Wednesday 11 February 2015

産經新聞社にもしドイツ語が理解出来る人がいればとりあえず読んでほしいNY同時多発テロ発生直後にSPIEGELに掲載された3つの記事

なお,ヨルダン人パイロットが殺害された直後のドイツのJoachim Gauck
連邦大統領の当該事件に関するコメントについては,Die WeltのGauck warnt nach IS-Geiselmord vor Auge-um-Auge-Prinzipなどをご覧ください.

ところで,産經新聞2月7日付の産經抄の内容についてですが,いくつかより詳しく知りたい点があります.例えば報復の具体的な対象と手段です.Daech全体に対する攻撃を意味しているのか,それとも邦人二名を実際に殺害した人物(同一の可能性と2人である可能性が指摘されている)に対して行うのか.仮に後者を希望しているのであれば,どのような手段を用いるのか.邦人達が殺害されたときのように白兵で斬首するのか(もし日本刀を用いる場合は,相当の居合い抜きの腕前が必要),それともアメリカ軍が敵戦闘員を攻撃するために使用しているようなアパッチの劣化ウラニウム弾を使用した30 mm機関砲を使うのか.そして,もしオペレーションの実行時に2007年7月12日にバグダッドで起きたアメリカ軍のよる民間人の誤射事件(カメラマンなど民間人が上記の劣化ウラニウム弾で撃たれ即死.遺体は激しく損傷.)のような事態が起きた場合,どのような対応をとるべきと考えているのか(今の政府にパネー号誤爆事件時と同様の対応がとれる能力があるかについては相当疑わしい.).仮に日本の憲法を変えたとしても,国際法上,産經新聞社が主張する行為は許されるのか.もし,許されない場合は,日本は国際法を無視しても同新聞社が主張する報復行為を行うべきという姿勢なのか.さらに国内法の改正して江戸時代のような仇討ち制度(明治初期迄存続)を復活させるべきと考えているのか等々,興味があります.

いずれにせよ,私たち日本人は,ルネサンスや宗教改革といった精神文化の発達過程を経て近代市民社会を確立した西洋の人々のような歴史的経験をしていません.そのため,迷信と呼べる非合理な思い込みに無意識のうちに従っている場合が多々あります.今回,産經新聞に掲載された社説は,憲法というものを神道の祝詞,あるいは何かの呪文ののように捉えている無意識下における前近代的思考の表出のひとつであることは間違いなさそうです.(所謂言霊信仰)

仮に上記の所感の前提となっている私の産經新聞の当該記事の理解が正しくない場合はご容赦ください.ただ,もし,平和ボケという言葉の産經新聞社による定義の中に戦争の実態を知らないということが含まれているのであれば,少なくとも産經新聞社自身が深刻な平和ボケに陥っていることも事実でしょう.言うまでもありませんが,憲法改正を主張するのであれば,まず,その根拠となる具体的な状況の定義が必要です.そして,その状況下でどのような行動を採る際,現行法のどの部分が妨げとなるのか,それをどのように変更すれば良いのか.その理由はといった内容の議論が必要です.

憎むとも憎み返すな憎まれて,憎み憎まれ果てしなければ...(落語『天災』の中の紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)の言葉)

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