Thursday 6 June 2013

Schellenursliの舞台Guarda

天気が良くなったので,突然思いついてGuardaに行ってきました.

My Switzerland.comには以下の説明が載っています.

Guarda in the Lower Engadine is so beautiful a village that it was awarded the Wakker Prize. It also received the distinction "Of national importance". One of its stately houses inspired Alois Carigiet when he drew the home of Schellenursli.

1945年に出版された,カリジエ(Alois Carigiet)が絵を担当した絵本"Schellenursli"(『ウルスリのすず』)における主人公Ursliの家のモデルとなった建物がある(あるいは,あった?)そうです.



上掲のものも含め撮影した写真をこちらに載せましたので,ご興味がありましたらご覧ください.

なお,昼食はHotel Restauran Meisserの展望テラスで, 名物のMalunsを頂きました.添えられていたアップルムースも,今回はなぜか抵抗なく味わうことができました.(いつもは苦手なのですが.)そして,やはり添えられていたBergkäseとの相性も抜群でした.

ところで,カリジェについては,気になることがひとつあります.それは,彼が1969年に描いた故郷トルンの老人ホーム聖マルティンの家(Casa s. Martin)の礼拝堂の壁を飾るキリストの受難画(Kreuzweg)の中の磔刑図です.このような受難画のシリーズは,カトリックの教会では珍しくはないのですが,彼の描いた磔刑図ほどむごたらしいものを見たことはありません.画面の右には,自らの顔の下で両手を開き,殺された息子に驚きの眼差しを向ける母マリアと彼女を支える聖ヨハネが描かれ,左には十字架上の目を閉じ,頭を90度下に曲げ,全身に血潮が滴っているキリストが描かれているのですが,その血の流れ方がとても正確に描かれているのです.彼の両手は十字架の水平方向の木材に釘で打ち付けられていますが,その打ち込まれている場所が手のひらではなく,手首であり(手のひらでは体重を支えきれないといわれています.),そこから血が幾条もの線となって彼の腕を伝って落ちています.そして,この絵に強烈なむごたらしさを与えている,彼の右脇腹に突き刺さったままの槍の傷から滴り落ちる血も,その槍を赤く染め,また,太ももから膝へと流れています.つまり,タッチはあくまでも我々が親しんでいる彼独特のタッチなのですが,対象の描き形があまりにも現実的であり,そのため,現実に起こり得た出来事としての説得力を持って見るものに迫ってくるのです.彼が描く美しい自然と可愛らしい子供たち,また,やさしい大人たちや動物たちが暮らす世界しか知らなかった私にとって,数年前のこの磔刑図との出会いは鮮烈な体験でした.カリジェがどのような意図でこの画を描いたのか,できれば知りたいと思っています.少なくとも,彼が最高の画家と讃え,その作品から多くのを学んだというジョルジュ・ルオーのキリスト像とは相当異なっています.ひとつ思い当たるのが,彼が語ったという,自分の絵画は"narrative art"であるという言葉です.つまり,彼は自らの終の住まいとして戻った故郷トルンの礼拝堂を飾るためにキリストの受難のストーリーを,既存の描き方から離れ,自らが理解する通りに筆と絵の具を用いて徹底的に「物語」ったのではないかのではないか,そのように思えるのです.*1) 言わば,彼の絵画による信仰告白ともいえるかもしれません.



*1) 1962年,彼がチューリヒで行った講演の際の言葉.cf. Wikipediaの解説

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