでしょう.わしの国の殿様,(右近衛権)中将綱條(つなえだ)さんへ召し抱えてもらうように頼んであげましょうか.」

甚左衛門「いや,折角のご親切だどもな.わしは,今更,士官をするのはまっぴら御免をこうむるだよ.知行(サラリー)はいくらくれるだか知んねえだが...」

光國「甚左衛門さんなら二百石.」

甚左衛門「それだでば,わしの父,ならびに新十郎殿の父上は,元熊本五十三万石加藤 忠広(ただひろ)様の御家中でな.御主君忠広様の御改易(幕府による大名への懲戒処分としての封地変更)とともに出羽(山形県)の庄内様(庄内藩主・酒井忠勝)方へ.そこで苦労の多い年月を送っておりましただ.新十郎殿は,元の身分に返りたいばっかりに妙なことになって命を捨ててしまっただが,わしは今の暮らしで結構楽しい.わしが一年に喰う米は二石(*)もあれば十分だよ.それを二百石もらって残りの百九十八石はどうするべえ?人間は余分なものを持っているから余分な苦労をするだよ.可哀想に水戸三十二万石綱條様は,三十一万九千九百九十八石分の余分な苦労をするにちげえねえよ.一年に二石稼ぐには,結構,左官の下請けの泥こねだけで十分だよ.そして,毎日毎日ここ(いきつけの居酒屋)に来て,この人たちとこうして楽しく暮らしているだよ.[...]まずは,さっする訳で悪く思わんでけれしや.

光國「甚左衛門さん,よく判りましたよ.」


上記の甚左衛門さんの言葉は,『独裁者』のラストシーンで独裁者の代わりにチャップリン扮するユダヤ人の床屋が行った演説にも匹敵する素晴らしいものだと思います.

また,映画の冒頭,行きつけの居酒屋で友人たちと酒を飲みながら歓談する場面でも彼は笑顔で以下の言葉を述べます.こちらも素晴らしい哲学だと思います.

権次(駕篭かき=タクシードライバー)「ねえ.えどずん先生(井戸甚左衛門さんのニックネーム)を大金持ちにしてあげてえ,さぞ,世の中が潤うこったろうぜ.」

甚左衛門「いやあ.わしは金持ちは大嫌いだ.金持ちの三欠けつうてな.金持ちは義理を欠く,人情を欠く,付き合いを欠くやつだけがなるもんだっつうだよ.わしは,ここへ集まって来る御連中とこうして仲良くしてもらっているだけが,たったひとつの楽しみだでな.仲間はずれだけは勘弁しといてけれしや.」


同じシーンに登場する居酒屋の常連客で甚左衛門さんの友人たちも皆良い人たちで,彼らを演じるのは柳谷寛(中間の又蔵,左卜全(易者の鯣堂),杉狂児(駕篭かきの権次)たち.豪華な脇役ぞろいです.博打好きの中間,又蔵を演じている柳谷寛は,個人的に好きな俳優の一人で,例えば,『ウルトラQ 』の「2020年の挑戦」の中で新聞記者江戸川百合子のボディガードを務める警視庁の初老の刑事役を好演しています.さらに,『ハワイ・マレー沖海戦』で哨戒機のパイロット谷本少尉役も好きです.

*10合=1升、100合=1斗、1000合=1石なので,2,000合.一日当たりの消費量としては5合半弱.肉体労働者としては妥当な量か,やや少なめ.

ところで,この映画には月形龍之介の息子月形哲之介も出演していますが,劇中で水戸藩廷に馬で乗り付け,江戸城西の丸で発生した放火による火災の見舞いに朝廷から派遣された勅使(柳原大納言資康)と院使が上野寛永寺から伝奏屋敷に移動するスケジュールを息を切らせながら報告する青年武士を演じています.なお,物語の中で上記両使の饗応(ホスト)役に任命されたのは,常陸府中藩(2万石)の松平播磨守頼明でした.頼明は水戸家の親類のため,徳川宗家の親類.従って同藩は連枝藩のクラスに入ります.

次は,励ましてくれる歌,子供のころ,大ファン(今でもそうですが)だった『デン助劇場』の主題歌です.こちらも著作権上問題があるとは思いますが... タイトルは『心の虹』.

進め 進め とにかく進め
首を振り振り あくまで進め
たとえ夢だと言われても 心の虹だ 男なら
俺に任せと胸を張れ
おいら江戸っ子デン助だい
首を振り振り行く下町の空は夕焼け
明日も晴れる

大宮敏光さん扮するデン助のモデルとなった実在の人は,ちょっと困った性格の人だったそうですが,果たしてその人が首を振っていたのかは判りません.

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