Saturday 7 February 2015

ヨルダンを巡るDaechの目論見

以下,SRFの特派員Fredy Gsteigerさんの分析をまとめた«Der IS möchte den Kampf auf Jordanien ausweiten»のメモです.
  • ヨルダン軍について
組織も装備も整っていて,小国の軍隊としては戦闘能力は比較的高い. 特に空軍の装備には西側諸国の機材が投入されている.元戦闘機パイロットのアブドラ国王も含めヨルダン空軍のパイロットはすべてアメリカやイギリスなどの西側諸国で訓練を受けていて,加えて多くの西側諸国の軍事顧問も駐在している.とはいえ,Daechのようなテロ民兵組織と従来型の軍隊が対抗し得るかについては疑わしい.仮にDaechを一時的に弱体化させることに成功できたとしても,ヨルダンを含めた西側有志連合が完全に勝利するかは大いに疑問.かつてのNATO軍のタリバン支配下のアフガニスタンに対する軍事介入と同じ道を辿る公算少なく無し.
  • アブドラ国王の考えとヨルダンの世論について
アブドラ国王にとって,対Daech戦へ積極的に参加する目的は,スンニ派も含め,ムスリムの大多数はDaechのイデオロギーに反対であることを明確に示すこと.そして,そのことでヨルダン世論の一致を図ること.しかしながら,王室の家系ハーシム家はヨルダンでは少数派に属していて,国民の大半はパレスチナ系住民.さらにイラクやシリアからの多くの難民も居住している.さらに,Daechの中にはヨルダン人の戦闘員も加わっていてシリアでの戦闘に参加している.
  • Daechの目論見
Daechは,何とかしてヨルダンの世論を分断し(少なくともハーシム家と関係の深い部族と一般国民の一部の間を),国内を混乱させる事でシリアやイラクと同じようにヨルダンにおいてもその影響力を拡大しようとしている.それこそが,ハーシム家とのつながりが強い家系に属するヨルダン人パイロット殺害の目的だったと思われる. (差別の対象となっているパレスチナ系のヨルダン人の共感を得られる可能性があるとDaech側は考えた.)

Cf.Jordaniens Luftwaffe attackiert IS in NZZ

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