Tuesday, 14 August 2012

失敗指数(Failed States Index)と獲得メダル数の関係をみてみると

ご無沙汰しております.

突然ですが,ふと思い立ち,The Fund for Peaceと云う民間団体が発行している"Failed State Index"*1)と今回のロンドンオリンピックゲームの参加国毎の獲得メダル数を一つのグラフ上にプロットしてみました.

グラフ上をクリックすると拡大表示されます.*2)

下に伸びる青い柱が,各国のFSIを示していますが,元々当該の指数は正の値で示されています.ただ,今回は,見づらくなるのを避けるため, 数値はそのままで負の値に変えています.FSIは,それぞれの国の政治,経済,社会,環境,その他国民生活を取り巻くさまざまな状況の危険度といえるものを数値化したもので,国民が豊かで安定した生活を送るための条件が整っていればいるほど,其の値は小さくなります.このグラフでは,左から右へFSIの数値の小さい順,すなわち青い柱が短い順に並べてあります.これは,左に位置する国ほど,その右に位置する国に比較して住み良く,暮らし安い,逆に云うと,右に位置する国ほど,その左に位置する国より住みづらく,暮らしにくいということを表しています.グラフの一番左に位置しているフィンランドのFSIは20.0ですが,これは調査対象となっている177カ国のうち,最も低い数値であり, この国は唯一"Very Sustainable"というクラスに含められています.反対に,一番右に位置するアフガニスタンのFSIは,106.0で,私たちが良く知っているように,やはり未だに多くの問題を抱えた国であるとされているというわけです.(グラフ上では,スペースの都合で,フィンランドに付けられた"Very Sustainable"という評価の表示とアフガニスタンの"High Alert"の表示を省略しています.)実は,このFSIが紹介されているリポートを最初に目にしたとき,果たしてどのような計算方法で,そのような数値化が可能なのかと首をひねりましたが,自分が認識している各国の状況と比較して,なんとなくですが,おおよそ納得できる数値のように思えています.

次に,上に伸びている二段重ねの柱が,各国のメダル獲得数で,下の赤い部分が金メダル数,そして,その上の薄緑の部分が銀と銅メダルの獲得数を表していて,柱の上端がメダルの獲得総数を表します.各国のメダル獲得数は,オリンピックゲームの公式Webサイトに発表されているものを用いました.(http://www.london2012.com/medals/medal-count/)

自分で描いていて,こんなことを云うのもどうかと思いますが,「まあそんなものなのだろうなあ」という印象です.一点だけ,面白いと思ったことは,Very Sustainableと云う評価を得ているフィンランドと,それに続く,Sustainableと評価された国々においては,FSIとメダルの獲得数がほぼ反比例しているということです.もちろん,だからといって,「国民が持続的に豊かで安定した生活が営める国程,オリンピックゲームにおけるメダルの獲得は困難」などと云う結論を出すつもりは毛頭ありませんが.さらに,Sustainableと評価されている12カ国のうち,ルクセンブルク(FSI: 25.5), オーストリア(FSI: 27.5)*3),そしてアイスランド((FSI: 29.1)の3カ国,つまりその1/4,25%が今回のオリンピックゲームに参加していないということです.それぞれの国の不参加の理由は知りませんが,Sustainableの次のグループ,Very Stableの評価がついたすべての国が参加していることと比べても面白く思えます.なお,誤解のないように加えますと,これらの,言わば比較的豊かで安定した国々でも,やはりメダルの獲得数が少なかったことについては当然失望の声が上がったようです.*4)

今回のロンドン大会では,日本選手団は,史上最高のメダル獲得という快挙を成し遂げました.本当に素晴らしい事であり, 各選手の活躍に,個人的にも大いに励まされました.また,なじみのあるアルジェリアが,ラマダン期間中にも拘らず,男子陸上1500m走で金メダルを獲得した事もとても嬉しいできごとでした.Viva Algeria!

しまりのない内容で恐縮ですが,とりあえず以上です.

おしまいに良い子の皆さんへ

グラフも含め,上記の内容は,もちろん自由に使っていただいて構いません.夏休みの自由研究のテーマが見つからなかったときの参考にでもしてください.(でも,ならないだろうなあ... ほぼまちがいなく...) 


*1) FSIリポートは,下記URLへアクセスすることで,どなたでも入手可能です.
http://www.fundforpeace.org/global/?q=fsi2012
*2) Excelで作成したものをPNG形式に換えて本ブログに載せたのですが,拡大表示させても字が小さく読みづらいので,PDFファイルにして以下に載せました.必要な場合は,お手数ですがダウンロードしてご覧ください.(新しく開くウィンドウの画面上左上の"ファイル"をクリックするとメニューが表示されるので,其の中のダウンロードをクリックしてください.)
https://docs.google.com/open?id=0B9CLMM0ezUh7eTFoa09CT1k3ekU
*3) オーストリアというのは,原子力発電所の問題には非常に敏感な国で,自らは持っていませんが,中欧というその位置柄チェルノブイリに近 く,また,国境付近に多くの,古く危険性の高い原子力発電施設が存在していることもその理由とは思いますが,昨年の福島第一原子力発電所で事故が発生した 直後,オーストリア気象庁(ZAMG: Zentralanstalt für Meteorologie und Geodynamik)は,もちろん日本に設置されているものも含め,周辺各国にあるCTBTO(包括的核実験禁止条約機関)の観測所のデータをもとにセ シウム137やヨウ素131などの放射性物質の大気の動きによる拡散のシュミレーションをいち早く発表しています.そして,それはドイツのシュピーゲル (Spiegel)誌の3月14日付け電子版に掲載され.世界中の多くの人に極めて重要な情報が提供されました.("Wind bläst radioaktive Wolke nach Tokio":「放射能雲が風によって東京方向へ流されている」) さらに,原子力発電所関連ですが,オーストリアは,Global 2000という,原子力発電所の問題も含め,さまざまな分野における環境問題にとりくんでいる民間団体があり,Google Mapを使って,欧州全域にわたる原子力発電所に関する詳細な情報(事故履歴等)をイントラクティブで提供しています.興味がありましたら,下記URLに アクセスしてみてください. Google.atで,"AKWs in Europa"というキーワードで検索しても見つかります.(いずれにせよ,残念ながら,ドイツ語ですが...) http://maps.google.at/maps/ms?ie=UTF8&hl=de&msa=0&msid=212731046368592544065.000474b3dbfa178d4a444&source=embed&ll=50.401515,9.052734&spn=14.719408,23.027344&z=5
*4) 例えば,スイスでは:
http://www.swissinfo.ch/ger/gesellschaft/Olympia_begeistert,_Schweizer_enttaeuschten.html?cid=33298602&rss=true

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