Wednesday 21 January 2015

流入する難民に混じってイスラミストが入国していることへの懸念を強めるイタリア政府

先日,ベルギーで発覚したテロ計画に関わった疑いで2人の男が南フランスで逮捕されましたが,彼らは,そのときローマに向う途中で,そこでジハジストのグループと接触する予定だったという見方があります.

イタリア政府の情報機関はISによるローマ,とりわけヴァチカンに対するテロへの懸念を強めていますが,対テロ部隊であるDigos(Divisione Investigazioni Generali e Operazioni Speciali)のディエゴ・パレンテ長官によると,現時点ではテロ計画を示唆する情報はなく,市民にパニックに陥いらないようにと言っています.それでも,現在,ローマでも最高レベルの警戒態勢が敷かれていて,特にヴァチカン周辺,旧市街のユダヤ人街,そしてフィウミチーノ空港は特に重点的な警戒の対象となっています.実際,同空港において,日曜日にEasyJetの機内でロンドンへ向かおうとしていたパキスタン人の男が偽造旅券所持により逮捕されています.

日曜日に行われた記者会見で,アンゲリーノ・アルファーノ内相は,現在,100名を超える人物が厳重な監視下に置かれており,他にも300名以上が監視対象となっていると述べました.内相によると,イタリアでは,昨年の12月31日以降,すでに10名がテロ容疑者として特定されています.(昨年1年では13名.)10名のうち,5名がチュニジア国籍,2名がモロッコ国籍所有者で,エジプト国籍,パキスタン国籍,トルコ国籍所有者がそれぞれ1名です.彼らは,ジハジストと接触しており,シリアに向かおうとしていたり,ISへ協力し戦闘に参加する意向を示していたようです.

これらの10名は,滞在許可を取得しており,彼らがイタリアに居住することには法的問題はありません.しかし,逆に法的枠組内で居住しているからこそ危険である場合もありえます.特に数年前からイタリアに居住している北アフリカやバルカン出身者について言える事ですが,彼らは,新たに入国した難民などと比べ目につくことはあまりありません.実際,特に危険な人物として厳重監視の対象となっているもののなかには,ボスニア,コソボ・アルバニア系グループが存在しており,それらは(シリアなど)紛争地域からイタリアに再入国した人たちです.内相によると,これまでにイタリアからイタリアのパスポート,あるいは滞在許可証の所持者で戦闘に参加する目的でシリアやイラクへ向けて出国したものは59名とのことです.数としては,フランス,英国,ドイツ,ベルギーの数よりは少ないですが,パリで起きた襲撃事件が示すように,少ないからといってテロが実行される可能性が低いとは言えません.

現在,イスラミストのリクルート活動は殆どの場合,インターネットを通じて行われており,逆にモスクのイマムが疑わしい人物について当局に報告することも少なくありません.そして,ローンウルフとでも呼べる小規模なグループが凶悪な事件を起こすことが治安当局の捜査を難しくしていることも事実なのです.

さらに,問題を複雑化させているのは,不法滞在しているイスラミストたちです.現在,イタリアにやってくる難民の殆どはシリアなど中東の国やアフリカなどの紛争地域から逃れて来る人たちです.彼らは地中海を通ってイタリアの沿岸に到着しまが,内務省の発表では,昨年,イタリアに上陸したボート難民の数は170,000を超えたそうです.そして,その殆どが地下に潜伏し,さらに北へ向かいますが,警察によると,その中には危険なイスラミストたちが含まれていると言います.

また,3700名もの未成年の難民が収容所からいなくなったことが報告されていますが,彼らの多くが犯罪組織によって低賃金労働者として強制的に働かされていると見られています.ただ,これらの子供たちもテロリスト達のリクルートの対象となる可能性も否定出来ません.

昨年,イタリアに入国した難民のうち,1人のリビア人がテロ容疑で逮捕されていますが,難民達の報告では,彼らのなかでテログループに加わり,テロの実行に参加したいと話している人が少なくなく,ヴァチカンもその標的のひとつとなっていると言います.

ただ,イタリアは,テロリストたちにとって,テロを実行する現場というより他のヨーロッパへの通過点と言われます.そのため,EUに加盟しているいくつかの国ではシェンゲン条約を撤廃すべきとの議論が起きています.

以上,スイスNZZ紙の20日付Warnungen vor Anschlägen in Romからでした.

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