Tuesday, 23 June 2015

K. S.様へ - 私的連絡

先日は,久しぶりにお目にかかり,とても楽しいときを過ごすことができました.

ところで,期せずして言及することとなった'ムカデ女'の件ですが,あの夜中に休んでいる私の足元に立っていた若い女性らしい人影が,本当にムカデが人間の女性に化けたものだったのか,そうでない別の存在だったのか,恐らく永久に判らないと思います.何分,子供のころからねぼけることが多々あるもので,件の人影も,目は覚めていたものの脳の中では夢の続きを見ていた可能性も十分考えられます.いずれにせよ,指で差し「何者だあ!」と叫ぶやいなや,すぐに右のほうへ移動し,消え去ったことは今でもはっきり覚えております.ただ,寝具の中に小さなムカデが入り込んで,私の右の脇腹を刺したのが,その人影を見た前だったのか後だったのかとのお尋ねでしたが,お答えした通り,やはり思い出すことができません.

(以下,18歳以上の方のみ,お読みください.)

なお,申し上げた通り,私としては,正体がなんであろうと,美しい面立ちの若い女性が,深夜,訪ねてくれるというのは有り難い限りです.とはいえ,万が一,間違いを起こしてしまった場合,少々困ったことになるかもしれません.その女性がムカデが化けたものであった場合ですが.

例えば,夜,ムカデ女が表れ,そうとは知らずに彼女と2人で暫く四方山話をしたとします. 気がつくともう深夜.

私「そろそろ,お帰りになられたほうがよろしくありませんか.お宅でもご心配されているでしょうし.なんでしたら,お送りいたしますが.お住まいはどちらでございましょう.」
ムカデ女「あのう...,上州(上野国=群馬県)の赤城山ですけど...」
私「それは,少々遠うございますな.(私の住まいは横浜,つまり武州
=武蔵国のはずれ.) 今からでは,高速バスにも新幹線にも乗れますまい.と申して,私のところには夜具は一組しかありませんし... よろしうございます.では,この夜具をお使い下さい.私は,このまま,となりの部屋で休みますので.」
ムカデ女「いえ,それは申し訳のうございます.あのう...」
私「は?」
ムカデ女「もし,ご迷惑でなければこの夜具を2人で使っては...」
私「しかし,いくらなんでも,それはまずいでしょう.」

でも,結局,その夜は同衾で過ごすことに.案の定,年甲斐も無く私が間違いを起こす.10月10日が過ぎ,忘れていた頃に,ムカデ女がムカデの姿のまま,小さな子ムカデを抱いて現れる.実は,それは私とムカデ女の間に出来たムカデ人間の幼虫.

ムカデ女「これは,あなたの子供です.どうぞ認知をしてください.」
私「いやあ.申請をしても役所が受理してくれるかどうか...」
ムカデ女「そんな無責任なことを仰らないで下さい.」

押し問答をしていると,ムカデ女の父親(実は赤城山の神)が現れ...

ムカデ女の父「うちの娘をどうしてくれるんだ.責任とって結婚しろ.」
私「いやあ,そう言われましても...」
ムカデ女の父「持参金として10万両(実は徳川家の埋蔵金)出すが,どうだ.」
私「そういうお話なら検討させていただきます.」

ムカデ女との生活が始まり,やがて,幼虫が大きくなる.

ムカデ女「ちょいとおまえさん.」
私「何だ? おムカ.」
ムカデ女「ムカ坊なんだけどさ.そろそろ学校に上がらせないとね.」
私「学校!?何でまた.」
ムカデ女「折角,おまえさんとの間に出来た子供だろ.人並みの教育を受けさせてやりたいじゃないか.」
私「いや,そういわれても... よしんば通ったとしても,何しろ,この姿だろ.いじめに遭うのは確実だよ.私は,よしたほうがいいと思うんだがなあ...」
ムカデ女「なんだい? おまえさん,あたしに逆らおうってえのかい?」
私「いや,逆らうって... 別にそういうわけじゃ... 」

ムカデ女房には逆らえない.夫婦喧嘩でもしようものなら,あっさり刺されて七転八倒の痛みに苦しみ,最悪の場合,1週間程仮死状態にされてしまうから.しかし,彼女は夫を殺さない.そこは神様の娘だから,死なない程度の毒の量をちゃんと心得ていている.オーバードーズは決して起こさない.

ムカデ人間である子供も学校に通い始めると,はじめのうちは多少いじめに遭ったりしたものの,1年生の運動会のムカデ競走では彼がリーダーを務めたクラスのチームが1位となり,一躍クラスのヒーローに... ただ,それを見ていたある親の証言によると,たまたま,その親が薄目で見たとき,どういうわけか,ムカ坊の胴体が伸び,そこから下へ生えた無数の足が1本づつ長い下駄についている各ストラップに入り,それらが見事に同期しつつ走行しているように見えたと言う.さらに,他のチームメンバーたちは,ムカ坊の長く伸びた胴体の上に単にまたがっているだけだったようだったとも...

そんなことがあったとしても,やはりムカデ女とは結婚しない方が無難のようです.

「後悔を先に立たせて後から見れば,杖をついたり転んだり」(または,「後悔先に立たず」)と言いますが,少なくともムカデ女には通用しない諺であることは間違いありません.百足なだけに転びようがありませんから.

などと言うようなことを想像してしまいました.お後がよろしいようで.

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