Saturday 18 March 2017

最高の司令官と参謀長コンビ - 三船 敏郎と稲葉 義男

先日,テレビシリーズの明智小五郎(江戸川乱歩の美女)シリーズ第19作 「湖底の美女」(1982年)のビデオを観ていたら,短いシーンでしたが,殺人現場の所轄警察の署長役で稲葉義男が登場しているのに気づきました.

この俳優さんに好感を持った(今やファンの一人になった)のは『 太平洋奇跡の作戦 キスカ』(1965年,東宝)を観てからのこと.この映画は,キスカ島の海軍及び陸軍守備隊の撤収作戦を各隊の生存者が執筆した記録を素にキャストのオーディションから現場の再現に到るまで彼らをアドバイザーとして参加させ制作されたものですが,撤収作戦を実施した第一水雷戦隊大村少将を三船敏郎が演じ,稲葉義男は同先任参謀玉井中佐役を演じました.実名を挙げれば,大村少将は木村昌福少将,玉井中佐は有近六次中佐です.

映画の中で特に面白いものとして印象に残ったのは,大村司令官が阿武隈の甲板から釣り糸を垂れているところに玉井中佐が通りかかって二人によって交わされる会話のシーン.司令官が時折釣りをされていたことは当該作戦を紹介した複数の本から知っていましたが,うろ覚えですが,以下のようなほのぼのとした会話がなされていました.

司令官「そうか.怒ったか.」
中佐 「はい.真っ赤になって怒られました.」
(直前のシーンで,中佐は第5艦隊の川島司令官(山村聰)に冗談のつもりで,ある発言をし怒られていました.)
司令官「人間はたまには怒った方がいい.戦争をしているのだからな.」
- 餌をとられてしまったことに気づき,釣り糸を手繰り寄せ残念がる司令官
中佐「(笑顔で)ぼんやりしていると魚に逃げられますよ.」

そして,最近,何故か突然1969年の同じ東宝の映画『日本海大海戦』を再び観たくなりレンタル店に注文,今,繰り返し観ていますが,そこで,このコンビが復活していることを発見したのでした.(何分,最初の観たのが10歳のときだったもので,単純に軍艦の航行および戦闘シーンが'カッコイイ'と感じたのみで,登場人物については家族や知り合いの戦争体験者の方達から聞かされていた東郷平八郎や乃木希典とはこういう人だったのかと彼らの成したことを一応理解した程度で,基本的に彼らを含めて人だけが登場するシーンは目は向いていても頭の中ではスキップしていました.ただ,東郷司令官は鹿児島訛りが時折出るものの,部下に対しても敬語を使うという事実は映画の中でも再現されているなと子供なりに納得したことを覚えています.) この作品の中で三船敏郎は東郷連合艦隊司令長官役,稲葉義男は,やはり幕僚トップの島村速雄連合艦隊参謀長役を演じています.

「日本海大海戦」を数十年ぶりに鑑賞して,興味深かったのは数回に分けて実施されることになった旅順閉塞作戦への参加者を,指揮官の広瀬中佐を含め,2回は参加せないように,つまり第一回目で生還した者を二回目以降は参加させないことと東郷長官が命じたことでした.確認はしていませんが,当時の海軍の思想乃至哲学から類推するに史実だと思います.

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