最近ふと思いついて,2人の場合を比較してみました.杉浦氏は日本の,ルーツ氏はスイスの外交官です.(2人についての詳しい説明はWikipediaなどのそれぞれの項をご参照下さい.ルーツ氏については,SRFのCarl Lutz – Der vergessene Heldにも詳しい説明が載っています.)
まず,共通点です.
*1) 杉浦千畝 in Wikipedia
*2) Carl Lutz at THE INTERNATIONAL RAOUL WALLENBERG FOUNDATION's site, Carl Lutz in Wikipedia
*3) 今日でも,特定の啓示宗教の名の下に各地で大量殺戮が行われていますが,歴史を通じて視たとき,それらを阻止しようとしたのもやはり啓示宗教の影響を受けた人達でした.命,あるいは人権を大切にすると題目のように唱えても,それが普遍的に適用できるものでなければ,全く無意味です.普遍的な人権にしろ,それが大前提である民主主義も,唯一の神によってあらゆるものが創造され,その神の前で,すべての人は平等であると説く啓示宗教(特にプロテスタンティスム)によってもたらされた思想およびその上に成り立つ制度なのです.
ところで,ナチスによるユダヤ人虐殺については,多くの映画が制作されましたが,特に印象に残ったのは,実話に基づいて制作された『さすらいの航海』("The Voyage of the Damned", 1976年)でした.ラストの前に船の中で反乱が起きますが,操舵室に侵入して来たユダヤ人たちにシュレーダー船長は,「クリスチャンとして,君たちの身柄がナチスの手に渡さないために私ができるかぎりのことをすることを誓う」("I give you my solemn word " [...] "As a Christian")と言います.しかし,それに対して反乱のリーダーである男性は,「キャンプ(強制収容所)を建設し,僕たちを餓死させ,殺しているのはクリスチャン達だ」と叫びます.映画の台詞なので,実際にそうしたやりとりがあったわけではないでしょうが,ただ,リーダーの男性が述べたことは事実です.その関連で,最近,SPIEGELにEvangelische Kirche: "Trauer und Scham über Luthers krude Thesen"という記事が掲載されていました.
また,チクロンBの大量製造に関わったものの,所属するNSDAPによるユダヤ人虐殺に疑問を持ち,それをヴァチカンに訴えたクルト・ゲルシュタインも福音主義教会の信徒でした.(Cf. 映画『 ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002) 』(原題: "Der Stellvertreter")
*4) 諸国民の中の正義の人 in Wikipedia
*5) Carl Lutz in Wikipedia
*6) Idem.
まず,共通点です.
- 2人ともクリスチャンでした.杉浦氏はロシア正教徒で,早稲田大学在籍中はバプテスト派の宣教師ハリー・バクスター・ベニンホフが大隈重信の要請を受けて設立し,後の早稲田教会となる早稲田奉仕園の信交協会に一時期所属していたそうです.*1) ルーツ氏も,家族そろって熱心なメソジストあり,移民先のアメリカで最初に学んだ大学がメソジスト教会に所属するCentral Wesleyan Collegeでした.*2)
彼らが,多くの非クリスチャンたちを救ったことは,特に歴史を通じて無数のムスリムやユダヤ人に加え,その他の非クリスチャンたちを殺害してきたクリスチャンの歴史において偉大な功績です.*3)
- 2人ともイスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」の称号を授与されています.なお,この称号を受けた日本人は杉浦氏のみですが,スイスでは全員で44人が授与されています.*4)
- 孤軍奮闘せざるを得なかった杉浦氏と多くの協力者が居たルーツ氏.*5) これは,赴任地の違いにも起因しているかもしれません.
- 特に残念に思えるのは杉浦氏の場合です.在リトアニア領事時代,迫害をのがれてポーランドからやってきたユダヤ人達にビザを発給したときから戦後に至るまで,日本の外務省は彼をサポートしないばかりか,ソビエト連邦における抑留生活を終え帰国したときには解雇さえしました.その一方,ルーツ氏は,対戦中からスイス政府の全面的なサポートを受けていました.*6)
*1) 杉浦千畝 in Wikipedia
*2) Carl Lutz at THE INTERNATIONAL RAOUL WALLENBERG FOUNDATION's site, Carl Lutz in Wikipedia
*3) 今日でも,特定の啓示宗教の名の下に各地で大量殺戮が行われていますが,歴史を通じて視たとき,それらを阻止しようとしたのもやはり啓示宗教の影響を受けた人達でした.命,あるいは人権を大切にすると題目のように唱えても,それが普遍的に適用できるものでなければ,全く無意味です.普遍的な人権にしろ,それが大前提である民主主義も,唯一の神によってあらゆるものが創造され,その神の前で,すべての人は平等であると説く啓示宗教(特にプロテスタンティスム)によってもたらされた思想およびその上に成り立つ制度なのです.
ところで,ナチスによるユダヤ人虐殺については,多くの映画が制作されましたが,特に印象に残ったのは,実話に基づいて制作された『さすらいの航海』("The Voyage of the Damned", 1976年)でした.ラストの前に船の中で反乱が起きますが,操舵室に侵入して来たユダヤ人たちにシュレーダー船長は,「クリスチャンとして,君たちの身柄がナチスの手に渡さないために私ができるかぎりのことをすることを誓う」("I give you my solemn word " [...] "As a Christian")と言います.しかし,それに対して反乱のリーダーである男性は,「キャンプ(強制収容所)を建設し,僕たちを餓死させ,殺しているのはクリスチャン達だ」と叫びます.映画の台詞なので,実際にそうしたやりとりがあったわけではないでしょうが,ただ,リーダーの男性が述べたことは事実です.その関連で,最近,SPIEGELにEvangelische Kirche: "Trauer und Scham über Luthers krude Thesen"という記事が掲載されていました.
また,チクロンBの大量製造に関わったものの,所属するNSDAPによるユダヤ人虐殺に疑問を持ち,それをヴァチカンに訴えたクルト・ゲルシュタインも福音主義教会の信徒でした.(Cf. 映画『 ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002) 』(原題: "Der Stellvertreter")
*4) 諸国民の中の正義の人 in Wikipedia
*5) Carl Lutz in Wikipedia
*6) Idem.
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