Thursday 5 February 2015

ジャン・ギャバンとゼラニウム

1937年に制作された映画『大いなる幻影』で収容所のシーンが撮影されたのは,アルザス地方のオー・ケニグスブール城でした.ロケハンティングに来たとき,クルーの1人で大道具担当のウジェーヌ・ルリエは,城の守衛の部屋の窓にゼラニウムが飾ってあるのに気づき,監督のジャン・ルノワールに本編でも所長の部屋の窓にゼラニウムを飾りたいと提案し,映画の中で,そのゼラニウムは,脱走する仲間たちをかばって射殺されたド・ボアルデュー大尉の死を悲しむラウフェンシュタイン大尉によって同大尉に捧げられています.

ところで,この映画の主役を演じたジャン・ギャバンもゼラニウムを愛していたことが知られています. 恋人だったマレーネ・ディートリヒも,そのことを知っていて,1962年,オリンピア劇場でのコンサートのために来仏したとき,そのとき以来,彼女のパリでの住まいとなった部屋(12 Avenue Montaigne)の窓辺にかつての恋人を想ってゼラニウムを飾ったそうです.ディートリヒは,戦時中,野戦病院で看護婦として働いたことがありましたが,そのとき,ギャバンから次のように言われたそうです.「死んで埋葬される気の毒な兵士たちにゼラニウムの花を添えてあげなさい.ゼラニウムは,花の中でもっとも強い花(la plus résistante)で,兵士たちの花なんだ.」と.モンテーニュ通りのそのアパートからは,パリ開放直後,ディートリヒがギャバンと10日間程一緒に過ごしたプラザホテルの部屋が見えましたが,オリンピア劇場で共演したジャン・ジャック・ドゥブが彼女のために見つけてくれたものでした.なお,ドゥブを共演者として指名したのは,ディートリヒ自身でした.理由は,彼が若いときのギャバンに似ていたからだったそうです.

Cf. : La Grande Illusion in Mémoire des images réanimées d'Alsace; Eine unvollendete Liebe Marlene Dietrich und Jean Gabin in ARTE; Le dernier appartement de Marlene Dietrich in news.celemonde.com

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