朝から冷えますね。なんでも今日の気温は、10月ごろのものだとか。
正直言って、選挙の結果には驚きました。まさか、これほど大きな変化が起きるとはさすがに想像しておりませんでした。
そこで、一通りフランスの主要新聞・雑誌のサイトに掲載された日本の今回の選挙関連記事に目を通してみました。(『Le Monde』、『Le Figaro』、『Obs』、『Libération』、 『L'Express』、そしてドイツの『Spiegel』など)
上記メディアのうち、ほとんどは選挙の結果を淡々と伝えているだけでしたが、エクスプレスとシュピーゲルの記事は、事の本質を捉えているように思えたので、少し紹介しておきます。もっとも、その内容は、日本では多かれ少なかれ誰もが知っていることなのですが。
まず、エクスプレスの記事(Le Japon prêt à tenter une alternance historique
Par Philippe Mesmer, publié le 29/08/2009 11:00 - mis à jour le 29/08/2009 11:43)から。
なお、日付を見るとお分かりのように、これは投票日の前日に書かれた記事です。でも、政権交代がほぼ確実に実現する見通しと書かれています。面白いと思ったのは、リードの部分で、ちょっと引用させていただきますと
Séisme électoral en vue! Après plus d'un demi-siècle, les conservateurs du PLD
devraient céder le pouvoir au PDJ réformateur lors des législatives de ce
dimanche. La fin du soutien aveugle à Washington, mais pas des dynasties qui
gouvernent l'archipel.
と書かれてありまして、最後のLa fin du soutien aveugle à Washington, mais pas des dynasties qui gouvernent l'archipel.というところが、さすがに良くわかっていらっしゃるといった感じです。つまり、「アメリカに対する無条件の支持の終焉、でも、"王朝"による日本の支配が終わるわけではない」といったような意味です。ここでいわれている王朝とは、天皇家ではもちろんありません。敗北した自民党総裁麻生太郎氏も、勝利した民主党代表の鳩山由紀夫氏も、それぞれ祖父が首相経験者なので、結局日本は、そのような"王朝"による支配が継続している国なんだということを記者は言いたいのです。その意味では、今回の政権交代は、吉田王朝から鳩山王朝への支配(王権)の移動というわけですね。フランス人にとって、王朝や王家などという言葉は、革命以前の時代の語彙に属するわけですから、彼らの感覚にとっては、日本は到底近代市民国家とは程遠い政治形態を持っている国と映るのでしょう。
記事の本文には、両氏ともお金持ちの息子(botchan:《ぼっちゃん》)であること、さらに、日本の議員には世襲が多いこと(自由民主党では、35.1%、民主党でも、10.6%)が紹介されており、特に世襲議員の代表格として小泉元首相の息子進次郎氏が挙げられていました。ただ、麻生自民党が小泉総裁時代に続いてアメリカべったりだったのと異なり、民主党が政権に就いたら、ワシントンとはかなり距離を置くことになりそうだとも書かれてありました。
それともうひとつ感心したのは、日本のメディアが取り上げていない、老人党が言及されていたことでした。
次は、ドイツのシュピーゲル誌の記事です。
30. August 2009, 16:27 Uhr
Historischer Wahlsieg
Hatoyama beendet Japans Einparteienherrschaft
こちらの記事は選挙の結果が確定してから書かれたもので、内容で目を引いたのは、Keine Partei im westlichen Sinneという中見出しに続く段落でした。自民党のことを言ったもので、ようするに、同党は西洋の概念では、ひとつの政党とは定義できない存在ということです。
日本でもよく言われてきたこと(シュピーゲルの記者も日本のメディアを通して知ったのでしょう)ですが、自民党という集団は、それ自身の中に与党と野党を含んでいるようなもので、所属議員たちは、社会に存在する様々な団体と結びつき、それらにとっての利益を獲得することが彼らの仕事でした。もちろん、それによって、彼らも利益が得られるからです。そして、党は、そうした団体の代表である政治家間の調整役として機能していたわけです。しかし、自民党議員の支持基盤である農村の経済的疲弊や、大企業の経営不振などにより、個々の団体へ分配できる利益が大幅に減少した結果、このような仕組みは働かなくなってしまいました。つまり、個々の団体に利益を分配することで維持できていた権力も分配するものがなくなったことによって彼らから去って行ってしまったというわけです。
というようなことが書かれていました。
まずは、これにて。