Friday 17 August 2012

フェイスブックの試練

最近,フェイスブックの株式の価格の低迷がよく話題にのぼります.そもそも,私のようなものにとってみれば,フェイスブックなるものはどのように使うべきものか,あまりよくわかりません.使い方によっては,たいそう便利なもののようですが...

最近目にした雑誌の記事によると,どうやらフェイスブックの株式価格の低迷は,同社が時代の趨勢に取り残されてことが原因のようです.時代の趨勢とは,昨今のスマートフォンの普及です.

Gartnerという市場調査会社は,現在,世界中でインターネット上の情報の閲覧に用いられる機器は,情報の閲覧量から視た場合,ラップトップやデスクトップ型のコンピュータのほうが,それ以外の機器,すなわち携帯電話やスマートフォン,そしてタブレット型端末機よりも多いものの,来年は,ほぼ間違いなく,それが逆転するだろうという予測をしています.実際,およそ9億5千5百万人のフェイスブックの利用者も.その半数以上が,所有している何らかの携帯通信機器にFacebook-appをインストールしているとのことです.また,グーグル利用者を対象に実施された調査においても,やはり同様の結果が得られたそうです.そこから,浮かび上がって来る問題は,以下の3つです.
  • スマートフォン上での閲覧における広告収入は,全体の広告収入のごく一部でしかない.
  •  上記による広告収入の減少を取り戻すことができるビジネスモデルがまだ確立されていない.
  • これまで市場を支配してきた,固定型コンピュータからのインターネットへの接続を前提としている大手インターネット企業がその有利な地位を維持し続けられるかどうかは疑問.
"Techcrunch"と云うブログを綴っているJay Jamison氏は,携帯通信機器によるインターネットへの接続の時代をインターネットの第三の時代と名付けています.第一の時代は,ヤフーやグーグルといったポータルサイトの時代,そして,第二の時代は,フェイスブックやリンクドイン及びジンガといったソーシャルウェブの隆盛の時代.各時代には,それぞれ異なるニーズが存在し,それに応えられるサービスを提供する企業が興隆してきたわけです.

今や,スマートフォンが隆盛を極めつつある時代ですが,その利用者は,これまでコンピュータを使って入手していたものと同様の情報をスマートフォンを使って得ようとします.ただ,閲覧される情報の表示形態は,それぞれの機器の形状のために,前者と後者では大幅に異ならざるをえません.コンピュータに比較して画面が小さなスマートフォンでは,一度に多くの情報を閲覧することができないため,利用者は,本当に必要な情報のみが表示されることを望みます.しかし,フェイスブックにおいては,現在,デスクトップコンピュータ上でも同一の画面上に表示される情報の量がますます増大していますが,その情報のすべてを専用のアプリケーションであるFacebook-Appを使ってスマートフォン上でも表示させているのです.

そうしたフェイスブックの姿勢とは異なり,最初から携帯通信機器からのウェブへのアクセスを 前提としている企業は,一つのサービスには,それ専用のアプリケーション使用すれば良いと考えています.例えば,好みに合ったレストランを探すには,すでに日本でも用いられているフードスポッティング(Foodspotting)をといった具合です.

さらに,インスタグラム(Instagram)という携帯通信機器用画像共有サービスに比べて,ヤフーが提供している同様のサービスであるFlickrや,フェイスブックのそれは,すでに時代遅れのように見えると記事には書かれています.(インスタグラムは,フェイスブックによって,この4月に10億ドルで買収されたそうです.)

そして,こうしたモバイルウェブ環境においては,当然,それを使ったビジネスモデルも変化し始めているわけですが,広告にその収入の大半を頼っている企業に取っては,今や,それが一つの問題となっています.実際,スマートフォンなどの小さな画面上に目につくような広告を表示させることは,容易なことではありません.こうした環境で,どのような形の広告がもっとも適しているのか,その答えは,まだ出ていません.実際,米国では,携帯通信機器上におけるひとつのバナーの表示1000回につき,30から40セントしか支払われないそうです.

こうしたITビジネスを取り囲む環境の変化は,大手のIT企業の業績を悪化させ続けています.例えば,グーグルは,その収入の90%を広告から得ていますが,ここのところ,三期連続で,バナーがクリックされることで得られる収入が継続的に低下しおり,直近の四半期においては,およそ16%も低下したそうです.こうした深刻な収入の低下の打開策として同社は携帯端末用基本ソフトのAndroidの提供を開始しましたが,それによって見込んでいた広告収入の増加にはまだ至っていないようです.

フェイスブックも,その売り上げの85%は,広告によるものですが,ここのところ,その増加のペースが鈍くなっており,その原因として,以前に比べて利用者や広告収入の増加が鈍っていることがあるようです.実際,2011年においては,その増加率は,88%でしたが,今年2012年になってからというもの,その第1四半期では,45%,第2四半期においては32%でした.

そうした中,新たな成長戦略として,フェイスブックも携帯ウェブ環境への適応を模索しているようです.例えば,最近,同社はウォールのステータス・メッセージに,Likeをクリックした企業の広告を挿入することを始めました.フェイスブックの発表によると,この方法により一日あたり50万ドルもの収入が得られているとのことです.

他の企業の中には,まったく別の方法,つまり,その効果さえ疑わしい携帯通信機器の画面上における広告表示を用いずに顧客を取り込む方法を思いついたものもあります.例えば,現在,2千万人の利用者がいるWazeというGPSナビゲーションシステムとソーシャルネットワークサービスを結合させたものですが,ルート案内に加え,付近の価格の安いガソリンスタンドも示してくれるので,それらのガソリンスタンドのオーナーにとってみれば,よほど確かなマーケッティング方法であるわけです.

フェイスブックにせよ,グーグルにせよ,上述のようなサービスを開始するには,理想的と云える環境を持っているわけですが,残念ながら,彼らが,モバイルウェブ環境において躍進するためには,もう少々時間がかかりそうです.


以上,8月14日付電子版Spiegel誌掲載"Fehlende Mobil-Strategie Smartphone-Boom bedroht Facebooks Geschäft"(「モバイルフォン戦略の欠如 スマートフォンの隆盛に脅かされるフェイスブックのビジネス」)より

No comments:

Post a Comment