誤解を招いているのは下の写真です.Googleの画像検索などで,例えば"Nuclear contamination of Pacific Ocean by Fukushima"といったキーワードで検索すると表示される,今やおなじみとなっている画像です.
次にもう一枚,似たような画像をご覧下さい.
- 「膨大な量のストロンチウム,トリチウム,セシウムが福島から漏れ出してた模様で,海流,降雨,風などによって北半球全体に拡散している.」(Smx(アンチル),10月17日)
- 「福島の放射能はすでに北アメリカに暮らす人々の命を奪いつつある.」(Nodisinfo,10月10日)
- 「今後の数年間で,現在も進行中のこの災害は北半球の数百万人の住民の健康に潜在的な悪影響を及ぼしかねない.そして,最も悲しむべきことは,これらの人々は彼らの健康上の問題の本当の原因を知らないことだ.」(Le Nouveau paradigme,10月26日)
以上,人騒がせと言えば言えないこともない話ですが,火の無いところに煙は立たないのも事実で,福島第一原子力発電所では現在も放射能を含んだ冷却水が地下水や海に流れだしていることは事実です.10月に発行された専門誌"Deep-Sea Resarch"では福島からのセシウム137の海洋における拡散路についての研究結果を報告していますが,それによると,この物質は来年の始めにはアメリカの北西岸に到達すると予想されています.なお,健康に被害を及ぼす量ではなく,専門家たちはオレゴン州とワシントン州沿岸で2014年から2020年までの期において10から30 Bq/m3程度,カルフォルニア州沿岸では2016年から2025年までの期間において10から20 Bq/m3を予想しています.
ところで,下の画像はセシウム137の海面下200 mまでの濃度の予測値を示すものですが,フランスの国立の研究機関IRSNのDominique Boustによると,仮にセシウム137の濃度が福島の原発事故以前の10倍になったとしても,その地域の生物や海産物の消費に危険をもたらすものではないそうです.実際,平均で20 Bq/m3の海水中に生息する魚の場合,1 kgにつき2ベクレルの放射能が検出されますが,これはヨーロッパの基準の500 Bq/kgでも日本の基準の100 Bq/kgを下回る値です.
a:2012年4月,b:2014年4月,c:2016年4月,d:2021年4月 |
*1) 海外では,例えばドイツのDeutsche Wirtschafts Nachrichtenの12月14日付"Tepco-Ingenieur: Japanische AKW sind bei Erdbeben akut gefährdet"などがJapan Timesの当該記事を内容を伝えています.
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