Wednesday 25 March 2015

木星がなかったら地球は誕生しなかった?

という学説が,今年2月にPNASに掲載されたJupiter’s decisive role in the inner Solar System’s early evolutionの中で紹介されました.

以下,L'OBSのLa Terre existerait grâce à Jupiterに紹介されていた上記記事の内容の抄訳です.

まず,現在の太陽系が占めている空間において,円盤状に広がっていたガスと固体の星間物質からが徐々に星々が誕生し始めました.その中には,木星も含まれていました.当時の木星の位置は,ほぼ現在と同じだったと思われます.(木星と太陽との間の距離は,地球と太陽の間の距離の5倍ほど.) さて,誕生した木星は太陽に向かい旅に出ました.つまり太陽系の中心部へ向かって移動を開始したのです.木星の旅は,少々荒っぽいもので,ちょうとビリヤードの玉が他の玉を押しのけるように,ぶつかった他の星を次々と容赦なく突き飛ばして行きました.このときの木星の振る舞いは,太陽系内部における惑星の配置を大きく変化させることになりました.しかし,木星は向こう見ずにも太陽に向かって突き進んでいた訳ですから,最終的には消滅してしまう危険性もありました.ところが,彼(フランス語で惑星'Planète'は男性名詞)の行く手を阻むものがいました.組成からみて同類の土星です.幸運なことに木星は土星に押し返され,今度は再び外側へ向かうことになったのです.そして,最後には,この2つの同類は重力の相互作用が均衡する現在の位置に落ち着いたというわけです.

さて,木星の太陽へ向かう道中の間に突き飛ばしたものの中に多くのスーパーアースも含まれていました.これにより,彼らが残っていたら発生し得たと思われる星たちの重力の相互作用の不均衡(星同士の衝突を頻発させ,また,惑星の誕生に必要な星間物質を拡散させてしまう)も取り除かれました.そして,この木星の旅行の結果,太陽系中心部には小さな岩石型の惑星のみが存在するようになったのです.

この学説から導かれた結論として,私たちの太陽系は,他の太陽系と比べて極めて特異な構造をしているということが挙げられます.そして,前者の3番目の星である地球に極めて近い組成の惑星が存在する確率も大幅に限られるということになります.

以上が上掲記事の抄訳ですが,何となくホルストの組曲『惑星』の中の『木星』が聴きたくなりました.感謝の気持ちと共に...

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