トランプ氏の勝利が確実というニュースが流れたのは,ヨーロッパ時間の9日午前8時48分(日本時間の同日16時48分).スイスのSRF,フランスのL'EXPRESS,ドイツのARD,同じくFrankfurter Allgemeine紙などが速報で伝えました.なお,現時点で関連の記事や論説が際立って多いのが,フランスのLe Figaro紙です.また,外国の首脳の反応として,プーチン大統領が今回の選挙の結果に祝意を表明したとLe Figaro,ドイツのFocusなどが,さらにLe Figaroはイスラエルのネタニヤフ首相も同様の意を表明したと伝えています.(同首相によると,トランプ新大統領は,イスラエルの真の友人だそうです.) 記事のタイトルして目についたものというと,フランスのLes Echos紙のElection de Donald Trump : La folle nuit qui a changé le monde (ドナルド・トランプの当選:世界を変えた熱狂の一夜,または狂気じみた一夜), そして,Le Figaro紙のDonald Trump, de clown à président (ドナルド・トランプ,ピエロから大統領へ)などです.
上記の記事や論説をざっと読むと,フランスのオランド大統領は,ヨーロッパの結束を訴え,ドイツ政府は今後の予測がつかないとして慎重に事態の推移を見守る姿勢のようです.なお,Zeitに外国のニュースメディアの反応についての記事が載っていたのでご紹介します.
おしまいに,素人として感じたことを書かせていただきますと,一番懸念されるのは世界の安全保障の構造変化です. 議会の承認が必要な国の予算などとは異なり,安全保障及び防衛は大統領の専権事項であり,独断でアメリカ軍を動かせるという,我が国の明治期の天皇でさえも持ちえなかった権力がトランプ氏に与えられるからです.プーチン大統領は,今日の対米関係の悪化の責任は一重にアメリカとNATOにあるとし,トランプ大統領の出現によりNATOが弱体化することを期待しているようですが,もし,アメリカがNATOを脱退し,NATOそのものが消滅したら,加盟各国は自らの力で自国を守るか,あるいはヨーロッパだけの軍事同盟を構築するかという選択に迫られるでしょう.仮に脱退しないまでも,アメリカとほかの加盟国との同盟関係が希薄になれば,ロシアのNATOに対する軍事的挑発行為は,今よりさらにエスカレートする可能性もあります.その逆も考えられなくはありませんが.また,中東については,イスラエルに再びアメリカの強い協力が保証される一方,混迷状態が続くシリアやイラクにおいてアメリカの軍事的存在が矮小化すれば,混迷の度合いは一層高まることとなります.ただ,ここでも第二次世界大戦後の国際秩序の再構築を望むプーチン大統領にとって,シリアにおけるアサド政権の存続に寄与しうるトランプ新大統領の出現は願ってもない朗報だったといえます.そして,もし,日本からアメリカ軍が撤退したらという問いについては,少なくとも対北朝鮮に限るならば,今以上に日本の安全保障体制が,ぜい弱化するかということはないのではないでしょうか.同国が我が国に攻撃をしかけてくるとしたら,第一の標的として考えられるのは,在日米軍基地および施設です.それらがなくなり,同時にミサイル技術が向上し,核弾頭をアメリカ本土まで飛ばせることができるようになれば,日本を攻撃する必要がなくなるからです.ただ,反対にダエシュ(IS)などの狂信テロ集団から狙われる危険性が高まることは考えられなくはありません.それは,日本の現政権がアメリカのイスラエル寄りの姿勢に追従した場合です.いずれにせよ,これまで世界におけるアメリカの軍事的プレゼンスが急速に弱まりつつあったことは事実であり,こうした変化は起こるべくして起きたとも言えます.ただ,その時期が今回,思ったより早く訪れただけなのかもしれません.(cf. Wahlen in den USAAmerika auf radikalem Kursm, in NZZ, Kommentarvon Marie-Astrid Langer 9.11.2016, 16:47 Uhr)
上記の記事や論説をざっと読むと,フランスのオランド大統領は,ヨーロッパの結束を訴え,ドイツ政府は今後の予測がつかないとして慎重に事態の推移を見守る姿勢のようです.なお,Zeitに外国のニュースメディアの反応についての記事が載っていたのでご紹介します.
おしまいに,素人として感じたことを書かせていただきますと,一番懸念されるのは世界の安全保障の構造変化です. 議会の承認が必要な国の予算などとは異なり,安全保障及び防衛は大統領の専権事項であり,独断でアメリカ軍を動かせるという,我が国の明治期の天皇でさえも持ちえなかった権力がトランプ氏に与えられるからです.プーチン大統領は,今日の対米関係の悪化の責任は一重にアメリカとNATOにあるとし,トランプ大統領の出現によりNATOが弱体化することを期待しているようですが,もし,アメリカがNATOを脱退し,NATOそのものが消滅したら,加盟各国は自らの力で自国を守るか,あるいはヨーロッパだけの軍事同盟を構築するかという選択に迫られるでしょう.仮に脱退しないまでも,アメリカとほかの加盟国との同盟関係が希薄になれば,ロシアのNATOに対する軍事的挑発行為は,今よりさらにエスカレートする可能性もあります.その逆も考えられなくはありませんが.また,中東については,イスラエルに再びアメリカの強い協力が保証される一方,混迷状態が続くシリアやイラクにおいてアメリカの軍事的存在が矮小化すれば,混迷の度合いは一層高まることとなります.ただ,ここでも第二次世界大戦後の国際秩序の再構築を望むプーチン大統領にとって,シリアにおけるアサド政権の存続に寄与しうるトランプ新大統領の出現は願ってもない朗報だったといえます.そして,もし,日本からアメリカ軍が撤退したらという問いについては,少なくとも対北朝鮮に限るならば,今以上に日本の安全保障体制が,ぜい弱化するかということはないのではないでしょうか.同国が我が国に攻撃をしかけてくるとしたら,第一の標的として考えられるのは,在日米軍基地および施設です.それらがなくなり,同時にミサイル技術が向上し,核弾頭をアメリカ本土まで飛ばせることができるようになれば,日本を攻撃する必要がなくなるからです.ただ,反対にダエシュ(IS)などの狂信テロ集団から狙われる危険性が高まることは考えられなくはありません.それは,日本の現政権がアメリカのイスラエル寄りの姿勢に追従した場合です.いずれにせよ,これまで世界におけるアメリカの軍事的プレゼンスが急速に弱まりつつあったことは事実であり,こうした変化は起こるべくして起きたとも言えます.ただ,その時期が今回,思ったより早く訪れただけなのかもしれません.(cf. Wahlen in den USAAmerika auf radikalem Kursm, in NZZ, Kommentarvon Marie-Astrid Langer 9.11.2016, 16:47 Uhr)
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