Saturday, 28 July 2018

遠くの避難所より近くの神社仏閣 - 東日本大震災の津波被害を受けて

東日本の神社仏閣のすべてが大震災による津波の被害を受けなかったわけではない.けれども長い歴史の中で津波の被害を受けた神社仏閣は,被災時の場所に再築するのではなく,誕生寺のように津波が遡上しなかった場所に再築を重ねることにより,現在のような「津波遡上限界ラインには神社仏閣がある」状態になったと考えられる.

もし,「津波遡上限界ラインに神社仏閣がある」ということが正しいとすれば,新たな防災計画の立案に際しても,従来小・中学校や公民館を第一次避難所としていた防災計画を見直して,神社仏閣を検討に入れる価値はあるのではなかろうか.

例えば,岩手県釜石市鵜住居町における避難所は,従来は根浜宝来館,釜石東中学校,鵜住居小学校,はまと神経内科クリニック,鵜住居保育園であった.

しかし,釜石東中学校,鵜住居小学校が東日本大震災に伴う津波で被災している以上,新たな第一避難所として富王姫神社,本行寺,鵜住神社,慈眼寺,浄楽寺,麓山神社,稲荷神社,厳館稲荷神社を検討すべきではなかろうか (図6参照).

同様に,従来福島県いわき市においても,例えば久之浜町における第一次避難所は久之浜第一小学校であったが,新たな第一次避難所として稲荷神社,自在院,愛宕神社,龍光寺を検討し,宿泊を主眼とする第二次避難所を久之浜第一小学校とすべきではなかろうか  (図14参照).

津波に関するアンケートによれば,避難所が「遠い」という回答が見受けられたが,久之浜第一小学校は堤防から約700メートル離れていて,しかも,国道六号線とJR常磐線を越えて行かねばならないのに比して,神社仏閣は堤防から100メートルほど「近い」場所にある.
 吉田政志(よしだせいじ)著『津波の遡上限界ラインには神社仏閣がある』(ページ数記載なし),自費出版,いわき市,2013年より (著者は同書において,南海トラフ地震によって発生が想定される津波からの避難所についても, 高知県高知市,同じく黒潮町,徳島県阿南氏,兵庫県相生市を例にして考察をしています.) 下の写真に写っているのは,大船渡市の東端に位置する長安寺と春日大明神で,津波の遡上限界ラインよりはるかに内陸側に位置しています.
蛮社の獄で幕府の追跡の手を逃れた高野長英が身を隠し,蘭学を教えていた真言宗大谷派の長安寺.

住田町へ向かう国道107号線沿いの山中に鎮座する春日大明神.幟が本当に昭和29年に奉納されたものかは判りません.

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