Wednesday, 31 October 2012

ARTE+7おすすめ番組 "ドナウ - ヨーロッパの青き動脈 (2/2)"

二回シリーズの第二回です.

Die Donau (2/2)(ドイツ語版)


(オーストリア, フランス, 2012年, 43分)
ARTE / ORF制作

視聴可能期間:2012年10月31日19:00より1週間

Tuesday, 30 October 2012

NZZが伝えるSandyの被害

スイスの新聞Neue Zürcher Zeitungに掲載されたオンラインアルバムです.

ハリケーン通過後のニューヨークのQueensの状況:
http://www.nzz.ch/aktuell/panorama/damm-in-new-jersey-gebrochen-1.17737032

ハリケーンによる被害:
http://www.nzz.ch/aktuell/panorama/damm-in-new-jersey-gebrochen-1.17737032#gallery:1-17735568

ハリケーン上陸直前の各地の状況:
http://www.nzz.ch/aktuell/panorama/damm-in-new-jersey-gebrochen-1.17737032#gallery:1-17734037

ニュージャージー州の原発の状況

10月30日午前8:02付電子版ル・モンドに掲載された記事Sandy : un réacteur nucléaire en alerte en raison de la montée des eauxによると,アメリカ本土北東に位置する原子力発電所は,いずれもSandyの影響による運転停止に至ることはなかったそうです.

ニュージャージー州は,今回のハリケーンの影響を最も激しく被った州のひとつですが,現地時間29日夕方に,Oyster Creekの原子炉について,付近の海水が上昇したため,警報が出されました. ただ,当該の原子炉は,Sandyとは関係なく,当時すでに停止状態にあったそうです.

また,Delaware川畔に位置し,ニュージャージー州の電力の50%を生み出している二基の原子炉Salem Unit 1およびHope Creekについては,Sandyがもたらす風雨がさらに激しさを増した場合の停止が検討されたようです.*1)


*1) Hope Creekの原子炉は,福島第一原子力発電所の原子炉と同じGE社製のMark I. (cf. Wikipedia, "Hope Creek Nuclear Generating Station") 


原発とは関係ありませんが,10月30日午前8:18付同紙の別の記事L'explosion d'un transformateur plonge Manhattan-Sud dans le noirによると,現地時間の29日の夕刻に一台の変圧器が爆発したため,Con Edison社は,安全のために電気の供給停止を決定し,そのため,マンハッタンの南の地区の一部が停電したそうです.

SNSに投稿されるSandyの偽写真

本日付けの仏ル・モンドのブログに以下のポストがありました.それによると,ハリケーンSandyの偽写真がtwitterやfacebookなどに投稿されているようです.

FAKE ALERT – Attention aux fausses photos de l’ouragan Sandy sur les réseaux sociaux

BuzzfeedThe Atlanticなどのサイトは,こうした偽写真のリストを掲載し,利用者に注意を促しています. なかには,それが偽写真であることが歴然としているものもあるようですが...

すでに10人を越える死者も報告されているわけですし,少々不謹慎ではと云いたくなります.

ARTE+7おすすめ番組 "ドナウ - ヨーロッパの青き動脈 (1/2)"

全長およそ3000km.ナポレオンによって,"ヨーロッパ河川の女王”と呼ばれたドナウ川の美しい風景を記録したドキュメンタリー.(二回シリーズの第一回)

(オーストリア,フランス,2012年,43分)
 ARTE/ORF制作

視聴可能期間:2012年10月29日19:00から1週間

Le Danube, l'artère bleue de l'Europe (1/2)(フランス語版)
Die Donau (1/2)(ドイツ語版)

Monday, 29 October 2012

Sandyの被害予測のインタラクティブ地図 Intractive map for Hurricane Sandy

台風の被害から逃れるために,ニューヨーク市では,すでに375万人にものぼる市民が避難したそうですね.被害が最小になるように祈るばかりです.

スイスの新聞Neue Zürcher Zeitung電子版にインタラクティブの台風被害予想図が掲載されています.ご参考迄に.(二枚掲載されているうちの下の地図の"Geben Sie einen Standort ein."というテキストボックスにNew Yorkというように具体的な地名を書き込んでリターンキーをおすと,その地域の地図が表示され,個々の赤い印にカーソルをあてると,その場所の想定される被害に関する情報(英語)が表示されます.また,地名を入れなくても,各地点の台風のマークにカーソルを合わせると,当該地点に関する情報が表示されます.その情報の吹き出しをクリックすると,さらに詳しい情報を見ることができます.

http://www.nzz.ch/aktuell/panorama/google-map-hurrikan-sandy-1.17731814#

オリジナルのGoogle Crisis Mapへのリンク

以下,2012年11月5日の追記です.ハリケーンが去ったので,この地図には,現在,被害状況や復旧状況,また気象情報等が表示されます.上記のリンクから表示される地図の右側の項目のうち,知りたい情報のチェックボックスをONにしてください.

第2回 ノルマンディー印象派フェスティバル

2010年に誕生したノルマンディー印象はフェスティバルですが,第一回では,主催者の予想を大幅に上回る100万人もの観客が訪れたそうです.二回目は,2013年4月27日から9月29日までの開催が予定されています.会場は,ルーアン,ル・アーブル,ジベルニー,シェルブール他多数の都市の美術館ほか.イベントも特別展にとどまらず,コンサートをはじめ,映画,朗読会,そして,プロ,アマ問わず参加できる写生会などと盛りだくさん.

詳しくは,こちらから.(英語/フランス語)

また,PDF版プレス用資料は,こちらから.(英語/フランス語)

なお,これに因んで先日,ARTEで印象派の画家たちの生涯を彼らの手紙からたどった番組が放送されましたが,残念ながら日本ではARTE+7を使っても視聴はできません.ヨーロッパにお住まいの場合,ARTE+7で視聴可能です.下のリンクをお使いください.

Sensation Impressionismus(ドイツ語版)

(フランス, 2010年, 52分,ARTE F;  2012年10月28日15時53分から1週間視聴可能.)

Sunday, 28 October 2012

ARTE+7おすすめ番組 "砂漠における太陽熱発電"


もし,世界に存在する砂漠の1%の面積に太陽熱発電の設備を設置できたら,全世界で消費される電力のすべてを賄うことができるといわれます.この発見がきっかけとなって,ローマクラブに所属するドイツ人メンバーにより,2009年,Desertecという財団が設立がされました.この財団は,シーメンス,ドイツ銀行を始めとするヨーロッパの代表的企業を束ねるDIIと呼ばれる共同企業体と関係を持ち,広い砂漠を有する中東や北アフリカの国々を,大規模な太陽発電施設の建設に協力してくれるように説得を続けています.番組は,こうしたDesertecの活動や技術者達の研究の模様をリポートします.すでに,モロッコにおいて,2014に運転開始が予定されている発電施設の建設が開始されました.こうした砂漠における発電施設の運転により,2050年には,これらの発電施設を所有する国々のすべての電力需要およびヨーロッパの電力需要の15%を賄うことが計画されています.

(ドイツ,2012年,60分)
北ドイツ放送制作

視聴可能期間:2012年10月23日より1週間

L'énergie du Sahara(フランス語版)
Strom aus der Wüste(ドイツ語版)

以上が,番組内容ですが,アルジェリアとスペイン,イタリアの間では天然ガスのパイプラインが稼働していますが,今後,サハラ砂漠で生産される電力がヨーロッパに供給されるようになると,ますます地中海世界の経済的な結びつきが強くなりそうです.が,その前にアルジェリアも含めて北アフリカのイスラム諸国の政治的安定が欲しいところです.それとも,こうした形で設備投資が増えることが,この地域の政治的安定に寄与するのでしょうか.

番組を視てみると,Desertecが取り組んでいるのは,北アフリカや中東の砂漠地帯における太陽熱発電所(Solar Thermic Plant)の建設でした.確かにこの方式だと,蓄熱が可能のため,昼夜連続しての発電が可能となります.この点では,天候に左右される風力発電や太陽光発電(Photovoltaic)に比べて有利です.しかし,太陽熱発電所の建設には,例えば風力発電施設等に比べて時間も費用もかかるため.経済成長が著しい北アフリカの急速に増加し続ける電力需要にオンタイムで応えられるのか疑問を持つ専門家もいます.このため,例えばドイツなどよりも強い風が吹くモロッコ等では,むしろコスト的に比較的安く,また建設期間も短い風力発電を推進した方が良いのではないかという声を聞かれます.太陽熱発電所を建設するにあたり,もうひとつのネックは,水です.太陽熱発電施設では,太陽光を集めるために多くの鏡が設置されます.砂漠のような場所では,すぐにそれらに埃が付いてしまい性能が低下するため,水を使っての清掃が不可欠です.このために必要とされる水量は,1日1平方メートルあたり25から40リットル.一年あたりに換算すると5000万リットルになります.ただでさえ,水が足りない砂漠において,これほどまでに多量の水を発電のために,しかもその一部を輸出するために使うことが果たして許されるのかということです.砂漠には,ほとんど雨が降らないため,水は,過去数百万年にわたって地中の空洞に蓄えられてきたものが使われます.そのため,多量に使用すると枯渇してしまう可能性があります.そして,気になる政治的安定性ですが,これまでに世界中で実行されたテロ攻撃といわれる行為において,エネルギー関連施設の標的となったケースは全体の4%以下だそうで,Desertecにいわせれば問題ないだろうとのことのようです.

いずれにせよ,Desertecの計画を実行に移すには,欧州連合やドイツ政府の資金面での援助が不可欠です.それらを獲得するため,Desertecは,様々な機会を使って政治家たちの説得を続けています.

Saturday, 27 October 2012

ローマ南京錠物語

先日のパリの芸術橋に引き続き,Love padlockの話題です.まずは,ヨーロッパ各地における,橋のフェンスにかけられた南京錠の様子を紹介するSPIEGEL誌のオンラインアルバムをご覧下さい.

オリジナルの記事は,こちら.先月12日付電子版の記事です.ローマ市当局が,ミルヴィオ橋(Ponte Milvio,上記オンラインアルバムの一枚目の写真)につけられた南京錠を撤去したがっているという内容です.この記事の伝えるところでは,元々,この橋に南京錠が掛けるという風習は,フェデリコ・モッキア(Federico Moccia)という作家の"Ho voglio di te"(2006年,英語版題名: "I want you")を読んだ人々によって始められ,後にそれが各地に広まったようです.

ローマ市当局は,数千にも及ぶ,これらの南京錠の撤去を決断した理由として,地域住民の86%がこの決断を歓迎するだろうからと云っていますが,この橋が位置する地域には,近い将来,娯楽施設が建設される予定で,撤去された南京錠は,市内の博物館で展示されることになるようです.そして,橋のそばに新たに南京錠をかけるための場所が設けられるとのこと.なお,南京錠の撤去後,ミルヴィオ橋は,新しくそれらがかけられるのを防ぐため,24時間体制で監視されることになります.

この風習の生みの親,作家のモッキアさんは,南京錠の撤去は,まったく馬鹿げていると云います.彼によると,そうすることにより,「ローマは,そこで生まれ,そこに留まるべきの《愛の橋の習わし》*1)をパリに譲り渡すことになってしまう」のだそうです.

ドイツでは,ケルンに架かるHohenzollenbrückenが南京錠の名所だそうです.ご参考迄にドイツ語でLove padlockは単純にLiebesschlüssel(複数形はLiebesschlösser).つまり,合鍵ならぬ愛鍵です.


*1) 原文では,"Tradition".

世界の鉄道シーン

Dampfnostalgie im Herzen Deutschland, Sachsen und Sachsen-Anhalt

保存鉄道や鉄道博物館は,ドイツ各地に存在しますが.ザクセン州およびザクセン–アンハルト州におけるこうした施設に特化したサイトがあります.

http://www.dampfnostalgie-deutschland.de/

そのなかでイベントを紹介するページをみると,ハロウィンやクリスマスの際に運行される蒸気列車があるようです.

特に目を引いたものは,以下のとおり.

  • 11月10日 Ins LausitzerRevier nach Schwarze Pumpe, mit 35*1) 1019
  • 12月08日 Nikolaus-Express zum 578. Striezelmarkt Dresden, mit 35 1019 über Senftenberg (ドレスデンの美しいクリスマスマーケットを訪ねるイベント列車)
以上,主催は,Cottbusのラウジッツ蒸気機関車クラブ(Lausitzer Dampflok Club) *2)
  •  12月01日 Mit 35 1097 zum Weimarer Weihnachtsmarkt  (ヴァイマールのクリスマスマーケットを訪ねる旅)
以上,主催は,GlauchauのIG Tradidionslokomotive 58 3047
  •  12月07日 Nikolaus-Express  (Eisenach - Erfurt - Saalfeld)  牽引機は,41*3)の可能性有り.
以上,主催は,ThüringenのBahn-Nostalgie inThüringen
もちろん,これ以外にも多数の蒸気列車の運行が,様々な団体により計画されています.ザクセンの美しい冬の風景を楽しみながら蒸気機関車の力強い走りを堪能するのも一興ですね.


*1) 1'C1' h2の普通旅客列車用テンダー機関車,  動輪直径1750mm, 最高速度110 km/h
*2) ラウジッツ蒸気機関車クラブは,今年,01 509や,35 1019及び03 1010の重連による蒸気列車の運行を実現させています.個人的に注目したいクラブです.
*3) 1'D1' h2の貨物列車用機関車.動輪直径1600mm.  最高速度70 km/h. 

フランケン小紀行 - ニュールンベルグの公共交通から見えたもの

ニュールンベルグでは,只今,生姜パンマーケット(Lebkuchenmarkt, Gingerbread Market)なる催しが開かれているそうです.(11月5日迄)  開催場所のDie Lorenzkirche am Wetterhäuschenには,生姜パンやホットチョコレートなどを売るブースのほか,実際に生姜パンを焼くことができる体験コーナーも設けられていて,ヘンデルとグレーテルのお話に登場するお菓子の家や魔女,そしてヘンデルやグレーテルの人形などが訪れる人を出迎えているとのこと.詳しくは,こちらから.(ドイツ語のみ)

ヘンデルとグレーテルの物語は,ドイツでは,よくクリスマスの時期にテレビで放送されますが,このたびは,時期的に少々早い登場のようです.そういえば,グリム兄弟の博物館がKasselにありますが,今年は,グリム兄弟が編集した"Kinder- Hausmärchen"が出版されてから200年ということで,それに因んだ特別な展示が行われているようです.詳しくは,こちらから.(ドイツ語のみ)

ところで,先日,ニュールンベルグを訪れた際,折角来たのだから,滞在中に少なくとも一回ぐらいは,土地の料理が味わえるレストランで夕食をとりたいものと,Bayern-online.deで見つけたLutzgartenというお店に行くことにしました.宿泊したホテルが市心から少し離れたところに位置していたため,バスや地下鉄を乗り継いで行ったのですが,着いてみるとこちらも町中から離れた静かな住宅街にありました.創業1705年ということで,どれほど古い造りの家なのだろうと,興味津々でドアを開け,入ってみると,確かに古そうではありましたが,ラジオから流れてくると思われるD-Popらしい音楽のためか,際立って古めかしいとう雰囲気はありませんでした.

表に立っている看板に書かれた今日のお薦め料理をひととおり眺め,ある程度的をしぼっていたのですが,結局,スターターとして,体が温まりそうな,カボチャのクリームスープ,メインには,牛肉のブラムとわさびのソースかけ,ジャガイモのソテー添えなる一品を注文.両方とも中々のお味で十分満足できました.

ヨーロッにおいて,市中に出るのにバスか電車を使う必要があるホテルに泊まった場合はもちろんですが,中に位置しているホテルに滞在しも公共交通機関を使う機会はないわけではありません.例えば,上述したレストランに出かけるためには,ホテル前のバス停から乗ったバスでニュールンベルグ中央駅まで行き,そこで地下鉄に乗り換え,下車した駅からさらにバスに乗る必要がありました.ここで,気がついたのは,これらの公共交通機関の乗車券仕組みです.日本なら,例えば,私が住んでいる横浜の場合,こうした経路で移動した場合,それぞれの交通機関を乗る際に乗車券を購入する必要があります.つまり,3枚の乗車券を購入する必要があるわけです.しかし,ニュールンベルグでは,たった一枚.最初のバスに乗る際,運転手に行き先,または移動範囲(この場合は,Stufe A)と片道か往復かを申告して購入した乗車券のみで,次に地下鉄,そして最後にまたバスと乗り継ぎ最終目的地迄行くことが出来るのです.これは,以前に訪れたウィーンや,ミュルーズでも同様で,考えてみれば,パリも同様のシステムです.ようするに市内や近郊へ移動する際に使える公共交通機関がすべて統一された運賃制度に従っているわけです. こうした仕組みは,我々外国人旅行者にとって実に便利です.ということは,もちろん地元の人たちにとってみても便利であることは論をまたないでしょう.おまけに,これらの乗車券は,ドイツ鉄道の駅の券売機,ニュールンベルグ市営地下鉄の駅の券売機,そして,市営バスの運転手のいずれからでも購入することができるのです.また,駅の券売機ではクレジットカードが使えることはもちろん,英語を始め,フランス語,スペイン語などヨーロッパの主要な言語で操作が可能です.まさにいたれりつくせり.さらに便利と感じたのは,れに加えて一日乗車券,二日乗車券といったお得な乗車券も多数用意されていること.以前,ルネサンス様式の荘厳なお城で有名なアシャッフェンブルグ(Aschaffenburg)*1)という町を訪れたとき,やはり町外れのホテルに宿泊しましたが,そこから町中へ出る際に乗ったバス内で乗車券を購入する際,片道を求めたのですが,今日中にここに戻るのであれば,一日乗車券を購入した方が得だからそちらを買いなさいと運転手さんからいわれ,一日乗車券を購入したことがありました.なお,念のために付け加えますと,私の知る限り,私鉄も,ほとんどの場合,こうした統一された運賃体系の中に組み入れられています.こうした,統合的な運賃制度のみならず,だれでもが利用しやすい車両やインフラ,そして自動車の市内乗り入れ制限や公共貸自転車の提供なども含めた都市全体の交通システムは,利用者にとって便利であることはもちろん,環境保護においても好ましい効果をもたらすことは間違いなさそうです.*2)

マイン川畔に聳えるアシャフェンブルグの城.昨年の夏訪れた折に.

日本で,例えば首都圏ではPASMO,SuicaといったICカード乗車券がJRや民鉄各社から提供されていてどちらか一枚持っていればいちいち乗車券を購入することなく,電車やバスに乗ることができます.しかし,この仕組みは外国人観光客にとって,便利といえるものか,大いに疑問があります.まず,これらのICカードを購入する際には,数百円の保証金を払わなければなりませんし,チャージする手間もかかります.そして,払い戻しの手続きなどもわずわらしいものです.しかも,払い戻しの際,保証金はそのまま返金されますが,チャージ残額のうち210円は,払い戻し手数料として徴収されてしまいます.恐らく,ほとんどの外国人旅行者は,こうした,煩雑な手続きを必要とする乗車券を購入することはないとは思いますが,となると,やはり現行の運賃制度は,少なくともヨーロッパのものと比較した場合,外国人旅行者にとって極めて使い勝手が悪く,不親切といわざるを得ません.日本では,個々の利用者の利益より,個々の利益共同体がそれぞれの取り分をもれなく受け取ることが優先されてしまうという社会構造の顕著な例のひとつといえるでしょう.2012年から2013年へ向けての国別ブランド指標リポート*3)のなかで,日本は,観光の分野においてフランス(3位)やスイス(4位)を抜いて2位だったのに残念です.と申しますか,こうした状態でどうして2位になれるのだろうと首を傾げてしまいます.なお,日本において,ヨーロッパのような消費税の分野別税率の設定ができないのも,個々の利益共同体が,他の利益共同体に比べて不利益を被る制度には承服できないからであり,そうした主張を止揚することができる理念や制度構築することが日本人にはできないからなのでしょう.

ニュールンベルグでも見かけた公共レンタルサイクル(Norisbike)のスタンド.夕食のため訪れたレストランからの帰り,バスから地下鉄に乗り換えた駅で.


*1)  ニュールンベルグは,ミッテル・フランケン郡(あるいは県)に属し,アシャフェンブルグは,ウンター・フランケンに属します.両方ともバイエルン州の都市です.なお,ドイツやスイスなどの地名で,ウンター,オーバーといった言葉が付される場合,ウンターは,その地方が,ある川の下流部に位置していることを,そして,オーバーは,同じく上流部に位置していることを意味します.フランケン地方の場合,マイン川部,あるいは下流部ということです.また,ニュールンベルグが属するミッテル・フランケンは,その中間部という意味です.(地図を見ると,下に位置していますが.) 
*2) 今年の9月24日付シュピーゲル誌の電子版"Deutschlands Luft wird besser"によると,1990年から2010年までの間に,ドイツにおける大気の汚染状況は飛躍的に改善したそうです.例えば,硫黄化合物は,91.5%,また,一酸化炭素は,73.1%減少しています.
*3) Country Brand Index (100%信頼できるものかどうか判りませんが,それなりの説得力があり,かなり参考になります.)

Friday, 26 October 2012

中国超特急世界新記録樹立!?

少し古い記事ですが,今年の9月20日付電子版シュピーゲル誌にChinesischer Hightech-Zug soll 604 km/h erreicht habenという記事が載っていました.「中国のハイテク列車が,604 km/hに到達した模様」といった意味ですね.

内容を要約しますと.

先日,ベルリンで開催されたInnotransで見られたトレンドは,「より軽量に,より効率的に,そしてより経済的に」でした.中国は,Innotransにおいて,新しいスピードテスト用車両の1/10の大きさのモデルを展示しましたが,この車両が,テスト走行で600 km/hを越える速度に到達したらしいのです.

CSR社製のこのCRH380ALという車両は,すでに,去年の12月に公開されていますが,このほど,Qingdao(青島)のテスト線で,非公式ながら,604 km/hという記録をマークしたとCSRは伝えています.6両から成るテスト編成の出力は22800 キロワットとのこと.

もっとも,専門家たちによると,通常の鉄道輸送において,360 km/hを越える速度は意味がないといいます.これ以上の高速走行では,空気抵抗および短距離の駅間におけるブレーキの使用がネックとなり*1),経営が成立しなくなってしまうからです.石油価格が上昇しがちな今,望まれる鉄道車両はというと,やはりエネルギー効率の高いものになります.すなわち,Innotransで示されたトレンドに沿った車両というわけです.

以上です.

なお,当該車両の写真は,オリジナルの記事に掲載されています.二種類の先頭車両があるようですが,両方ともどこかでみたようなデザインに思えます.右に写っているものは特に...


*1) エネルギー効率が悪くなるということでしょう.

Thursday, 25 October 2012

欧州鉄道車窓風景七選

一年程前の記事ですが,Landschaftskino im Zug: Europas schönste Bahnstreckenで紹介されていた車窓風景が美しいという路線です.

  1. Bergenbahn: Oslo - Bergen(ノルウェイ) (こちらも参考になります.Europe’s best train journey? また,鉄道ファンの方には, こちらもお薦めです.)
  2. Ferrovia delle Centovalli: Domodossola(イタリア) - Locarno(スイス)
  3. Mittenwaldbahn: Innsbruck(オーストリア) - Garmisch-Patenkirchen(ドイツ)
  4. Glacier Express: St. Moritz - Zermatt(スイス)
  5. Tendabahn: Turin(イタリア) - Nice(フランス)
  6. El Transcantabrico, La Robia:スペイン北部
  7. Bernina Express: Chur(スイス) - Tirano(イタリア)

スイスの鉄道写真集

    ジェームス・ボンドゆかりの自動車

    007シリーズ映画の誕生50周年の今年に因んで,24日付L'EXPRESS誌の電子版にジェームス・ボンドゆかりの自動車10台の写真が紹介されていました. 

    『James Bond : 101 voitures de légende』(ジェームス・ボンド:伝説の101台)という本が10月19日に発売されたそうで,そのなかで扱われている車のようです.

    http://www.lexpress.fr/diaporama/diapo-photo/culture/cinema/en-images-james-bond-007-dix-voitures-de-legendes_1172308.html

    オーストリアのインペリアル・トレイン

    オーストリアのインペリアル・トレインのサイトを覗いてみました.まさに絢爛豪華というか,どれも贅の限りをつくした車両ですね.今年は,まだ,次の3つのツアーが予定されているようです.

    1. Imperial Adria Express : 10月28日 - 11月1日 (ウィーン - Opatija-Matulj往復)
    2. Christmas Trip to Salzburg : 11月24日 (ウィーン - サルツブルク往復)
    3. Silvester Express : 12月31日 - 2013年1月1日 (ハイリゲンシュタット - ドナウブリュッケ - ウィーン)

    http://www.imperialtrain.com/

    ドイツ鉄道の新しいIC(InterCity:都市間急行)用車両ICx

    ベルリンで開かれた今年のInnotransで,ドイツ鉄道は,次世代のIC用車両ICxを公開しました.設計コンセプトは,「より経済的でより快適な車両」.

    ドイツ鉄道は,昨年,シーメンスに同系220編成を60億ユーロで注文していますが,1編成7両,座席数499のこれらの編成は,2016年末から,中には製造から40年を越えたものもあるICやEurocity用車両の後継として投入され,さらに,2019には,ICE 1およびICE 2が総座席数724の10両編成のICxによって置き換えられるとのことです. なお,ICxは,高速走行*1)は想定されておらず,最高速度は,246km/hです.

    各編成には,食堂とビュフェ(Bistro),家族用スペースのある車両が含まれ,さらに,現行のICEにはない自転車用スペースが設けられます.また,2等車には,各座席列に一つのコンセント,1等車では,各座席に一つのコンセントが配置されます.また,床には,乗客の誘導のための,飛行機と同様の照明が設置されます.そして,軽量化の結果,30%もの消費エネルギーの節約が実現しました.

    このほか,Innotransでは,104もの新車両が展示されたそうですが,その中には,ボンバルディア社のTraxx機関車,ワルシャワ市電用の新車両シーメンス社のMetro Inspiro,そして,ドイツ鉄道のディーゼル・ハイブリッド車両も含まれて,特に,このドイツ鉄道の車両は,1/4少ない燃料で走行可能です.

    ICxおよび記事の中で言及されている他の車両の写真については,オリジナルの記事をご覧下さい.


    *1) 現在運行中のICEファミリーの最新型ICE 3の最高速度は,交流システムでは330 km/h,直流システムでは220 km/h. (cf. Wikipedia, "ICE 3")

    Tuesday, 23 October 2012

    たまに使えるかもしれない旅行予約サイトetravel.ch

    etravel.chは,通信販売サイトeboutic.chの姉妹サイトで,どちらもスイスのサイトです.後者は利用したことはありますが,前者については,広告は購読していますが,今のところ,利用したことはありません.というのも,募集しているツアーで設定されているホテルが,高級すぎるため(少なくとも私にとってですが),多少値引きされても焼け石に水であり,一生利用することなどないだろうなと思ってしまうのです.それでも,よく眺めてみると,中にはつかえそうなツアーもありそうなことが判りました.

    例えば,現在募集中の,ヒルトンホテルで過ごすリヨンの週末という二泊三日のツアーですが,12月21日チェックインの設定で料金を確認すると,二名で514フラン(=44214円).料金には,二名分の朝食ニ回,同じく有名レストランでの夕食一回ほかが含まれており,ほんとうかどうか知りませんが,これは,正規の料金から816フラン(=70191円)値引きされた料金というコメントが表示されました.

    確かに,クリスマスムード一杯のリヨンの高級ホテルで,二泊三日,しかも高級レストランで夕食一回付きのツアーに一人ニ万円程度で参加できるというのは,がまんできる値段かも知れないと思ったりもしています.そのうえ,リヨン滞在中,すべての公共交通機関は乗り放題,しかもリヨンの美術館や博物館の入場券まで含まれているというのですから.結論から言って,旅行の途中にこういったパッケージツアーを含めるのもありなのかも知れません.

    2013年用ドイツ語圏の鉄道カレンダー

    GeraMondにオンラインで注文すると日本宛に発送してくれます.ただし,サイトはドイツ語のみです.(先日,知人が,日本から路面電車のカレンダーを注文しましたが,12日ほどで届いたようです.この方は愛媛県松山市にお住まいですから,首都圏まででしたら,10日程度で届きそうです.)

    また,オーストリア鉄道友の会発行の,絵はがきとしても使える小さなフォーマットのカレンダーも購入できそうです. http://www.vef.at/Kalender13/Kalender.htm なお,発注はウェブページ上のリンクから直接同会宛に電子メールで行います.(ドイツ語圏なので,英語で問題ないはずです.)  

    さらに,スイスの風景初め,氷河急行やベルニーナ急行のカレンダー(絵はがきフォーマット)の注文は,こちらから.(日本までの送料は,15フラン.50フランを越える注文の場合,送料は無料とのこと.)

    そして,スイスのレティカ鉄道のカレンダーは,同鉄道の通信販売のサイトから. (上記の氷河急行およびベルニーナ急行のカレンダーは,こちらでも購入可能です.なお,レティカ鉄道のサイトから注文する場合,日本迄の配送は,購入金額30フラン以上が条件となります.)

    以下,ドイツと英国のAmazonにおける検索結果へのリンクです.もちろん日本への配送は可能で,注文の仕方も日本のAmazon.co.jpと同じです.なお,フランスのAmazonでも,"calendrier chemin de fer"などと入力して検索してみましたが,あまり力を入れていないのか,これといったものは表示されませんでした.なお,ドイツ語圏のAmazonは,Amazon.deのみです.(Amazon.ch, Amazon.atと入力してもAmazon.deにリダイレクトされます.)

    Amazon.de: eisenbahn-kalender
    Amazon.co.uk: railway calendars 2013 

    蛇足になりますが,日本への配送は不可のようですが,ドイツ語圏に店舗を展開するWeltbild書店も鉄道カレンダーを豊富に取り揃えています.ドイツ語圏各国(ドイツ,スイス,オーストリア)にお住まいの方でしたら,それぞれの国においてオンライン購入が可能です.以下は,各国のWeldbildのサイトにおける検索結果へのリンクです.

    Weltbild.de
    Weltbild.ch
    Weltbild.at

    鉄道以外のモチーフですが,Eugen Strossのカレンダーもお薦めです.

    Sunday, 21 October 2012

    ノイエンマルクト蒸気機関車博物館

    正式名称は,Deutsches Dampflokomotiv-Museum,ドイツ蒸気機関車博物館です.ウェブサイトは,ドイツ語のみでこちらです.

    ノイエンマルクト(Neuenmarkt-Wirsberg)は,しばらく前迄,ここからマルクトショルガスト(Marktshorgast)までの6.7km,Schiefe Ebeneと呼ばれる急勾配区間(最大勾配23.0‰)を通過する列車の補機として用いられる機関車の基地だったところです.

    まず,こちらの博物館を訪れるにあたって気を付けたほうがよい点をニ点ほど.

    1. 博物館のサイトに記載されているとおり,現在,博物館は大規模な改装工事中で,特に機関車の屋内展示場である扇形機関庫内に,工事や清掃のための道具があちこちに置かれ,それらが障害物となって機関車が思うように撮影できない.いずれにせよ,機関車群を撮影したい場合は,それらが屋外に移動される,特別なイベントに合わせて訪れたほうがよい.(今年の5月26日から28日にかけて開催されたイースター蒸気機関車祭(Pfingst-Dampftage)など.詳細は,イベント案内(Veranstaltungen)や年間予定表(Jahresprogramm)を参照ください.)
    2. ノイエンマルクト駅では,リヒテンフェルス(Lichtenfels)方面からやってくる列車がホーフ(Hof)行き編成とバイロイト(Bayreuth)行き編成に分離されるため,これらの駅に向かう場合は,乗車する編成に注意すること.(今回,滞在先のニュールンベルグからバイロイト経由でノイエンマルクトを訪れたのですが,戻る際に,間違えてホーフ行き編成に乗車してしまい,検札にきた車掌さんに注意されるまで気がつきませんでした.)

    さて,今回,この博物館を訪れた第一の目的は《ブラック・スワン》("Schwarze Schwäne")のニックネームを持つ,ドイツ連邦鉄道*1)の最後の蒸気機関車10形を見るためでした.*2) ただ,見ることは見たのですが, 展示されている機関庫のサイズが小さいため,機関車の周囲に空間的余裕がなく,全体を思うように撮影することができませんでした.そして,これも機関庫のサイズが小さいためと思いますが,特定の機関車は,炭水車がはずされて展示されています.

    10形は,三気筒のパシフィック(2'C1' h3)で,それまで活躍していた急行旅客列車用の01, 03, 18.5, 普通旅客列車用39の代替機として設計された機関車です.1957年から2両だけ製造され,1968年に現役を引退しました.動輪直径は2000mm,最高速度は140km/hです.なお,1号機は石炭重油併用燃焼方式,2号機は重油燃焼方式です.(cf. Wikipedia, "DB-Baureihe 10") ノイエンマルクトに保存されているのは,1号機(10 001)です.*3)*4)

    博物館の入り口 受付は左側の建物の中.建物の奥が機関庫(屋内展示場)です.
    ワンちゃんは,入れません.
    機関庫の隅に展示されている10形 緩衝器まで含めると26mを超えるので,このサイズではきつそう.それにしても,白い柱が邪魔です.前方のフェンスは,改装工事のために設置されているもののようです.流線型カバーのフェンダの白線のデザインは,ハイルブロンの鉄道博物館に保存されているブルーレディこと,01 1102と同じ.何かをシンボライズしたものと思うのですが,何をシンボライズしているのか,今のところ不明です.が,フランスの《女神》こと232 Uのボディに引かれたラインが白鳥を表しているとのことなので,なんとなくこちらも白鳥が羽を広げたように見えなくもありません.
    ロッドと動輪との接合部分が,他形式における角形のフライ返しのようなそれと比べ,円形であることが,独特の形状の流線型カバーと相まって,このマシンに無類の優美さを与えているような気がします.主動輪の上には,クルップ社の社票が見えます.
    炭水車の側面の表記 炭水車を含む車両重量,高速制動重量,旅客列車用制動重量,貨物列車用制動重量の各値,炭水車に積載可能の水の量,重油の量などが記されています.
    後ろ姿も華麗な10形なのですが...なにぶん屋内展示場になっている機関庫は清掃中だったもので.
    このポストを公開してからおよそ4年後の2016年11月5日.0110と41が特別列車を牽引しましたが,当日,10 001は,博物館のヤードでその優美な姿を見せてくれました.下は,その折に撮影した2枚です.


    次に目を引かれたのは,ドイツの貨物用蒸気機関車の進化を象徴する44,50,52の三形式の展示です.44形は,三気筒1E,50形は同様の車軸配置ですが,ニ気筒ながらも44形を上回る性能を持った機関車.そして,52形は,50形をベースにした戦時機関車というわけです.*5)  三形式とも,動輪直径は1400mmで,国鉄D51形と同じ.同じくタンク機関車E10の場合は,車軸配置は1E2で,動輪直径は,1250mmです.なお,参考迄に,ドイツの蒸気機関車の中で最も動軸数が多いのは,マレー式の貨物用タンク機96.0(旧バイエルン国鉄のGt 2x4/4)形で8本,テンダー機では59(旧ヴュルテンベルグ国鉄貨物用K)形で6本でした.

    44形のシリンダに貼られたクラウス・マッファイ社の社票
    ニ気筒の50形 エプロン部がすっきりしています.右隣は,浴槽形炭水車が特徴的な52形.
    50形の走り装置
    まさに戦時機関車そのものといった形状のノイエンマルクト博物館の52形.
    細部に至まで徹底的な省略化が図られていることがわかります.
    運転室の側窓の前半分は省略されています.
    52形の後部

    この他,急行旅客列車用機関車の花形01,18も展示されています.

    二気筒の01形のシリンダに貼付けられているシュヴァルツコプフ社の社票
    四気筒の18形
    18形のシリンダ部
    ドイツの蒸気機関車の形式名(新表記)の解説 例えば,急行旅客列車用は,01から19までが割り当てられており,07, 08, 09, 11, 12形は存在しない等々.さすが,ドイツ蒸気機関車博物館というだけのことはありますね.なお,ドイツの蒸気機関車の形式番号については,Wikipediaのこちらの項目(英語)をご覧下さい.ところで,知人曰く,私たちのように機関車の構造(もちろん,あまり詳しいことはわかりませんが)に興味を持つ鉄道マニアは,《メカ鉄》などというのだとか.
    ついでにこちらも.運転室の窓下のサインの説明です.煙突に火粉止が装着されているサインや特定箇所がEBO(Eisenbahn-Bau- und Betriebsordnung=Ordinance on the Construction and Operation of Railways)の車両限界を超えていることを示すサイン等々.勉強になります.

    次は野外展示されている車両の主なものです.

    右側の食堂車は,営業中です.初めて食べるケシ(Mohn)のあん入りケーキとコーヒーで一服しました.
    可愛らしい狭軌用機関車99.51-60形(旧ザクセン国鉄IV K).タイプは,B'B' n4vt(タンク型複式4気筒飽和蒸気機関車).このバリエーションは,密着連結器が装備されていて,緩衝器がありません.
    片側二シリンダが向かい合うという面白い構造のランニングギアが特徴的.メイヤー式と呼ばれるこの方式は,似たようなマレー式よりも誕生が早く,99.51-60の場合,前部のシリンダは低圧蒸気用.後部のシリンダは高圧蒸気用です.四つのシリンダを向かい合わせに配置するのは,高圧蒸気用シリンダから低圧用シリンダへの蒸気の移動距離を短くするため.また,マレー式では,通常,前部動軸群のみが台車に取り付けられていますが(例えば,旧バイエルン国鉄の貨物用タンク機Gt 2x4/4.後に帝国鉄道の96.0),メイヤー式では,前部,後部の各動軸群がそれぞれ別の台車に取り付けられているため,両方の動軸群が,それぞれ独立してカーブに沿って向きを変えられる構造になっています.(99.51-60のタイプ表示であるB'B' n4vの両方のBに付けられたアポストロフィがそれを表しています.ちなみにGt2x4/4のタイプ表示はD'D h4vt.後部動軸群にはアポストロフィがついておらず,カーブに沿って回転することはできないという意味です.)

    キャプには,"Deutsche Reichsbahn"のプレートが貼られています.タンクに貼られたどくろマークは,「飲み水」ではないという意味.なお,彼女の妹達,99 582と99 585が,現在,シェーンハイデ保存鉄道で元気に活躍中.この保存鉄道では,99形が牽く列車内で結婚式も挙げられるそうです.なかなか風流な趣向.同形機は,他にもいくつかの保存鉄道で活躍中です.なお,99形のバリエーションについては,Wikipediaの"BR 99"をご参照ください.また,この機関車のナンバープレートに付記されているダッシュ付きの一桁の数字の意味については,こちらを参照ください.
    ノイエンマルクト(Neuenmarkt-Wirsberg)からマルクトショルガスト(Marktshorgast)に至る急勾配区間(Schiefe Ebene)を通過する列車の後補機として用いられたタンク機関車95形(1'E1' ) 頼りになりそうな,たくましい面構えのこの形式は,上記のドイツ最大のタンク機関車Gt 2x4/4(96.0)形とほぼ同じ馬力を備えていて,その意味でドイツ最大級のタンク機関車と言えます.この車両の妹にあたる95 027が数年前に復活し,現在"山の女王"としてRübelandbahnで元気に活躍しています.

    なお,機関庫に併設された建物の二階にSchiefe Ebene区間を再現した模型レイアウトがこの路線の歴史の説明とともに展示されています.

    模型レイアウトですが,ふと旅情さえ感じてしまうほどの精巧さ.
    転車台ニ機を備えた全盛時のノイエンマルクト
    もともと,この区間は,ルートヴィヒ南北鉄道の一部でした.そして,この路線の起源は,1835年12月7日,ニュールンベルグ–フュルト(Fürth)間に開通したルートヴィヒ鉄道まで遡りますが,最初に走った列車が運んだものが,ビールの樽ニ樽だったそうです.さすがは,10月のビール祭で知られるバイエルン.
    1852年当時の時刻表 《王立バイエルン鉄道》の表記.
    1935年当時のノイエンマルクト構内図 赤い部分が増設された施設 二つ目の扇形機関庫が増設されました.
    ノイエンマルクトから始まる急勾配区間の後補機に使われた機関車 真ん中の95形は,ノイエンマルクト蒸気機関車博物館に野外展示されています.(上掲写真) また,一番下のGt 2x4/4形(96形)は動軸数8のドイツ最大のタンク機関車です.
    Schiefe Ebene区間を疾走する最後の蒸気列車 1975年1月11日(展示写真) また,ドイツ鉄道開業175周年の2010年に運行された特別列車の写真はこちらから.写真に写っている35形は,23形の改良モデル.そして,この特別列車の映像が納められた南西放送の番組"Eisenbahn Romantik"の2011年1月6日放送分の動画はこちらから.前補機に35形,主務機01 5型(オーストリア鉄道歴史協会所有),そして列車後尾の後補機38形が協力して勾配を登っています.(再生開始後およそ10分過ぎごろから.)今年の11月9日には01 20201 150の重連がヴュルツブルグ,ノイエンマルクト間で特別列車を牽引し,シーフ・エーベネに挑みます.詳しくは,こちらのポストをご覧下さい.さらに,来年2014年の2月8日には,ウルム鉄道友の会が主催して01 150牽引の特別列車がシュトゥットガルト,ノイエンマルクト間で運行され,再びシーフ・エーベネを駆け登ります.詳しくは,こちらのフライヤーをご覧下さい.(運行番号14020801.大人往復2等:89 €;1等:119 €.食堂車連結.)
    駅に戻る途中,見かけた,たわわに実ったりんごの木 奥に見えるのは50形
    スイスに戻る途中,カルルスルーへの駅で




    *1) 現在のDeutsche Bahn AG (DB)は,ドイツの再統合後の1994年,旧西側のドイツ連邦鉄道(Deutsche Bundesbahn)と同東側のドイツ帝国鉄道(Deutsche Reichsbahn)が併合されて誕生しました.
    *2) 東西ドイツ国鉄時代,西ドイツ国鉄(ドイツ連邦鉄道)で新たに製造された"Neubaulokomotive"のひとつ.西ドイツ国鉄のNeubaulokとしては,10形のほかに旅客用テンダー機23形, 旅客用タンク機の65形66形, 貨物用タンク機82形があります.(下の画像はWikipediaの""Einheitslokomotiveに掲載されている写真です.撮影地は旧Bochum-Dahlhausen機関区.現在は鉄道博物館があります.)

    また,東ドイツ国鉄によって開発された機関車は,旅客用テンダー機の23.10形25.10形, 貨物用テンダー機50.40形, 旅客用タンク機65.10形, 貨物用タンク機83.10形, 狭軌用タンク機の99.23–24形99.77–79形です.
    *3) フランス,ミュルーズの鉄道博物館に展示されている,フランス国鉄最後の旅客用蒸気機関車,《女神》こと232U1と動輪直径や最高速度を比べると性能的には同等であり(構造上は,10形は3気筒,女神は4気筒.また,軸配置では,前者は2C1ですが,後者は形式名からも判るように,両方とも当時の鉄道車両技術の最高水準に位置するものと云えるでしょう.
    *4) これで,以前に載せたポストで紹介いたしました,憧れのドイツの蒸気機関車のすべてにお目にかかることができたので,とりあえず気がすみました.
    *5) ドイツ帝国鉄道中央機関車開発局長のFriedrich Witteが最初に手がけたのが52形の開発であり,彼の名前がつけられたヴィッテ式除煙板が最初に装着されたのがこのマシンでした.それまでの,視界を妨げすぎるとして機関士たちの不評を買っていた,前任者のPaul Wagnerの名前がつけられた大きなヴァグナー式除煙板に比べて材料の節約のみならず,視界の改善にも大きく寄与した発明でした.日本でもこれに習って九州の門司鉄道管理局が開発した門鉄式除煙板が,主に九州の機関車に装着されましたが,こちらのほうはドイツのSLに比べて,個人的にはどこかしっくりしないものを感じました.また,52形は枠およびボイラーが完全溶接によって製作された最初のマシンでもあります.部品を徹底的に省略した効果と相まって,車両重量はベースとなった50形を下回っていました.

    Saturday, 20 October 2012

    ストラスホーフ鉄道博物館(おまけ) - シュタイアマルク州を訪れる鉄道ファンの方へ

    オーストリアは,ウィーン近郊のストラスホーフ鉄道博物館を訪れた際に頂いたパンフレットの中に,シュタイアマルク州のクニッテルフェルトという町にある鉄道博物館を紹介したものがあり,そこに同州所在の様々な鉄道博物館や保存鉄道も紹介されていました.

    まず,クニッテルフェルト鉄道博物館のサイトはこちらです. サイトは,ドイツ語のみで,しかも所蔵されている機関車のリストもありませんが,パンフレットには手入れの行き届いた戦時機関車52形の写真が掲載されているので,ここで会えるかも知れません.

    次に,シュタイアマルク州の鉄道博物館や保存鉄道を紹介するサイトはこちらです.残念ながら,外国から訪れる鉄道ファンのことはあまりというかまったく気にしていないのか,こちらもドイツ語のみです.このサイトを見る限り,グラーツ(Graz)は,シュタイアマルク州の州都だけあって,市電博物館,模型鉄道博物館等複数の鉄道博物館があるようです.

    マイエンフェルトの秋(おまけ)

    マイエンフェルト(Maienfeld)で撮影した写真の追加分です.

    トレイラーに盛られたかぼちゃの無人直売 秋ですね〜.
    こちらは,バックショット.