Friday, 14 September 2012

21世紀の中東は,第ニのバルカン?

(時間がないため,ざっくりとしたご紹介にとどめさせていただきます.後日,時間に余裕が出来た折に,改めてさらに詳しい説明をさせていただこうと思っております.)

アルジェリアで発行されているフランス語の新聞"El Watan"の9月2日付けの電子版に,標記題名の記事が掲載されていました.

原題名:Le Moyen-Orient, nouveaux Balkans du XXIe siècle ? Une logique d'embrasement

ご興味をお持ちの方は,上記記事に直接アクセスされて,そのままお読みになるか,あるいは,Googleなどの翻訳ツールで英語に翻訳してお読みになることをお薦めします.(ご案内の通り,日本語に翻訳させると到底読めない代物しか出てきませんので.)

かなり長い記事なのですが,簡単にまとめると,現在の中東の状況が,第一次大戦の勃発直前のバルカンのそれに良く似ているということです.

第一次大戦は,少なくとも当初は二つの陣営の間における戦いでした.そのうちのひとつは,フランス,英国,ロシアの陣営.そして,もうひとつは,ドイツ,オーストリア,イタリアです.このうちイタリアは,1915年5月に後者を脱け出て,前者に合流します.なお,前者には,1914年11月,さらにトルコが入ります.

では,現在はと云うと,前者に相当するのが,アメリカ,欧州各国,そして,それらと比較的友好な関係を持っている,アラブ・イスラム圏諸国(君主制産油国,トルコ,エジプト,ヨルダン,モロッコ),一方,後者に相当するのが,ロシア,中国,そして,他のアラブ・イスラム諸国(イラン,シリア,リビアのヒズボラ,パレスチナのハマス)です.

第一次世界大戦は,基本的に,衰退しつつあったオスマン・トルコの領土を巡っての上記ニ陣営間の戦いでしたが,今日,中東のさらなる不安定化を招いているのは,中東の資源を巡る列強(敢えてこの表現を使わせていただきます.)の確執です.

例えば,世界経済や政治において,その影響力を失いつつあるアメリカや欧州各国の陣営は,イランの核問題や中東の民主化という大義名文を掲げて,中東地域をなんとかその影響下に収めようと画策しています.そして,もう一つの陣営がそれに対抗しているわけです.

そして,アラブの春という一連の運動に始まったアラブ諸国の変化は,ある意味において,第一次世界大戦以前,オスマン・トルコの衰退に伴う,バルカン諸国におけるクリスチャンたちの自由を求める運動に重なる部分があるかもしれません.

こうした状況下,もう一つ気になるのは,アメリカでのイスラム教の予言者を冒涜する映画の公開に刺激された,最近のアラブ諸国の反米運動です.軽々に憶測は禁物ですが,その裏には,なんらかのアメリカ政府の意図が隠されているかも知れません.

そして,今回のQE3の実施ですが,有事のドル高を見越しての措置だったのかもと想像をたくましくしてしまいます.あるいは,最近,兵器産業の分野において,特にその開発に力が注がれている無人偵察(攻撃)機(Drone)の投入先を求めているのではとも...*1)

いずれにせよ,この地域の不安定生は,増加することはあっても,減少することはなさそうです.第三次世界大戦まで発展することは,さすがにないとは思のですが...


*1) http://www.bbc.co.uk/news/uk-19432407, http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-19169023, http://www.bbc.com/news/technology-19397816, http://www.tagesschau.sf.tv/Nachrichten/Archiv/2012/09/13/International/In-den-USA-waechst-die-Angst-vor-Drohnen, "Governmental Tracking of Cell Phones and Vehicles: The Confluence of Privacy, Technology, and Law"
そのうち,すでに、数年後までには自国の空をドローンが飛び交うことを許した、アメリカ政府の要求により,日本の空にも警戒用の無人偵察攻撃機が飛ぶことになるかもしれませんね.少なくとも名目上は基地および在留自国民保護のために.もちろんゆくゆくは,日本の警察や自衛隊も導入することになるでしょうけど.アメリカの要求には応じることしかできませんから,この国の政府にしろ,役人にしろ,産業界にしろ.日本は,アメリカの大量の国債を買わされていますが(今は,中国のほうが多いでしょうが),イスラム教徒を毛嫌いするキリスト教原理主義者たちとの関係が深い兵器産業のロビーイングで,その金のかなりの部分が彼らの懐に入り続けるでしょうし.そこで開発,生産されたドローンが,巡り巡って日本の空を飛ぶようになる.(他の軍用機は,すでにたくさん飛んでいますが.) 実際,面白い仕組みです.でも,日本って本当に主権国家なんでしょうかね.

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