Thursday, 21 May 2009

経済効率の優先とインフルエンザ

5月20付電子版『Le Monde』より

経済効率最優先の、家畜の密集度が非常に高い養豚場、あるいは養鶏場は、今回のインフルエンザのような疾病の病原体を生み出してしまう可能性があるといわれています。こうした環境においては、ウィルスは連鎖的に感染し、遺伝子を交換しあうなどして変異する機会が与えられてしまうためです。(米国の国立保健衛生局の調査結果:cf.Journal of Environmental Health Perspectives, 14 novembre 2006)

さらに、自然では到底存在しえないほどの密度で、豚や鶏が飼育されている場合、そうでない場合に比べ、一般に病気に罹る罹る確率も高くなります。それを防ぐために、多量の抗生物質が飼料に混ぜられ継続的に与えられます。このことから、こうした養豚場や養鶏場で発生、あるいは変異した病原菌は、すでに抗生物質に対するある程度の耐性も備えてしまう可能性があるというのです。実際、フランスの国立保健医療研究所(Inserm)の報告によれば、養豚場に勤めている人たちから、抗生物質に対して耐性も持っているバクテリアが検出された例もあるそうです。

人が罹る疫病は、いつも、それまで別の動物のみが感染していたウィルスが突然人間にも感染するようになって発生しています。現時点では、新型インフルエンザ(A/H1N1型)は弱毒性といわれています。しかし、専門家たちはかなり以前から、それよりはるかに強毒性の鳥インフルエンザのウィルスが豚に感染するようになり、そして豚から人間に感染するようになることを恐れています。こうした変異を物理的に阻止するため、欧州連合では、域内において、養豚場と養鶏場の近接を禁止しています。

さて、今回のインフルエンザの病原体ですが、その発生地として各方面から疑われているのが、メキシコのベラクルス州のラ・グロリアの養豚場です。現時点ではその確証はないのですが、唯、この養豚場を経営しているスミスフィールド・フーズについては、同社が経営する養豚場の付近で発生した呼吸器系の疾患について、養豚場の豚との関連についての当局の調査を拒否したり、また、強制調査によってその関連が疑い得ない事実と判明した後もそれを否定し、こうした姿勢をとり続ける同社に対して批判が集中しているそうです。

今回のインフルエンザ騒動も、元をただせば、人間の経済効率最優先の"業"(ごう)が生み出してしまったものかもしれませんね。

「Grippe A : il faut en finir avec les usines à virus, par Marie-Christine Blandin et José Bové」より

(この記事を書いたのは、緑の党の国会議員で鳥インフルエンザに関するレポートの責任者Marie-Christine Blandin氏と農業経営者で欧州議会選挙にヨーロッパ・エコロジー党から立候補しているJosé Bové氏です。)

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