Wednesday 4 February 2015

Daechによって現実となった『華氏451度』 - モッスルで数千冊の本が焚書処分に

レイ・ブラッドベリ原作,フランソワ・トリュフォー監督の映画で描かれた世界がDaechの支配地域のモッスルで現実のものとなっています.先月,ジハジスト達は大学の図書館やキリスト教系施設,さらに歴史博物館に押し入り多くの貴重な本を盗み出して灰にしてしまいました.

この行為を正当化しているのはジハジスト達の行動規範となっているサラフィズムおよびサウジアラビアの政権の思想的基盤となっているワッハビズムです.彼らにとって,クルアーンの啓示の前の時代(jahiliya)に書かれたものはすべて偶像崇拝者が執筆したものであるため,処分の対象となります.また,イスラムについて書かれたものであっても,ワッハヴィズムに敵対する"異端"を擁護するものも同様です.そのため,イスラムの異端とされるスフィズムに関する書物であるトンブクトゥーの貴重なマニュスクリプトも破壊されかけました.

こうした狂信的な行動を止めさせるために,一日も早くクルドの民兵たちによってモッスルが奪還されることを願わずにはいられません.モッスルが位置するメソポタミアは,文字が発明された場所.人類の歴史にとって重要なスポットなのです.

また,イスラムの歴史においても,この地域を9世紀に治めていたカリフ,Al Mamunはギリシャ哲学の影響を受けたMutazilismという,今日から見ても非常に進歩的な考え方を持っていた人で,『クルアーン』は編纂されたものであり,理性によって解釈されるべきという姿勢を採りました.Al Mamunが治世においては,少数派の異教徒たちも(ネストリウス派キリスト教徒,バビロニア出身のユダヤ人,ゾロアスター教徒,あるいは仏教徒など)迫害を受けることなく,平和に共存ができたのです.そして,これらの異なる宗教者たちの存在によりモッスルの町は人類史のなかでも稀に見る文化都市として栄えたのでした.また,Al Mmunは宿敵ビザンチン帝国の王とも平和条約を結んだことでも知られています.そして,伝説によると,ある夜,夢にアリストテレスが表れたことから,バグダッッドに世界中の知識人たちを集め,そこを地の都にするという壮大な計画を立て,大図書館を建設したと言います.(少し,プロイセンのフリードリヒ大王に共通する点があるかも知れません.)このように,古のモッスルの支配者は,Daechの首領アル・バグダーディーおよびその仲間らとは全く異なる考え方の持ち主だったのでした.

以上,L'OBSのAutodafés à Mossoul : pourquoi Daech hait les livres et le savoirからでした.

映画と同時に思い出したのは,ボール・ヴァレリーのエッセイ『精神の危機』でした. ナチスも多くの本を焚書にしました.

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