先日,ARTEで放送されたウォータールの戦いについてのドキュメンタリーでは,壮絶な戦闘シーンが再現されていますが,中には特定の視聴者にはショックを与えかねないと思われる映像が含まれていました.日本では,絶対に放送されないと思われるものです.が,以下のスクリーンショットでご覧いただけるように,視聴を開始したときに注意書きが表示されます.
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| フランス語版.番組を選択すると,最初に表示される画面に注意マークと子供や特定の大人にショックを与えかねない映像が含まれているとの記載. |
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| 上掲画面上のプレイボタンを押すと,さらに確認を促す画面が表示され,「続ける」のボタンを押すと始めて本編の再生が始まります |
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| ドイツ語版も同様 |
ある人々が,しきりに口にする「平和ボケ」という言葉を聞くたびに,行政にしろニュースメディアも,過去のものにせよ現在のもの(例えば,NATOとロシアの悪化する緊張関係やイラク,アフガニスタンなどにおけるNATO諸国軍の駐留体験)にせよ,戦争の実態をできるだけ客観的に示そうとせず,むしろそれを隠そうとしているのが不思議に思えてなりません.現実の戦争の実態も知らないまま,安全保障法制や集団的自衛権について議論したり,国民投票における投票年齢を引き下げるするなど,すくなくとも政府与党および行政の言行動には,まったく整合性が見い出せません.(政府与党および行政当局は,国民全体が意思を持たず,思考もせず,前者が望むことのみ行う都合の良いロボットになってくれるようにひたすら腐心しているように見えます.)
戦争の実態を知る為には,ときには凄惨なシーンを再現する必要があります.(上記の番組においては,戦闘に参加した人々の残された証言に基づいて,それらのシーンが再現されていました.ドキュメンタリーとしては当然の作り方と言えます.) もし,日本の行政やニュースメディアが,死者たちの祟りを恐れる御霊信仰に基づいて,戦争の実態を隠そうとしているとしたら,西洋近代社会の民主主義の前提となっている'Die Entzauberung der Welt' (「世界の脱呪術化」,Max Weberの言葉)を経験していないことを自ら証明していることになります.ようするに,日本は,実態として長州藩らによる幕末のクーデターによって成立した絶対主義的封建制中央集権国家の構造を保っている極めて特異な前近代的な国と言えるでしょう.(凄惨な現実は隠蔽しつつ,映画などでは『悪の教典』に見られるような極めて残虐性が強く凄惨なシーンが子供たちの目に触れるのを許していますが.さらに,裁判員が参加する裁判では実際に起きた凄惨な事件の被害者の画像を裁判員達は見せられています.)
もうひとつ,凄惨なシーンを不特定多数の人に公開しないのは,私たち日本人には,西洋ではルネサンス期以降のキリスト教神学者や人文主義者によって提唱された'Libre Arbitre'(「自由な判断」)という概念,または風習がないからかもしれません.具体的に言えば,上記の『ウォータールーの戦い』の例で示したように,もし,観る側に観るか観ないかの自由な選択の余地を残してしまうと,それを観るのをためらう人達が,他の人達のみが観ることができる映像を公開するのは自分たちに対する情報秘匿であり,差別であるとして公開する側の姿勢を非難することになるでしょうから.どういう訳か,私たちは,昔から生きるのも死ぬのも一緒という強い'絆'で結ばれているようです.「一億玉砕」などという戦時下のスローガンが思い出されます.そして,子供が虐殺される等,凄惨な事件が起きると,ひたすら皆で「命を大切にしましょう」という呪文を繰り返すばかりで,具体的にどういう行為が「命を大切にする」行為で,反対に「命を粗末にする」行為というのはどういう行為なのかも示そうとしません.(欧米のニュースメディアは,イラクで起きた
民間人誤射事件やアフガニスタンでの
民間人誤爆事件を検証するための映画やドキュメンタリーを制作しています.また,ドイツのARDは,13年間に亘る連邦軍のアフガニスタン駐留の
クロニクルを放送,また,駐留した兵士による証言集等,多くの書籍も出版されています.特定秘密保護法が施行された今の日本で,仮にそうでなくても,今の日本人にそうした過去に自ら犯した過ち,さらに,将来,同様の事件を起こした場合,それらをメディアという手段を用いて,この国の歴史,文化,さらに精神的特性を踏まえた上で体系的且つ論理的,客観的に検証,分析し,日本国民はもちろん,人類普遍の教訓として共有させ,そうした過ちを避けようとする姿勢や能力があるでしょうか.) いずれにせよ,この国は自らを近代化を了え,民主主義によって統治されていると言ってはいますが,少なくとも西洋の近代化し,民主主義によって統治されている国々とは全く異なる要素や構造が保たれている国であることは間違い有りません.宗教から政治,ありとあらゆる領域でこの国はパラノイアック,インコシステント,チャイルディッシュな国であるとためらうことなく断言できます.
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