Thursday, 12 February 2015

"Living 5 Years" or "Surviving at Guantanamo"を観て考えたこと

ARTE+7で配信されていた標記ドラマは,見終わった後にいろいろなことを考えさせられたドラマでした.以下,その一部を書き出してみました.
  • もし,中東などにおいて日本人が何かの間違いでアメリカ軍からテロリストの疑いをかけられ,グアンタナモ収容所に収監されたとしたら,日本政府はどういった対応をとるだろうか.日本の報道各社はどのように当該事案を取り扱うだろうか.そして,日本の世論は...
  • 日本人は,一般的な傾向として,自白を強制されると事実でなくても認めてしまうので,長期に亘って拷問の対象となることはないと思われるが,誤った情報を裏付ける為に導き出された自白の場合,無関係の第三者に疑いがかけられる可能性が出て来る.
  • ワッハービスムを実践するサウジアラビアやハワーリジズムを実践するDaechやボコ・ハラムが特定の犯罪の犯人に対し手足を切断する刑罰を課すことは知っていたが,グアンタナモでも(看守の暴行により)怪我をしたことを口実に同様の措置が講じられていることを知らされた.人権等顧みられない,まさに無法地帯,いや生き地獄.その他,電気ショックや,後ろ手に縛られ何日も天井から釣り下げられたり(江戸時代の拷問のように),その他,ありとあらゆる拷問が実践されている.
  • 最終的には,無実が判明し釈放されたMurat Kurnazさんが,このような生き地獄を5年間もの長期間生き延び,その後,結婚し家庭を築くことが出来たのは,Kurnazさんが守り続けたイスラムへの信仰の賜物.
  • ARTEを共同で運営しているフランスもドイツもNATOのメンバーでアメリカと盟友関係にあるが,アメリカの暗部とも言えるグアンタナモの実態を検証し,ドラマとして再現することができる.(このドラマは西ドイツ放送が制作したもの.) 果たして日本とアメリカの関係はどうだろうか.(第二次世界大戦の敗戦国ドイツの週刊誌SPIEGELは,9.11の同時多発テロ発生の数ヶ月後からグアンタナモ収容所で拘束中の人たちが受けている非人度的扱いについて報道しているが,日本の報道各社の姿勢はどうだったろうか.)
  • できれば,日本のテレビ局がこのドラマの日本語吹替版を放送してくれたら,役に立つことがあるのではないか.
  • 仮に,自衛隊をアメリカの対テロ戦等における戦闘に参加し,そこで民間人を誤爆,誤射した場合,それらに関する正確かつ詳細な情報を日本政府はドイツやアメリカのように国民に公表するだろうか.(例えば,アフガニスタンのクンドゥーズで起きた民間人誤爆事件,バクダッドで起きた民間人誤射事件などのように.しかも,それらの事実を忠実に再現したドラマやドキュメンタリーが,前者についてはドイツのZDFによって,後者については,アメリカのMorninglight Filmsによって制作されているが,日本のメディアは同様のことをするだろうか.) 特定秘密に指定して闇に葬り去ってしまうのではないか.もっとも,今の日本では報道業者自身によって実質的なメディアブラックアウトが実施されていることも事実.つまり,彼らは,権力者にとって都合が悪いと判断される情報は公表しようとしない.ひとつの例を挙げるならば,福島第一原子力発電所事故の発生直後,SPIEGELは,いちはやく同プラントの3号炉には高濃度のプルトニウムを含むため高放射能のMOX燃料が用いられていたことを報じている.(2011年3月13日付Atomunfall in Fukushima: Plutonium-Gefahr im Krisenreaktor, 同25日付 AKW Fukushima: Sorgenfall Reaktor 3, 同28日付GAU in Fukushima: AKW-Betreiber findet Plutonium im Bodenなど) この時期は海外赴任中だったため,日本のニュースにはインターネットを通じてしか接することはできなかったが,3号炉の危険性を報じているものは見当たらなかった.なお,日本の報道業者のセルフブラックアウトは,日本人の神道的行動原理(物理的に自らの生存を脅かす能力を持つもの,すなわち強者(自然や,自らが敗れた戦争の勝利者など)と母子間のそれに類似した情緒的な関係(非言語の契約)を築き,相手に全面的に服従する,あるいは甘えて恩寵を得る.また,自らより弱いものに対しては脅迫して服従させる)の表れと思える.日本人にとって,言語によって規定された契約による対等な関係は理解も構築も困難.その根本的理由は,自分自身の内に普遍的な価値に基づく規範を持っていない(普遍的価値には無関心)ことであり,そのために外的規範(強者の)に従わざるを得ない.規範や価値を他者(強者)に求めることしかできない民族に自己検証は不可能.
国際アムネスティのKurnazさんについての報道はこちらでご覧になれますが,ドイツ支部のサイトが,より詳しく伝えています.

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