Tuesday 30 July 2013

ベアテ・シロタさんについての新刊書 - "Le dernier bateau pour Yokohama, Les Sirota : une odyssée politique et culturelle"

ウクライナ出身のユダヤ人ベアテ・シロタさんというと,日本国憲法の人権に関する条項の執筆したことで知られています.彼女は,東京音楽学校で教鞭をとっていた世界的ピアノ演奏者レオ・シロタ氏を父に持ち,日本で育ちました.そして,第二次世界大戦中はアメリカの大学で学び,戦後,憲法起草委員会のメンバーとして再び来日したのでした.*1)

昨年,2012年の12月30日,89歳で亡くなられましたが,彼女や彼女の両親について書かれた新刊書の存在を知り,早速求めました.フランス語で書かれていますが,興味深いことに,巻末に1889年の大日本帝国憲法と1946年の日本国憲法のフランス語訳が掲載されています.

フランス語を学ばれている方にお薦めしたい一冊です.(比較的平易なフランス語で書かれています.)

後ろに写っているのは,横浜の山下公園に係留されている氷川丸ですが,本書の内容とは関係ありません.

以下,本書のデータです.

著者:Michel Wasserman, Nassrine Azimi(共著)
(序文は,ベアテさんが執筆しています.)
書名:Le dernier bateau pour Yokohama, Les Sirota : une odyssée politique et culturelle
発行年:2013年
出版社名:Le Ver à Soie
ISBN : 979-10-92364-02-6

ところで,タイトルの『横浜行きの最後の船』というのは,以下のエピソードから付けられたようです.1939年,それまで両親とともに日本で暮らしていたベアテさんはアメリカのサンフランシスコ近郊のMills Collegeへ入学するため,両親に伴われてアメリカに向かいますが,1941年,両親は彼女をアメリカに残して日本に戻ります.その際に彼らがハワイから乗船した横浜航路の客船は,日米開戦のため,当時としては横浜行きの最後の船となりました.そして,両親と娘は,ベアテさんが1945年,敗戦後の日本に研究者として戻るまでお互いに会うことはありませんでした.つまり,親子の運命を別けてしまった船だったのです.



*1) 詳しくは,Wikipediaのベアテ・シロタ・ゴードンの項目をご覧下さい.

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