Thursday, 23 October 2014

世界的な賞の受賞を拒否した有名人列伝

23日付SPIEGELの"Nobelpreis? Nö, danke!"から.(説明付ウェブギャラリーは,こちらから.)

ノーベル賞の受賞を拒否したフランスの作家であり哲学者のジャン・ポール・サルトルや映画『ゴッド・ファザー』でオスカーの主演男優賞受賞を拒否したマーロン・ブロンド,あるいは,数学者に与えられるノーベル賞と言われるフィールド・メダルの受賞を拒否したグレゴリー・ペレルマン,また,名誉オスカー賞の受賞を拒否した当時70歳のピーター・オトゥール,さらに,イプセン賞は受賞したものの賞金の受領は拒否したペーター・ハントケ等々.皆さん,それぞれ思うところがあって拒否したようですが,ノーベル賞について言えば,1964年の受賞は拒否したものの,それから11年後の1975年になって賞金だけは頂きたいと申し出たサルトル先生の姿勢はちょっと頂けません.もっとも,ノーベル賞の場合,賞金を受け取る権利は1年後には消滅してしまうため,結局はその望みは叶いませんでしたが.また,マーロン・ブロンドは,アメリカの先住民族が抑圧されていることに対する抗議が理由だったそうです.面白いのは,どんな賞でも,それを受賞することで授与する団体に対し一種の借りができてしまう,だから自分はレーニン平和賞は受賞しないと公言していたものの,結局は同賞を受賞したフィデロ・カステロ前首相.だったらそんなこと言わなければいいのにと,根っからの俗人の私などは思ってしまいます.

受賞で個人的に思い出すのが,日本では『伯父さん』シリーズで知られるジャック・タチの『僕の伯父さん』がカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞に際し,ユロ氏の甥のジェラール役を演じたアラン・ベクール始め出演者,スタッフと一緒に登壇するという条件を提示したことです.元々この作品は,1958年の同映画祭の最優秀作品の候補とされていたのですが,伝統的にコミカルな作品の受賞例はないため,審査員特別賞に選ばれたのでした.なお,その年,最優秀作品に選ばれたのは,カラトゾフ監督のロシア映画『戦争と貞操』でした.*1)

もうひとつは,歌手の東海林太郎が紫綬褒章を受賞したときの「お断りできるほど偉くないので」という言葉で,その謙虚さに,とても好感が沸いたことを思い出しました.

最後に,こういう人こそノーベル平和賞受賞者にふさわしいのにと思ったのは,3度も候補に挙げられたものの結局受賞することはなかったスイスの外交官Carl Lutz第二次世界大戦中,駐ハンガリー副領事を務めていましたが,史上最多のユダヤ人を救ったと言われている人物です.彼は,現地の抵抗運動と協力し,ハンガリーにおいてナチスによって迫害されていた60,000人以上ものユダヤ人を救いました.(ルッツに関するドキュメンタリーが,8月末にスイス国営放送のDOKの枠内で放送されました.番組はスイス以外の国では視聴できませんが,番組のページはこちらから.ウェブアルバムは閲覧可能です.)



*1) Dcondey, M., TATI, Paris, 1989, p175

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