Thursday 5 February 2015

ヨルダン空軍パイロットの殺害事件後,改善するヨルダンとイスラエルの関係

以下,NZZのRacheschwüre in AmmanとSRFのLob und Tadel für Jordanien nach Hinrichtungen, «Der IS möchte den Kampf auf Jordanien ausweiten»
のメモです.

殺害されたAl-Kasasbeh中尉の家族は,ハーシム家のヨルダン王家を支える有力な部族のひとつに属しています.つまり,中尉の家族の社会的地位は高いのです.それに比べて社会的地位が低いのが人口の多数を占めるパレスチナ系の人々で,彼らはハーシム家とそれと関係のある部族の差別の対象となっています. そのため,彼らが,Daechに報復をと叫ぶヨルダンの他の国民たちの声に完全に同調しているとは言いきれません.そのため,ヨルダン王家を倒そうと画策するDaechのリクルートの対象になっているのも彼らです.

このように必ずしも統一されていない国内世論とは反対に,ヨルダン王家の特定の他国との関係は親密化しつつあります.アメリカ主導の有志連合側からは,規模的には小さいものの,高い戦闘能力を備え,また,高度な情報収集能力を備えたヨルダン軍の対Daech戦への積極的参加は高く評価されています.すでに,アメリカ政府はヨルダン王家に対し,Daechや他のテロリスト達との戦いのために数十億ドルもの支援を行う意向を示しています.さらに,ヨルダンが多くのシリア難民を受け入れていることにも国際社会は高い評価を与えています.

そして,今や,ヨルダンとイスラエルとの関係も良好になりつつあります.Daechにしてみれば,当然,イスラエルもこの地上から消し去りたい国のひとつであり,その意味で,ヨルダンもイスラエルもDaechを敵とする立場を共有することになったわけです.両国の関係の改善は,昨年11月ののイェルサレムのAl-Aqsaモスク(管理はヨルダン宗教省が担当)へのイスラエル軍兵士の突入事件以降,本国に戻っていた在イスラエルヨルダン大使が再びイスラエルに戻ったことなどに表れており,イスラエルもAl-Kasasbeh中尉の殺害への報復としてヨルダンで収監されていた2人の死刑囚への刑の執行を適切な措置と支持しています.(ドイツのガウク大統領は,政治的に判断するのであれば報復は適切ではないという見方を示しています.)

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