Friday, 3 April 2015

最近の衛星測位システム事情

まず,各国が運営する衛星測位システム(GNSS)の全体像を示す下の表をご覧下さい.

GPSGLONASSGalileoBeidouINRSSQZSS
運営国米国ロシアEU中国インド日本
稼働中の衛生数
(2015年4月1日現在)
322481641
最終稼働予定数3230303374
軌道高度 (km)20,180 19,130 23,220 21,150 36,000 32,000 -  40,000
周期(時間)11:58 11:1614:05 12:38 2424

上の表で紹介したGNSSは,それぞれ独立して稼働しています.つまり,互いに干渉し合うことがないように異なる周波数の電波で地上へ信号を送っているのです.しかし,地上で私たちが携帯端末などで自分の位置を調べるときは,受信可能な複数のGNSSからの電波を使って位置を特定しています.もし,アンドロイド端末をお持ちの場合,'AndroiTS GPS Test'というアプリケーションをダウンロードしてみて下さい.現在,ご自身の端末が受信している各国の衛星の電波をそれぞれの強度と共に示す一覧表が表示されます.(下の写真)

Maja Brankovic SRF
以上が,最近のGNSS事情ですが,以下,GNSSの歴史を振り返るとともに,今後について簡単に触れておきます.

元々,アメリカのGPSもロシア(当時はソビエト連邦)のGLONASSも軍事目的で運用が開始されたものでした.冷戦時代のことです.最初に運用が開始されたのはGLONASS(1993年)のほうでした.そして,資金不足で一旦は運用停止に追い込まれますが,プーチン大統領の時代に復活します.

2001年,当時はまだ12基の衛星しか稼働させていなかったロシアは,プーチン大統領の指示で新たなシステムの構築に乗り出します.その結果,今日では24基もの衛星がロシアのGNSSであるGLONASSのサービスを世界中に提供しているのです.

また,EUは2020年にGalileoの運用開始を予定していて,そのころには,私たちは今よりさらに多くの衛星からの信号を受信できるようになります.それにより,位置の特定の精度は向上することは云う迄もありませんが,計算する端末の負担もそれだけ増大し,世知辛い話になりますが,電池の消耗も早くなります.

ところで,先ほど,GNSSは軍事目的で運用が始まったと述べましたが,では,いつからそれが民間でも利用出来るようになったのでしょうか.そのきっかけとなったのはひとつの悲惨な出来事でした.1983年9月1日の大韓航空機のロシア領空における撃墜事件です.この事件を受けて,当時のレーガン大統領はアメリカのGNSSであるGPSの民間利用を許可したのでした.

以下,各国のGNSSの今後についてですが,まず,中国は,2011年に運用を開始したシステムBeidou-1に加えて2020年には新たにBeidou-2の運用を開始する予定です.また,インドは先月の28日に4基の衛星を用いたIRNSSの運用を開始しました.そして,2016年には同システムのために合計7基もの衛星が稼働を開始する予定です.そして,もちろん日本も最終的には4基の衛星によるGNSSの運用を予定しています.

以上のすべての衛星が軌道上に乗せられ,それぞれが地上に向けて信号を送るとなると,私たちの携帯端末は,合計150もの衛星からの信号を受信して位置を特定することになり,精度は飛躍的に向上すると云う訳ですが,端末への負担も相当増えそうです.

以上,SRFの4月2日付Alternativen zu GPS: Der Wettbewerb hat längst begonnenの抄訳でした.

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